人間失格 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 16098
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006055

感想・レビュー・書評

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  • 初太宰。図書館のリサイクル市で入手。帰省途中の高速バス内で読む。中3長男にはあらかじめ「三四郎」を夏の課題で読むように言っていたが、なかなか読みすすめられない。安易に、ページ数が少ないことだけを理由に太宰に変更。中身は、中3にはきついと思ったが、何とか読了。さて、本の紹介をどうするか。「人間失格」は太宰が自死する間際に著した最後の著書と言える。雑誌に3回に分けて掲載している途中で亡くなったというのだから、いわくつきの作品と言えそうだ。「私は、その男の写真を三葉、見たことがある。」で始まるはしがき。その男が書いた手記を紹介するという形で本書は進行する。第一の手記は「恥の多い生涯を送って来ました。」と始まる。いずれも、印象的な文章である。私自身も、そこから一気に引き込まれていった。明らかにその男は太宰本人のことである。青森の大富豪の六男として生まれる。子どものころから道化を演じ続け、まわりの人間からは好かれていた。けれど、それは本当の自分ではない、そのことに次第に気付いていく。中学校に入って、竹一という男と出会う。そこで、自分が周りに好かれるためにやった行為を見抜かれる。高等学校に入ると、東京に出て親の目から離れ、行動は次第に自由になっていく。本当は美術学校に進みたかったと言う。それで、洋画家の画塾に通い出す。そこで、堀木正雄という画学生と出会う。堀木は「5円貸してくれないか」という。仕方なしに差し出すと、「よし、飲もう。俺がお前におごるんだ。」という。「三四郎」に出てくる与次郎のようだ。個人的にはそういう人間とは付き合いたくないが、三四郎も、「人間失格」の主人公葉蔵も、こうして世界を広げていく。葉蔵が覚えたのは、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想。しばらくは、マルクスによってつながれた人間関係の中、非合法がかえって心地良く感じられたりするのだが、それも長くは続かない。自分はもとから日陰者だという。そして、世間から日陰者と言われる人に出会うと心優しくなれる。銀座のカフェでは自分をさらけ出すことができた。そこで出会ったツネ子(ちゃんと名前すら覚えていない)と鎌倉の海に飛び込む。相手だけが亡くなり自分は助かる。そして警察のお世話に。検事の前で病気を装う。ハンカチを口に当てて咳をする。「ほんとうかい?」竹一のときと同じように検事に見透かされる。自分の生涯でこの二つが、演技の大失敗の記録なのだそうだ。忘れられない苦い思い出。そういうものが誰にでもあるだろう。このあたりから大きく人生が狂い出す。勘当。起訴猶予になった葉蔵は、父親の知人であるヒラメと呼ばれる男の下にしばらく身を寄せる。不自由な生活。高等学校に戻る気もない。美術の世界で食って行ければ良いが、思い切って掘木を訪ねていく。彼も絵を描く仕事を始めてはいるが、老母との貧しい生活。葉蔵を置いてくれるわけでもない。そこで、シヅ子という編集者の女性と出会う。夫を3年前に亡くしており、娘が一人いる。その部屋に居候。漫画を描く仕事を与えてもらい、ようやく社会でやっていけるようになる。そのころは一人娘のシゲ子から「お父ちゃん」と呼ばれるまでになっている。しかし、酒。結局、その部屋も出て、バアの2階に居候する。その向かいに自分の酒を止めようとしてくれる17,8歳の娘がいた。名をヨシちゃんという。煙草を買いに行くたびに酒を止めるように忠告する。やがて、結婚。酒も止めて幸せに暮らすはずだった。しかし、そうは簡単に話が進まない。たずねてきたのは堀木。自分から「飲もう」と言ってしまう。会話がはずむ。「罪の対義語は何か。」「罪と罰」ドストエフスキー。と思考が展開している最中、階下でヨシ子が訪ねてきた商人の男に乱暴をはたらかれている。それを見ても、恐ろしくて助けることすらできなかった。そこから当然のように、夫婦生活は崩れていく。ヨシ子が死ぬために準備をしたのかもしれない睡眠薬を自分が飲み病院に運ばれる。退院後は酒・酒・酒を止めるためについには薬にも手を出す。そして精神科の病院に入院。女はどこにもいない。酒もない。自分は罪人、狂人、いや廃人という刻印を押されてしまった。ついに人間、失格。「もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。」「自分はことし、二十七になります。白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。」と手記は締めくくられている。太宰自身は40歳になる直前に亡くなっている。あとがきにはこの手記を手に入れた経緯が書かれている。この手記を持っていたのは、バアのマダム。最後はその女の言葉で締めくくられている。「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、・・・神様みたいないい子でした。」この一文に、太宰の思いが込められているように感じた。

