それから (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.66
  • (313)
  • (425)
  • (698)
  • (40)
  • (13)
本棚登録 : 4223
レビュー : 346
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010052

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 夏目漱石、第三段です。
    この作品は恥ずかしながらまったく予備知識がなかったのですが・・・こんなにときめく小説だったとは!びっくりしました。

    むせ返るような百合の香り、降りしきる雨、そんな雰囲気の中、代助が三千代に一大決心をして思いを打ち明ける。
    遅すぎる告白に三千代が「あんまりだわ」と泣いている情景が目に浮かび、この美しすぎるシーンに胸が高鳴りました!
    この慎ましやかな感じ、裏腹に内に秘める情熱が日本的で本当にステキなのです。

    (少ないですが)夏目漱石の作品の中で一番好きになりました。
    私ってこんなにロマンチックだったっけ?と思うほど感銘を受けてしまった(笑)

    まあこの作品は恋愛小説の側面もありますが、その他にも、格差の問題など当時の世相にも触れバッサリ。そのあたりも楽しめました。
    例えば。
    「平岡の家はこの数十年来の物価高騰に伴って中流社会が次第々々に切り詰められていく有様を、住宅の上に善く代表した、尤も粗悪な見苦しき構えであった。
    ~東京市の貧弱なる膨張に付け込んで、最低度の資本家が、なけなしの元手を小売りに廻そうと目論んで、あたじけなくこしらえ上げた生存競争の記念であった。」
    などど鋭く切り込む感じが面白い。

    また、代助のニートぶりにも閉口しますが、それも当時では珍しくないんですよね。
    高等遊民も分かった気分♪
    理想と現実のバランスをとること、人間のプライドの奥深さ、など、いろいろと考えさせるポイントがあり、そういう意味でも素晴らしい作品でした。

  • この小説を読むと、恋の恐ろしさを痛感します。代助が実家から斡旋される結婚や、他の恋愛(社交界に出入りしていたのだから、それなりの出会いもあったはず)ではなく、なぜ、3年前に友人に斡旋した女性(三千代)への愛を貫き通したのでしょうか。実家や世間から断絶されてまでの愛とは一体・・・。しかしまあ、代助に三千代を上げる平岡も平岡かな。三千代を愛していないのなら、平岡も三千代も幸せにはなれないはずなのに。三千代を愛していないのに、世間体を保つため(?)、ちゃっかりと代助の実家に代助の奇行を報告している(新聞社勤めなのだから文章はうまかっただろう)のも抜け目がないというかなんというか。この小説で、幸せになった人はいたのでしょうか?代助も最後はどこまでも電車に乗って行こうとし(自分の選んだ選択の結果からの逃避?)、三千代もどうやら不治の病気だし、実家は代助と絶縁するし、平岡も妻を奪われるし。愛を貫くことで、これだけの代償が生じうるのだから、恋愛や結婚にはリスクがあるのかなあ。

  • レフ・トルストイ『コサック』の解説に触発され久しぶりに読んだ日本文学。遊民代助が、友人平岡の妻・美千代と共に堕ちる物語。その過程の美しさ、やるせなさ、凄まじさは、頁を繰る度心に一歩一歩近づいてくる。迫ってくる。最後は代助と併走する自分に気づく。

    ハイライトは百合の中での告白と「赤」。
    にしても、我々はどうしてこうも「『趣味の審判者』的ニート」に憧れるのだろう?

  • あなたが学生の頃に、大好きだった兄と、東京で同居していたとします。
    兄の友人の長井と言う男が居て、仲良く三人で遊んだりします。
    あなたはこの長井に惚れてしまいます。でも秘めています。
    秘めているんだけど、内実、この長井も自分のことが好きだろう、と感じています。
    兄もそんなことを薄々気づいている様子です。

    そしてもう一人、ここに平岡という男が居て、これも兄の友人。長井の友人でもあります。詰まり、三人組です。
    この平岡も、どうも自分の事が好きなようだ、と感じます。モテ期ですね。
    でも、あなたは、長井の方が全然好きなんです。

