三四郎 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.52
  • (283)
  • (518)
  • (942)
  • (80)
  • (20)
本棚登録 : 4979
レビュー : 471
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010045

作品紹介・あらすじ

熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気侭な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく…。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて「それから」「門」に続く三部作の序曲をなす作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 明治も最終盤の頃、大学に入るために上京してきた小川三四郎の、学業は兎も角も、次第に広がる交友関係に、そこはかとない片想いもあって、まさに学生生活を謳歌するちょっぴりほろ苦い青春物語!
    その後の漱石の小説では、狂おしいばかりの主人公の懊悩と葛藤が描かれるようになりますが、この『三四郎』はどちらかというと、田舎から上京して右も左もわからずに、人並みに悩みはするけれど(笑)、ぼぅ~と流されてあまり深く物事を考えていない、いらいらさせられる系の主体性の無い青年のようですね。(笑)
    物語の進行は流石にドラマ仕立ての場面構成になっていて面白いです。それに三四郎の周りを彩る個性的な面々もなかなか魅力的です。「明治」というと欠かせない広田先生や野々宮のような学究肌の人物や、三四郎も惚れた「明治」の女らしい美禰子、そして、学生時代に必ずいるがさらにそのおっちょこちょいぶりに「明治」の拍車が掛かるかき回し屋の与次郎など、三四郎を取り巻く登場人物が魅力的すぎたが故に、逆に三四郎の影が薄くなっているほどです。(笑)あと、「偉大なる暗闇」とか「迷羊(ストレイシープ)」とか物語の要所を締めるキーワードが、持って回った言い方となっていて、これも「明治」のインテリ層の雰囲気が味わえるなかなか楽しい趣向でした。(笑)
    交友関係の展開はいいとして、三四郎の片想いの行方が気になるところですが、相手の言動の三四郎なりの解釈や、すれ違いぶりが、どうしても三四郎のぼぅ~とした性格ぶりと重ね合わさって、描写が不十分と思えてしまうのはその後の作品群と対比してしまうからなのでしょうね。
    ところで、この作品ではさかんにイプセンのことが語られていますが、「明治」の新しい青年像への漱石なりの指針のひとつだったのでしょうかね?

    • 佐藤史緒さん
      mkt99さん、こんにちは!

      >三四郎のぼぅ〜とした性格
      漱石作品の主人公は大抵ぼんやり君ですね(笑)
      『坊っちゃん』はコミュ障...
      mkt99さん、こんにちは!

      >三四郎のぼぅ〜とした性格
      漱石作品の主人公は大抵ぼんやり君ですね(笑)
      『坊っちゃん』はコミュ障、『三四郎』は草食系男子、『それから』の代助はニート、『こころ』の先生はひきこもり&メンヘル…って、現代の病理をほとんど網羅してる。残りはアル中&ヤク中と性的逸脱くらいで、前者は芥川と太宰が、後者は谷崎と三島が、それぞれカバーしてる。三島はネトウヨにも親和性が高い。
      これが、学校では教えてくれない日本文学の要点だったりして(笑)
      2014/06/03
    • mkt99さん
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      主体性のない主人公・・・。確かに、よくもまあ明治にあ...
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      主体性のない主人公・・・。確かに、よくもまあ明治にあって受け入れられたものだと思います。(笑)もっとイケイケな時代イメージがあるのですけどね。(笑)
      佐藤史緒さんの主人公性格分析、面白いです。(笑)
      こういうバランス感覚(?)というか、時代の先取りというか、流石、漱石先生ですね!
      本来、文学に親しむということは、杓子定規な小・中・高の学校教育とは相反するものだとは思いますけどね。(笑)
      2014/06/04
  • 授業で取り扱った作品。

    『三四郎』は高校性の時に担任に薦められて読んだけど当時は全く理解できなかったし、つまらないと思った。正直表紙絵も好みじゃなくてもし買うとしても新潮社のこれだけは選ぶまいと決めてた。
    『三四郎』は私が近代文学を苦手にした原因の一つだった。
    結局大学の授業で必要になってこれを買い、数年ぶりに再読。

    んで感想。

    「え、なにこれ面白いんだけど…」
     
    高校の時と違ってストーリーがわかる!三四郎の言っている意味が分かる!
    やっぱり読書のタイミングってあるんだなってすごく実感した。去年一年通して近代文学を克服しようとたくさん読んで近代文学に慣れてきたせいもあると思うんやけど、私の中で夏目漱石が広がってきた。今『こころ』を読んだらまた何か違うかな。

    読んでる間ずっと美禰子さんとよし子さんのキャラデザが波津彬子の絵だった。多分二人ともミステリアスな雰囲気の女性やからかな。
    本文読んでるだけだと美禰子さんって電波で不思議ちゃんでこの人何考えてんねんって感じなんやけど、授業を聞いてると美禰子さんの一つ一つの行動にちゃんと意味があって、そういう見方もできるのかと感動。
    というより現代小説ってきっとキャラクターの心情とかを文章で説明しすぎなんかも。

