- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101010182
感想・レビュー・書評
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夏目漱石の短編も読んでみたいなぁと思いこちらの本を。
これはエッセイといってもいいくらい実話をもとにした話が多く、漱石の人柄が感じられてよかった。
漱石は胃潰瘍を患い50歳の若さで生涯を終えた。どんなときも、どんな出来事も小説として昇華してしまえるのはさすがだなぁ。
細かな機敏も丁寧に描かれており、日常の些細な出来事にも心を動かされながら生きているんだよなぁってしみじみとさせられる素敵な作品ばかりだった。
「文鳥」
人の勧めで文鳥を飼うことになり、不器用ながらも可愛がっていたのだが、執筆の仕事が忙しく世話が行き届かずに死なせてしまった話。不器用ながらも必死に育てる姿は愛おしく、文鳥の死を責任転嫁しなければ受け入れられなかったほど悲しみ愛していたのだなぁと思った。
「夢十夜」
「こんな夢を見た」という書き出しから始まる十個の夢の話。それぞれ独立した話だが、どれも幻想的で少し不気味な雰囲気が漂う。読むと、自分の中に眠っている潜在意識を呼び覚まされるように、不思議な世界に引き込まれる。話に余白がある分いろんな解釈ができそう。美しく幻想的な第一夜が好きかな。
「永日小品」
日常の風景を切り取ったような、ごく短い作品の詰め合わせ。とくにオチもなくサラッと終わる。漱石が日々感じたり考えたりしていることを垣間見られてよかった。人生って他愛ないことの積み重ねなんだよね。
「思い出す事など」
漱石が胃潰瘍で大吐血し生死を彷徨ったときの話。一命を取り留めた漱石のもとへ、周囲の人たちが見舞いに来てくれたり、知人の死を知ったりしたときに、彼が感じたこと、考えたことが綴られている。当時の寿命から考えると現代の医学の進歩を思うとともに、なによりも人の温もりが感じられた。
「ケーベル先生」
漱石はこのケーベル先生が好きだったんだなぁ。戦争の影響か、長年日本に留まり教授を続けるケーベル先生。漱石から見たケーベル先生の暮らしが綴られる。自分の好きなことや信念を大切にしながらも、他者への関心も持ち関わりを楽しんでいるところが素敵だなぁと思った。
「変な音」
入院したときの隣の部屋から聞こえる「変な音」の話。大根をするような音だと思っていたが、再度入院したときに音の正体を知る。逆に隣の部屋の患者は、こちらの変な音を運動器具の音だと思っていたが…。そのときの心身の状況によって、物音も違って聞こえるのだろうな。
「手紙」
ある夫婦(漱石?)が身内のような青年重吉に結婚の世話をしてやるが、偶然滞在していた旅館の引き出しから玄人の女性からの恋文が出てきて…。真面目な青年かと思いきや、人間は見た目では判断できないね。漱石の厳しくも優しい計らいも、重吉の銭の支払いが減っていったのは、人間そう簡単に変われるものじゃないってことかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夏目漱石の小品集ですね。
7篇の作品集です。
朝日新聞社の依頼で執筆されたそうです。
文鳥
夢十夜
永日小品
思い出す事など
ケーベル先生
変な音
手紙
小品と書きましたけど、私は随筆と思って読んでいました。
解説の三好行雄さんは『日本の近代文学には〈小品〉と呼び慣わされた独自のジャンルがある。小説ともつかず、感想ともつかず、いわば短編小説と随筆との中間にひろがる曖昧な領域なのだ。』と位置付けされています。
漱石もモーパッサンの短編小説『二十五日間』を〈小品〉と呼んでいるそうです。
また、この小品集を三好行雄さんは、「漱石の〈私小説〉と呼んでよいかもしれない」とも語られています。
確かに読んでいて、随筆とはおもむきが異なるようです。筋書きがしっかりしていて、物語性を感じますね。それだけ読むのが楽と言うか、読み進め易さがあります。もともと、漱石の文章は、私には親しみ易さを感じてもいましたが、漱石自身の〈私小説〉ならば余計に親近感が湧くのは当然の事でしょう。
ともあれ、この『小品集』は面白かったです。何回読んでも味が有ります。出版社も様々出ていますので、それぞれで読み直せるのも醍醐味ですね。 -
