走れメロス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 5833
感想 : 579
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006062

作品紹介・あらすじ

人間の信頼と友情の美しさを、簡潔な力強い文体で表現した『走れメロス』など、安定した実生活のもとで多彩な芸術的開花を示した中期の代表的短編集。「富士には、月見草がよく似合う」とある一節によって有名な『富岳百景』、著者が得意とした女性の独白体の形式による傑作『女生徒』、10年間の東京生活を回顧した『東京八景』ほか、『駈込み訴え』『ダス・ゲマイネ』など全9編。

感想・レビュー・書評

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  • 太宰中期の短編集9作品
    ぜんぶ強烈に面白い!

    『ダス・ゲマイネ』
    個性溢れる4人(互いに仲が良いわけでは決してない)の青年のやり取りが面白い
    あと素朴でかわいい菊ちゃん
    ハッキリ言ってストーリー性はそうない
    主人公はちょっと背伸びしがちな純朴な青年
    アクの強い連中にどうも好かれるらしい
    嘘ばかりついて生きているがピュアな自称音楽家の学生
    (もうすぐ死ぬと言っているがちっとも死なない)
    世の中を器用に生きている画家
    小説家太宰治
    (ん!?この設定!しかもとてもと嫌われ者して登場)
    太宰らしい
    主人公以外の三者三様のアクが豊かに表現され、主人公の「無」の対極さが際立つ
    この個性的な面々に囲まれて、疲れ果て最後は自分は一体誰なのか…と
    最後は電車に轢かれて死んでしまう
    !?
    主人公があっさり事故で死ぬ…(死ぬ死ぬ言っていた自称音楽家じゃないのね)
    いや、ストーリーなんかどうでも良い
    この世界観にちょっと身を寄せてみることに価値がある
    各人の見事な描写、感覚的なユーモア


    『満顔』
    もの凄く短いお話し なんと3ページ
    酒に酔って怪我をして医者にかかった
    その医者も同じくらい大変酔ってふらふら現れた
    もうのっけから楽しい
    初対面なのに二人でくすくす笑い合ってしまう
    こちらにも笑いが伝染する
    3ページでどんな展開をするのかと思いきや
    こちらの医者にかかっている学校の先生の奥さんに
    「奥さま、もう少しの辛抱ですよ」と医者が言うわけである
    学校の先生は3年前に肺を悪くしたがこの頃回復しているようである
    「いまがだいじのところ」と、固く禁じた
    ん?これは…
    というお話(笑)
    しかし3年である
    一歩間違えたら家庭崩壊の危機になったのではと心配してしまう
    そうしてとうとうお許しが出た日の学校の先生の奥さまは嬉しそうにさっさと飛ぶように歩いて行った
    これは医者の奥さまのさしがねかも
    たった3ページにセンスの光る小粋なお話
    太宰恐るべし


    『富嶽百景』
    富士山の麓の御坂峠で滞在している太宰治が人との出会いや発見により、富士への見識を変化させていくというストーリー
    完全なるフィクションではない…と思われるが
    太宰の人生背景を窺い知ることができ、井伏鱒二から勧められたお見合い相手とこれから再出発していくのだ…という静かで前向きな気持ちを感じとることができる
    見る場所見る場所から富士山について語っている
    当初は富士は「世間=俗物」の象徴とも思っているのだが多くの人との触れ合いを経て最後は富士にお世話になりましたと挨拶する
    静かで大きな展開のないストーリーだが
    いつも富士が居て居心地が良い
    人も暖かい
    無意識なる自然崇拝的存在富士山
    まさに日本人の感性だ
    私も富士山が大好きだ!(でももう登りたくないなぁ…)


    『女生徒』
    元は太宰に送られたある女性の日記とのこと
    どこまでが太宰にアレンジされているのか不明
    多感な14歳の女学生の日常生活の中でのさまざまな想い
    お父さんが亡くなり、お姉さんがお嫁に行ってしまい、お母さんと二人の生活
    その中で感じること思うことをつらつら綴っている

    思春期の心の揺れ、葛藤、残酷さ、自己嫌悪
    同性に対する愛情と嫌悪感
    いつまでも子供で居たい気持ちと早く今の時期を飛び越えて大人になりたい気持ち
    青臭く湿度が高く…だけどなんか憎めない

