お伽草紙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2119
レビュー : 160
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006079

感想・レビュー・書評

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  • 奥野健男の受け売りではないが、太宰という作家の神髄を見た。


    太宰の代表作と言えば『人間失格』や『走れメロス』場合によっては『富岳百景』が上がるのではないだろうか。もっと通の人だと私の知らぬ作品が上がるのだろうが一般的な話でね。
    私の中で記憶に残っているのは『斜陽』なのだが、もう一つが『駆け込み訴え』。
    アレは非常におもしろかった。前にも書いたが太宰とキリスト教という混じり合わない。ではないが,
    互いに無関心そうなもの同士がくっつきあって生まれた作品。その驚きも記憶を深くしているが、単純に非常にいきいきと上手く書かれていたことがおもしろかったのだ。
    あれ以来こういう風な下地のある物語や出来事を、おのれの手で調理するのが得意な作家なのだろうという認識は持っていた。
    その流れで本書『お伽草紙』も長らく読みたいと考えていた。
    先に書いたように収録されている作品のほとんどが、下地のあるパロディーもしくはそう言う雰囲気を模倣して作られた物語だ。
    長らく『お伽草紙』がすごくいいと言う話を聞いていたが、私には『新釈諸国噺』の方がよかった。西鶴と太宰のコラボである。時代的な(江戸情緒とも言えるのか、)味わいが物語に現れているのだが、それに太宰の正直なあばきとユーモアが含まれるために、読みやすくおもしろい。
    太宰の現代的感覚、文章のモダンさってのは読んでいて感心することが多い。
    まるで今第一線で活躍する作家のような錯覚を受けることすらある。それだけ、古めかしくも堅苦しくもない言葉選び、表現をするのである。それも本書の場合は書かれた時代が戦中なのだから、驚いた。こういう感覚を読むものに与えるのってすごいことである。
    私の個人的な見解だが、いい意味でも悪い意味でも、現代的な小説文章の軽さって太宰の功績が本当に大きいと私は思う。


    『新釈諸国噺』の他に私が気に入ったのが『竹青』。
    まるで芥川が書いたかのような話だった。ストーリーが単純に好きだ。珍しくまっすぐな物語だ。
    太宰的な塩梅いのよさで言えば『かちかち山』とかがいいのだろうが、どことなくふざけすぎ。いや私的にはもっと物語としての形をしっかりともって欲しかった。自分と物語の境界が文章中で曖昧になるのがあまり好きではないのだ。まぁ完全に個人的な趣向の話になってしまうが。


    どことなく太宰って作家として敬遠してしまう部分が今でもなくはない。
    私の様な生粋の三島好きだとあまりにも対極。情けなさというのを正直に書きすぎだと恥じらいみたいなものを感じてしまうんだろうな。(特に後期の作品の印象が強すぎるので)
    しかし本著はそう言った部分が非常にきれいに物語とマッチングして花開いている。
    太宰という”己”から切り離されて、一般社会という漠然とした中に、その哀愁やら情けなさが描かれていることでほどよい距離が生まれるからだろう。そうすると安心して眺められるのか。
    って、最後はいやに真面目に分析してみたりして。

  • 素晴らしかった。
    太宰治はあまり読んだことがないが、この作品群はユーモア満点で面白い。
    特に竹青や、御伽草子は読みやすい。

    芥川は文章の装飾がセンス満点といった感じだが、太宰は人間の内面の分析のセンスが満点という感じ。

  • 『ノイズカット』
    太宰治の人生の中で中期を彩る作品。

    この作品では太宰治のアツイ情熱を感じる。

    どこか、なにか悶々としたものが吹っ切れて、ある制約がある中を自由に闊達に表現されている感じがする。

    ちなみに、カチカチ山は女性の感想をきいてみたい。

    デートでこの話題をだしたら飯がまずくなるかも。。。

  • 斜に構えたスタイルは変わらず

  • 教科書以外では初めての太宰治。
    大学の同級が好きだったな。
    どの本か知らないけど。
    この本は名前から想像出来るように古典のアレンジ?です。
    元を知らないと独自部分が分からないけど、日本の有名な昔話なども題材になっていてちょっと楽しかった。

  • 太宰治は、「人間失格」と「走れメロス」ぐらいしか読んだことがなくて、特に「人間失格」のどこまでもマイナス方向へ話が向かう印象が強かった。

    でも、この「お伽草子」では、父としての顔がうかがえ、それぞれのお話の捉え方も、興味深い。

  • 15.11.03
    何回も読んでる本だけど、ちょっとした時間つぶし用に購入。『お伽草子』が本当に好き。にやにやしてしまう。
    『新釈諸国噺』ももちろん好き。太宰作品の登場人物は本当に善良だなあと思う。意地汚さそうな人も、欲深い人も、卑屈な人も、すべからく善良でただ生きてるんだなあって思う。すごく微笑ましくなる。

    太宰治は『人間失格』でしょ、って人に『お伽草子』はぜひ読んでもらいたい。
    「舌切雀」の、ここを読めばみんな好きになっちゃうと思うんだけどなあ。以下引用。

    「瘤取りの二老人も浦島さんも、またカチカチ山の狸さんも、決して日本一ではないんだぞ、桃太郎だけが日本一なんだぞ、そうしておれはその桃太郎を書かなかったんだぞ。本当の日本一なんか、もしお前の眼前に現れたら、お前の両眼はまぶしさのためにつぶれるかもしれない。いいか、わかったか。」(p.371)

  • 井原西鶴の作品や昔話を太宰治がアレンジした短編集。

    数多く見られる駄目人間達の描写に腹を立ててしまったり、憐れに思ってしまったり、滑稽だったりとどの作品も良質な物語となってます。

    中でも『竹青』が主人公の駄目さと、物語の幻想的な部分、落ちの付くところ等、非教訓的なところも併せて良いなと思いました!

  • 人間失格を読んで太宰を好きになって斜陽、走れメロス、短編集?と続けざまに読んできたが、このお伽草紙は人間失格に次ぐおもしろさ。
    ところどころにある作者(太宰)の自分語り、特に桃太郎の一説は個人的に好きな部分であるが、今の小説にはそのような自分語りは少ないとふと思った。
    作者が読者と対話するような文章があることで雲の上のような存在の太宰が急に身近な存在となったように感じた。いくら神格化されていようと普通のネガティブなおっさんなんだ。そう感じさせてくれる作品。

    話は変わるが印象に残った物語は「カチカチ山」と「裸川」。特にカチカチ山の悲惨さは目を覆いたくなる。

  • カチカチ山が非常に面白かった。こんな発想はできない。でも読んだら、もうそれにしか見えなくなってしまう。面白い。

著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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