劇場 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.49
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本棚登録 : 2122
感想 : 185
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006512

作品紹介・あらすじ

高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。

感想・レビュー・書評

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  • 初又吉直樹さん。
    色眼鏡はよくないが、お笑い芸人だからか、どうしても食指が動かない作家さんだった。
    この本は、うちの奥さんが映画化につられて購入したものの、文体があわなくて挫折して転がっていたのを居間で拾ったので読んでみた。

    劇団を主宰する永田と青森から上京した大学生沙希の恋愛を描いた小説。

    主人公の永田ははっきり言ってクズ。これだけクズな主人公も珍しい。クズっぷりを正当化して、あるいは、虚勢を張って、どんどんややこしくなった感じ。しかもヒモだ。ずっと感情移入できずに読み進める。

    永田の劇団は全くパッとしないが、何故か沙希は永田の才能を信じている。大学卒業後はしっかりと
    働いて永田を養う。永田はめんどくさい人間だし、腹立たしいくらい自分本位なのに、沙希はよくこんな奴に寄り添おうと頑張るなぁ。そんなに耐えてばかりで沙希は大丈夫かな?と心配していたら、やっぱりどんどんどんどんおかしくなっていく。

    ぼろぼろになりながらも、なぜ沙希は永田と一緒にいたのか?それは沙希が東京という夢を諦めたくなかったからだ。沙希は女優になる夢を抱いて上京したが挫折。そんな折、永田に出会った。女優は諦めたが、永田を愛し応援すれば夢をあきらめずにすむ。東京に居続ける理由になる。

    だから、沙希が東京を去ることを決めたということは、永田を見限ったということ。永田と復縁することは永遠にありえない。永田は気づいていたのか、気づいていないのかわからないが、二人の将来を一人で話し続ける…このシーンがたまらなく哀しい。

    泣いた。
    最後の最後ではじめて永田に感情移入する。

    クズなんだけど、よく考えると同じようなクズさは自分も持っている。もちろん程度の差はあるけれど。


    この小説は、同棲する男女を描いた小説なのに性描写が一切ない。少し不自然とも思ったが、又吉さんの意地でも性愛は書かない、という強い意志を感じた。

    冒頭の30ページくらい、永田と沙希の出会いの場面は非常に文学的でとっつきづらい。
    それを乗り越えると格段に読みやすくなるので諦めてはだめです。

    読み終えての又吉さんの小説の感想は、けっこう好き。
    芥川賞受賞「火花」作も読んでみたい、と思った。

  • 又吉さんの作品は話題すぎて正直読むのを躊躇っていたので今回初めて読んだ。初めは核心の周りをうろうろしてるような文章で、文体が独特かなと思っていたけれど、読み進めていくと読みやすく、とにかく面白かった。又吉さんすごい。ここ最近読んだ中で一番面白い。

    演劇が題材だが、内容は純愛小説。
    誰もが自分の恋愛に置き換えて読んでしまうのではないかと思うようなリアリティ。言葉にできなかった不器用な気持ちたちをちゃんと掬い上げて、描写しているのがすごい。登場人物たちの剥き出しの気持ちが活字でそのまま伝わってくる、だからこそ胸を抉られるし、救われる。ものすごい人間味が描かれてるなと思った。
    永田はクズだなーと思うし、どうしようもなく不器用な二人だけど、だからこそ愛おしい。あんな恋愛、もう二度とできないなあって、、、!文中に沢山出てくる二人のアホな会話がほんとに切なくて、面白くて、愛しくて、、

    永田が哲学的で時々ロマンティックなのは、又吉さんの人間性なのかな、すごく好きな言葉が沢山見つかった。色んな気持ちにさせてくれる本。


  • 又吉直樹『劇場』新潮文庫。

    芥川賞を受賞した『火花』は面白く、深みがあったが、この『劇場』は色々詰め込んだ割には平坦で印象の薄い純文学風青春小説という感じだった。

    冒頭の純文学風の文章が最後まで続くのかと思うと途中から又吉直樹の得意テーマが度々登場し、漫才のネタになりそうな軽いギャグも描かれ、どうしても軽薄な印象だけが残る。しかし、ストーリーはどこまでも平坦なまま結末を迎えてしまう。

    大阪から上京し劇団を旗揚げした主人公の永田と大学生の沙希の友情のような恋愛のような青春が描かれる。

    本体価格490円
    ★★★

    • トミーさん
      やはり二作目、三作目に作家の力量が出ますね。
      やはり二作目、三作目に作家の力量が出ますね。
      2020/03/10
    • トミーさん
      ことぶきじろうさんの
      レビューの数、読書量に、たまげます。
      ことぶきじろうさんの
      レビューの数、読書量に、たまげます。
      2020/03/10
  • Audibleにて。