    面白かったのは4章で与次郎が丸行燈とかを旧式って言ってる場面が笑える。だって私からみたらあなたたちも昔の古い人間だから。

    そしてこの『三四郎』の中で一番私の心を持って行ったのは広田先生!!
    特に11章で持っていかれました!
    後半の三四郎との結婚話!
    あのたとえ話の男ってきっと広田先生だよね!そうに違いない!←
    11章の夢の話からの演出が素敵すぎてもう!
    さんざん匂わせといて「僕の母は憲法発布の翌年に死んだ」で11章をバン!と終わらせるなんて。
    演出が漫画みたいでカッコいい。

    広田先生は確かに母が理由で結婚に信仰を置かなくなったんだろうけど母のことはもう許していると思う。
    ひたすら広田先生のことを考えると切なくて(笑)でも広田先生はこんな考えを言ったら「浪漫的」って言うんやろうな。
    このことを念頭に置きながら『三四郎』を読み返したら彼の言葉の端々から広田先生の人物像がもっとちゃんとしてくんやろうな。

    本当は星五つでもええんやけどなんか悔しいから四つ。
    そして与次郎は早く金返しなよ(笑)

  • 2015年最初の1冊。
    毎年、干支にまつわるものを読むことにしているのですが、未年の今年はこの1冊。
    Stray Sheep, Stray Sheep…。

    地方から上京した青年が都会でさまざまな人に出会い、自由な女性に心惹かれるも、結局彼女は他の男性と結婚してしまう…。
    ストーリーを楽しむというよりも、主人公や周囲の人々とのやり取りに引き込まれる小説だと思います。

    敬愛する先生のために独自の運動に奔走する友人、自由奔放な美しい女性、哲学の煙を吐きつつ学問の世界を遊歩する先生…。
    そんな都会の人々に囲まれた毎日を過ごしつつ、田舎からの手紙への返信に「東京はあまり面白いところではない」と書く三四郎に、切なさと少しのおかしみを感じるのでした。

    描かれている当時の大学の雰囲気が好きだなぁと改めて思いました。
    いろいろな人がいろいろな思いを抱えて日々を送るキャンパスを上から覗き込むような楽しさを感じました。

  • 九州生まれの若者が東京帝国大学の入学を機に上京し、上京を機にどうやら都会というところの仕組みを理解し、そこに生息する知識人なる人種たちの生態を知り、そこから逆説的に、どうやら自分が生まれ育った「田舎」というコミュニティーを再発見し、そうなると殆ど当然にそこにルーツを持つ「田舎者」としての自身のアイデンティティも発見し、そうして新たな認識を迫られた「自分」と「世間」というものとの間の微妙な緊張感に戸惑いながらも順応し、そしてそんな自分と世間との距離感や居心地の悪さは表面的には三四郎の目の前に現れる様々な女たちとの出会いに表象されており、そんなこんなの人間関係やら状況に絡め取られているうちに、この若者はどうやら最終的に僅かながらも自分の立場を見つけ出し、自分と違う人間達の迷い羊たる姿を理解する。
    すなわち学生が色々とイタい経験をして、どうにか少しだけ大人になるのである。

    というような話なのだと個人的には思っている。

    漱石の語り口はまさしく変幻自在、自由闊達の境地にあって、一人の若者の内面のありようを実に活き活きと描き出し、そこに次々とおこる事件を自在に絡め合わせ、つまり一定のテンションを保ったプロットを描くことで良くできた「フィクション」としての構成を築きつつ、その結果としては極めて「リアル」な人間を描くことに成功している。

    そういうわけなので、読んでいるこちらとしてはそのリアリティにどうしても自分のことを重ねることになり、だから学生のころは何だか自分を見せられているようでちょっと恥ずかしくて読んでいられるかと思ったりもしたのだが、それがこうして今読み返してみると、恥ずかしさや決まりの悪さ以上に、これがただただもう眩しく切ないのである。私も絵に描いたような三四郎症候群の若造だったことを思い出すと、何やら胸が熱くなり、何故に過ぎた日々ばかりが眩しく思い起こされるのかとつまらぬ感傷に浸りそうになる自分に気づかされるのである。

    いくつになっても、読む者の心の琴線に力強く訴えかけてくる、月並みな言い方だがやはりこれは傑作なのではないだろうか。

    これも今更なにをということだけど、やっぱり漱石は偉大なのである( ̄ー ̄)

  • 中学生にも意外と読みやすかった覚えがある。
    三四郎がかわいく思える不思議。
    大人になった今読み直すと、またちがって感じるのかも。
    漱石の描く、明治のこの時代の雰囲気が好き。