    あなたは、将来、長井と結婚することになるのでは、と期待をしていました。

    ところが。

    まず、兄が早世、若死してしまうんです。
    実は親元もちょっと困窮しています。たちまち、あなたは大東京で寄る辺ない立場になってしまいました。
    そこに、期待の長井さんがやってきて。
    言うことには。
    「平岡と結婚したら良いのではないでしょうか。是非そうしなさい」

    それでまあ、とにかく結果として、平岡と結婚します。
    平岡は銀行員になる。そして関西の支店に行く。当然あなたも行きます。長井さんは東京に残ります。
    長井さんは、大金持ちの次男坊です。文化芸術にいそしむだけで、働きません。働かずに親から毎月、莫大な仕送りを貰っています。優雅に趣味良く暮らしています。何せ親と兄が経営者です。ぶらぶらしてても、働く気になれば、学歴も教養も人間性も申し分ないので、いつでも重役クラスで働けます。人も羨む立場です。

    数年が経ちます。
    新米銀行員である平岡と、優雅な高等遊民である長井さん。ふたりは親友だったんですけど、大阪と東京に離れ、暮らしぶりはもっと離れ、徐々に疎遠になってきます。

    あなたと平岡との間には赤ちゃんが産まれます。
    が、不幸にしてあっという間に病死してしまいます。
    その頃から、あなたはちょっと体調が悪くなります。
    医者に行くと心臓とかナントカと言われて、どうにも長生き出来ないのかな、と感じます。
    そして、もう子供は産めないだろう、ということです。

    その頃から、夫の平岡が不実になってきます。
    帰宅が遅くなります。
    もともと、長井さんに比べれば俗物なんですが、酒や女で金使いが荒くなります。
    夫婦でなごやかに、笑いながら心休まる時間。と、いうのが無くなります。
    悪いことは重なるものか、上司の不祥事に巻き込まれ、銀行を退職することになります。

    あれから数年。
    呑気な学生だったあなたは。
    結婚して、知らぬ街に引越して、主婦になって、子を産んで、子に死なれ、健康を損ないました。
    それから、夫と気まずくなり、小銭に不自由するようになりました。でもそれはみっともないし、誰にも言えません。

    そして、東京に帰ってきました。
    長井さんは大喜びで迎えてくれます。
    引っ越しのこととか、何くれと面倒見てくれます。心配してくれます。仕事してないし、お金あるし、暇ですから。
    夫の平岡と、旧交を温めます。
    でも、あなたが傍から見ていると。どこか、若い頃のように仲良くは無いんですね。仲良くしようとしてるんですけど。仕方ないですよね。

    あなたは、夫の平岡と、小狭な家に住み始めます。
    夫はあくせくと就職活動中です。上手くいかないのか、ちょっと荒れたりします。
    なんだかんだ、細かい借金が返せないまま、ストレスになってきます。
    あなたも体調がどうもすっきりしません。
    長井さんは、夫の平岡を心配してくれるけど、平岡はどうも長井さんに素直にならない。強がります。仕方ないですよね。
    家にいるしかないあなたは、夫の借金の対応に晒されます。困ります。でも平岡はあくせく出歩いて取り合ってくれません。みじめです。
    あなたはどうしようもなくなって、恥を忍んで、長井さんにお願いします。長井さんは二つ返事で、ぽんっ、と貸してくれます。

    そして。

    長井さんとふたりでいると、どうにもなんだか、やっぱりそういう空気感がただよいます。そんな気がします。
    あれから随分と経つのに、長井さんはまだ独身なんです。
    会社員としてすり減って、俗物度が増している夫と比べると。長井さんは、あのころのまま。シュッしてます。誠実です。

    日々が過ぎます。
    夫の平岡は、何とか就職します。
    就職するとまた忙しくして、午前様が続きます。
    あなたは体調がいまひとつです。
    寝込むほどではありませんが。おおかたは独りで家にいます。

    長井さんとは時々会います。
    夫に会いに来て会うこともあれば、ふたりきりで会うこともあります。
    ふたりきりで会うと、なんだかそういう空気感が濃くなります。
    そんな気がします。でも何も起こりません。
    長井さんには縁談が起こります。当然、政略結婚です。親が義理ある相手です。断れません。
    断るなら、実家から仕送りが貰えなくなります。

