走れメロス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4481
レビュー : 509
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006062

作品紹介・あらすじ

人間の信頼と友情の美しさを、簡潔な力強い文体で表現した『走れメロス』など、安定した実生活のもとで多彩な芸術的開花を示した中期の代表的短編集。「富士には、月見草がよく似合う」とある一節によって有名な『富岳百景』、著者が得意とした女性の独白体の形式による傑作『女生徒』、10年間の東京生活を回顧した『東京八景』ほか、『駈込み訴え』『ダス・ゲマイネ』など全9編。

感想・レビュー・書評

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  • 9つの短編集。
    特に気に入った作品は3つ。

    思春期真っ只中の複雑な年頃の女子の1日をイキイキと描いた『女生徒』。
    文体が太宰らしくなく新鮮。
    喜怒哀楽がくるくる変わり、自分でも感情をどう処理してよいか分からない、少々厄介な思春期女子が軽やかに描かれていて良い。

    唄のリズムのような文体の『駆込み訴え』はある一人の男性の訴え。
    内容は少々ヘビーなのにノリで読めた。

    そして『走れメロス』。
    読むのは恐らく中学以来。
    竹馬の友のためにとにかく走る!
    途中お決まりの邪魔が入っても、自分に負けそうになっても最後は男同士の友情が勝つ!

  • 2017.7.22
    太宰が晩年、落ち着いていた時に書かれた名短編である。思えば私は、自らを「人間失格」と思いながら、しかし「メロス」であることを求めていたように思える。だから太宰が好きなのかも知れない。
    信じられているから走る、もはや間に合うか間に合わぬかは関係ない、私はもっと大きな何者かによって走っている、というこの感覚。現代に失われているのものではないだろうか。できるできないは問題ではないのである、人間にとって大事なものに対して。それはこの表現の通り、語ることができない、形がないにもかかわらず、それに反して確信の強いものである。こういうものが、私は欲しかった。本物は、心が最も動く動因というものは、言葉で語れるものの向こう側にある。それは言葉足らずなのではない。語るという方法そのものでは掴めないものなのではないだろうか。語るという方法をどれだけ極めても、その延長線上にはないものなのではないだろうか。
    そういう心の真実を、美を、最近はよく考える。そこに人間の、生きることの価値や意味の感覚のヒントが、あるように思える。

  • 「富嶽百景」 … 富士山が孤高の人に見えてくる。「いいとこあるねえ。よくやってるなあ」と褒められたり、「こいつらを、よろしく頼むぜ」とあてにされたり、きっと富士山は苦笑いしただろうなぁ。

    「女生徒」 … 例えば、歯を磨いている時や赤信号を待っている時、ぼんやりしつつも実はあれこれ考えていたりする。もしも思考を一切もらさず文章にする能力があったとしたら、それはそれでしんどそう、なんて思う。

    「駈込み訴え」 … ブラック企業の悪徳社長なみに非難されているのは“あの人”。裏切り者の代名詞になるのはこの人。愛憎でボロボロの慟哭は、のみ込まれそうな迫力があった。

    「走れメロス」 … 緊迫には土砂降りの雨が、男の友情には真っ赤な夕焼けが、よく似合うのはなぜ? 大変だったわりに存在感が薄かったセリヌンティウスだけど、最後の5行に彼の個性が垣間見えるのがおもしろい。

    「帰去来」「故郷」 … 北さんと中畑さんをはじめ、優しい人ばかりでびっくりする。絶対に匙を投げられない「修ッちゃあ」ってば、やっぱりお坊ちゃま…。

  • 感受性の高い作者が、自分を傷つけずに書いている数少ないお話。
    歴史的な設定、友情と信頼について記述しようとする姿勢。
    太宰の作品の中では、人間失格とは対極のような物語かもしれない。

