もの思う葦 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006147

感想・レビュー・書評

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  • エッセイ集。器用さと不器用さ、両面が見えて面白い。

  • 著者の随想集ということで興味を持った一冊。エッセイは小説とは違って作者が出るから面白い。好みが分かれるところだと思うけど著者の退廃的で斜に構えたような態度は意外と共感できる。川端康成、志賀直哉へのメッセージは時折感じられる自虐的な態度とは打って変わって、強烈で言葉の強さや文章を書くことに対するこだわり、自信みたいなものを感じた。また一層太宰のフアンになった。

  • 前期に書かれた表題作「もの思う葦」から晩年の「如是我聞」まで、太宰の言葉が集められた1冊。
    太宰はどこまでも一生懸命で、全力で文を書いている。(そのことは、何かの短編で語っていた。)不器用な懸命さというかなんというか、自己犠牲的なもの。命懸け。でも命懸けで書きたかったのは、小説であって、創作だった。だから随筆とか自分のことについては、おざなりでやっつけ感満載。お金のための、お酒のための仕事といった感じ。
    「如是我聞」は、今まで溜め込んで来たものを一気に書き散らした、自己破壊的な印象を持った。世間に対する恨みのようなものもあったかもしれない。そしてうわあああっと喚いて、あっけなく死んでしまったのだから、織田作之助のような最後の足掻きに近いものがある。
    太宰、よくやった!

  • 太宰は、滑稽である。少し認知症を患っている。一文が長すぎて(句点に辿り着くのに、数多の読点を要する)理解に苦しむ事がある

    • eng.123さん
      もし現代に生きてたらバズれる投稿を量産してたんでしょうね
      もし現代に生きてたらバズれる投稿を量産してたんでしょうね
      2022/07/23
  • はてさてどこまでが本気でどこまでが冗談なのか分かりづらいですけど、「如是我聞」では本気でご立腹されていたところがね、もう完全にムキになってますよね。あれただのイチャモンですよね。

    この人の自分大好きなくせに大嫌いで自虐的でサービス精神旺盛なところがやっぱり好き!!

    09.10.30

  • 『私の小説を、読んだところで、あなたの生活が、ちっとも楽になりません。ちっとも偉くなりません。だから、私は、あまり、おすすめできません。

    こんど、ひとつ、ただ、わけもなく面白い長編小説を書いてあげましょうね。いまの小説、みな、面白くないでしょう。
    みんな、面白くないからねえ。面白がらせようと努めて、いっこう面白くもなんともない小説は、あれは、あなた、なんだか死にたくなりますね。』


    短編小説かと思って買ったらエッセイだった。
    面白い方ですねえ。現代を生きてたらひねくれたブログとかやたら書いてそう。
    太宰治は女生徒が特に好きで、「なんで男なのに女の子の細かな心情がわかるのかしら」と思っていたら「女性を描くのに秘法を思いついた」と書いてあった。

  • 2019.6.2
    p27の「兵法」がとても参考になった。買い物でも迷ったら買うなと言うけど、文章でも同じなんだなと妙に腑に落ちた。

    全体的に、とても人間味を感じる本だった。
    意外だった。

  • 奇しくも桜桃忌に読了。「笑い。これは強い。文化の果の、花火である」この一文を読み、又吉さんの「火花」というタイトルはこの言葉へ捧げられたオマージュだろうか?と思った。本書は太宰の小説以外の随想集で、少し毛色が違ったエッセイが収められている。「川端康成へ」と志賀直哉への痛烈な批判「如是我聞」が強烈だ。如是我聞では「いくらでも書くつもり」なんてしめているのに…続きが読めず無念。「悶々日記」が意外と好き。小説よりも太宰の人間くささに触れられる好著。

  •  随筆など小品を集成。短いものは1頁程のもの。多くは2、3頁程で、気軽に読み進むことができて楽しい。

    とりわけ、以下の短編・随筆が面白い。
    『酒ぎらい』。お酒が好きな太宰だが、外の居酒屋で飲むのを好み、自宅に一升瓶があるだけで妙に落ち着かない性分。ある日、旧来の友人が家に来訪するのを機に、お酒を一気に飲み干し、在庫処分せんとするのだが…。
    随筆だが、短編の趣もあり、楽しい。

    『「井伏鱒二選集」後記』の“早稲田界隈”の話。太宰は、最敬愛の師井伏氏と共にぷらりと早稲田の町に立ち寄ったところ、早大の文科生らがぞろぞろどこまでもついて来る。「皆、呑むつもりなのだ」。

    そして『如是我聞』。志賀直哉に対する、実名を挙げての批判攻撃。ここまで言うかと失笑するほどの口撃。小気味好いほどで、且つ、文学に対する太宰の姿勢、美学も滲んでいて面白い。

  • 日本が負けて戦争が終わったってえのに
    文壇じゃ相変わらず戦争前の伝統やらを重んじて
    戦争協力してきた連中をありがたがっていやがるのは
    いったいどういう了見だ
    これあるを期してさっさと死んだ芥川を
    ちったあ見習ってみてはどうなんだい
    といった具合の剣幕で怒り狂う太宰の「如是我聞」は
    戦後日本に対する、たったひとりの宣戦布告である
    これによって太宰は、ほとんどの文芸誌にあっさり干されてしまう
    そもそも芥川にしたって
    志賀直哉や久米正雄のようなずぶとい神経にあこがれて
    「エゴイストになりたいのだ」などと書いてたはずなんだけどね

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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