硝子戸の中 (新潮文庫 な-1-15 新潮文庫)

  • 新潮社 (1952年7月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784101010151

みんなの感想まとめ

他者との関係性や自身の内面を深く掘り下げたエッセイで、著者の人間らしさが際立っています。身近な出来事を通じて、兄弟や母、友人、さらには飼い犬との関わりを描写し、真面目なトーンながらもユーモアが漂う文章...

感想・レビュー・書評

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  • こ他人に対する「信頼」と「疑い」の間で揺れ動く著者の人間らしさに共感しました。

  • 漱石のエッセイです。兄弟のこと、母のこと、自分のこと、友達のこと、飼い犬のこと・・・・・
    身辺に起きたことを語るその描写は、真面目に言っているのに妙におかしく思えたり。何だろう、このおもしろさみたいなものもあり。それだけでなく、さりげない優しさも文章全体にしみわたっています。

    人との会話の中で、自分の主張もするけれど、(それが結構おもしろい)相手への気遣い、思いやりが感じられるのです。メンタルを病んだことのある漱石だからこその温かみのある言葉。「漱石さんて、いい人なんですね」と声をかけたくなります。

    他人の死を通して、自分の死を考える描写に、心に訴えかけるものがありました。49歳で亡くなった漱石の晩年の執筆であることから、目に見えない何ものかに、つき動かされているようにも感じてしまいます。

    人生の夕暮れの物悲しさが漂う、アンニュイな雰囲気がありながら、木漏れ日が差し込むような明るさも合わせもつ、そんなエッセイでした。

    硝子戸ごしに、外をぼんやり眺めている漱石、絵になるなあと思います。

  • 1915年 朝日新聞連載 随筆39回

    漱石後期、胃潰瘍大病後、持病を抱えての執筆。
    書斎に籠り、硝子戸の中から、世の中を見る。
    時折、硝子戸の中に、訪問者がある。
    漱石の身近な出来事を綴っている。
    死に対する随筆も幾つかあり、後期の死生観を表現しているのだと思うが、私が好きだったものは、漱石が、楽しそうだった以下の2項ですね。

    9・10
    友人O(太田達人)が、上京して久しぶりに会った楽しそうなひとときの話。漱石の少ない友人の一人で、教師。なかなか、人を誉めない漱石が、人格も頭脳も素直に認めている。

    34
    頼まれて高等学校等で、生徒達の利益になるように意識して講演をする。それでも、わからなければ、家まで来てくれて良いからと、本当に生徒を自宅に招く。又、他の生徒達から、講義を理解したという手紙をもらって素直に喜ぶ。

    いつも物事を俯瞰的に眺めている感じだけど、本当に自身の事を書いている様子が良いなと。

  • 本棚にあったのを再読。書斎の硝子戸の中で世間と隔たって佇む漱石のイメージを思いながら読んだ。

    文章がリズムが良くすらすらと頭に入ってくる。漱石の文章が私は好きだ。明治の人も今の人も頭は1つ、手足は1組ずつ、内臓の機能だって違いはないのだからテクノロジーが進んでも人生について思うことはさほど変わりはないだろうと思いながら読む。「死ぬ時まで生きる」は腑に落ちた。

    胃潰瘍が生涯の宿痾なのだから神経の細かい人だったのだろうと思う。犬のヘクトーの死、2代目の猫の死などが印象に残った。

    読むのは2回目か3回目か。たまに読みたくなるから本棚に置いておく。

  • 漱石さんの随想集。読者が訪ねて来たり、手紙を送ってきたり、漱石さんお困りでした。
    暗くはないけど、うら寂しい雰囲気が漂っているのが良かった。

    ある日、物事の整理ができないという女性が相談に来た。一度他所へ行ってリフレッシュしてみたらいいとアドバイスする漱石さんに女性は、こんがらがっているのは物ではなく心の中だと。情報が入ってくる一方で処理しきれないらしい。
    女性から見れば漱石さんの中身は整っているように見える。内臓の位置まで整っているように見える。(なるほど。何となくイメージできる笑)
    漱石さんは、そういう悩みは自分のところではなくお寺へ行きなさいと。まともなアドバイスだと思った。
    やっぱり漱石さんは情報を処理するのがうまいのでは?と思った。

    2、3年前、新宿の漱石山房記念館に行って、原稿や様々な展示を見て数冊本を買ったものの、あまり読めていなかったので、数年ぶりの漱石さん読了でなんだか嬉しい!

