新ハムレット (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006123

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争直前、中期太宰、自身初の長編。太宰節のハムレットと他4編。

  • 弱い人間の気持ちの移ろいを多彩な言葉を武器に縦横無尽に操る技量に関しては太宰治は唯一無二の存在ではなかろうか。それは、ある意味、諸刃の剣でもあり、私にとっては表題作「新ハムレット」は筆が滑り過ぎたきらいがある作品の代表となりました。とはいえ、「乞食学生」の出来が素晴らしく、「女生徒」と並んで太宰の傑作短編の1つとなっています。

  • 表題作、こんなにあっという間に読むほどのめりこむと思いませんでした。元のハムレットを軽く読んで途中挫折しそうだったから。
    新ハムレットのハムレット君のまぁ痛いような切ないようなアルアルな若者らしさに目も当てられなかったり頷いたり恥ずかしくなったりしつつ、それぞれのキャラクター同士の会話に引き込まれて行きました。

    愛してるというのは恥ずかしいのか恥ずかしくないのか
    愛してくれというのは恥ずかしいのか恥ずかしくないのか

    どうなんじゃろね。

  • 一区切りずつ、丁寧に読むのが味わい深い短編集。太宰治の、緊張しきった鋭利な文章が目を覚まさせる。

    『古典風』散文調が現代ではツイートと呼ばれる、様に思われた。てると十郎については少々思い当たる節がある。

    『女の決闘』作中の作品とされるものの空気はまるで映画のよう。澄み切った文体で時は冬に違いないと感じた。ただ、舞台はロシアで水溜りは凍ってはいないが。ドキッとしたところを抜き出しておきたい。「真実は、家庭の敵」「念念と動く心の像のすべてを真実と見做してはいけません」「薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります」「『女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。』」

    『乞食学生』「私」がついつい少年と話していて大笑いしそうだったところで、いっぺんに、あの玉川上水の景色が浮かんだ。そこまでは正直、なかなか入り込めなくて…でもその部分で「私」に愛着がわいた。「私」の気持ち超分かる。テーブル席よりカウンターの方が好き。「青木女之助とでも改名すべき」とかマジ笑った。この短編はコメディなのかな。「『元祖ですね。』と言い直した」とかさぁ。「ぐっと一息で飲みほした。うまかった」ただ「自分のからだに傷をつけて、そこから噴き出た言葉だけで言いたい」この言葉は覚えておきたい

    『新ハムレット』この作品のことを「かすかな室内楽」と書いているが太宰の性質はまさに、バイオリンの弓のかすれさえ際立つような魅力があるように思う。また、自虐芸術。自虐がうまい。「若い者にとっては、陰の愛情よりも、あらわれた言葉のほうが重大なのです」これって若者だけじゃないよね…言葉にするの、大事。王の懐の深さが身に沁みる。優しい。で、ハムレットの若さが…初読は20代に違いないのだから当時は王の行っていることが分からなかった。今は王の親としての責務の方が共感できる。「生みの母ほど、子の性質を、いいえ、子の弱点を、知っているものはありません」

  • 新ハムレットは、原作との違いが多いが、
    「近代版」ハムレットとしてみれば、
    それなりに面白い改変だと思います。

    自分の知性と才能に絶対的の自信を持った、
    思いあがった天才作家という人もいるが、
    現実には、作家としての太宰は・・・

  • 生まれ変わったら太宰になりてーーー。ここが明治時代の世界なら好きな人と心中しちゃいたかったかも。
    太宰がシェイクスピアをリスペクトしていたというエピソードも好き、2人とも好きだからさ。ハムレットの完璧なパロディだけど、太宰なりの反戦思想が漂う作品で、オフィーリアはただの幸せな女。
    この作品の舞台になったデンマーク、行ってみたいなぁ!
    パロディを「パクリ」盗作」と言われないためには相当な実力が必要だなぁ
    ハムレットのパロディなんて、太宰にしか書けなかったと思う。
    かっこいいんですけどーー

  • 登場人物の、自分自身の行動を逐一言葉に表して発している部分が面白かったです。
    特に王がポローニヤスを刺すシーンは印象的でした。
    個人的にオフィリヤの王妃に対する愛慕の姿勢が好きです。
    また、ハムレットの人に対して懐疑的な態度や自分の信念を貫いている姿は、太宰治自身の投影のような部分があるのではないかと思いました。
    流動的かつそれぞれのシーンに重みがあり、読んでいて楽しかったです。

  • 新ハムレットのみ 読みました。
    最初からハムレットのことを「始末に困る青年」と言っちゃってるところからすでに笑えました。シェイクスピア 版と比べてかなりてんやわんやの終わり方ですが、こっちの方が人物設定として納得いくところもあったり、とても面白かったです。

  • 久しぶりの太宰。
    乞食学生が明るくて好きかな。
    アルトハイデルベルク見つからなかったんですが、ファウストではなく?
    メフィストは可愛いって認識ですよね、何故か。
    追記
    アルトハイデルベルヒは太宰の小説でした。勘違い!


    ハムレットは、え、こんな長生き?と思いました。
    人生70年で、23歳で子供扱いなんて。
    この時代の人って寿命も短く、若いうちから老成してるんじゃなくて?

    世界で1番好きな本は太宰治の女生徒。江國香織さんも女生徒を選んでいたので嬉しくなりました。

  • ハムレットも太宰治もまったく読んだことがなかったので、舞台観劇前に世界観を知ろうと読んだ。
    予習的要素が大きかったので、物語そのものを楽しもうと言うよりは、役者さんがどんなふうに演技するんだろうな……を想像しながら読んだ。
    普段馴染みのない文体だったから読みにくいところもあったけれど、総合的には面白い部類かな。
    予習のおかげで舞台も思いっきり楽しめた。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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