坊っちゃん (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 801
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010038

感想・レビュー・書評

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  • 朝日新聞の天声人語で人物のセリフを引用間違いしたとする謝罪含みの天声人語という珍しいものを最近読んで興味を持ちました。恥ずかしながら漱石でこれは、昔国語の時間に一部を読んだ記憶があったものの全編を読んだことはありませんでした。引用本当に間違ってました。天声人語を書くような日本語の識者でも読み間違えってあるんですね。

    とにかくおっかしいですね。

    笑えます。久しぶりにこれだけ笑える小説を読んだ気がします。思えば小説ではあまり笑ったことがなかった。

    あと思ったのが、この坊っちゃんがアスペルガー症候群と言えるという点です。専門家ではありませんが、かなり自信あります。

    例えば
    ・物事の裏や含みが理解できない
    ・物事や人を白黒で判断しグレーを認めない
    ・差別的で独断で決めつけが多い
    ・弁は立つが、実は言葉を完全に理解して使っているわけではない
    ・癇癪持ち
    ・超頑固
    ・空気が読めないので時に大胆な行動に出る

    他にも周りの状況として
    ・使用人清は真っ直ぐな性格とほめるが、父親からはろくなものにならんと異常に嫌われている
    ・ほかの教師や生徒に嫌われたりたりからかわれる

    などアスペルガーという症状だったとしたらあり得るけど、ちょっと普通では考えられないような部分が多いです。自己認知として知恵がないなどはわかっていたりするので、アスペルガーとも言い切れないのですが、生い立ちとして環境でこうなったというよりは、生まれながらの先天的部分に坊っちゃんが坊っちゃんたるゆえんがあるようなので、アスペルガーかと思いました。アスペルガー的という言葉があるなら、間違いなく当てはまります。

    しかし漱石はこのことを良しとしています。寛容しています。いやもっというと羨望のまなざしすら感じます。

    この坊っちゃんの正直さと純粋さはバカの裏返しです。おそらくバカ正直という言葉がぴったり当てはまるかと思います。つまりバカなんです。しかしこのバカを漱石はとてもうらやましく、尊いと感じていたのです。しかし世の中ではやはり坊っちゃんは負け組になったといえるような終わり方です。もちろん当人はまったく気にしていませんしむしろ清の元へ帰れてうれしかったでしょうが。ここにうらやましく思いつつ、侮蔑も含まれているような印象を持ちましたし、侮蔑とまではいかずとも、世の中ではそういったものは受け入れられないという悲しみのようなものも感じました。
    しかし漱石はそのバカを良しとして、寛容いやむしろ尊敬していたのです。

    おそらく漱石の世間への皮肉と自己への嫌悪がこの作品の裏にあるように思います。
    一般人は坊っちゃん的ではなく、確実に赤シャツや狸、野だやうらなり君のような人物なのです。そして漱石自身は赤シャツやうらなり君に当てはまるのではないでしょうか(漱石の伝え聞く人物像によると)。間違いなくいえることは、こころなどを書いた漱石が坊っちゃん的な人物の要素はまったくなかったということです。
    まとめると、坊っちゃんに対しての羨望と侮蔑、世間と自己への嫌悪を、落語のようなテンポの良さで皮肉たっぷりに面白おかしく書いた作品と言えるかと思います。
    それにしても坊っちゃんの使用人だった清へのツンデレな愛情はとても美しいです。24の若者がばばあへあそこまで愛情を寄せるその純粋さは美しいとしか表現できません。やはり坊っちゃんのような性格への憧れが強かったんですかね漱石先生は。

    例えばアスペルガーという症状の人がいたとして、社会に受け入れるだけの寛容さは間違いなくありません。相当生きづらいでしょう。おそらく多くの人が坊っちゃんを読んでもハナカラ主人公が理解できないまたは、正義の味方として関心したり、ただの差別的なバカとかのーたりん、のように感じてバカにするだけで終わってしまうような気がしないでもないです。
    坊っちゃんというタイトルが示す通り、漱石の意図としてはそのどちらでもないと思いますが、現代ではもはや解説なしにはそれこそ、表面的な部分をとらえて終わってしまいそうな気がします。まあ読む人の判断が全てなんで別にそれはそれでいいのですが、あまりにもそういう人が多くなってしまうと、メッセージが伝わらない世の中になってしまうという気もしますし、なにより寛容の精神という日本の美徳が消え失せそうで怖いです。


    もっとも読みやすいながら、漱石の天賦の才をもっとも強く感じる作品でしたので夏目漱石の入り口と出口としてはベストだと思います。

  • 何度も読んで、毎回最後まで見きれず挫折していた「坊ちゃん」。

    どうしても坊ちゃんのイライラについていけず…。
    田舎をバカにする態度も、いろんな人に対する
    傲慢な態度にも辟易してしまって、どうしても最後まで
    読み切ることができなく、パタリと本を閉じる…。

