パンドラの匣 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 279
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006116

感想・レビュー・書評

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  • 太宰にはめずらしく、前向きな明るさに満ちた「正義と微笑」「パンドラの匣」の長編二本収録。さわやか青春度では太宰作品中ピカイチではなかろうか。「正義と微笑」では役者志望の青年がどんどん大人になってゆく姿が活写されている。一種の教養小説とも言える。「チョッピリ叔母さん」という表現がツボった。表題作より私はこちらが好きだ。「パンドラの匣」は健康道場という風変わりな結核療養施設で暮らす少年が主人公。恋の鞘当てとどんでん返しなんかもあったりして甘酸っぱいが主人公の明日をも知れぬ命を考えるとき一抹の切なさを感じる。

  • 『正義と微笑』と『パンドラの匣』2篇を収録。

    諸兄御承知の通り、太宰の作品は、津軽の生家への思い、家族関係の重さ苦しさ、自身の生の苦しさを彫琢したものが、作品の大半を占めている。
    しかしこの2篇は他と趣が大いに異なり、新鮮な感じを味わえた。

    『正義と微笑』は、大戦中に書かれたもの。16歳の青年が書き続けた日記、という型式・構成。
    表題は、聖書マタイ伝六章の一節、
    「なんじら断食するとき、偽善者のごとく、悲しき面容をすな。」より喚起された思い
    「微笑もて正義を為せ!」というモットー、決意を意味している。

    他にも、彼の日記には、かような言葉が続々。
    「明日からは高邁な精神と新鮮な希望を持って前進だ。」とか、
    「きょう1日で、僕は、めっきり大人になった。発展!という言葉が胸にひしひしと迫ってくる。」

    …などなど、威勢のいい言葉、夢と気概、自身へのストイックな思いが、溢れている。

    一高受験と失敗。私立大学への入学と、学友への幻滅(思い上がった軽蔑の思い)。そして、俳優をめざして次々に劇団を受験するなど猪突猛進の日々。そして、機会を勝ち取り、道を拓いてゆく。
    青年期の勢い、意志、エネルギーが満ち満ちている。前進することの力強さ、生気を感じられる小説である。
    太宰のなかでは、異色の小説。

    * * * * * * * 
    『パンドラの匣』もまた、青年が主人公。結核療養所で治療を続けている二十歳の青年が親友にあてた手紙、という構成。書簡体小説。「健康道場」なる奇異な名称の療養所の日常。同室の人間達への毀誉褒貶、看護師の女性達の好き嫌い、恋心も綴られる。
     時折、同室の者たちとの自由闊達な議論が挿入される。自由思想とはなんたるか、戦後日本再建の方途とは、等々。そこには、太宰自身の思想、批評精神が刻まれている、という。戦後に書かれた作品。
    # 

  • 好き

  • 他の作品群とは全く違う印象。というか、太宰っぽさがなくて、「誰の本だっけ」と確認してしまった。
    それだけ前向きだったってことかもしれない。

  • 前半は花瓶のなかで頭をもたげる花のごとく、暗い話かとおもった。敬語をうまく織り交ぜた言葉回しが美しい。詩的な文章。
    人間に絶望はありえない、絶望には必ず一端の希望がつきまとうから。
    太宰作品の中で初めて希望を見た。
    学園ドラマのような、ポップな作品。
    太宰作品がすきなのは、女に対する評価が的確に共感できるところ。
    ほんとうはたけさんがすきなくせに忘れたいが為に嫌いになるために嫌な言葉をはいた部分にも共感。

  • 「正義と微笑」が面白かった。セリフの後に心情を書くのが、面白い。参考にしたい。パンドラの匣が、なんだか壮大なものに見えてくる最後の解説であった。

  • 私が男だったなら、身悶えするほどに赤裸々な中二的、と思ったのかも。
    若干引いて、生温い目線で読んでしまいましたが。
    かといって、登場する女性陣の目線に共感するわけでもないんですけどね。
    こんな希望に満ちた本を書いていても、自殺を繰り返して最終的に成功しちゃったっていうのがなんともなー。

    太宰作品は今までメロスを教科書で読んだくらいだったんだけど、今頃ちょっと手を出してみようかと思ったのですよ。
    同じく教科書に出てた夏目漱石は概ね揃えて読破するぐらいにはまったので、こちらはほんと遅蒔きながらです。
    まぁぼちぼち読んでみましょう。

    ちなみに女の私が読んで身悶えしたのは「ひなのころ (中公文庫)/粕谷知世」。
    うひーってなったねあれは。まさにこっぱずかしい反抗期を赤裸々に!的な(笑。

  • 本来暗くなりがちの病棟話のような気もするのにそこにいる患者さんと看護師さんの青春が生き生きと主人公の友人への手紙と言う形で物語が進んでいく。読後感がスックリとする作品でした。

  • 2015/07/07

  • 太宰治わりと好き。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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