  • 20冊目『硝子戸の中』(夏目漱石 著、1952年7月 初版、2011年8月 改版、新潮社)
    死の前年にあたる1915年1月〜2月に朝日新聞で連載していた、漱石最後の随筆。タイトルは漱石の書斎がガラス窓に囲まれていたことに由来するが、異なる位相から世情と自らの過去を俯瞰するかのようなその内容を言い表してもいる。
    床に伏せることが多くなっていた漱石は、やはり自分の命が長くないと意識していたのだろう。「死」をトピックにしたものが多く、彼の心情が慮られる。

    〈私は「そんなら死なずに生きていらっしゃい」と云った〉

  • 「死は生よりも尊(たっ)とい」p23

    晩年、漱石先生が辿り着いた死生観だそうです。
    しかし、人に対しては
    「もし生きているのが苦痛なら死んだら好いでしょう」と助言ができない自分をもどかしくも思っている。そうして
    「もし世の中に全知全能の神があるならば、(中略)私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る」ほど苦しんでいる。p97
    これは本当にただの随想集なのでしょうか?? 

    ****
    読んでいる間ずっと『こころ』の続編?!という思いを禁じ得ませんでした。(本作は『こころ』の後に書かれたそうです)

    「不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう」p98

    漱石=〈先生〉が硝子戸の中から見つめていたのは、電信柱でも社会でも他者でもなく、紛れもない自分の「こころ」だったのかもしれません。
    本書は『こころ』のアナザーストーリーとしても読めるでしょう。

  •  お彼岸も近くなり、なんか漱石が読みたくなり手にした随筆。一つが約3ページの39篇から成る作品。大正時代前期に書かれた文豪のブログを読んでいるよう。さすがに今は見慣れない単語が多いです。
     12、13の失礼な男の話が秀逸。些細な事を気にしては悩み、胃潰瘍になり、それらを紛らわすかのように小説を書いた漱石。まだ読んでいない小説を読みたくなりました。
     「ある程の 菊投げ入れよ 棺の中」
    この句が大塚楠緒に詠んだことも初めて知りました。安野光雅のカバーも素敵です。

  • 硝子戸の中で過ごした晩年の漱石の随想集。

    硝子戸の中で、漱石は過去の思い出にふけったり、来客と応対したりする。
    自身の死を近くに感じながら、死を身近なものとして当たり前のものとして捉える。

    「死は生よりも尊い」
    そのようには言っても、ただ死を肯定するのではなく、生も肯定する。
    最後、硝子戸を開け放った漱石は文章を書くことでの生の肯定を示したかったのではないか、と感じた。

  • 面白い。やっぱり漱石は文が上手なと思います。

  • 全編穏やかで静かな文体ながら、内容は死を意識したものや、今は亡き人々の思い出が多い。
    中でも飼い犬のヘクトーの死は印象的。意外にも猫よりも犬が好きだったらしい。
    また夏目先生ともなると、さすがに様々な人から勝手なお願いをされることが多かったのだなと改めて知った。
    子供のころの思い出、両親とのこと、母への想いなども知ることが出来て、興味深かった。

  • もっと漱石の内面を知れると期待していた。
    彼の小説をさらに読んでから、再読したい。
    まだそれほど、彼の過去や思い出に興味をそそられなかった。
    とはいえ幕末や明治初期の話は単純に興味深いし、面白い話もたくさんあった。

  • 昔の作家と読者の距離感が、近すぎて怖い。
    自分の人生を元ネタに小説を書いてくれとか
    『ミザリー』もかくや(°_°)
    それでまた、そういう人たちにも
    真面目に相手をする漱石がすごいわ。
    こうやって随筆の「元ネタ」にしてるしね。

    子供時分の思い出から、執筆状況や
    今の暮らしについて感じること
    あちこち話題を飛ばしながら
    思いついた時に書きつけていたのかなぁ。
    なんだかこの文豪が
    弟子たちに愛されていた理由がわかる気がする。
    読んでいて、ちょっと好きになりましたもの。

  • (個人的)漱石再読月間。小説15作品と短編集3冊。これにてファイナル。

    漱石先生の亡くなる前年に書かれたエッセイ集。病床から外を眺める静かな諦念。思い起こす面倒だったあの人も恋しい母も懐かしい幼なじみももはや亡い。

    2020年4月から5月。特別な時間の中で、「いつか、気力的体力的もしくはその他の理由で本が読めなくなる時が来る。その前にこれだけは再読しておきたい。そうすれば読書人生に悔いは残らない」とぼんやり考えていた計画を、いきなり実行に移す時が来てしまった。家にこもってただひたすらに読書読書の日々。

    これでほぼ達成。なんとも言えない充実感。
    プルースト先生、埴谷先生、漱石先生、ありがとうございました。もういつでもOKです。

    さて!ここからは徐々に普段の読書生活に戻していきますよ。(世の中が戻ることが大前提ですが祈)