    当時の自分を振り返っても…
    もうこの頃って無駄に時間はあるし、エネルギーが余っているから、変なことばかり考えてしまう(考えたくないのに!)
    どうでもよいしょうもないことに悩んだり、急に吹っ切れたり
    さっきと今でまったく逆のことを考えたり
    あふれ出る嫌悪感を抑えられなくなり、だけどどうやってガス抜きしたらいいのかわからない
    一番泣きたいときには涙が出ない
    自分でも自分がわけわからないし、自分の「位置」みたいなものもわからないし、他の人と比べて何かおかしいのではないかと悩むし
    今思うと、もうかわいそうわたし…バカね!(笑)となるのだが
    その頃は真剣

    なので女生徒に
    大丈夫だから
    通り過ぎるから
    って教えてあげたくなるようなそんなお話し
    ただこれを読んで自分の中では「あるある」ネタだが、ひょっとして世間は違うのかしら?
    あとこれ読むとなんだか江國香織ワールドみたいな感じがした


    『駆込み訴え』
    何の予備知識もなしに読んだのだが、もう最初はさっぱりなんのことやら???
    そうは言うもののどうやら男の愛憎劇だというのはわかる

    〜あの人は酷い
    厭な奴です
    悪い人です
    ああ我慢ならない
    生かして置けねぇ〜
    (ほぉどうやら悪い奴の話しか)

    そうきたら今度は

    〜誰よりも愛しています
    あなたが此の世にいなくなったら、すぐに死にます〜
    (なんですと!?)

    ある師匠に対し、もうドロドロした相反する愛憎感情にぐちゃぐちゃになっている男の独白、訴えである
    殺したいほど愛おしい
    こんなに尽くしているのに
    意地悪くこき使われ軽蔑してくる
    昼ドラの世界である
    しかも男同士である
    なんだこの設定は
    どれほど愛おしくてどれほど憎いか、切々と訴えてくる
    この訴えが本当に臨場感あふれるのだ
    感情がつらつら流れ出る、いやあふれ出て言葉が止まらない!
    もう人目もはばからず本能むき出しである
    常識も理性もすべてぶっ飛んでいる
    ある意味混じりけ無しの純愛ともいえよう
    しかし何故か真剣なほどだんだんおかしみが増す(真面目に読んでいるのだ!いやだからこそ太宰の文章は面白いのだが…)
    途中から(あれ?まさかこれは…と)気づくのだが、なんとユダとキリストの話しではないか!
    これは全くの想定外

    〜私は天国も神もあの人の復活も信じない
    あの人の美しさだけは信じている〜

    歪んでるなぁ
    とてもイエスの弟子の台詞ではない
    思いはさらにエスカレートしていく
    もう最後は自暴自棄のサイコである
    圧巻の迫力、展開でぐぃぐぃ引き込まれる
    すごかったぁ
    読み出したらアリ地獄
    だいたいコレ元ネタは新約聖書ですよ
    それが太宰の手にかかると…
    ・主人公:ユダ
    ・ジャンル:心理サスペンス、サイコホラー
    ふぅ
    凄過ぎる!
    なんだか完敗…と思ってしまった(笑)

    ちなみに…
    「口述筆記」で書かれた小説、つまり「太宰がしゃべったことを妻の美知子さんが書きとった小説」
    しかも酒飲みながら(本当か?)
    凄すぎませんか?


    『走れメロス』
    メロスが友情のために走るんだっけか?
    伝令?(いやこれは別の話しか)くらいの漠然とした記憶のため、気になったので再読
    太宰らしからぬストーリーだが古代ギリシャの伝承というベースがあるらしくまぁ納得
    やっぱり太宰の表現力が凄いのである
    主人公の怒り、葛藤、辛さ
    一緒になって走っている気さえしてくる
    感情と疾走がもうドバっと荒波のごとく押し寄せるのだ
    もう走り出したきっかけなんてどうでもいいから、何とか間に合ってくれ(手に汗握ってくる)
    大河を渡り(泳ぎ切ったが服が濡れてきっと体力を奪われているだろう!かわいそうに)、複数の山賊と戦い(羊飼いなのに何故かとても強い)、もう間に合わない宣言をされても諦めないのだ!
    くぅ…この信念(もうここまできたら意地か怨念かとさえ感じる凄まじい想いなのだ)
    心が折れそうになり、一度だけ裏切ろうとした友情をお互いに詫び1発ずつ殴り合う、そしてしかと抱き合う!
    おお!男の熱い友情である
    最後に暴君の王様が感動して仲間に入れてほしい(王様が「仲間」だなんて!)…というハッピーエンドストーリーである
    ひねくれ者のいつもの私なら、もうそんな子供だましの簡単なストーリーなんてさ!
    と思うのだが、いやいやここまでしたら人の心は動くだろう
    しかし待っている友人の心境も恐ろしいだろうに、相当な葛藤との闘いであろう
    こんな立派な話、書いているクセに太宰自身は「待つ身がつらいかね、待たせる身がつらいかね」
    なんて言って真逆のことしてるからなぁ…