    その繰り返しだったけど、今度こそ!
    と絶対に読むと決めて挑んだ何度目かの坊ちゃん。
    やっと最後まで読むことができた。

    やっぱり今回も何度も閉じたくなりつつ[´ー`;]
    でもでも最後まで読んでほんとによかった。
    私にとっては、よく「坊ちゃん」について聞く批評とは
    感じることがまるで違うというか、勧善懲悪でも
    胸のすく話でもなく、不条理で憤懣やるかたない
    切ない話という全体の印象だった。

    山嵐とうらなりさん以外はいい人に感じられない。
    清は現実度外視で坊ちゃんだけを溺愛し、
    坊ちゃんと同じく「田舎の人」への偏見にも
    満ちていたりもするので、褒められた人とは感じないけど
    その愛情は揺らぐことなくあたたかく愛おしい。

    坊ちゃんは気性は真っ直ぐだけど、とにかく怒りっぽく
    1つの角度でしか物事を考えたり捉えたりすることしかできない
    欠点はあるけど、間違ったことにはちゃんとすぐ詫びることもできる
    ただ頑固な人ではなく、まだ日本が今の日本とはまったく別の国
    とも言えるほどの倫理観だったので、いろいろな道理の祖語は
    仕方ないこともあるんだと思うので、最後まで読み通すと
    坊ちゃんの勝手さに振り回されることだけでなく
    とても魅力的な小説であることに気づくことができた。

    明治39年に書かれた作品なので、その当時の日本の背景や
    暮らしぶりもとても興味深く、なによりいい人は少ないけど[笑]
    1人1人の人物が生きた人として心にくっきりと残る。
    道後温泉や坊ちゃんの愛した団子、天麩羅蕎麦。
    今度旅行する時はゆっくりと坊ちゃんの足跡も感じながら
    楽しい文学散歩ができるかなぁと思うとわくわくした。

    中盤からは特に一気に物語を読ませる熱量を感じて
    村上春樹さんを読んだ時と同じく、これが天才なのか…と
    難しいことや仔細について考えていくまでもなく
    いかに魅力的な文筆家であるかを感じて感動した。
    他の作品はもちろん、夏目漱石という人にとても魅力を感じて
    いろんな資料を読みたいなと思った。

    あたたかい古き日本を愛し、近代に絶望を見た夏目漱石の
    人となりを知りたいと思えた素晴らしい作品でした。

    • kuroayameさん
      松山にいとこがいるので、北海道に住んでいた頃から何度か訪ねているのですが、坊ちゃんはこれまで二度ほど読んだ本で、道後温泉、松山城などに足を運...
      松山にいとこがいるので、北海道に住んでいた頃から何度か訪ねているのですが、坊ちゃんはこれまで二度ほど読んだ本で、道後温泉、松山城などに足を運ぶたびに坊ちゃんの光景と重ねることができ、わくわくしちゃいます(^з^)-☆。
      坊ちゃん団子を初めて食べた時には嬉しくてたまりませんでした( ´ ▽ ` )ノ。
      2013/03/10
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡えぬちゃん

      本の中の景色を知ってたりすると
      ますますうれしくて愛着がわくよねー[*Ü*]
      本で読んだ場所に後から行くのもす...
      [♥óܫò]∠♡えぬちゃん

      本の中の景色を知ってたりすると
      ますますうれしくて愛着がわくよねー[*Ü*]
      本で読んだ場所に後から行くのもすごい楽しいし
      いろんな楽しみを本って増やしてくれるよねー♡

      私も早く道後温泉を見に行きたいなぁ~☆
      何日も滞在できるんだったら、現地で
      その空気と景色を前に坊ちゃんを読みたいねー♪
      2013/03/13
  • へー、こんな話だったんだ。
    赤シャツやら山嵐やら聞き覚えのある登場人物に、なんとなく知っているようで実はよく知らなかったおはなし。
    教科書や試験問題で一部だけ読んでもわからないよね。
    有名な冒頭がやはりかなり面白く、ラストは切ない。
    真ん中あたりは愚痴だらけ(笑)

    最終的に、赤シャツをまんまとやり込めて、マドンナにも感謝され、生徒からも慕われ、ハッピーエンド…というヒーロー像をイメージしていたので、なんかあっけないというか、物足りないというか。
    現実はこんなものなんでしょうな。

    坊ちゃんの独りよがりで上から目線の語り口調に、ちょっとついていけないところもあったけど、気持ちよく共感できるところもあった。
    散々けなされている松山にもなんだか行きたくなってしまう。

