新樹の言葉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.56
  • (38)
  • (50)
  • (115)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 627
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006161

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 小説と書き手が親密のようで乖離していることはよくよく承知なのだけれど、やっぱり読むほどに、どれもこれも太宰のことを書いているような気がして、好きでたまらなくなるのは、本当にいけないのである…

  • 2017/01/29 読了

  • 太宰が麻薬中毒から立ち直り数多の佳作を残した初期から中期への移行期の短編集。意外なほど読み易かった。「葉桜と魔笛」が最高。物悲しくも美しい希望と余韻のある読後感だ。「新樹の言葉」は乳母の子供たちとの再会を想像して書かれたものだがこんな風に太宰は心温まる交流をしたかったのだろうな…と考えると切ない。「春の盗賊」はユーモアを織り交ぜつつ小市民的な生活と再び破滅に身を委ねたいという葛藤が伝わり強烈だ。「もういちど、あの野望と献身の、ロマンスの地獄に飛び込んで、くたばりたい!できないことか。いけないことか。」

  •  甲府市に移り住み、作家生活と人生の再出発を期していた頃の短編を中心に編纂された文庫である。
     精神病院に入るなどボロボロに荒廃し、作品も荒れていた時期の後に書かれた作品群である。おそらく「二十世紀旗手」の後の創作にあたる。
     尖鋭でぶっ飛んだ「二十世紀旗手」の作品の後に読むと、この「新樹の言葉」に集められた掌編は、穏やかで、やわらかい感じを受ける。

    斯様な一節があった。
    「私は、これからも、様々に迷うだろう。くるしむだろう。波は荒いのである。」 
    ~『懶惰の歌留多』~
     ふっと、この言葉に胸を突かれた。こういうところに太宰文学の魅力を感じる。

     さて、本文庫では、とりわけ、以下の掌編が気に入った。
    ・「新樹の言葉」。甲府で、幼き頃より慕っていた乳母の子と思いがけず再会するお話。そのよろこびとうれしさに満ちている。ほんとうにうれしそうである。
    ・「春の盗賊」。後半、自宅に侵入した夜盗と対面、対話が始まる展開から、俄然面白くなる。ユーモラス。天与の噺家の才能を感じる。
    ・「老ハイデルベルヒ」。帝大生の頃、伊豆の三島に旅したときの思い出。そして、再訪した際の侘しさを描く。調子にのって友人達を強引に三島まで連れ出すのだが、道中どんどん心細く、焦り始め、それでも強がりを言い続ける小心者ぶりが面白い。

  • 太宰が薬物中毒に苦しんでいた時期のセレクションのせいか、話がどうにもまとまらない作風が多い。その中でもやはり味わい深いオチの「葉桜と魔笛」は見事な傑作。時が経ち変わってしまった思い出の地の出来事を描いた「老ハイデルベルヒ」もいい。

  • 未完の『火の鳥』は、是非とも完結させてほしかった・・・これから面白くなりそうなところで終わってしまうのが残念です。

    ロマンス好きな兄妹たちがリレー形式で物語を紡いでいく『愛と美について』
    兄妹ひとりひとりの人柄と、物語がマッチしていて温かみを感じます。

    一番心に残っているのは『葉桜と魔笛』
    太宰お得意の女性の一人称小説なのですが
    短い物語に関わらず、とんでもない完成度です。
    太宰本人が主人公かな?と思われる他の作品とはえらい違いです。
    心が洗われるような、素敵な話です。

  • 『葉桜と魔笛』
    あの頃わたしは、せっかく生まれて若くてきれいなときは一瞬なのに、誰にも愛されることなく幸せを知ることなくこのまま年老いて死んでいくのだと思ってた。お利口に生きてきたのにそのために自分のしたいこともわからず、誰の記憶の片隅にも残らず、本当に生きたと思えないまま死ぬのだと思った。わたしの手が指が髪が肌がかわいそうだと思った。

  • 表題作ほか14作品を収めた新潮文庫です。
    どれも太宰さんが30歳から31歳頃のお話みたいだよ。

    あえて印象深かった作品をあげるとしたら『美少女』かな…。
    皮膚病に効くと言う温泉に行ったら、混浴の湯船のなかにすっごい美少女がいて、これまたナイスバディで「いいものを見た♪」ってゆ~お話。
    味がありました(笑)

  • 太宰中期の作品集
    世間の目に反抗しつつも、罪悪感にさいなまれる様子が伺える。生き辛いだろうなあ、という感じ

    収録作品:『I can speak』『懶惰の歌留多』『葉桜と魔笛』『秋風記』『新樹の言葉』『花燭』『愛と美について』『火の鳥』『八十八夜』『美少女』『春の盗賊』『俗天使』『兄たち』『老ハイデルベルヒ』『誰も知らぬ』

  • 何度も繰り返し読んだ表題作。人生を再出発する決意が込められた、「黄金風景」と並ぶ温かい作品。

全58件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

新樹の言葉 (新潮文庫)のその他の作品

新樹の言葉 (青空文庫POD(ポケット版)) オンデマンド (ペーパーバック) 新樹の言葉 (青空文庫POD(ポケット版)) 太宰治
新樹の言葉 (青空文庫POD(シニア版)) オンデマンド (ペーパーバック) 新樹の言葉 (青空文庫POD(シニア版)) 太宰治
新樹の言葉 (青空文庫POD(大活字版)) オンデマンド (ペーパーバック) 新樹の言葉 (青空文庫POD(大活字版)) 太宰治

太宰治の作品

新樹の言葉 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする