三四郎 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1986年1月1日発売)
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本 ・本 (299ページ) / ISBN・EAN: 9784101010045

感想・レビュー・書評

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  • 祖父は明治、父は大正、私は昭和生まれ。
    学生時代は明治の文学がまだあまり違和感なく読めたのかもしれない。
    その頃、『こころ』をきっかけに夏目漱石作品をいくつか読んだ。
    なぜだろうか。何十年かぶりに『三四郎』が読みたくなって手に取った。正直「ストレーシープ」という言葉しか覚えてなかったが、なかなかどうしてつかみから面白い。
    「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」のエピソード。何か自分が言われているような錯覚に陥った。苦笑。
    田舎から都会に出たものにとって全てが新鮮で気後れを伴う。そのうえ、美禰子に翻弄されて、三四郎は一歩が踏み出せない。
    逡巡しているうちに自分の周囲が変わっていくことって今でもありそうな気がする。
    久しぶりの漱石読書、味わいがあった。

  • 三四郎の青春時代の不安や戸惑いが描かれる。
    熊本から東京の大学に入学した三四郎は孤独を感じていたが、理系男子の野々宮先輩や与次郎、広田先生に出会い、少し明るさを取り戻す。
    そんな中で、都会育ちで知的な美禰子と出会い、強く惹かれていく。
    美禰子は野々宮先輩と付き合っているのかと思えば、三四郎に好意があるような態度もみられる。そんな彼女に三四郎は翻弄されてしまう。
    いやしかし、乙女心って難しいなぁ。
    私も三四郎と同じく鈍感な方なので、この美禰子という女性の態度はよくわからなかった。
    美禰子は三四郎に野々宮先輩のことを「責任を逃れたがる人だから、丁度好いでしょう」という場面がある。
    もしかしたら、野々宮先輩に好意を抱きながら煮え切らない態度にやきもきして、そんな彼に嫉妬させるために三四郎に近づいたのかもしれないし、純粋に三四郎に惹かれ始めていたのかもしれない。
    当時は結婚相手が勝手に決められてしまったり、女性から想いを告げることなど難しい時代。
    だから「ストレイシープ(迷える子)」という言葉でなんとか伝えようとしていたのかな。
    迷える子とは三四郎のことだと思って読んでいたが、振り返ると美禰子自身のことだったのかもなぁ。
    それにしても、昔にも草食男子っていたんだね。

    • 1Q84O1さん
      ひろさん♪
      太宰治に続き最近は夏目漱石ですね
      『こころ』『吾輩は猫である』『坊っちゃん』などの作品は知ってますが、恥ずかしながら読んだことは...
      ひろさん♪
      太宰治に続き最近は夏目漱石ですね
      『こころ』『吾輩は猫である』『坊っちゃん』などの作品は知ってますが、恥ずかしながら読んだことはないです…
      学校の授業で何か読んだことあったのかなぁ…(^_^;)
      2023/07/06
    • ひろさん
      1Qさん♪
      太宰治は立て続けに読んだら少しお腹いっぱい気味で(-∀-`; )
      夏目漱石は『こころ』以外の作品も気になっていたので読んでみまし...
      1Qさん♪
      太宰治は立て続けに読んだら少しお腹いっぱい気味で(-∀-`; )
      夏目漱石は『こころ』以外の作品も気になっていたので読んでみました♪
      自分が学校の授業で読んだ記憶がある文豪作品は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』くらいでしょうか(^_^;)
      今どきの教科書にはどんな作品が載ってるんでしょうね?子どもが小学生になったら見せてもらっちゃおうかな♪
      2023/07/07
    • 1Q84O1さん
      ひろさん、お腹いっぱい気味w

      あっ!?
      『蜘蛛の糸』も授業で何となく記憶に…
      教科書にいろいろな作品が載ってると子どもと一緒に文豪作品を楽...
      ひろさん、お腹いっぱい気味w

      あっ!?
      『蜘蛛の糸』も授業で何となく記憶に…
      教科書にいろいろな作品が載ってると子どもと一緒に文豪作品を楽しめるかもしれませんね
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/07/07
  • 著者、夏目漱石(1867~1916)の作品、ブクログ登録は、7冊目になります。

    本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気侭な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく…。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて「それから」「門」に続く三部作の序曲をなす作品である。

