新ハムレット (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 829
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006123

感想・レビュー・書評

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  • 一区切りずつ、丁寧に読むのが味わい深い短編集。太宰治の、緊張しきった鋭利な文章が目を覚まさせる。

    『古典風』散文調が現代ではツイートと呼ばれる、様に思われた。てると十郎については少々思い当たる節がある。

    『女の決闘』作中の作品とされるものの空気はまるで映画のよう。澄み切った文体で時は冬に違いないと感じた。ただ、舞台はロシアで水溜りは凍ってはいないが。ドキッとしたところを抜き出しておきたい。「真実は、家庭の敵」「念念と動く心の像のすべてを真実と見做してはいけません」「薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります」「『女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。』」

    『乞食学生』「私」がついつい少年と話していて大笑いしそうだったところで、いっぺんに、あの玉川上水の景色が浮かんだ。そこまでは正直、なかなか入り込めなくて…でもその部分で「私」に愛着がわいた。「私」の気持ち超分かる。テーブル席よりカウンターの方が好き。「青木女之助とでも改名すべき」とかマジ笑った。この短編はコメディなのかな。「『元祖ですね。』と言い直した」とかさぁ。「ぐっと一息で飲みほした。うまかった」ただ「自分のからだに傷をつけて、そこから噴き出た言葉だけで言いたい」この言葉は覚えておきたい

    『新ハムレット』この作品のことを「かすかな室内楽」と書いているが太宰の性質はまさに、バイオリンの弓のかすれさえ際立つような魅力があるように思う。また、自虐芸術。自虐がうまい。「若い者にとっては、陰の愛情よりも、あらわれた言葉のほうが重大なのです」これって若者だけじゃないよね…言葉にするの、大事。王の懐の深さが身に沁みる。優しい。で、ハムレットの若さが…初読は20代に違いないのだから当時は王の行っていることが分からなかった。今は王の親としての責務の方が共感できる。「生みの母ほど、子の性質を、いいえ、子の弱点を、知っているものはありません」

  • 新ハムレットは、原作との違いが多いが、
    「近代版」ハムレットとしてみれば、
    それなりに面白い改変だと思います。

    自分の知性と才能に絶対的の自信を持った、
    思いあがった天才作家という人もいるが、
    現実には、作家としての太宰は・・・

  • 表題作、こんなにあっという間に読むほどのめりこむと思いませんでした。元のハムレットを軽く読んで途中挫折しそうだったから。
    新ハムレットのハムレット君のまぁ痛いような切ないようなアルアルな若者らしさに目も当てられなかったり頷いたり恥ずかしくなったりしつつ、それぞれのキャラクター同士の会話に引き込まれて行きました。

    愛してるというのは恥ずかしいのか恥ずかしくないのか
    愛してくれというのは恥ずかしいのか恥ずかしくないのか

    どうなんじゃろね。

  • この短編集最後の作品、『待つ』が、この世にある言葉で表せない程、いや、表してはならない程に素晴らしいと思った。これまでわたしは太宰作品のなかでは『葉』や『女学生』が1番だと言い続けてきたが、『待つ』に出逢ってしまった今、これこそが超一級かもしれないと思う。きっとこの先、何度も読み返してしまうだろう。目が眩む衝撃。

  • 大学生の頃太宰好きで新潮文庫でどんどん読んでったんだけど、その最初に読んだのがコレだった。太宰はやっぱり単純に文章が大好きだ〜!
    なんて優しいのだろうか。
    久しぶりに読み返したら、ハムレットが今職場で手を焼いている若い男の子に重なって仕方なかった( ・∀・;)

  • 2018/05/24 読了

  • 太宰中期の作品の中でも最も骨太で知的な作品が多いような印象を持った。収められている作品は海外文学に取材した作品が目立ち、かなり知的な太宰を味わうことが出来る。「新ハムレット」はハムレットをよく知らない私が読んでも面白かった。登場人物があまりに太宰的でちょっと笑えた。ハム(レット)にレヤチーズにポローニヤス…なんだか美味しそうである。本作のハムレットはかなり中二病をこじらせているが原典でもそうなのだろうか。「乞食学生」はまんまと騙されてしまう作家がカルピスを飲むラストがかわいい。あざとい。

  • 私が今まで読んできた太宰の中で一番か二番目に好きです!!
    すごく面白い(((^-^)))
    太宰の安定期は面白いから他のも読んでみる~!

  • 古典「ハムレット」を素材に、翻案、新たな肉付けを試みた「新ハムレット」をはじめ、中篇を集めた作品集。

    「新ハムレット」は、善悪の輪郭がはっきりしたオリジナルと趣きを異にし、登場人物がうねうねと逡巡したり、意志が揺れたりする印象があって読みづらく、私にはしっくりこなかった。

    「女の決闘」も、同様にドイツのオイレンベルクの作品『女の決闘』を基に、新たな作品に仕立て直した中篇。
     この作品では、原作・原型の骨格を基に、云わば行間の部分で、女の思いや情の部分を膨らませたようだ。

    「乞食学生」。玉川上水の土手で、風変わりな青年と出会う。妙に自信家で傲岸な男で、彼との奇妙な1日が始まる。井の頭公園(らしきところ)の池のほとりの茶店を経て、吉祥寺、渋谷へと至る道行。そして、意外な落ちで終幕する。

    古典を基に新たな作品を創造せんとしたこれらの作品、私は好みではない。

  • ハムレットはシェイクスピア派。ポローニアスがしゃべりすぎ。

    乞食学生を初めて読んだとき、「熊本くんにも、佐伯くんにも欠点があります。僕にもあります。助け合って行きたいと思います。」という文章にどきっとした。一番好きなとこ。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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