    そんな具合に。くるくると日々が回って。
    長井さんが縁談、受けるか蹴るか。煮詰まってきます。
    煮詰まってきて、ある日、あなたに向かってこういいます。

    「昔から、昔から愛していたんです。
    若かったから、平岡との友情を優先する、という愚行をしました。
    ごめんなさい。
    今でも愛しているんです。
    僕の存在にはあなたが必要です。
    平岡はあなたを愛していますか?
    あなたは平岡を愛していますか?」

    さあ、どうする。

    さあ、どうなる。

    ##########

    まあ、つまり、こういうお話なんですね。夏目漱石「それから」。
    いやあ、すごいですねえ。
    民放のよろめきテレビドラマみたいですよねえ。たまりません。

    この小説が、実に面白いです。心理劇です。僕は大好きです。
    風景の描写とか、長井の考える観念論とか文明論とか、色んなことがあります。けれども、取っ払って考えると、上に要約したような、お話です。

    僕は夏目漱石さんの文章というか言葉使いというか、リズムというか、そういうのが大好きです。
    随分と以前に、長編小説は全部読みました。今回、ふっと読みたくなって再読。
    うーん。おもしれえ。至福でした。

    (実は電子書籍で無料で読みました。「それから」だけ、何故か旧仮名遣い版も電子書籍になってるんですよね。ありがたいことです。
    でも、本の見てくれとしては、新潮文庫の安野光雅さんの絵が好きです)


    ###


    特段のブンガク愛好者だったりしない限り、夏目漱石さんの小説は、いきなり読んでも、おもしろくないと思います。
    ヘンな言い方ですけど、ワサビとかウニとか山羊汁とか生牡蠣みたいなものです。
    初めて食べてみて、いきなり口にして、美味しいなんて感じないと思います。
    それでもって、一部の食通気取りの人がありがたがって食べる訳ですね。
    (皆さんどうですか?意外に、太宰治とか好きな人が居ても、夏目漱石って読まれてないと思うんですよね)

    夏目漱石さんの小説、まあいわゆる中編・長編小説っていうのが、15作くらいあるんですけれど。
    正直、読みやすくって、ちゃんと展開がドラマチックで、面白い小説って、そんなにいっぱいありません(笑)。断言します。
    いやそりゃ、山羊汁大好きっていう食通さんなら別でしょうけど(笑)。

    もしも、「夏目漱石って意外とちゃんと読んだことないから、読んでみてもいいなあ」と思う人がいたら。
    ゼッタイに、まず読んではいけないのは「吾輩は猫である」です。
    アレは読むなら第1章だけで良いんです。残りは、漱石を全部読んじゃって、禁断症状になったら読めば良いと思います。面白くないですから、あれ。

    オススメは、まず「坊ちゃん」。その次に「それから」だと思うんですよねえ。絶対。
    (それから「こころ」「行人」あたりですかね…)

    ###

    あと、「それから」は、長い歳月で多少映像化されていますが、なんといっても1985年の映画「それから」。コレ、傑作です。
    松田優作さん、小林薫さん、藤谷美和子さん、草笛光子さん、中村嘉葎雄さん、笠智衆さん。監督が森田芳光さん。
    美術的にも映像的にも、これは本当に素敵です。
    この映画を見てから原作を読むと、読みにくい部分がスッと読めると思います。

  • 友情。むかしの恋心。職業。学問。健康と病。親と子。精神。金銭。結婚。すべてに結論を出すことなく日々を過ごすことは、彼のようにその経済的能力がある身にとっては自由に見える。時折アンニュイに陥ることも、何か為さねばならぬと発起することも。
    それでも本当の意味で、自分の意志で何かを得たいと思ったとき、その「自由」が幻だったことに、もしくはそれが、とてもあやういバランスの上に成り立っていたことに気づく。
    雨の降りしきる中、思い出の百合の香りにつつまれた部屋で告白をする場面はとてもロマンチックだが、同時に浮世離れした二人の様子を想像させる。
    意志の人になった彼は、かりそめの「自由」から新しい世界へと旅立っていく。最後くどいほどの「赤」の描写は、燃え盛る炎の中崩落する彼の《これまで》と、それをくぐり抜けて彼女と生きていく決意の《それから》であるように僕は思う。それはある意味で狂気と隣合わせにあるのかもしれない。