    『東京八景』
    太宰の10年間の東京生活
    恐らく32歳の時に執筆している
    もうこの男は本当にクソである
    同じ過ちを何度繰り返せば気が済むのだ
    男のくせにめそめそ泣いて金をせびるな!
    いちいち死のうとするな
    死んだら解決すると思うなよ!
    もういい加減にしろよ!
    …と腹の立つこと甚だしい
    このように怒り爆発させながら読むのだが、なんかやめられない
    そのうち怒りを通り越して、どれどれ今度は何をしたのだ?
    もうこのあたりからはパロディだ
    太宰のしょうもない人生のくだりがよーくわかるのだが、意外と肝心なポイントとなる部分を言葉を濁す
    繊細なのか、演出効果なのか…
    怒涛の時期をこえ、二度目の結婚をしてから落ちついた精神状態で書いたと思われるので想像より読む側の悲壮感はない
    とにかくアホか!とぶつぶつ言いながら読むのが個人的には良い
    しょうもないのにたまに切なくなる
    転機がくる
    生きなければならないと思う
    やれやれ
    本当に「やれやれ…」


    『帰去来』『故郷』
    10年ぶりに太宰が生家へ帰郷する話し
    といってもこれまたさんざんお世話になった恩義のある方のお膳立てに乗っかるだけなのだが…
    ああ、本当に罰当たりで恩知らずな人間である
    それなりにしおらしい内容なのだが、世話になっても飽きれる厚かましさがある
    しかし皆が本当に太宰を愛しているのだと感じる
    これほど傍若無人な振る舞いを繰り返してもいつもいつも助けてくれる人間が必ず周りに居る
    しかも複数である
    本当に人たらしであるこの男は
    太宰以外の(笑)人達の温かみに触れるお話し
    切なさと喜びと小さな幸せ
    もう本当にこの男は…
    まったく…
    太宰は本当は幸せ者なのに…
    わかってたはずなのに…
    自分には真剣に向かい合ってはいるのだ
    目を逸らさずに
    しかしこんな人間なかなかいないよな



    太宰の短編
    総体的にびっくりするほど面白かった
    いやぁ、人間失格しか知らなかったので本当にびっくりしたのだ
    「好きに書いているんだから好きに読めば良いさ」なーんて言われてる感じで肩肘張らず、好き勝手なことを考えながら、時には文句言いながら読める
    何故か本を読むとついいい子ぶってしまうことがあるのだが、もう太宰の本なんてそんな必要全くなくて気楽で良い
    向こうも丸腰、丸裸、体当たりなんだし、こちらも感じるまま自然体で良いのだ
    しかもいちいちユーモア、感性、表現力が見事である
    そして必ず最後にくるなんともいい塩梅のオチ
    たまりません
    こうやって太宰の周りにいた人たちも嫌だ嫌だと思いながら、なんか気づいたら太宰の世界に入って行ってしまったのか!?
    『駆込み訴え』のユダのように、嫌いなのに我慢ならないのに、惹かれてしまうんです…
    いやぁ恐ろしい…

    9作品の短編集であるがなんとも濃厚で贅沢な1冊である

  • 読友さんの感想を読んで読みたくなった。でも本がない。ということで、https://www.youtube.com/watch?v=z9YW0xCIzWI を聴く。「友を信じ抜くことができるのか?」という命題。太宰治の高級感ある文章、脳内の映像、そしてそのド迫力。何をとっても傑作だった。一度はメロスが諦めかけ、さらにセリヌンティウスも同様に一瞬絶望したのだろう。しかし勇者メロスがセリヌンティウスの前に姿を現す。両者が一瞬でも絶望をした後悔を恥じる。信じ抜くことができる相手こそ真の友なのだ!!桜桃忌、合掌。