  • これは永久保存版だわ。短編集侮るなかれ。面白い。さすが太宰、読みやすい言葉を使ってくるしサクサク感情移入できて読めちゃう。

    メロスもいいが、『駈込み訴え』でのめりこみ、『帰去来』で感動。。。

    人間失格から太宰ワールドに入ったもんだから、陰鬱な先入観で読み始めたら見事に裏切られた。光というか希望のようなものが編みこまれてる短編物語がいくつかあった。

  • 「女生徒」が読みたくて手に取りました。
    「女生徒」は思春期女子の不安定で美しい青さを表現していて太宰が得意とする所謂語りの短篇ですが、女子の心理描写が非常に上手くて感動しました。
    「早く強く、清く、なりたかった」の一文があまりにも美しくて胸が痛くなりました。
    個人的に「駆け込み訴え」も非常に面白かったです。
    イエスが磔の刑に処されるまでの有名な物語を、ユダが密告するに至るまでの独白で描いているのですが
    世界的宗教である基督教に関してここまでブラックユーモアたっぷりに面白く描けることに太宰の幅の広さを感じました。

  • 表題作の『走れメロス』を改めて読みたくてこう購入

    メロスの短気とセリヌンティウスのお人好し、暴君ディオニスの単純さなど色々突っ込みどころがあるが故に多様な解釈が可能であろうと思える。

    取り敢えずメロスが間に合わなかった時の其々について考えてみた。

    メロス:自分の身勝手で自称親友を殺してしまう。周りからも非難され妹夫婦からも距離を置かれる。セリヌンティウスの弟子たちから訴えられ、生きていくことに絶望を感じ自分の短慮と若さに後悔する。

    セリヌンティウス:急遽訪れた試練の三日間!自分では問題を解決する事が出来ない状況がもどかしい。ディオニスに命乞いすべきか、潔い死かの選択を迫られるもディオニスの性格を加味し、潔い死により友を信じたために殺された悲劇の英雄として名を残す事を選択。石工の弟子達の将来を憂う。

    ディオニス:セリヌンティウスへの刑の執行の是非を迫られる。執行すれば畏れられるが罪の無い者を殺す罪悪感と民衆からの支持率が益々下がる事が必死。セリヌンティウスへの刑の執行を見送れば寛容なところが民衆から支持される可能性はあるが王の発言が軽いものとなってしまうことについて悩む。


    他には、キリストの弟子の告白を描いた『駆け込み訴え』と、自分と実家の関係修復を描く『帰去来』が面白かった!

  • 最早、一字一句がネタとしても重宝される表題作に加えて短編をいくつか纏めた一冊。「ぶっちゃけ富士山って日本一って言われて見るからそう思うだけで、実際はどそこまで大したことないよな」というテーマの話があったり、「美しさに内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で無道徳だ」という登場人物の道徳観が出てきたり、本当に良いものは御託を並べる必要ねえんだよ!!という太宰の気持ちが伝わってくる。

  • 東京八景が印象に残った。太宰治ってあんまり好きじゃなかったけど、東京八景を読んで自分の現状を重ねて見て、なんだか「太宰治も辛かったんだな」という言葉が出てきて自分でもビックリした。

  •  メロス、途中で歩いてんじゃん。

     死ぬまでに「走れメロス」くらいは読んでおくべきかな、と思ったので。短編が九編。
    「女生徒」
     なんかすごい印象強い。内容はあまり覚えてないけど、口調というか、雰囲気がすごかった。
    「駈込み訴え」
     この本の中で一番面白かった。これ好きだわ。途中まで「なんだただのホモか」と思ってたことを懺悔しときます。ホモとかそういう問題じゃなかった。神の子の話だった。
    「走れメロス」
     メロス、強ぇ!w 山賊三人を倒すとかすげぇよw あとずっと走りっぱなしかと思ったらそうでもないのな、この男。
    「帰去来」
    「故郷」
     この二編はノンフィクションっぽい感じなのだとは思う。けどほんと、太宰治って男はひどい性格してるわ。ひどいというかどうしようもない系。自分で書いてるから多少の誇張とか卑下もあるんだろうけど、あまりのくずっぷりにむしろ愛おしさを覚えるわ。
     抜粋は「走れメロス」より。

    私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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