    学生時代ぶりに、本当に久しぶりに漱石を読んだ。描写や言葉選びのセンスが飛び抜けていて、村上春樹の変な夢から覚めたような心地がする。
    三千代の話しぶりが良い女過ぎてもう。川端康成も良いけどやっぱ漱石だな、と思った。しばらく夏目漱石しか読めない気がする。

    代助はつまりダメ男だけど、その迷子ぶりに親近感を覚えてつらい。平岡との議論は、どちらも不景気の迷羊たちの水掛け論にうつる。

    「こう西洋の圧迫を受けている国民は、頭に余裕がないから、碌な仕事は出来ない。悉く切り詰めた教育で、そうして目の廻る程こき使われるから、揃って神経衰弱になっちまう。話をして見給え大抵は馬鹿だから。自分の事と、自分の今日の、只今の事より外に、何も考えてやしない」(p.103)

    「僕みた様に局部に当って、現実と悪闘しているものは、そんな事を考える余地がない。日本が貧弱だって、弱虫だって、働らいてるうちは、忘れているからね。世の中が堕落したって、世の中の堕落に気が付かないで、その中に活動するんだからね。君の様な暇人から見れば日本の貧乏や、僕等の堕落が気になるかも知れないが、それはこの社会に用のない傍観者にして始めて口にすべき事だ。つまり自分の顔を鏡で見る余裕があるから、そうなるんだ。忙がしい時は、自分の顔の事なんか、誰だって忘れているじゃないか」(p.105)

    迷羊、迷羊。とにかく恋は罪悪だな。

  • いつ読んでもあまり印象が変わらない「こころ」とは逆で、「それから」は読むタイミングによってだいぶひっかかりを感じる箇所が変わってきている。
    「明暗」の津田と清子を思い浮かべつつも三四郎を振って結婚した美禰子のそれからなんだよなぁとあの「三四郎」のさわやかな青春小説のような文章からは程遠い。最初はのらりくらりとした理屈っぽい今でいう金持ちの家のニートみたいな暮らしをしている代助の思索の歴史を読んでいれば済んでいたのに、ふと三千代を好きだったと天啓のように思い出してからは息が詰まるやりとりが続く。夏目漱石は好いた惚れたの話を書いても結局社会について書いている。冒頭の椿の描写とラストの「ああ動く、世の中が動く」から始まる赤い世界がお見事。
    いつ読んでも今読むべきと思わせる小説だと思いました。

  • 生活をとるか、恋愛をとるか‥
    文字に起こすとなんとなく昼ドラみたいな展開だけど、実はとても高尚な問題提起だと思う。

    苦悩のすえ、物語の最後に代助がとった行動がとても心に残った。
    「三四郎」「門」と一緒に読んでほしい。

  • 時は明治時代。西洋化されていく日本。嫌世感から働こうとしない主人公。しかし、嫌世感というのは言い訳で、実は三角関係となる想い人があった。時代背景、人間関係の構図は、『こころ』にも相似している。

    主人公長井代助30歳。成功した実業家長井得の次男として生まれる。東大卒。兄長井誠悟が事業を継ぐ。

    東大の同級生だった平岡、菅沼。菅沼の妹だった三千代。代助と三千代はお互い想いつつあったが、菅沼がチフスで死去。卒業後、平岡が三千代への想いを代助に告白したことにより、代助が平岡と三千代の間を取り持ってしまう。平岡と三千代は結婚し、銀行マンだった平岡は転勤により三千代を連れて関西へ赴く。

    3年経過し、平岡が三千代を伴って帰ってくる。三千代は出産するも子供を亡くし、また平岡は、部下の使い込みで実質解雇になった。平岡は酒を飲み荒れるようになり、部下の使い込みの返済と酒代で借金を抱えてしまう。

    平岡に「何故働かない」と問われ、代助はかくのごとく答える。

    「何故働かないって、そりゃ僕が悪いんじゃない。つまり世の中が悪いのだ。もっと、大袈裟に云うと、日本対西洋の関係が駄目だから働かないのだ。第一、日本程借金を拵えて、貧乏震いをしている国はありゃしない。この借金が君、何時になったら返せると思うか。・・・」

