吾輩は猫である (新潮文庫)

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レビュー : 303
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010014

感想・レビュー・書評

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    やっぱりいい。
    おもしろい。
    とくに生産的なことをしていない(してそうもない)、何を生業にしているのかよく分からない人々、という高等遊民と呼ばれた人たちのお喋りを上から目線ならぬ猫目線で飼い猫が小馬鹿にしつつユーモアを交えて観察した記録。
    漱石は正岡子規に文章の要諦についてこう書き送っていたという。
    「お前の文章はなってない。レトリックに凝ってはダメで文はアイデアが大事」。これはこういうことだ、と物事の本質を正確にズバリと言う。これが漱石文学の特徴ならば、「吾輩は猫である」も御多分に洩れず、簡にして要を得た文章で物の本質をズバッと書く。それがまた爽快で心地いい。
    会話内や至る箇所で文明批評を交えるも、底には自我(エゴ)をめぐる漱石の冷静な観察と考察がデビュー作に込められている。

  • ・一匹の猫の目を通して描かれた小説、文豪夏目漱石のデビュー作です。

    夏目金之助、のちの漱石は、東京帝国大学を卒業したのち、熊本の高等学校で英語教師を務めていました。
    明治33年に文部(科)省からイギリス留学を命じられ、イギリス文学研究のためロンドンに渡り、そこで本場の小説や詩を読みあさります。
    膨大な書物に埋もれて過ごしていくうちに、漱石の心にある大きな疑問がわいてきました。



    「…私は、何のために、書物を読むのか、
    自分でもその意味が、解らなくなってきました

    …私は、ちょうど霧の中に閉じこめられた孤独の人間のように、
    立ちすくんでしまったのです……」


    (夏目漱石)『私の個人主義』



    漱石は、留学中「人間にとって、文学とはなにか」と、当時世界レベルでもそこまで突きつめることのできなかった文学理論という、壮大な問いの迷宮に迷い混んでいきました。

    一人で、やりきると思っていたので、もがいているうちに、やがて自身を追いつめることとなり、
    下宿を訪れた友人は、漱石が真夜中にただひとり、明かりもつけずに泣いている、と不安を溢すほど、漱石のこころは崩れていったといいます。



    イギリス留学を了え帰国した漱石は、医師に診てもらい、
    精神的な病気だと診断されます。
    家族にさえ冷たくなっていました。



    そんな時、漱石の家に、あの野良の『黒猫』が現れます。

    猫は、漱石に、とてもなつきました。

    漱石も、猫を、とても気に入りました。





    ニャァ



    「……今、鳴いた
    ニャァ、という声は、感投詞か、副詞か」


    妻鏡子
    「はい?」


    漱石
    「その、はい?、という声は、感投詞か、副詞か」


    鏡子
    「そんなこと…、
    どうでもいいじゃありませんか」




    …ニャァ




    漱石「笑」
    妻鏡子「笑」




    「こういう感投詞を心の底から叫び出される時、
    あなたがたははじめて心を案ずることができるでしょう

    もし途中で、霧か靄のために懊悩していられるかたがあるならば、
    どんな犠牲を払っても、ああここだと堀当てるところまでいったらよかろうと思うのです

    だからもし私のような病気に患った人が、もしこの中にあるならば、どうぞ勇猛にお進みにならんことを希望してやまないのです…」

    (夏目漱石)



    まもなく、知人の友人高浜虚子から、雑誌「ホトトギス」に載せる文章の仕事を頼まれます。
    それが、明治38年1月、連載の始まった、小説「我輩は猫である」でした。

    たちまち反響を呼び、秋には、単行本「我輩ハ猫デアル」(上編)を出版し、爆発的な売り上げを記録。これをきっかけに漱石は、『坊っちゃん』『三四郎』『こころ』などの話題作を次々と発表し、文豪への道を歩んでいきました。


    漱石が小説家になるきっかけを作り、優しくて、繊細な漱石を取り戻してくれた野良の黒猫に、漱石はとても感謝していたからこそ、明治の文豪、夏目漱石は生まれたのだろうと思いました。

     