    ---引用終了


    最近知ったことだが、森鷗外の『青年』(1910年)は、本作・『三四郎』(1908年)に影響されて書かれたとのこと。

    ・夏目漱石(1867~1916)
    ・森鷗外(1862~1922)

  • 夏目漱石の三部作の1作目ということで読んでみた。

    熊本の高等学校を卒業し、大学進学のため上京した三四郎が、都会の女性、美禰子にひかれつつも成就しない三四郎の淡い恋心が描かれている。
    当時の慣習、大学の様子なども知ることができる。

  • 「この本の要約」
    熊本から、東京の大学に入学するため、東京に来た三四郎は、友人の引っ越しの手伝いをしている時、一目惚れした美禰子と出会った。三四郎は好きである美禰子に自分の気持ちを話せなかった。美禰子は三四郎が自分の気持ちを話せないまま、結婚をしてしまった。
    「三四郎あらすじ」
    熊本から東京の大学に入学するため汽車にのった。車内で夫が満州にいる夫人と知り合う。
    そんなことから夫人と同じ宿の同じ部屋に泊まることになった。
    翌日、駅で夫人に三四郎は「貴方はよっぽど度胸のない方ですね」と言われた。
    学業が始まると同級生である与次郎、与次郎が尊敬している広田先生、光線の研究をしている野々宮と出会いました。
    そして、広田先生の引越しを手伝った時、以前自分が一目惚れした美禰子に出会います。
    その頃、与次郎は尊敬する広田を帝国大学の教授に就任させようとします。与次郎に協力するうちに三四郎も巻き込まれます。
    その後、美禰子から美術展に行かないかと誘われ、美術展に行くとそこには野々宮もいました。

    美禰子は三四郎に必要以上に親密な関係に見せようとして、野々宮を愚弄します。
    美禰子と野々宮の駆け引きのために利用をされた三四郎は怒りと戸惑いを覚えます。
    与次郎から美禰子が結婚すると聞かされた三四郎。
    その相手は、野々宮ではなく彼女の兄の古くからの知り合いでした。
    その頃、与次郎が暗躍していた広田の教授就任のための数々の工作が露呈。
    広田は帝大教授の座に就くことはできませんでした。
    美禰子をモデルにして原口が描いた作品が美術展に出展され好評を博していました。
    三四郎は、広田、野々宮、与次郎と展覧会を訪れた。
    評判の絵には「森の女」という題名がつけられていました。
    三四郎は題名が悪いと言い、「迷羊(ストレイシープ)」と何度も繰り返しました。

  • 三四郎を取り巻く人々が個性的で面白い。そんな人々に影響されながら、成長していく?馴染んでいく三四郎の物語。
    「もっと身を入れて学業に励めよ」と国の母目線で思ってしまったのは、私だけかな。

  • 明治も最終盤の頃、大学に入るために上京してきた小川三四郎の、学業は兎も角も、次第に広がる交友関係に、そこはかとない片想いもあって、まさに学生生活を謳歌するちょっぴりほろ苦い青春物語!
    その後の漱石の小説では、狂おしいばかりの主人公の懊悩と葛藤が描かれるようになりますが、この『三四郎』はどちらかというと、田舎から上京して右も左もわからずに、人並みに悩みはするけれど(笑)、ぼぅ~と流されてあまり深く物事を考えていない、いらいらさせられる系の主体性の無い青年のようですね。(笑)
    物語の進行は流石にドラマ仕立ての場面構成になっていて面白いです。それに三四郎の周りを彩る個性的な面々もなかなか魅力的です。「明治」というと欠かせない広田先生や野々宮のような学究肌の人物や、三四郎も惚れた「明治」の女らしい美禰子、そして、学生時代に必ずいるがさらにそのおっちょこちょいぶりに「明治」の拍車が掛かるかき回し屋の与次郎など、三四郎を取り巻く登場人物が魅力的すぎたが故に、逆に三四郎の影が薄くなっているほどです。(笑)あと、「偉大なる暗闇」とか「迷羊(ストレイシープ)」とか物語の要所を締めるキーワードが、持って回った言い方となっていて、これも「明治」のインテリ層の雰囲気が味わえるなかなか楽しい趣向でした。(笑)
    交友関係の展開はいいとして、三四郎の片想いの行方が気になるところですが、相手の言動の三四郎なりの解釈や、すれ違いぶりが、どうしても三四郎のぼぅ~とした性格ぶりと重ね合わさって、描写が不十分と思えてしまうのはその後の作品群と対比してしまうからなのでしょうね。
    ところで、この作品ではさかんにイプセンのことが語られていますが、「明治」の新しい青年像への漱石なりの指針のひとつだったのでしょうかね?