  •  少し前に「津軽」のレビューを書いた際、りまのさんから、この本の中の「駈込み訴え」をお勧めいただいた。
     以下、この短編集の中で、私が気に入ったもの。

    「駈込み訴え」 
     キリストの弟子であったが最後に裏切ってキリストを売る、ユダの話。
     うん…うん…。分かる…分かる。
    分かるよ。人一倍敬愛しているのに、何故か、気のせいかその人は自分だけに厳しいと感じることってある。きっと自分への愛情故に厳しくして下さっているのだと思ってみるのだが、やはり違う。聖人なんていない。どんな人にだって好き嫌いはある。残念ながら、自分はそのお方に嫌われているようだと自覚するときの悲しさ。同等だと思っている奴に嫌われるなら別に良い。でも、自分が敬愛して何もかも投げ出して付き従って来た人にだったら?キリスト教の中ではキリストは聖人でユダは汚い裏切り者。その見方は変わることがない。なんて残酷なことだろう。「よくぞ書いてくれました。」と拍手を送りたい。
     でも、次のようなセリフに見られるキリストの考え方も本当だったのだろうと思う。
     「寂しい時に寂しそうな面持ちをするのは、それは偽善者のすることなのだ。寂しさを人に分かってもらおうとして、ことさらに顔色を変えて見せているだけなのだ。……寂しさを人に分かってもらわなくても、どこか目に見えない所にいるお前の誠の父だけが、分かって下さったならそれで良いではないか。」
     これが太宰の理想でもあったのだと思う。
     しかしながら、ユダがキリストを売って、銀貨30枚を貰い、自分をあっさり商人だと認めてしまったのもやはり、人間の真の姿。人には二面性がある。宗教はそういう人間の弱さを認めるものであってほしい。

    「女生徒」
     思春期の少女のモヤモヤした憂鬱な心の中を見事に表現している。
     「朝、目を覚ます時の気持ちは……箱の中に小さい箱があって、そいつを開けるとまた、小さい箱があって、その小さな箱を開けるとまたまた小さな箱があって……とうとうお終いにサイコロくらいの小さい箱が出てきて、そいつをそっと開けてみて、何もない。空っぽ。あの感じ、少し近い。」
      
    「小金井の家が懐かしい。……あの、いいお家には、お父さんもいらっしゃったし、お姉さんもいた。お母さんだって、若かった。……本当に楽しかった。自分を見つめたり、不潔にぎくしゃくすることもなく、ただ甘えておればよかったのだ。なんという大きな特権を私は享受していたことだろう。……けれども、少しずつ大きくなるにつれて、だいいち私が自身いやらしくなって、私の特権はいつの間にか消失して、あかはだか、醜い醜い。…」

    「今に大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘しさは、おかしなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかもしれないのだけれど、その大人になるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。」

     その他、電車で隣合ったおばさんが厚化粧だけど、首の皺が目立って醜いだとか(その気持ち分かるけど、今は私、そうやって見られてるほう)、二匹飼っている犬のうち、片輪で醜いほうが可哀相だからわざと可愛がってやらないだとか、この時期の少女じゃなくても、おばさんにも分かるよ、その気持ち、っていう心のうちが本当に見ごとに書かれていた。だけど、おばさんはそういう自分の気持ちに気づいてドキっとしたり、そんな嫌らしい考えを持つ自分自身に傷ついたり、そういうことがないんだ。色々なこと分かってしまったから、楽だけど、そういうガラスの心みたいなのもう、ないんだな。
    これを書かれたのは男性の太宰さんなんですね。すごいです。

     その他、太宰治のことを本当にいつも心配している故郷の呉服屋の中畑さんと津島家御用達の洋服屋の北さんが、勘当状態のようになっている実家に里帰り出来るように、奔走してくれる「帰去来」「故郷」とか、奥さんと初めてお見合いして、ひと目で結婚を決めた「富嶽百景」(「富士には月見草がよく似合う」で有名)とか気に入ったのだが、レビューが長くなりすぎたので、割愛します。







