ゴッホの手紙 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年8月28日発売)
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  • 本 ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101007137

作品紹介・あらすじ

昭和22年、小林秀雄は上野の名画展で、ゴッホの複製画に衝撃を受け、絵の前でしゃがみ込んでしまう。「巨きな眼」に見据えられ、動けなくなったという。小林はゴッホの絵画作品と弟テオとの手紙を手がかりに彼の魂の内奥深く潜行していく。ゴッホの精神の至純はゴッホ自身を苛み、小林をも呑み込んでいく……。読売文学賞受賞。他に「ゴッホの絵」「私の空想美術館」等6編、カラー図版27点収録。

感想・レビュー・書評

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  • 小林秀雄といえば、中原中也とのあいだで長谷川泰子を奪い合った人物というネタ的知識しかなかった。

    今回、はじめて彼の評論を読んだが、暴論を承知で言えば「顔のよい人間は得だなあ」の一文に尽きる。

    これ以降もゴッホ伝は数多く出版され、また最新の優れた批評を私がすでに読んでいるためであって、小林の責でないことは分かっているのだが、本書のどこに新しさがあるのか分からない。
    本との出会いにも時宜というものがあるのだろう。

  • まだ出て無いのですね、…

  • ゴッホが弟に宛てた手紙と、その手紙からわかる彼の苦悩、性格。そして彼の人生の足取りが書かれた本。作品もカラー写真で何点か収録されている。昭和20年代初発刊の本で旧仮名遣い、難しい言葉などでわかりにくかったが彼が精神病に悩み、生きずらさを抱えた天才だったということはわかった。彼の作品の生まれた背景も書いてあり収録されている作品のカラー写真で確認しながら読めたのが良かった。彼の苦悩を知ると残された絵から感じる暗さ繊細さを理解できるかも。精神的な苦しさが芸術、名作を生むのかもしれない。

  • 小林秀雄氏の著書についてはいくつか読んできたが、この著書については難解すぎて挫折。
    前提知識が必要なのか、文筆の抽象度の高さについていけていないのか、もしくは単に記載が不親切なのかは正直わからない。

  • ゴッホの絵を眺めゴッホの手紙を読み進めることで、恐ろしいほどに作者がゴッホに呼応してゆく。ゴッホの弱り切った精神の純粋さゆえか。読み進めれば進めるほど、ゴッホ作品の力強さと儚さを益々愛おしく思う。

  • 戦後まもない頃、上野で開催された泰西名画展覧会。行ったら黒山のひとだかり。入り込むすきまがない。少し待とうと入った複製画売り場で、一枚の絵に釘付けになる。それがゴッホの「烏のいる麦畑」。
    ゴッホの評伝でも、作品論でも、絵画論でもない。ゴッホの絵に感動した勢いで、ゴッホの残した手紙を読み進めながら、彼を追体験するという趣向。小林はゴッホの絵の実物を見ることはできなかったし、フランスやオランダに行ったこともなかった。それなのに、これだけ勢いのある文章が書けたとは。

  • 重い、辛い、苦しい事が多く、なかなか読み進められなかった。
    それでも絵を描くことがあってよかったのかどうかわからない。それしか救いがなかったとしても。
    後世の評価からすると絵を描いてた方が良かったのだろうけども、評価されずいつも金はなく、発作に怯え…救いのない魂のありようが伝わる。
    昔、新関 公子『ゴッホ契約の兄弟: フィンセントとテオ・ファン・ゴッホ』も読んだけど、その時ともまたゴッホの印象が変わった。


  • アルル滞在中に読んだが、また理解を深めるために読み直したい。
    日本人がゴッホに対してこれほどまで理解しようとしてくれていてゴッホは喜んでいるであろう。

  • ゴッホの絵(レプリカ)を観て衝撃でうずくまってしまった小林秀雄。
    この本は簡単に言えば、ゴッホがなぜ絵を描いていたのかを、ゴッホの手紙を通して読解する試み。
    小林曰くゴッホの手紙は告白文学に相当するとのことである。もちろんゴッホの狂気と作画もヤバいんだけど、衝撃を受けたゴッホのことを知るためにその手紙=文学作品をひたすら読む、そこに入り込む小林の力というか、衝撃に揺さぶられてるのがとにかく伝わってくる。
    音楽でも絵でも、読解と感受性をもって、それと1対1で向き合ったものが小林秀雄の批評だなと改めて感じさせられた。
    小林秀雄は音声で講演を聴くのもオススメです。

  • 後半はほぼゴッホの手紙の引用になっており、批評というより、ゴッホの人生の紹介?のようになっていて、いつか小林秀雄が透明になってゴッホになっている。批評は必要ないということかも。
    ゴッホは何かに取り憑かれたように絵画に奮闘する。その何かは、狂気ともいえるし、自分自身の強すぎる個性ともいえるし、神様のようなものかも知れず、とにかく自分でもなんだかわからない情熱に小突き回されるような感じで、本人も大変そうだし、弟はじめ周りの人は苦労する。
    羨ましいような気もするし、これが才能やら天才ということなのであれば、辞退したいような気もする。

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著者プロフィール

1931年2月12日生まれ、東京都出身の作曲家。東京藝術大学卒。作曲を長谷川良夫、ピアノを水谷達夫、宅孝二、奥川坦、稲垣寿子に師事。1959年・1961年 NHKから委嘱された芸術祭参加作品のラジオ音楽劇2作がそれぞれ芸術祭奨励賞を受賞する。1966年に中田喜直らと「波の会」(現・日本歌曲振興波の会)を創設し、第二代会長を経て、後に社団法人となった同会の名誉会員を務めた。「落葉松」をはじめとする歌曲・合唱曲やピアノ曲、童謡「まっかな秋」、オペラ、器楽曲、小学校校歌など数多くの楽曲を手掛ける。また、本人が直接合唱団を指導することも。東京藝術大学音楽学部講師、愛知県立芸術大学教授、聖徳大学・同短期大学教授、活水女子大学教授などを歴任した他、1979年には文部省派遣在外研修生としてパリに留学した。このほか、ショパンやリストのピアノ作品の校訂を手掛けた。2017年7月25日死去。86歳没。

「2024年 『混声合唱のための組曲 優しき歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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