ドストエフスキイの生活 (新潮文庫)

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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101007038

感想・レビュー・書評

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  • 非常に中身の濃い作品であるため、まず一読するのに一苦労した。しかしこれでも文章に無駄はなく、何回も繰り返し読むことでさらに理解が変わっていくのだろう。

    一番印象に残った部分を引用すると、
    「精神というものは、まことに柔軟で不安定なものであるから、環境の変化を非常に鋭敏に反映する。そういう受け身な精神の反映と、精神の自発的な表現とは、全く性質が違うものなのであるが、両者はいつも混同されがちです。わが国でも、戦後社会の模様が急変して、戦後の物の考え方だとか、戦後の人間のタイプだとか、文学だとかという言葉が濫用されるが、そういうものは、確かに戦前に見られなかった姿ではあろうが、その大部分は、周囲の色に芸もなく染まった精神の色合いに過ぎず、精神の自発的な努力による新しい表現はおそらくきわめて少ないのである。そういうことに注意する人も又極めて少ない。」(小林秀雄「ドストエフキイの生活」p.521-522 新潮文庫 1964年)


    時代だとか、そういった要素に精神をあてはめる安易な考え方を、無駄のない文章でバッサリ切っている。
    なぜこの考え方をするのか?自発的な問いを常にしていかなければならない。時代様相であったり、そういったものを隠れ蓑にせずに。

  • ロシア文学が独特な理由が分かった、目からウロコの評論。もっと早く読むべきだった。

  •  歴史について。自然は僕等の為にその機制を変えない。絶えず隠滅する自然の破片である史料に歴史を読むのは僕等の能力如何にのみ関係する。子供を失う比類の無さを保証するのは母親の悲しみの他にない。ささやかな遺品と深い悲しみが歴史に関する僕等の根本の智慧であり技術である。この技術の最小限度を常に保持して忘れぬ事だ。要するに邪念に警戒せよ、だ。

  • 日本最大の批評家・小林秀雄によるドストエフスキー論集です。一見すると分厚くて装丁も地味、何ともとっつきにくそうな本なのですが、これは掘り出し物でした。

    前半はドストエフスキーの生涯を描いた伝記になっています。冒頭、とても長い前置きがついています。この前置きが例によって小林節全開の端正な文章になっています。早々に小林ワールドに入り込めます。

    ドストエフスキーの人生には、シベリア流刑、賭博癖、精神病など、いまの日本社会では簡単にマイナス評価されそうな試練が立て続けに起こります。彼は単にそれを乗り越えるのではなく、作家としての生き方の中に昇華させていく。そしてそれを著者は淡々と評価する。とても戦前に発表された作品とは思えない、現代的な評論文だと思います。

    続けて「カラマアゾフの兄弟」。こちらは完全に作品論です。本書前半の伝記編とは異なり『カラマーゾフの兄弟』を読んでいる前提の議論になります。『カラマーゾフの兄弟』そのものはだいぶ以前に、それも忙しい時期に読んだため、ついていけないところは多々ありました。それでもドストエフスキーの作品を読み解くためのいくつもの視点(例えば、神の存在、自負、人間共に対する侮蔑、力への渇望、罪人という像、など)が提示されており、たいへん参考になる論考です。

    (その次の「罪と罰」論は未読です。『罪と罰』は高校時代に読んだため、さすがに内容をほとんど覚えておりません。次回帰省したときにいったんテクストを読み直してから本論も読むつもりです)

    最後はドストエフスキー逝去75周年記念講演。これは本当に熱い。やむにやまれず全体を音読してしまいました。素晴らしい講演です。ロシアの政治や社会情勢に関する深い知識・洞察もすごいのですが、それを端的な表現に落とし込み、さらに鋭利なメッセージへと磨き上げるこの技術。これぞ文藝批評の神髄だと言いたいです。

  • 2009年1月、読了。

  • 110

  • 文豪の魂に迫り、漂泊の人生を捉える。

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