    • Macomi55さん
      こちらこそ、いい作品を紹介して下さって有難うございました!高校生の頃の私は、精神年齢が低すぎて太宰治が理解出来なかったのですが、今からハマり...
      こちらこそ、いい作品を紹介して下さって有難うございました!高校生の頃の私は、精神年齢が低すぎて太宰治が理解出来なかったのですが、今からハマりそうです。人生間に合いました。幸せです!
      2021/02/04
    • 蜜海さん
      Macomi55様。

      おはようございます。
      私も『走れメロス』収録作品は大好きです。
      太宰の筆力は圧巻ですよね。ひとたびページを捲ればあっ...
      Macomi55様。

      おはようございます。
      私も『走れメロス』収録作品は大好きです。
      太宰の筆力は圧巻ですよね。ひとたびページを捲ればあっという間に引き込まれている。
      「太宰は暗い」とか「クズ野郎だな」とか人物の評価は散々なのを見受けますが、私はそうは思っていません。心情や感じ方等を作品から読み取ると、人間臭さが滲み出ていて寧ろ好感が持てます。
      ユーモアもあり題材の取り扱い方も面白い。
      私自身まだ読んでいない作品は数多ありますが、コンプリートしようと思っています(笑)
      また太宰作品を読む事がありましたら、Macomi55様のご感想をお聞かせ下さい。レビュー楽しみにしております。
      2021/07/30
    • Macomi55さん
      蜜海さん
       コメント有難うございます。
       私が太宰と出会ったのは、高校の教科書で「人間失格」だったのですが、その時はあまりに私の精神年齢が低...
      蜜海さん
       コメント有難うございます。
       私が太宰と出会ったのは、高校の教科書で「人間失格」だったのですが、その時はあまりに私の精神年齢が低すぎて分からなかったのですよ。太宰の良さが分かったのは、太宰の亡くなった年齢をかなり超えた最近、「津軽」を読んで、彼の生立ちや人柄に触れてからです。その後、急き立てられるように何冊か読みました。
      「出会うのが遅すぎた」「死ぬまでには読んでおきたい」という本が多すぎて困っています。
       蜜海さんは、私は名前だけは知っているけれども触れたことがないという近代文学をよく読まれていますね。難しそうでなかなか手が伸びないのですが、蜜海さんのご感想を参考にさせて頂きます。
      2021/07/30
  • 有名な表題作をはじめとする九つの短編小説で、約半数は私小説です。最も面白く読めたのは「女生徒」で、ユニークな文体で表現する少女の瑞々しい心の動きが見事でした。キリストを売ろうと独白するユダの言葉をそのまま綴るというコンセプトが目を引く「駈込み訴え」は、著者らしい内面描写が効果的に活かされていると感じます。超有名作品にも関わらず長く未読だった表題作は、序盤の不合理で身勝手なメロスの言動に首を傾げた状態のままで、物語が終了してしまいました。全般に、私小説よりは、それ以外の作品に読み応えを感じました。以下、作品ごとの概略とコメントです。

    ----------
    「ダス・ゲマイネ」(41P)
    佐野次郎と呼ばれる大学生を中心に、東京に暮らす若者たちが芸術や恋をめぐってワチャワチャ。鼻持ちならない若い作家として太宰治も登場する。エンディングに好感。
    「満願」(3P)
    医者と懇意になった著者らしき男が、小学校教師である夫の病の相談で病院に通う女を知る。微笑ましい掌編。
    「富嶽百景」(29P)
    井伏鱒二の紹介で見合いをするために甲府を訪れた著者。当初は否定的な富士山への見方が、滞在中に変化する過程を描く。
    「女生徒」(55P)
    母と二人で暮らす女学生の一日を追った作品。一人称告白体だが、句読点とひらがなを多用して前後脈略の薄い短文を連発する独特のスタイルが魅力で、少女の瑞々しい心のうちが見事に描写されている。本書内で最良と思える。川上未映子の『乳と卵』の文体も本作由来なのだろうか。
    「駈込み訴え」(23P)
    キリストを裏切り、祭司長のもとへ売りに行った際の、イスカリオテのユダの長い独白が作品の全てとなっている。コンセプトが面白く、著者得意のドロドロ内面描写が内容にマッチしており、ユダのキリストへの深い愛憎が伝わる。
    「走れメロス」(19P)
    本書を読む動機になった作品。感動の物語を予期していたが、冒頭で完全に裏切られる。暴君とはいえ権力ある王に無計画に逆らったうえ、親友の命をあっさりと差し出して危険に晒すメロスの身勝手さに唖然とする。序盤の違和感を拭えないまま短い物語はあっという間に最後を迎え、結果オーライな大団円に歓喜する登場人物たちにも、感情移入は全くできない。現実にいれば、とても迷惑なタイプ。
    「東京八景」(37P)
    伊豆の安宿で上京以降を回想する著者。芸妓Hとの生活、嘘、借金、自殺未遂、クスリ、酒。終始湿っぽい。もっとも印象に残らない。
    「帰去来」(30P)
    著者が故郷と東京で、それぞれ世話になった恩人二人との出来事を中心に、終盤には青森への帰郷も描く。全体に呑気で、母と叔母に作家という職業を理解させられずに困り果てる著者が可笑しかった。
    「故郷」(22P)
    上記、「帰去来」の一年後の続編。母の危篤に今度は妻子を連れ、再び青森へと帰郷する。過去のしがらみから兄や親戚の目を恐れ、良家の実家で居心地悪く過ごす様子が描かれている。

