道草 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1292
感想 : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010144

作品紹介・あらすじ

海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻お住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。その上、夫婦はお互いを理解できずに暮している毎日。近代知識人の苦悩を描く漱石の自伝的小説。

感想・レビュー・書評

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  • 25年前(大学生時代)に読んだときは、何か暗い小説だなと思った程度。漱石作品の中でもかなり下のほうにランクされていたはず。
    それが「道草」執筆時の漱石とほぼ同年齢になって再読してみたところ…。あまりに身につまされ涙が止まりません(苦笑)。
    この小説が味わえるようになったことを喜ぶべきか悲しむべきか。
    そんなこと自分じゃ分かるわけないです。
    次は明暗を再読しようと思っています。

  • 漱石の文学は一面的に読むものではない、この小説でも多面的に考えさせられる。

    このことがひどく気になった。

    主人公「健三」は大勢のきょうだいの末っ子で生まれてすぐ養子に出され、それが「健三」の精神的放浪になり、行き場所を失うのにつながり、本人が悩むとはなんてことだろう。

    昔は家名を残すために養子縁組が多かっただろうし、子どもがない夫婦が寂しさのためもらい子しただろうが、「健三」の養子先は将来めんどうを(働いて)みてもらうがためもらったのだ。それでは子どもが道具ではないか。

    養家先の不都合で9歳ぐらいの時に実家へ帰されたけれど、籍は養家先に20歳過ぎまであり、吝嗇な養父、養母の後難を恐れ、実父がそれまでの養育費を払い証文まで交すすさまじさ。

    その実父もいらなかった子が返ってくるなんて、という態度なのだからたまらない。

    三つ子の魂百までも、精神的苦しみは性格をゆがめる。

    もう結婚して娘も3人いる主人公、その養父母に、きょうだいに、妻の父に金銭的にたかられるのだ。しかも夫婦の関係がうまくなく、錯綜した悩みに襲われる。

    悩みに悩む主人公を、こんなに追い詰めてどうしようというのだろうと、怖気づいてしまった。『道草』なんて題はとんでもない。


    全くこの通りではないだろうが漱石の自伝的作品という、なんとつらい人生だったのだろうね。

    しかも、これがために文豪になったかも知れず皮肉なものだ。

  • 形を変えて繰り返されるもの、というようなニュアンスの言葉と、いつまで経っても同じ輪を回る夫婦との関係性が印象的でした。
    夏目漱石の作品は、本当に繊細です。小難しい事を書いている訳ではないのに、心の在り方や人の気持ちの向き方の複雑さや、単純さを本当に細やかに描いていると思います。
    子育て中&仕事へ向かう途中にずっと読んでいたので、また時期がきたらじっくり読みたい。

  • (個人的)漱石再読月間の14。
    残すは未完の『明暗』のみ。

    「小説として発表された自伝」とされている。非道い親族たちで、何故漱石が、お金がなくてツライ話ばかりを書いているかが明らかになる。楽しいことのひとつもない話。


    漱石先生が神経症でひどい人だったということはよく知られていることではありますが、
    親族、家族、胃潰瘍、神経衰弱の問題なしに、長生きしてもっとたくさん書いてほしかった。
    ここまで再読してきて本当にそう思う。

    せめて、明暗はもう少し先まで読みたかったなぁ。大好きなんですよ、『明暗』。読み返すの何回目だろう。

  • 人間関係の描写が生々しく実にリアル。面白い。妻とのやりとりはすれ違いはあるものの、漱石さんの優しさを感じられる場面もあり、ホッとする。

  • 解説が非常にわかりやすかった。
    内容は、まったくもうな主人公と妻の言葉足らずの間柄に肉親だけにストレートな思いのたけ、でもそれももちろん心の中だけに留めて、と、とても歯がゆい聞いてて嫌になっちゃう人物なのに、ついつい読み進めてしまう。
    面白いんだよなぁ。

  • この題名はどう解釈すれば良いのだろうか。

    注釈の殆どが漱石に関する出来事であるように、半私小説であった。
    島田にしろ御常にしろ、経済的に困窮している高齢者が登場するのは珍しかった。
    『硝子戸の中』を読んで漱石の複雑な家庭環境についてある程度知ってはいたが、養親には良い印象がなかったのかと感じた。
    また、一筋縄では行かない夫婦仲も漱石とその妻の関係を窺わせる。
    しかし正直に述べればどこにでもいる平凡な夫婦だと思う。
    時代が進んでも男女は分かり合えない存在なのかと感じ入った。
    健三の胸内を暫し過る”漠然とした不安”は、そう現代人と変わらないものではないか。
    人付き合いや生活苦に喘ぐ姿は、全くもって健全に見える。
    体調を崩したり子供が増えたり、僅かな変化こそ人生なのではないかと漱石の作品を読むと気付きを得る。

  • どうも夏目漱石の作品は文学センスが足りないのか、楽しめない。昔の夫婦はこんな感じで「亭主」だったんだろうなとか思いつつ、それが妻君、姉と場面を変えても続くので冒頭の1時間で断念。

  • 読んでて重苦しい気持ちになった。養父母、姉、妻の父からお金をたかられる健三ですが、最後は養父と手が切れたように見える終わり方になっている。でも養父はまた現れそう。養子としての苦悩、実家や妻とのすれ違いに悩む様子が描かれていた。登場人物が全員善人ではない(かといって悪人でもない)ところかまたリアル。

  • 2021.12.15 品川読書会で紹介を受ける。

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著者プロフィール

夏目漱石(1867~1916)
小説家、評論家、英文学者、俳人。本名は夏目金之助。明治末期から大正初期にかけて活躍した。近代日本文学の頂点に立つ作家の一人。代表作は『坊っちゃん』『三四郎』『こゝろ』『明暗』など。『吾輩は猫である』は、『ホトトギス』に連載され人気を博した。その批評精神とユーモア感覚は、現代も全く古びていない。

「2021年 『大活字本 吾輩は猫である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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