津軽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2037
レビュー : 189
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006048

感想・レビュー・書評

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  • 太宰治が自分の故郷である津軽を旅した紀行文。
    最後の文章が気になって読んでみた。

    誇らしいような、卑下したいような、
    故郷に対する微妙な気持ちが共感できる。
    そして自分を形作った、どうしても切り離す事が
    出来ないものとしての故郷が重くなりすぎずに
    非常にのびのびと描かれている。

    ところどころでトホホな事になってしまう太宰がかわいい。
    暗くてネガティブなイメージが強い太宰の小説ですが、
    この本は非常に素直で素朴な太宰治の一面を知ることが出来ます。

  • 津軽にはほとんど足を踏み入れていないものの、青森には何回も行ったので、かなり面白く読むことができた。特に、Sさんの接待の場面では思わず吹き出してしまった。何より、この旅が、戦争が敗色濃厚になってきた1944年になされ、出版されたということが驚きである。

  • 津軽への愛憎入り混じった感情は、自分自身に対するものでもあるように感じた。
    少年時代の回想はなんだかとても可愛いし、友人とは楽しく酒を呑んでいるし(そもそも最初から最後まで酒を呑んでいるのだけど)、たけとの再会はちょっと泣ける。
    生きていけるための何かを探す旅だと思って読んでいて、自分を見つけることができたようでよかったなあと思ったけれど、仄暗いところや死を想起させる文もちらほら挟まってくる。これが書かれたのが死の4年前、というのを考えると切なくなる。
    青森を旅しながら読みたいと思った。

  • 太宰自身が故郷・津軽地方を巡ってものした随筆。「~しちゃった。」という言文一致の極みのような表現があったり、読者に対する説明が気恥ずかしいほどに痛々しかったり。著者の小説ではあまり出てこない朗らかな一面が感じられる。と共に、自分に対して、また故郷についての自虐的な描写があり、このあたりは太宰だな~と思う。この紀行は、育ての親とも言える乳母・たけとの再会が最大の目的であり、そのクライマックスを最後に取っておく著者の気持ちがよく分かる。昭和19年という戦時中に、青森の地では酒食に事欠かない豊かさが興味深い。

  • 地方の片田舎の町でも人情と活気があり、どんな地域にも独特の個性のあった昔の日本へ行って、色々な土地を時間をかけて旅してみたい。時代が変わりもはや叶わないことだけれども、著者の人間味もありコミカルでもある筆致がそういう思いを自分の中に呼び覚ました模様。紀行文はもともと好きだが、本作も期待通りだった。

  • 太宰治 「 津軽 」自伝的な紀行文。死と虚構の中にいる 作家 太宰治から 津軽人の津島修治 に戻り 人間の幸福を取り戻ていく姿を描いているように感じる

    著者が 虚飾を行わず 伝えたかったのは
    *津軽の生きている雰囲気=津軽人の心の触れ合い
    *津軽、育ての母、家族に対する自分の気持ち

    最後の文 「さらば読者よ〜絶望するな」は 読者への遺書なのか? 昭和19年だから 戦争と関係あるのか?

  • 教科書の走れメロスくらいしか読んだことなくて、なんとなく苦手意識持ってたけど以前青森で記念館行ったこともあって読んでみました
    旅行記エッセイって感じで読みやすかった!
    たしかにナルシシズムも感じられたけどそれを客観的に自覚してるのがおもしろかったし共感出来るところもありました
    今度は小説も読んでみよう

  • 2017.8.9
    東北に旅行に行って、太宰の出身地である青森県金木町に行って、太宰巡りをした後カフェで読んだ一冊。津軽人の気性に関して、太宰の友人のことが書いてあって、その不器用な他者の迎え入れ方が、滑稽で、可愛くて、涙が出ました。思い出深い一冊。

  • 本棚整理のため、11年ぶりに再読。評価変更☆4→3

    津軽(生家と知人)紀行。生家がでてきてクライマックスで”たけ”に会うシーンを中心に太宰にしては爽やかな印象を与える作品。

  • 津軽の地理、文化、歴史、人全てが愛おしく感じられる描かれ方で、太宰らしく無いくせにとても太宰らしい作品。

  • 太宰が自分自身の出生地である津軽を訪ね、昔を訪ねる。飲んでばかり(笑)

