新ハムレット (新潮文庫)

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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006123

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の、自分自身の行動を逐一言葉に表して発している部分が面白かったです。
    特に王がポローニヤスを刺すシーンは印象的でした。
    個人的にオフィリヤの王妃に対する愛慕の姿勢が好きです。
    また、ハムレットの人に対して懐疑的な態度や自分の信念を貫いている姿は、太宰治自身の投影のような部分があるのではないかと思いました。
    流動的かつそれぞれのシーンに重みがあり、読んでいて楽しかったです。

  • ハムレットも太宰治もまったく読んだことがなかったので、舞台観劇前に世界観を知ろうと読んだ。
    予習的要素が大きかったので、物語そのものを楽しもうと言うよりは、役者さんがどんなふうに演技するんだろうな……を想像しながら読んだ。
    普段馴染みのない文体だったから読みにくいところもあったけれど、総合的には面白い部類かな。
    予習のおかげで舞台も思いっきり楽しめた。

  • ポローニヤスが魅力的なキャラクターだった。何か条も続く留学の心得は面白い。愛情深いお父さんで、ポローニヤス家は健全で幸せそうに見える。
    一方ハムレット家に愛情がないわけでもなく、ただハムレットに伝わっておらず、それで本人は苦しんでいる。
    愛が言葉なのかどうか、という議論は興味深い。
    ハムレットは愛を言葉で伝えてほしいと切望している(自分自身は伝えようとしていないが)。少なくとも、ハムレットのように愛が言葉であると思っている人に対しては、言葉を尽くさなければ愛は伝わらないのだろう。
    しかし仮に、ハムレットに対し言葉を尽くしてみたところで、ハムレットは本当にそれを心からの愛の言葉だと信じられるのだろうか?
    オフィリヤがガーツルードに言ったとおり、人間が正直な心を言葉で言い表そうとするほど、嘘っぽく変になってしまうものであり、うまく伝わらないものだと思う。
    人間は必ずしも思ったとおり言葉にする生き物ではない、というだけでなく、さらに、思ったとおり上手く言葉にする行為それ自体が相当難しい、という二重の問題がある。
    この作品の登場人物もみな多弁だが、そのセリフは、真実を話しているのか、あるいは心からの言葉なのか、いまいち信じきれないものが多い。
    人の心を理解しようとすること自体が苦しみを生むようにも思える。人と人とは本当に難しい…。

    クローヂヤスも哀愁がある。
    結局本当に兄を殺しているのかいないのかわからず、読み返してしまった。
    最後の告白が本当であるとすれば、殺すことを決意し、着手しかけたところをポローニヤスに目撃されたが、すんでのところで踏みとどまった、といったところだろうか?
    だがクローヂヤスが心から国や新しい家族のためを思っている男であることもまた事実であり、かわいそうにも感じた。

  • シェイクスピアのハムレットを読んだことがないので比較は出来ないが、それでも太宰の人生観や恋愛観を登場人物たちが代弁していることは伝わって来た。当時としても斬新な手法だったらしく太宰の気合いを感じる勢いのある作品だった。

  • 古典風・女の決闘・乞食学生・新ハムレット・待つ、の5編からなる、太宰治中期の作品を集めた本。
    待つ、を目的に買ったけど、どれも面白かった。
    特に乞食学生と新ハムレットがよかった!

    「乞食学生」は、裸の学生が川を流れていくっていうインパクト抜群の出だしですでに心掴まれた。
    全盛期が学生時代で後は人生下り坂って人は、 過去の栄光にしがみつきたくて、延々と昔の話ばかりしがちだよね。
    というのが読後の感想。

    「新ハムレット」は、戯曲風の小説で、読みやすかった。
    改めて太宰治は、女性の心情を表現するのが上手いなぁと思った。
    シェークスピアが書いた方のハムレットも見たいし、 舞台もあれば行きたい!

    御目当ての 「待つ」 は、3ページ程の短い小説。
    いろんな解釈ができる文章だと思った。
    彼女は駅のホームで一体何を待ち続けてるのだろうか。

  • 古典風
    女の決闘
    乞食学生
    新ハムレット
    待つ

  • 2018/05/24 読了

  • 元のハムレットの前にこちらを読んでみました。人と人との考え方のすれ違い、思い違いがクスリと来る人ならば面白く読めるかもしれませんが、台詞がもの凄く長くくどいので私はあまり面白くありませんでしたし、クスリと出来ませんでした。
    善悪がはっきり無く、人それぞれ何か理由があると言う部分に考えさせられるものがありました。

  • 「僕の帽子は、決して小さいほうでは、ありません。」熊本君はもっぱら自分の品物にばかり、こだわっている。「僕の頭のサイズは、普通です。ソクラテスと同じなんです。」
    2014/08/29-09/14

  • 「乞食学生」のラストで大笑いした。夢の中とは言え、酔っ払って何してんの?しかも二人逃げてるし。ユーモアたっぷりの作品。表題作は登場人物の心の底が、まさに太宰という感じで深められている。一人一人、エゴを持っていて、誰が悪人なのか、いや、皆悪いところを持っている。

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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