パンドラの匣 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 279
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006116

感想・レビュー・書評

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  • 日記形式の「正義と微笑」、書簡形式の「パンドラの匣」と、どちらも爽やかな青春小説であり傾向が近い2作品が収められている。

    「パンドラの匣」は戦中の作品を戦後に改作したもので、その部分が若干不自然であり物足りない気もする。
    が、登場人物に仮託して戦後の思想を明るく生き生きと語るところ(前述の不自然な箇所でもあるが)にこの作品の本質があるような気がしてならない。
    ここで泣きました。
    また、文章ならではのどんでん返しがあって面白い。
    これは映画では絶対にできない表現。

    「正義と微笑」は東宝の黒沢映画やゴジラ、ウルトラマンなどの脇役で知られる堤康久さんの実際の日記が元になっている。
    ここらへんも面白い。

    青春小説ということで、「ゲラゲラ」ではなくて「ニヤニヤ」笑い。
    太宰の文章にはいつも笑わされる。

  • これが太宰治かと思うような爽やかな中編2作。「パンドラの匣」は昔職場の先輩に勧められた本で、ストーリーのドンデン返しを知っていたけど、知らずに読んだほうがきっと面白かったと思う。結婚が間近の看護婦と主人公の少年との最後の短いことばのやりとりが味わいがある。
    もう一編の「正義と微笑」は更に爽やかな、むしろ可愛いと言ったほうが似合う少年が主人公。太宰の話だったらこの後はこうなるんじゃないか?という予想をはるかに裏切ってハッピーエンドに終わる。太宰が登場人物に仕掛ける酷い仕打ちを期待した人には物足りないかもしれないが、たまにはいいかな。

  • 太宰にしては明るい青春小説2本立てで、表題作の『パンドラ~』は手紙形式、『正義と微笑』は日記形式。思春期特有の自尊心の強さや自意識過剰というか、夜中に書いたラブレターを朝読み返すような気恥ずかしさがあって(笑)なかなか面白かったです。

  • もう学校行きたくないよ!とか、
    将来について悩みすぎて死んじゃいたい!とか、
    あの子のあの態度は一体なんなのー?とかとか。

    今の言葉とテンションに置き換えればこんな感じなんだろうなぁ。
    そう考えるとどの登場人物もものすごい愛くるしく思えてくるし、
    微笑ましい。

    でも、もっと堕ちて行くような話だと思ってたから、
    ちょっと拍子抜けした。

  • 正義と微笑‥‥役者を目指す少年の中学から大学に入ったあたりまでの日記。
    パンドラの匣‥‥終戦直後、結核を患い健康道場なるところで療養する少年の手紙。

    どちらもかわいいし、暗くないのがいい。

  • 正義と微笑もよかったが、なんといってもパンドラの匣が素晴らしかった。太宰治のいい意味でのかるさ、爽やかさ、透き通って綺麗に光るみたいだった。

  • 書簡形式で綴られる表題作と、日記によって主人公の日常を描いた「正義と微笑」の二篇。
    「パンドラの匣」は映画化もされた作品で、健康道場での日々の出来事や淡い恋心などが主人公と友人の間で行き来する手紙によって語られます。映画化に伴って、竹さん役を川上未映子さんが演じていたことに驚きました。芥川賞受賞作家が太宰作品を演じる、という不思議な巡り合わせ。

    「正義と微笑」は他人の日記を覗き見る面白さ。太宰のユーモアというものをこの作品で初めて理解できた気がします。途中、何度か吹き出してしまうような場面もあり、「生れて、すみません」のイメージとはだいぶかけ離れているような。


    太宰作品にしては珍しく、前向きな苦脳を描いた一冊。

  • 今まで読んだ太宰作品では一番好きかも

  • 日記形式の「正義と微笑」、手紙形式の「パンドラの匣」2編を収録。
    正義と微笑はところどころ笑ってしまった。
    パンドラの匣は実は恋の話。
    太宰治の小説にしては、肩の力が抜けた感じで、随分読みやすいし暗くもない。
    2編とも終わり方がハッピーエンドだ。

    “僕には、たぶんに、不幸を愛する傾向があるのだ。きっと、そうだ。なんでもない事のようだけれど、これは重大な発見である。この不幸にあこがれるという性癖は、将来、僕の人格の主要な一部分を形成するようになるのかもしれぬ。そう思うと、なんだか不安な気もする。ろくでもない事が起こりそうな気がする。つまらん事を考えだしたものだ。でも、これは事実だから仕方がない。真理の発見は必ずしも人に快楽を与えない。智慧の実は、にがいものだ。”

    “あけてはならぬ匣をあけたばかりに、病苦、悲哀、嫉妬、貪欲、猜疑、陰険、飢餓、憎悪など、あらゆる不吉の虫が這い出し、空を覆ってぶんぶん飛び廻り、それ以来、人間は永遠に不幸に悶えなければならなくなったが、しかし、その匣の隅に、けし粒ほどの小さい光る石が残っていて、その石に幽かに「希望」という字が書かれていたという話。”

  • 2012.5.14 再読。
    『正義と微笑』に今のわたしに沁みる言葉がいっぱいあった。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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