    下北沢のくすぶりカス男の視点による、優しい彼女との出会いから別れまでの長い時間の物語。

    僕という一人称視点で語られる主人公は、大阪出身の脚本家。物語前半ではたいした稼ぎもなく、彼女のアパートにヒモとして転がりこむ。クズでしかない彼のことを、彼女は「才能がある」と心酔してくれる。時間の経過とともに彼らの関係も変わっていくが、最後まで「僕」はジコチュウの行動が続く。

    しかし、オーディブルの関西弁ナレーションのリアリティあってか、すっかり「僕」に感情移入した。だが、彼女の視点の言葉は、あくまで「僕」が聞いた言葉であって、「俺の才能についてきてくれるサイコーの彼女を失った僕」の自己憐憫物語だった。

  • あとがきで、作者である又吉が、「恋愛小説と呼べるものになっているかすらわからない」と心配していたが、ちゃんとした恋愛小説だと思う。

    確かに本書には「好き」とか「愛してる」と言った言葉も無ければ、キスシーンや性的描写もない。
    もっと言えば告白なんてしていないから、いつから付き合っているのかも分からないし、別れ話もしていないから、別れたかどうかも分からない。
    でも、それは日本人特有の雰囲気やニュアンスと言った形で、この二人は好きあってるんだなとわかる。

    ただ、この恋は、沙希を破滅に追い込んだものに間違いはない。
    永田のエゴイズム、演劇に没頭するあまりに沙希の些細なサインを見逃している。
    というより、わかっているのに敢えて無視をしていた、がが正しい。

    沙希の純粋さや、永田を愛してるという不確実な確実の自信から、沙希を蔑ろにした。
    その罪は重い。

    また永田の自己に対するプライドの高さ、その癖に大したものを生み出せない所、それを演劇という表現の世界に関わっていることを縦に芸術肌だと安易に逃げている所、それが無性に腹が立つと同時に、自分もだと分かっていた。

    そしてその自己は青山とのメールのやりとりで爆発する。
    このシーンを読んでいる時、自分が普段考えていること(永田程難しくは考えていないが)が重なっていた部分もあったこともあり、青山からの反論メールで私の心は滅多刺しになった。
    きっと永田も滅多刺しになっているはずなのに、相手の反論が怖くて次々にメールを送っては一方的に傷つけずにはいられないところが、また自分と重なった。
    そうして、相手から何も返信が来なくなると、自分の送った内容の怖さに後悔するのだ。

    この心情、読者への滅多刺し(私だけじゃないはず!)は、朝井リョウの『何者』以来のショックだった。

    自分を擁護するつもりは無いが、永田は確かに自分勝手なところばかりだが、結局のところ、不器用なんだと思う。

    それが後半に良く描かれている。
    そして、気づいた時には遅い。
    でもお互いに確信的なことは何も言わない、と言うより言えない。
    ただ、沙希の微笑みだけが嬉しくって虚しかった。

    人間らしい滑稽さに泣ける、素晴らしい作品だと思います!

  • 読み始めは、『人間失格』かよ、と。
    世間とズレてますという感覚を、演劇における自分の武器だと思って、傷つけて、こっそり自分も傷ついて、それなら一人で生きればいいのに、なんやねん、コイツ……とイライラしてました。

    ただ純粋に永田を慕ってくれる沙希ちゃんに、生活費を払うこともなく、のらりくらりと売れない演劇を考え、夜な夜なゲームする日々。

    でも、途中から、永田にとって他人って何なんだろうなあと思って、考えていた。

    結局は、自分とは違う誰かがいなければ、「劇場」は成立しないんじゃないかな、と。

    永田の理想は、永田の基準に満たない人々が周りを埋め尽くさなければ、完成しない。
    自分よりも優れた才能に絶句したり、自分が他人の思想を分かったように解釈したり、でも、一人ではないことは、つまり理想を完遂することが出来ないことを意味するのに、ひたすら見ようとせずに、変わろうとせずに、それを求めている。

    でも、読みながら、沙希ちゃんは、やっぱりおってやって欲しいなぁと思ってしまった。
    途中からは、沙希ちゃんがまだ出て来るか、心配しながらページをめくっていた。

  • 一行目を読んですぐ、一瞬で惹き込まれ絶対好きだと感じた。あとがきにもこの冒頭のことを筆者自身が記しているが読み終えてからも改めてこの冒頭がかなり秀逸に感じた。
    若い男女が出会い、間もなく共に暮らし始める。
    時の移り変わり、時代の変化とともに初めはくすぐったい煌めきのように思われた二人の関係にもよくある話だか影が差し、変化していく。
    あるタイミングから一気にストーリーは加速し、どんどん先に読み進めたい気持ちと裏腹に、この物語がまだまだ終わって欲しくないという祈るような気持ちに変わる。
    全く別の性格を持つそれぞれの究極の純粋さが二人を追い詰め、まるで追い越して行くような描写はいかにもドロドロしているのに鮮やかに胸に迫り、あまりにも不器用な、それでいて必死な愛情に切なく涙がでる。