  • 巻末の注釈を読みながらも難しく、何故だろうと思っていたらこの方エリートで留学経験もあるのね。。
    だから海外の偉人も沢山出てくるのか。。。

    読み進めるのに時間がかかるのだけれど、一冊纏めてではなくて章ごとに読めば ナルホド と思う箇所もあって面白いだろう。

    結末がまさかこんなんだとは知らなかったが。
    漱石の考え、思いがつまめるエッセイのようなものだと思った。

  • 漱石は世の中や人間一般に関してよく知っていて、考えているなという印象。批判的に語るところもあれば、皮肉的に諧謔にしたものもある。そういうところが、本作に流れるひとつの音であり、味なんです。それにしても、漱石の博覧強記ぶりに恐れ入る次第です。古今東西の書物を読み漁った人だからこその引用にあふれている。それでもって面白おかしくユーモラスに仕上げていて感服してしまいます。一流の人が作家をやったという感じ。そして、そんな、新しい明治の文化に重きがあった時代なんだろうなという感じがします。昭和時代の初期から敗戦、戦後の復興期までに比べたら、よっぽどいい時代に感じるんだよなぁ。

  • 中学の教師宅に集まる人物たちの話・事件を猫の目線から風刺的に描かれた教訓と皮肉がたっぷりの小説。物語として話が発展することはあまりなく、各部分(登場人物や語られる話、出来事)の面白さのみが強調されていて、昔の本なのに今でも新鮮に読めた。

  • 日本文学の古典で、教科書で必ず紹介されている。その俗っぽさが嫌で毛嫌いしていたのだが、今更になって読むと、随分愉快痛快で面白い。
    夏目漱石作品ではいちばん好きかも。

    主人のモデルは漱石本人なのだろうが、ある意味、猫という比喩人格を通した自虐的私小説。人間もそうだが、猫仲間の描写も滑稽。いまのサブカルっぽい。

    ただし猫から見た世界は面白いのだが、人間どうしの会話は冗長で退屈。なので星を減らした。

  • 猫目線で語られるいろいろな出来事が面白い。吾輩が、鼠を取ろうと頑張ったり、餅を食べてみたり、銭湯を偵察に行ったり。主人の苦沙弥先生と寒月君や独仙君、迷亭君たちのおしゃべりもどうでも良さすぎて笑ってしまう。最後のシーンはショックだった。

  • 我輩が中学生の頃に中ばまで読んだはずなのだが、果たしてどこまで読んだかはとんと思いだせぬ。

    読了後の感想は「やっぱり漱石は苦手」であった。我輩は文学を少々学んだつもりであったが、文豪と呼ばれる類の良さはとんと理解できぬようである。モグリであったらしい。
    猫の視点で語られる人間の奇妙な行動の描写が興味深いのであって、迷亭君のホラ話に興味はないのである。結末は広げた風呂敷を無理矢理まとめたようであった。
    しかしこれは面白いと感銘を受けたのは、餅を喰う話と泥棒の話、銭湯の話であろうか。

    我輩は猫である。名前は未だにない。

  • 類稀に見る高二病小説。人間を包括的に揶揄し、面白おかしく話して見せる。古典落語からの引用を踏まえたユニークセンスと、人間の批判を自由気ままな「猫」に語らせる着眼点こそが、この作品の最たる素晴らしさ。
    それにしても、教え子の自殺さえもネタにしちゃうのはやりすぎじゃあありませんかね。

  • やっと読み終えたー。足かけ半年以上!

    職場の上司が、「読みかけてみたけど、途中で嫌になったからあげるわ。なんだかサザエさん的な日常生活が延々と続いていく感じで特に盛り上がりもない」と言ってくれた本。

    確かに冗長な感じを受けるし、話が盛り上がって「続きが気になる」という感情がなかなか起きなくて苦しかった。解説を読んでちょっと納得したけど、話の筋を展開していくものではなく、面白い場面をつないでいくという作品。前に読んだ『草枕』もそういうタイプだった。『草枕』ぐらいの長さがよい。

    しかし、猫に語らせる視点は面白いし、人間批判や(西洋)文明批判は現代にも当てはまることが多い気がする。最後は猫のように悟っていきたいものだ。

    100年前にイギリスに留学して、個人主義や西洋文明の行きつく先を見てしまったんだろうな。この辺の思想がやっぱり後の作品にもつながってるんだろうか。今後はまず前期三部作を読み進めていきたい。

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著者プロフィール

夏目漱石(なつめ そうせき)
1867年2月9日 - 1916年12月9日
江戸・牛込馬場下(新宿区)生まれの小説家、評論家。本名は「夏目金之助」(なつめ きんのすけ)。1890年、帝国大学文科大学英文科に入学。1895~96年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。1900年、イギリスに留学。1905年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載し始め、作家活動を本格的に開始。1907年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などの代表作を連載。日本の文学史に多大な影響を与えており、作品は多くの人に親しまれている。学校教科書でも多数作品が採用されている。

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