  • 読みやすくてするすると世界に入っていける。直接書かれていなくても登場人物の台詞やちょっとした行動で心持ちが伝わってくる。三四郎が察するシーンが何度かあってそれが好きだな。頭の中で急に繋がっていくところがよく分かる。
    ふとした時に美禰子の視線が遠くにあるのが、美しい人なのだなと思わせる何かがある。ちょっと小悪魔すぎるけど。気にしていた野々宮との間でなくまったく別の人にとられてしまってあっけなかった。
    恋の話もいいけど広田先生や原口氏の仰ることでハッとした部分がいくつかあった。

  • めっちゃおもしろい、、
    なんか、こんなに昔の話だけど、
    おしゃれやなぁって思った
    文明開化って感じ
    めっちゃいい
    与次郎が憎めなくてツボ
    森見登美彦の小説に出てくる、
    人を面白おかしく批判するけど
    憎めないやつみたいな、、
    いいねえ
    文章も好き

  • 大きな事件や変化があるわけじゃなく淡々としてるけど、その淡々とした中に面白さがある。
    時代こそ明治だけど、学生たちの生活は現代とほとんど変わらない。恋をするのも、恋が叶わないのもいつの時代だって同じ。
    与次郎はなんとなく、よく言う意識高い系の学生に見えてしまった(笑)

  • こんなにダサい男の話だとは思わなかった。
    引くほどダサかった。
    20歳くらいのときに読めばよかった。すっかり大人になってから読むとつっこみどころが多く、「若いってこうだよね」「田舎者だから仕方ないよね」という共感や理解をもって楽しむのもいいが、だんだんなんでこんな寒い若造の話をよまないかんのだ、という気持ちになってくる。

    夏目漱石は「それから」で未来の三四郎ともいえるキャラクターに容赦ない仕打ちをしているので、夏目漱石の評価はもちろん下がらない。
    そして三四郎がこんなにダサい奴だってこと、なんで今まで誰も教えてくれなかったんだ。

  • 『こころ』に続き、『三四郎』も朝日新聞で再連載が始まつてゐます。これを機に久しぶりに読んでみました。
    最初に読んだのは中学生時代。三四郎といへば柔道の連想しかなかつたわたくしは、「中中柔道を始めないな」などと考へながら読んでゐましたが、無論最後まで柔術の話は出てきませんでした。
    さうか。小川三四郎であつて姿三四郎ではないのね、とわたくしは一人恥入り、このことは誰にも言ふまいと心に決めたのであります(今書いちやつたけど)。

    小川三四郎は熊本の高等学校を卒業して、東京帝国大学に入学するため上京します。当時のことですから当然汽車に乗る訳ですが、途中で早くも色色と印象深い人物と出会ひ、今後の東京生活を暗示するやうな出来事もありました。
    初対面の女性とイキナリ同じ宿に泊まるなどして、中中やるもんです。もつとも二人の間には何も起きず、女性からは「意気地のない人」呼ばはりされます。

    東京へ出ると、野々宮さんとか、広田先生とか、お調子者の佐々木与次郎といつた面面との交流が始まります。
    そして三四郎は里見美禰子といふ女性に心を奪はれて行くのであります。この女性は迷羊(ストレイ・シープ)などと意味深な言葉を発する、一風変つた人物に見えます。彼女は三四郎と相対する時には、何か謎めいた言辞や態度を示し、三四郎くんを翻弄するのでした。わたくしの経験上、かういふ女性は避けた方が良い。
    しかし三四郎は与次郎にも気取られるほど美禰子さんへの思ひを募らせる。さうかといつて、これといつた行動を取るわけでもない。さうかうしてゐるうちに、呆気ない展開を迎へるのであります...

    久しぶりに読むと、確かに面白い。瑞瑞しい。これが青春だ。夏木陽介。初期作品に見られる諧謔性も垣間見えて(実は暗い影も差してゐるのですが)、才気迸る文章であります。文学者が「国語の先生」だつた時代の、それこそ教科書みたいな作品であると申せませう。

    それでは、ご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-490.html

全471件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

明治、大正時代の小説家、英文学者。1867年、江戸(東京都)に生まれる。愛媛県松山で教師をしたのち、イギリスに留学。帰国後、執筆活動を始める。『吾輩は猫である』『三四郎』『こころ』など作品多数。

「2017年 『坊っちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三四郎 (新潮文庫)のその他の作品

三四郎 (角川文庫) Kindle版 三四郎 (角川文庫) 夏目漱石
三四郎 (1955年)の詳細を見る 三四郎 (1955年) 夏目漱石

夏目漱石の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
ヘルマン ヘッセ
三島 由紀夫
夏目 漱石
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印

三四郎 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする