三四郎 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010045

感想・レビュー・書評

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  • 半藤一利さんの本で読んだ、有名らしいこの場面が出てくる文脈を知りたいがために読んだ。序盤で呆気なく出てきたが、最後まで読む。

    P24 (場面は1908年の筈)
    「しかしこれからは日本もだんだん発展してするでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
    「滅びるね」と言った。—— 熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。


    もひとつ、Pity is akin to love. の名訳として名高い「かわいそうだた惚れたてえことよ」が、与次郎の迷訳として、エピソード的に軽く登場していて、少々意外。

    ストーリーとしては大きな動きもなく、淡々としたお話。田舎から上京した自分の学生時代を思い出した。90年位時代は違うけど。

  • 上京してきた若者が、東京で新しい考え方に触れ、仲間と出会い、淡い恋をする。という、ほんとうにそれだけの青春小説。

    坊っちゃん同様、登場人物のキャラが個性的で、彼ら彼女らのやりとりがいちいちユーモアにあふれ魅力的。

    ストレイシープなど、言葉もいちいち気障なんだが、それがまた良い。

    とりたてて好きな物語ではないけど、ところどころを切りとって飾っておきたくなる名文が随所にあり、さすが文豪。

    終盤で広田先生が語る、二十年前に会った少女が夢に出た、の話が好きです。

  • 2015年最初の1冊。
    毎年、干支にまつわるものを読むことにしているのですが、未年の今年はこの1冊。
    Stray Sheep, Stray Sheep…。

    地方から上京した青年が都会でさまざまな人に出会い、自由な女性に心惹かれるも、結局彼女は他の男性と結婚してしまう…。
    ストーリーを楽しむというよりも、主人公や周囲の人々とのやり取りに引き込まれる小説だと思います。

    敬愛する先生のために独自の運動に奔走する友人、自由奔放な美しい女性、哲学の煙を吐きつつ学問の世界を遊歩する先生…。
    そんな都会の人々に囲まれた毎日を過ごしつつ、田舎からの手紙への返信に「東京はあまり面白いところではない」と書く三四郎に、切なさと少しのおかしみを感じるのでした。

    描かれている当時の大学の雰囲気が好きだなぁと改めて思いました。
    いろいろな人がいろいろな思いを抱えて日々を送るキャンパスを上から覗き込むような楽しさを感じました。

  • 私の稚拙な脳みそだと難しすぎました。
    夏目漱石の小説の中では、読みやすい印象。
    田舎から出てきた三四郎と都会っ子の与次郎の対比と、さらに女を含む関係性は掘ったら面白そう。
    もう一周します。

  • 3,5

  • 熊本から上京のため進学してきた三四郎の学生生活、恋を描いた漱石の作品。特に劇的な展開があるわけでもなく、ある学生の平凡な生活を覗き見たそんな印象。美禰子と結ばれることはなさそうだなと思ってたら案の定。

  • 大きな事件や変化があるわけじゃなく淡々としてるけど、その淡々とした中に面白さがある。
    時代こそ明治だけど、学生たちの生活は現代とほとんど変わらない。恋をするのも、恋が叶わないのもいつの時代だって同じ。
    与次郎はなんとなく、よく言う意識高い系の学生に見えてしまった(笑)

  • 漱石先生の前期三部作一作目、『三四郎』。他の二作、『それから』や『門』と比べると、全体として軽快で鬱屈したところがなく、気分転換になる、というのがこの本の印象。

    ストーリーというほどの抑揚はなく、日常の些細を個性豊かなキャラクターとの悲喜交々を通じて、描いていく作品。ところどころにその時代への漱石先生の風刺とも思われるような表現はあるものの、終始平和である。

    1人の青年が田舎から都会に出て、次々と新しいものに出会い刺激を受けていく姿はなんとも初々しく背中を押したくなるのである。

    ただしこの三四郎はまったくもって積極性に欠ける男であり、日々凡庸にのらりくらりと過ごすのみである。彼自身の主義主張というものは作中ほとんど顔をださない。その彼が唯一、己れから強い興味を持って近づこうとしたのが、美禰子という存在であった。はじめて出会った瞬間、見つめられた瞬間、言葉を交した瞬間。その瞬間の積み重ねが、彼にとっての美禰子の存在を他に代替の効かないものとして彼の心を支配していく。

    まさに恋である。淡い恋である。激情的な恋ではなく、“誰かを好きになる”気持ちの機微が巧みに表現されている。この作品を読んで誰もが、この気持ちわかる!とうんうん唸ったはずである。

    そして漱石先生の、愛に対する信仰にも似た考え方がこの初期の作品からも読み取ることができ、愛というものへの捉え方のシンクロ具合に感銘を受けるのであった。。

  • 三四郎と私の初めての出会いは映画。
    映画はとろとろとしたペースで進み、なんて退屈なんだろうと思った。でも本の方がよかった。

    ただ、主人公が何をなすでもなく、理屈ばかりをこねた金持ちのバカ息子であるので、あまり共鳴できない。
    みちよも残念ながら、旦那の非を推測させるような行動をとり、どうもいやらしい。
    メロドラマ好き向けかもしれない。

    ただし、書かれた時代を思うと、すごいと思う。

  • 古い文体に初めは慣れず、なんにも起こらない話だな〜と思って我慢して読んでいたけれど、やがて文章の端々にユーモアが散りばめられていることに気づいて面白くなってきた。美禰子さんとの関係は三四郎が最後まで情けない感じだった。ドキドキしながら読んでおり、ラストの急展開に悲しくなった。美禰子は無意識では三四郎に惹かれていたのだという解説を読んでなるほどなと思った。偽善家と露悪家の話が面白かった。

著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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