    社会のせいばかりにして、自分には責任がないという。一体、なんて奴だろう。ぶんなぐってやろうかと思った。

    一方、代助は、良家の子女との縁談が進もうとしている。

    平岡の命により、三千代が代助に500円、無心に来る。義姉からなんとか200円を工面する代助。三千代との再会により、代助は、自分の中の「真実」「自然(こころ)」に気づく。代助が前向きに動けなかったのは、嫌世感ではなかったのだ。実は代助は三千代を愛していた。

    父の進める縁談を断り退路を断った上で、三千代を呼び出し、三千代に告白する代助。三千代の同意を取り付けた上で、平岡にも三千代をくれるよう告げる。

    平岡は三千代を代助にくれてやることを同意するも、三千代は病気で臥せっており、夫としての最後の義務を果たす旨を代助に告げ、代助を三千代に会わせない。またその間、平岡は長井家に代助の不義を密告する。代助は長井家に絶縁され、生活費の仕送りが絶たれる。

    三千代にも会えない、実家からも断絶された代助。

    赤い郵便筒、赤い蝙蝠傘、真っ赤な風船玉、赤い車、赤い暖簾、赤い旗。赤い電柱に赤ペンキの看板。「仕舞には世の中が真っ赤になった。そうして、代助の頭を中心としてくるりくるりと焔の息を吹いて回転した。代助は自分の頭が焼け尽きるまで電車に乗って行こうと決心した。」(完)

  • 大学時代に読んだが、全く記憶から飛んでいた。読んでいたのかさえ定かではない。休日に集中して読んだので2日で読めた。主人公の代助は、いわば今の時代のニートで親の金に頼って暮らしている。しかも30歳。そして、人妻に手をだしてしまうのだからとんでもない奴といえば、とんでもないやつ、ということになるのだが、この代助も相当な教育を受けてきたらしく、文明と個人の関係などについてはいっちょ前の相当立派な思想を持っている。この思想に関する部分は読みごたえがあって、読ませるものがある。他の漱石作品でも感じることだが、よくもまぁこうやって話を膨らませて、2,3ページで話がついてしまいそうな話を300ページ以上にもわたって展開させる筆力には脱帽してしまう。読むほうも疲れるのだが。肝心の代助は、最後は親に見捨てられ、途方に暮れる、という感じで終末を迎える感じか。はっきりとは描かれていないが。結婚する前から好きだったという、手を出してしまった人妻も体調が悪く、悲劇的な小説だと思う。3部作の1作だが、この1作だけでも、相当読みごたえがあるのは確かである。少し読むのに疲れさえ、した感じがした。

  • 学生の時以来、久しぶりに読みました。

    大切な友人に自分が愛している人を紹介し、結婚まで至らせるという切ない気持ち…結局、愛した人を友人から奪うのであれば…と思う。しかし、自分の気持ちを押し殺したということはわからないでもないと主人公に共感してしまうのです。今読んでも古いと感じない恋愛小説。これが本当の恋愛小説なのではと感じてしまいました。

    また、最後の「赤」は主人公の今までの苦悩、情熱、罪悪感を綺麗にまとめ表現されていると思いました。読んだ瞬間はあまり感じませんが、本を閉じた瞬間に、主人公の無職だった今までの時間が赤で染められ、愛した人の好きな花の色「白色」との対比が、愛に生きていく主人公のこれからを表していると思いました。

著者プロフィール

慶応3(1867)年、現在の新宿区生まれ。明治23(1890)年、帝国大学文科大学英文科に入学。明治28(1895)年から29(1896)年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。明治33(1900)年9月、イギリス留学出発。明治38(1905)年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載。明治40(1907)年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などを連載。『明暗』が未完のまま、大正5(1916)年12月9日、胃潰瘍にて永眠。

「2018年 『道草』 で使われていた紹介文から引用しています。」

それから (新潮文庫)のその他の作品

それから (青空文庫POD(シニア版)) オンデマンド (ペーパーバック) それから (青空文庫POD(シニア版)) 夏目漱石
それから (旺文社文庫) 文庫 それから (旺文社文庫) 夏目漱石

夏目漱石の作品

ツイートする