きりぎりす (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2880
感想 : 217
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006130

感想・レビュー・書評

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  • クスッと笑えるものからちょっと考えさせられるものまで様々な物語が入った短編集。
    個人的には畜犬談、きりぎりす、風の便り、水仙、日の出前あたりが面白かった。
    太宰の作品は人間失格から入ったのでああいう系統の作家なのかと思っていろいろ読んでみたが読むたびにその引き出しの多さに驚かされる。
    それぞれが今の作家にはない面白さがあると思う。

  • いくら文章を書くのが好きだとしても、誰もが物書きになれるわけではない。才能がないとそれで食べていくことはできない。文章で食べている、という事実だけで才能は認められているのに、芸術は数値化することができないから太宰を苦しませる。「わたしには文章を書く資格などないのです」と至るところに書いてある。太宰は、何を拠り所に自分の価値をみつけたらいいのかわからず苦しんでいるように感じた。でもそれは、わたしが常に感じていることだと思う。
    自分ははたして価値のある人間なのか?自分の価値とはなんなのか。他人に評価されなければ自分には価値がない?
    わたしは、自分はこのように偉そうに感想を述べるに値する人間ではない、と本気で思っている。

    • kwosaさん
      tommealさん

      『風が強く吹いている』のレビューに引かれ、本棚を拝見しました。
      他のレビューも素晴らしく、胸に迫りました。
      tomme...
      tommealさん

      『風が強く吹いている』のレビューに引かれ、本棚を拝見しました。
      他のレビューも素晴らしく、胸に迫りました。
      tommealさんをフォローさせてください。
      2013/01/15
  • 太宰治にしてはあっさり感があるけれど、どれも読み易く面白かった。
    特に『きりぎりす』『畜犬談』『水仙』『佐渡』が印象に残った。
    俺って本当にダメな男なんですよ、と言いつつも、どこか自信ありげなところにコノヤロウ、と腹が立つが。

  • 北村薫「太宰治の辞書」に、この短編集に収録中の「水仙」についての奥野健男の解説が「明白な勘違い」であると書いてあったのが気になって読んでみた。
    「水仙」は収録作品中でも印象的な作品で、確かに奥野のいうように「善意や社会良識がある人間を根本的にだめにしてしまう」わけではないが(善意や社会良識は「水仙」にも「忠直卿行状記」にも出てこないような…)、北村が言うように必ずしも忠直卿の「裏返し」ではなく(そもそも「善意」と「悪意」の対立項が成立しないので)、おべっか(忠直卿及び水仙の取り巻きによる)にせよ恨みから来る無視(水仙の主人公による)にせよ、相手をいい加減にあしらう在り様は、無意識下に「天才」など存在しないことにしたい俗人の浅ましさがあるようで怖ろしかった。
    太宰はメロスやお伽草子を読んだくらいで、『斜陽』も『人間失格』も読んでいなかったのだが、思ったより面白かった。しかし、女性1人称ものは苦手。特に「きりぎりす」は、語り口だけでなくその内容がウザかった。売れっ子画家になって俗物化した夫をひたすら非難する妻の一人語りで、実際俗物化しているのだが、それ以上に、勝手に枠決めて、それに合わないと許さない妻の身勝手さのほうが不快だった。

  • きりぎりすは何か。

  • 太宰短編集。
    太宰ファンではないし、好きではない類の作家だが頑張って読んでみた。そのなかで特によかった作品をいくつか。
    名声を得たことで画家夫婦の仲が壊れていく過程を、妻の内面から描いた表題作「きりぎりす」。伴侶の特別性や神聖さを不遇な境遇と、ゆえの孤高に求めた妻は、夫が社会的に成功し富と名を得るに従って俗物化する姿に幻滅して離婚を決意する。作者の自虐にも読めるが、理想に忠実であろうとする女の強烈なエゴを感じさせる短編で読ませる。
    「畜犬談」。なんだこいつ?と思わず笑ってしまう大の犬嫌い男の話。犬の卑屈さ従順さを毛嫌いしつつ最後は自己と犬を重ね「芸術家は、もともと弱い者の味方だった
    」と書く厚かましさ。笑えます。
    「水仙」。「忠直卿行状記」をテーマに人を狂気に追いやるボタンの掛け違いと不安と恐怖を描いた見事な一遍。こういった優れた短編を書き続けてくれたら、太宰が好きと云えただろうに。

  • 2016/10/02 読了

  • ユーモアたっぷりの、短編集。細やかな心情のうつろいや情景などに、思わずため息をついてしまうけれど、やはりどこか憎めず、じわりじわりと心に染みいる。この季節にピタリとはまった気がする。

  • 中期のやや生活が安定していた頃の作品が中心。相変わらずの私小説もあるが、女性が主人公の「燈籠」「千代女」が短くも印象に残る。そして漱石風の「畜犬談」がいい。話のテンポも良く書かれ、ポチのその後が気になる傑作。

  • 再読した。
    太宰作品=暗いというイメージを払拭する短編集だと思う。
    特に、畜犬談と皮膚と心がおすすめだ。

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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