  • 9つの短編集。
    特に気に入った作品は3つ。

    思春期真っ只中の複雑な年頃の女子の1日をイキイキと描いた『女生徒』。
    文体が太宰らしくなく新鮮。
    喜怒哀楽がくるくる変わり、自分でも感情をどう処理してよいか分からない、少々厄介な思春期女子が軽やかに描かれていて良い。

    唄のリズムのような文体の『駆込み訴え』はある一人の男性の訴え。
    内容は少々ヘビーなのにノリで読めた。

    そして『走れメロス』。
    読むのは恐らく中学以来。
    竹馬の友のためにとにかく走る!
    途中お決まりの邪魔が入っても、自分に負けそうになっても最後は男同士の友情が勝つ!

  • 殴れ 私を殴れ
    私を殴ってくれるやつなんていないな。
    王様は何をしれっと改心しとんねん!うそやろ!と思った。

  • 中学生で読んでも、大人になって読んでも、変わらず大好きな作品の一つ。報われて良かった。

  • 教科書でお馴染みの『走れメロス』をはじめとした太宰「中期の代表的作品集」。9作収められていてどの作品もとても面白かったのだが、2つ挙げるとすると『女生徒』と『駆込み訴え』。
    『女生徒』は、戦争で父親を亡くした若い女性の独白から成る短編。自分の思いをつらつら述べる一人称小説が好きな自分の好みにぴったり嵌った。というか、吐露される心情があんまり他人のものに思えない。
    『駆込み訴え』は、話には聞いていたが聞きしに勝る凄い迫力(特に冒頭)。目紛しく転換する心情をよくここまで繊細に描けるものだ。太宰はこれを一気に口述したそうだが、ちまちま推敲していてはこの勢いを捕まえられない気もするし、やっぱり太宰は天才だとも思う。
    『帰去来』は何故か読んだ覚えがあった(現代文の模試か何かで?)。

  • 2019年2月20日、「ダス・ゲマイネ」を読み始める。

    ウィキペディアによると、

    題名になっている「ダス・ゲマイネ」は、ドイツ語で「通俗性」や「卑俗性」といった意味がある「Das Gemeine」に由来し、云々。

    23頁まで読んで、図書館に返却。


    2021年6月13日、追記。

    収録作品は、

    ・ダス・ゲマイネ 1935年
    ・満願 1938年
    ・富嶽百景 1939年
    ・女生徒 1939年
    ・駈込み訴え 1940年
    ・走れメロス 1940年
    ・東京八景  1941年
    ・帰去来 1942年
    ・故郷 1942年

  • 正直に誠実に生きることの大切さは時代を超えた普遍性があると感じた。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県北津軽郡金木村の大地主の六男として生まれる。本名、津島修治。
薬物中毒になりながらも、第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を発表。主な作品に『走れメロス』『お伽草紙』『人間失格』『斜陽』などがある。戦後は流行作家として活躍するも、1948年6月13日、玉川上水で愛人であった山崎富栄と入水自殺。享年38。

「2022年 『太宰治① 人間失格』 で使われていた紹介文から引用しています。」

太宰治の作品

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