  • 太宰治の他の著作とは異色の本作。

    風土記、回想録のような構成で語られている。生家の重荷を背負い続け、自己自身の否定を繰り返してきた。故郷の面影は以前の自分自身を辿るルーツになるが、最終の目的は乳母のたけとの再会にある。

    母性を追い求めた彼の究極がたけにあったことはあとがきで書かれている。女性との入水自殺を度々起こした太宰はたけのような安心感を持てる女性を求め続けたのだと感じる。人を楽しませる気遣いから、太宰は大胆さや繊細さを兼ね備えており、それらが文章によく表れている。そういった性格ゆえの寂しさや孤独を感じていたことも。

    最終文の「私は虚構を行わなかった。読者をだましはしなかった。さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」が深く胸にくる。彼自身は自殺してしまうが、自分自身に言い聞かせているような気がしてならない。

  • 風土記の執筆を依頼された太宰が津軽を旅行して書いた作品です。
    津軽の歴史などについても少し書かれていますが、やはり津軽にいる人たちと出会って会話しているところが一番読んでいて楽しかったです。思い出がある場所や懐かしい人と一緒に行く場所は、良く見えるんだろうなと思いました。
    私は津軽と全く関わりがないのですが、太宰と関わりのある場所と考えたら、訪れたとき胸が躍りそうです。

  • 聖地めぐりしてみたい・・・。
    最後の「元気で行こう、絶望するな。」という文が好き。

  • 太宰の作品は『斜陽』しか読んだことがなくその時の印象、また一般的なイメージにより太宰文学は暗く重いという考えを持っていました。しかし、今回この『津軽』を読んで彼の新たな一面をみた気がします。最後、たけの言葉ひとつひとつに強い愛情がこもっているのが感じられ、思わず泣きそうになってしまいました。

  • ラストシーンが好き。希望を抱くからこそ、絶望の闇も鮮明になるのだ。ユーモアを言わなければならないのはさみしいからなのだ。太宰はめんどくさいからこそ愛おしい。

  • 実に、愉快に読んだ。「さらば読者よ、命あらばまた他日。
    元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」で終わっている。それなのに、入水自殺。本編冒頭は、「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村磯多三十七」。「たけ」に会えたのは神様の計らいだ。きっと。

  • 太宰治による酔いどれふるさと紀行。

    太宰作品の中でも、異色の作品のように思いました。初期作品のようなヤケクソ感はありませんし、暗さもほとんどありません。旅の最後には感動的なオチがついていて、"さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。"(P.211)という歯切れの良いフレーズで締められます。

    本作はある出版社の企画によって生まれた作品のようです。しかし、どことなく発注者をからかっているような感じがあります。津軽の歴史を紹介するパートは主に引用文に託されますが、これが実に読みにくい。マジメに読む読者がどれだけいるんだろうか。それからたびたび登場する「国防上たいせつな云々…」という但し書きなどは、実際に重要かどうかということはともかく、当局へのあてこすりのようにも感じられました。

    巻末の解説で言われているような大傑作とまではさすがに思えませんが、独特のユーモアがある楽しい作品です。

  • 台詞にたくさん方言が出てくる。それが持つ優しさとか、面白さとか、地方の色みたいなものがとても愛しい。

  • 太宰治というと人間のクズぐらいなイメージしかないのだけれど、本書を読んだら、お酒好きな面倒くさい性格だけど人好きのするおっさん(失礼だけど)なイメージに変わった。
    本当は普通のお酒が飲みたいけど、配給がないだろうからリンゴ酒が飲みたいと言ってみたり、駅で迎えに来てくれた知人の子にお土産を持ってくれば良かったと後悔したり、津軽愛にあふれていたり。酔って、もっと自分の作品をほめてくれと口走ったり。
    あと時々言葉遣いがかわいい。口語体。
    なんというか、太宰モテただろうなあとしみじみ思った。

著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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