    .・━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━

    以下ほんのりネタバレかも。

    愛憎や嫉妬や焦りといった感情の表現が生々しくひりひりする。
    野原や青山の言うことなんて本当にもっともで共感しかないんだけど全然それに気づかない永田のクセ強さはなかなか。
    沙希ちゃんの優しさは宇宙規模。
    永田のクズさはそれを凌駕する。
    中途半端な知識で武装してむちゃくちゃ言って後で後悔するもそんなに沙希ちゃん以外は誰もダメージ受けないくらいのクズ。

    バーの棚に並ぶ酒の名前から、ズブロッカは、ブラックブッシュは、ラフロイグは、ジョニーウォーカーは、とそれぞれを殺し屋に例えどんな殺し方をするかのシーンで、沙希ちゃんが1番強そうなお酒を伝えたところ好き。

    永田と青山のメールでの喧嘩はなかなか面白い。

    ずっと映画を見たいと思っていた矢先に、公開時に、コロナが重なりました。
    けどこれは観ないといけないな。

  • たった233ページなのにとても長く感じました。つまらないわけではなく、内容が重厚だからです。主人公の心情がとても丁寧に描かれており、他の登場人物の行動も繊細に表現されています。すごく立体的に情景が思い浮かびました。
    主人公の気持ちや行動には、共感する部分もあるし、全く分からない部分もあります。しかし、その立体的な表現力によって、何故か最終的には主人公と自分の気持ちがリンクしてしまう。
    そして、咲希との関係性が少しずつ変わっていく中で、様々な感情が沸き起こります。ここまで心を揺さぶられることは、最近なかなか無かったので貴重な経験になりました。

  • (大学4年生)
    Youtubeの広告でこの作品を知ったのですが、やさぐれた山崎賢人さんの色気に完敗し、小説ではなく映画を視聴することにしました。

    又吉さんの作品に初めて触れたのですが、確か彼は太宰治を傾倒していましたよね。

    太宰治の『惜別』より
    人間の生活の苦しみは、愛の表現の困難に尽きる。この表現の拙さが人間の不幸の源泉なのではあるまいか。

    まさにこの一節に、私がこの作品を見て感じたことが表現されているなと思います。

    永田は、「一般人・常識人」をうまく演じられない、自分の感情に素直に生きたい人なのだと思いました。

    でも、大切な沙希を前にすると素直に感情を表現できなくなってしまう。虚勢を張ってしまう。
    酷い言葉を発したり、物に当たったり。

    沙希はどうしようもない彼に嫌な顔を見せず、明るく笑顔で振る舞い、気を遣っていた。
    沙希も沙希で、永田に伝えたい気持ちを笑顔で隠して、我慢ができなくなって次第に壊れていってしまったのだと思う。

    別れ際にお互いの心の内をやっと伝え合う。
    私も彼と別れ話の最中に「もっとお互いこうやって話しておけばよかったね」なんて言われました。

    ほんとに、「一番会いたい人に会いに行く こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろう」

    愛の表現って、難しい。

  • なかなか手を出さない系なのに、とりあえず彼がどのようなものを書くのかと思い購入。
    人の心の中なんてほんとに何を考えているかわからない。実際に心の中ではこんなことを考えているんだ、けど相手や周りの人にはこの態度では伝わりようがないよな、と思いながら読み進めていくのがもどかしい感覚。
    出会ったときの、何も言わずとも同じ感覚を持った人を見つけたときの喜びのようなものは何物にも代えがたいものだっただろうなとか。
    青山への息をもつかせない怒涛のメール攻撃は心臓が痛くなりそうだった。他にも感情に任せて行動するところがほんとに痛ましい。絶対にわかってもらえないだろうと思ってつらかった。

    まったく予想していたような本ではなかったけど、最後まで読んで読後感はさほど悪くないのが不思議かもしれない。

    まあ、基本私は芥川賞より直木賞なのかな。

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著者プロフィール

1980年大阪府寝屋川市生まれ。お笑いコンビ『ピース』として活動中。2015年に小説デビュー作『火花』で第153回芥川賞を受賞。2017年5月に二作目となる小説『劇場』、2019年10月に初となる長編小説『人間』を発表した。2020年4月に、原作映画『劇場』が公開される。

「2020年 『東京百景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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