  • 三浦しをんの「しをんのしおり」を読んでいました。
    どうもついていけません、途中で投げ出しました(⌒-⌒;)
    彼女ってこんなに飛んでいましたっけ!?
    随筆なんですが話題が私にはナウイ過ぎて、どうも~

    じゃあ、同じ本の厚さということで、
    夏目漱石の随筆「硝子戸の中」を引っ張りだしました。
    こんなにも違うものでしょうか!
    この両書の時代差は100年ぐらいあるのでしょうか?
    執筆時の年齢差もあるかもしれません、

    漱石のこの本には「死」という言葉がやたらと出てまいります。
    学生時代に読んだ時はなんと陰気臭い本だなという感想がありましたが、
    今の私にはなにかしっくりきます。私も年取ったんですね~


    『「じゃ絶交しよう」などと酔った男が仕舞に云い出した。
    私は「絶交するなら外で遣ってくれ、此処では迷惑だから」と注意した。
    「じゃあ外へ出て絶交しようか」と酔った男が相手に相談持ちかけたが、
    相手が動かないので、とうとうそれぎりになってしまった。』

    もう一つ
    『次の曲り角へ来たとき女は
    「先生に送って頂くのは光栄で御座います」と又云った。
    私は「本当に光栄とおもいますか」と真面目にに尋ねた。
    女は簡単に「思います」とはっきり答えた。
    私は「そんなら死なずに生きていらっしゃい」と云った。


    さすがですね~、『生きていらっしゃい』
    これからは、「さすが」という漢字は「漱石」にして、
    「流石」という漢字はローリングストーンズにあてたら如何でしょう(笑)

  • 漱石がこれまでにあったことや考えたことを、つらつらと書き綴るエッセイです。

    講演の謝礼の話は、拗らせていますねぇ。言わんとしているとはわからなくはないですが、本当に面倒くさい。こうして本で読む分には楽しいですが、実際相手にすると疲れるでしょうね。

    岩崎弥太郎の話も面白かった。不愉快だといいながらも、どことなく友情を感じるんですよね。実際に所はどうなのかは分かりませんが。

    ヘクトーや飼い猫の話は、漱石のツンデレ加減が笑えます。「文鳥」でもそうなんですが、動物に対してすら素直に心を開けないところが、ある意味かわいらしさを感じます。

    「道草」を陰とすると、「硝子戸の中」が陽のような感じを受けました。自分の拗らせ具合を自虐的に書いていますので、一見暗くなりそうな話題も多いですが、不思議と楽しく読めました。

  • 夏目漱石のこと、少し知れた気がする。時が傷口を癒やす一方で、宝物を奪っていく、というのがよかった。時に抗うには記憶を呼び起こすしかないと…。

    勘破、観破、
    正直に話してくださいね、というところ、人と人がうわべで話すのではなく、心と心で真摯に向き合おうとするところが見られて良いなと思った。

    犬の話もご友人の話も、ご友人の話は漱石の生き生きしたところが垣間見えて、誰にでも気を許した人には穏やかなのだなというところが見えて、家族の回想もどれも手帳をのぞき見したような心地だった。

    謝礼の話や貸し本の話、短冊の男の話、人に対する信念と人間らしさが垣間見える気がする。

    他の文豪の随筆も読んでみたいな。

    3/22?〜3/27

  • いつもの小説にあるようなユーモアはなく、陰鬱でどんよりと死の香りがするエッセイだった。言いたいこともあまり明瞭ではなくて、まとまらないことをとにかく書き出した修作のよう。迷惑な岩崎さんの話は面白かった。

  • 昔の言葉がわかりにくいけど、日本人なら読んで損はない本。

  • つい先日のことですが、知人を駅まで送った折に、駅ビルの本屋さんに立ち寄り……決して懐の寂しさを隠すためではなく……「ワンコイン一本勝負」として500円玉を握りしめて本棚の海を回遊しました……狙い目としては小説の文庫本ですね……流行りの作家や作品に関しては例え小品でも税込500円を切るものを探すのは難しいと思ったので、新潮文庫の棚で古めの作品を探したのですが、これがなかなか難しい。詩歌や戯曲を読む気分ではないなぁなどと勝手なことを独りごちながら、本の厚みを目安に探して最終的に手に取ったのが本体価格340円(税別)の『硝子戸の中』(夏目漱石著/石原千秋解説/カバー装画:安野光雅/新潮文庫)でした。今、寝落ち本の中の一冊として枕元に置いてあるのですが、「寝る間際にちょっとだけ読む」のにちょうどよい内容ですね。一編一編が短い文章の随筆で、騒がず慌てず、ちょっとだけおかしく、ちょっとだけ妙で、ちょっとだけ侘しく。普段の暮らしの中のリアルというものは、こういった「際立った"オチ"のある筈のないもの」でしょう。とてもいい。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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