    • 佐藤史緒さん
      mkt99さん、こんにちは!

      >三四郎のぼぅ〜とした性格
      漱石作品の主人公は大抵ぼんやり君ですね(笑)
      『坊っちゃん』はコミュ障...
      mkt99さん、こんにちは!

      >三四郎のぼぅ〜とした性格
      漱石作品の主人公は大抵ぼんやり君ですね(笑)
      『坊っちゃん』はコミュ障、『三四郎』は草食系男子、『それから』の代助はニート、『こころ』の先生はひきこもり&メンヘル…って、現代の病理をほとんど網羅してる。残りはアル中&ヤク中と性的逸脱くらいで、前者は芥川と太宰が、後者は谷崎と三島が、それぞれカバーしてる。三島はネトウヨにも親和性が高い。
      これが、学校では教えてくれない日本文学の要点だったりして(笑)
      2014/06/03
    • mkt99さん
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      主体性のない主人公・・・。確かに、よくもまあ明治にあ...
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      主体性のない主人公・・・。確かに、よくもまあ明治にあって受け入れられたものだと思います。(笑)もっとイケイケな時代イメージがあるのですけどね。(笑)
      佐藤史緒さんの主人公性格分析、面白いです。(笑)
      こういうバランス感覚(?)というか、時代の先取りというか、流石、漱石先生ですね!
      本来、文学に親しむということは、杓子定規な小・中・高の学校教育とは相反するものだとは思いますけどね。(笑)
      2014/06/04
    • 藤首 亮さん
      mkkT99さん、おはよう
      【令和元年5月12日午前5時~過ぎ】
      明治は遠くなりましたが、今でも三四郎がすぐ隣にいて、僕も美禰子に思いを...
      mkkT99さん、おはよう
      【令和元年5月12日午前5時~過ぎ】
      明治は遠くなりましたが、今でも三四郎がすぐ隣にいて、僕も美禰子に思いを寄せるライバルです。
      三四郎に先を越されたと感じたシーン
      原口と言う画家の家にモデルとなっている美禰子に金を返そうと訪ねる。道を歩きながら「あなたに会いに行ったんです」
      「ただあなたに会いたいから行ったのです」
      2019/05/12
  • 昭和55年3月10日 83版 再読

    時代は明治後半、九州(出身は福岡、学校は熊本)から大学進学の為上京した小川三四郎の、東京での青春物語。前期三部作の一つ。
    当時も大学の講義は面白くなかった様子。コンパのような集まりにも参加する。文化祭に似たような物もある。少し悪めの友人が出来たり、研究室に閉じ籠りがちな研究者も居たりする。文化は変化していても、現在と似たような生活を垣間見る。そんな東京で三四郎は成長していき、淡い恋もする。

    若い頃読んだ時は、見えなかった物が見えたりした。又、これも新聞小説であった事も知り、作中で当時の日本の社会批判を登場人物に語らせている事に驚いた。

    stray sheep 迷える羊 が頻繁に出てくる。三四郎も明治日本も漱石自身も迷える時代だったのかもしれないですね。

    • moboyokohamaさん
      青春という言葉を聞くとこの小説を思い出します。
      青春という言葉を聞くとこの小説を思い出します。
      2022/02/15
  • 明治時代の青春小説。
    時代は変われど、人が恋をしたり悩んだり友情を育んだりする心の動きは変わらない。

    九州から大学入学のために東京へ出てきた三四郎は都会のさまに圧倒されながらも、その地で出会った人たちとの交友の中で東京での居場所を見つけていく。

    三四郎や美禰子の気持ちは、繊細な所作に丁寧に描き出されていたり、自然の事物になぞらえられたりして、直接的な表現よりも心に残るものがあった。

    美禰子が三四郎に言った「ストレイ シープ」。三四郎に対してのみ使われていたものかと思っていたが、美禰子自身もまた「ストレイ シープ」であった。

  • 恋愛経験がない主人公による上京物語。序盤は女性との接し方もままならない三四郎のピュアな一面の描写が描かれていた。まだまだ個人的には難しいと感じてしまった。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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