  • 長年読み続けられているという事実が、主人公に感情移入した者としての救い。

    この先何度読み返すだろうか。
    だけどあんまり読み返したくないなぁ。

  • 周りが暗い暗いと言うので読んで見ましたが、そこまで暗さを感じることはなく、むしろ人間ってこんなだよなぁと共感することが多かった。

  • 約25年ぶりに読んだ。
    初めて読んだ時(高1)には、あまりの衝撃に解毒剤として武者小路実篤の『友情』を慌てて読んだが、今回はその必要はなかった(当たり前か……)。ただ、太宰が捉えた人間の愚かしさ、滑稽さ、罪深さ、救いのなさが重くのしかかってきた。すんなり受け入れられた。古傷が何度か疼いた。
    それは「走れメロス」や「富嶽百景」など彼が比較的安定していた時期の作品とは対局的なものだけれど、文学としての価値観は遜色ない。「右大臣実朝」のそこに流れる諦観と言おうか、それに抗う人に対する愛の希求と言おうか、何と言おうか、そんなものを感じた……切ない、あまりにも。
    更にくだらないことを付け加えれば、そんなにモテちゃって、ある意味羨ましい……苦痛だと表現していたけれど。

  • 初めて読んだときはいままで当たり前と思っていた日常生活の愉しみをくるっとひっくり返された気がして相当面食らったけど今はへっちゃら。
    この本はなぜここまで語り継がれるんだろう。

  • だめな男だってわかってても、どうしようもなく可愛く思えてくる不思議

  • 葉ちゃんは生きづらいだろうし割り切った考えができなかった辺りは不器用なんだろうが、それにしても器用な人間はずるいと思った。共感できてしまうんだけど共感したら主人公と同様なわけですんごいもやっとする。誘い受けする女の面倒さを語るくだり、結社運動の大仰さを揶揄する一文にはつい笑った。笑い事じゃあないけれども。
    とにかく読点が多いせいか、ときたま一行が極端に長いせいか、読むリズムが掴みづらくて一文を何度か往復することがしばしば。それが味だろうから良いんだけど、もうちょっと自分、本をたくさん読んだ方が良いよなあと思った。

  • 読んだの何度目だろ。年取るほどにわかるは。クスリの件を除けば、わりと普通の人だと思う。これで人間失格なら、私も失格だ。

  • 普段あまり読書をしない私が食い入るように3日で読んだ本。

    卑屈でただただ暗い、とは思わず、心の奥底にある自分の醜い部分を文字という形で綴られているように感じた。
    私が数年来ふとした毎に覚えた感覚を見抜かれているかのような文章が並び、ゾッとさえするほどであった。
    これに共感できるのは、全ての人間ではない。
    そして私は、そちら側で生きる人たちに、この上なく親近感を抱いてしまうのだ。
    人間に対する得体の知れない漠然とした「恐怖」を、私もまた綺麗さっぱりぬぐい去ることは未来永劫不可能であろう。

    思いっきり陰鬱な気分なとき、死にたくなったときに読みたい。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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