  • 坊ちゃんの乱暴な言い回しが面白過ぎる!
    私の頭の中での映像は常に大泉洋ちゃんだった。
    口は悪くて乱暴だけど、子供みたい真っ直ぐで、人の心の傷みも解る、凄く素敵な人だと思う。
    読みながら笑えるし、心が温かくなる一冊でした。

  • 【感想】
     読むと元気が出る。「坊っちゃん」のごとく無鉄砲かつ実直に暮らせたならさぞストレスも感じないだろう。とはいうものの、「坊っちゃん」も最終的には田舎の窮屈さに嫌気が差して東京の清の元へ帰り薄給に甘んじたところをみると、それなりにストレスを抱えていたとも思える。
     「坊っちゃん」はいわゆる“世間知らず”であり、周りを田舎者扱いしてめいめいあだ名を付けつつ、彼らに決して媚びず染まらずの世渡りを貫いた。このような“世間知らず”の目線から見てみると、いかに世間というものが狭苦しい、面白みのない、儀礼的なもので溢れかえっているものであるかが逆照射されてくる。
     漱石が「赤シャツ」や「野だいこ」など典型的に見られる世間人を登場させてこてんぱんにこき下ろしたのは、世間に対して冷めきった目とともに、これを人間社会の現実として面白がる目とがあったのではないだろうか。自身を「坊っちゃん」と置き換えてみると、普段の生活でいかに世間というものに縛られて生きているかを思い知らされ、元気が出てくるのである。

  • 坊っちゃんって作品自体は、道後温泉とかかわりなくね?(夏目漱石が道後温泉あたりにいた時の生活とリンクさせとるのは分かるけど)
    高知がかわいそう・・・ってか、高知のカツオのたたき(塩味?)が食べたくなってきた!

    本自体は、おもしろい。本嫌いがなくなってきた。青春というか、青臭い人生の教本的な本だと思った。

  • 愛媛県人30年目にして初めて読んだ作品。
    そうか、こんな話だったのか(笑)

    松山では、坊っちゃん坊っちゃんもてはやしているけれど
    この内容で、なぜ坊っちゃんをもてはやしているんだろう。
    坊っちゃん、松山のこと、バカにしてるよね??

    これが松山での生活を経験に書かれて
    日本文学の有名著書なのはすばらしいけれど
    これを観光に利用するとは、
    どういうことだい、中村さん…

    ただ、思ったよりも読みやすくて
    純文学のイメージはなくなったかな。

    もっと年齢を重ねて読んだ時には
    また違った感想になっているんだろうかしら。

  • 読んだ後の率直な感想として
    「切なかった」

    主人公坊ちゃんの性格は、まっすぐな性格で裏表があるのは嫌い。
    それでいて近所にすむ育ての親の代わりのようなおばあさんを大事に、そして田舎に来て尊敬の念させ抱く、とてもいい青年のイメージ。

    ストーリーは、大学を卒業していやいや勧められた田舎の中学校
    に新人教師として赴任するが、色々な事件に巻き込まれその中で疑問や悪を心の中で抱きながら葛藤するお話である。

    設定は学校である。しかし自分はこのお話の状況が仕事であったり
    社会で経験する大人の汚さを描いていると感じた。
    周りで何か起きても結局は「大人(組織)の都合で自分に良いように仕向けていく」そんな便宜を図る行為は悲しい。

    その中でも、この主人公は、悪に向かう正義を存分に発揮していた。
    寝床でのバッタ事件、お団子、温泉事件、うらなり君からの彼女ぶんどり事件、高知のお祭り喧嘩事件、恐らくそのすべてに当人の過失があまりないように感じる出来事さえ、学校のお偉いさんは周りのせいでなく
    あなたが悪いと押し付け、ともすれば濡れ衣を着させる演出を立てる
    というのもいじめに近い印象をうけた。
    印象的な言葉は、「履歴なんて構うもんですか、履歴より義理が大切です」
    P123より引用

    正義を貫く、坊ちゃんの行動に万歳!
    また読みたい。

  • 学校時代に読んで苦手意識から放り出してきたけれど、今となって読んでみると面白い。
    真っ直ぐで無鉄砲な若者が遠い土地での社会生活を通して、人としてのありようを模索していく。
    卑屈な不正に力で報復する若さ、悪に勝つことはできないけれど自分に負けることはない。
    幸せになるために一様の形だけを追い求める必要もなく、ただ自分のこころに、信念に正直に生きれば良いのだ。

  • 簡単な文体なのに内容を全くうすっぺらく感じさせない。ユーモラスにもとんでいる。

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著者プロフィール

明治、大正時代の小説家、英文学者。1867年、江戸(東京都)に生まれる。愛媛県松山で教師をしたのち、イギリスに留学。帰国後、執筆活動を始める。『吾輩は猫である』『三四郎』『こころ』など作品多数。

「2017年 『坊っちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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