夢十夜のみ読了。
見た夢の物語。
場面を想像しながら不思議な感覚になる話が多い。
読んでて思ったのが、夢ってたしかに音の少ないような、淡々と流れてゆく感じのを見ることもある気がしたこと
。
私には難しくなんだかよくわからない話もありましたが、がっちり描写で固められていないのでその余白を色々と想像して楽しめました。
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短編集というより、随筆とかエッセイに近いと思いながら読むと、これらは、小品というジャンルとの事。短編と随筆との中間の曖昧な領域だそう。
作品としては、7編だが、その中にもわかれた項目がある。ほぼ、専属作家として、朝日新聞系に掲載された作品群。
まだ、未読の漱石の作品が多いけれど、私は長編の小説よりも好きかもしれない。
「文鳥」
文鳥を飼い始めた主人公(ほぼ漱石)の、観察日記風。文鳥の佇まいが、絵画のように表現されている。目の前に、真っ白な文鳥が現れてきます。
それにからめて、一人の女性の記憶を、ちょっと寂しげに思い出したりします。
「夢十夜」
十夜の幻想的な夢物語。
時代設定も、登場人物も様々。
2回しか行ったことないけど、歌舞伎の場面転換のようで、世界観に直ぐに引き込まれる。
それぞれ、趣きがあり、示唆的な内容だと思う。
第一話は、百年後に会いに来るのを 百合 の花で表している。おしゃれでびっくり。
「思い出すことなど」
“修善寺の大患”の後の、死の直面から徐々に回復していく闘病記風。そんな状態でも、客観的に自分や周囲を飄々と語っている。
どの作品も、読むたびに新しい印象を持てると思う。形式は、小品でも、これだけ集積されれば、大作ですね。 -
修善寺の大患を書いた「思い出す事など」は、生死を彷徨った際の自身や周囲の行動や思考が冷静に書かれており、興味深く読んだ。
修善寺の大患後に書かれた後期三部作を、再度この視点をもって読み直したいと思った。
「永日小品」は、ロンドン留学中を書いた作品が特に気に入った。
「文鳥」「夢十夜」は再読だった。 -
何となく図書館で手に取ってみた
良さが分からなくて困った(´∵`)
皆さんすごいな
頭痛い、、
明日もう一度ゆっくり読んでみよう -
一番読みたかったのは夢十夜。
夢と言うだけあって、ふわふわ掴みどころのないお話が十個。
とてもロマンチックなお話もあれば、ゾッとするようなオチのものまで。
特に第一夜は、ため息が出るくらい美しかった。
夏目漱石って、どうしても文豪!というイメージが先行して、なかなか手に取りづらかったけれど…文鳥でもそうだけど、描写が美しい部分もあるし、クスッとくるところもある。
長編だとちょっとな…と言う人に、ぜひ読んで欲しいな。 -
夢十夜の第一夜が大好き。こんなに綺麗な文章を書く人が他にいたでしょうか。百合を見るたびにこのお話を思い出します。
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綺麗な文章と表現されていますので何処を指しているのかと、思い浮かべてみました。【百年待ってください】女の切ない気持ちが込められていると思った...綺麗な文章と表現されていますので何処を指しているのかと、思い浮かべてみました。【百年待ってください】女の切ない気持ちが込められていると思った。2019/05/20
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もう一度ゆっくり読むと、やっぱり墓石の下からのびて来た百合のつぼみが開き天から女の涙が落ちてきて見上げると暁に星が一つ
「もう百年が来てい...もう一度ゆっくり読むと、やっぱり墓石の下からのびて来た百合のつぼみが開き天から女の涙が落ちてきて見上げると暁に星が一つ
「もう百年が来ていたんだなあ」終わりが素晴らしい。2019/05/22
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アパさん(https://twitter.com/honwoyomusaru?s=21)主催の「夢十夜」オンライン読書会出席のため、久しぶりに漱石を読みました。楽しい機会を作って頂き、ありがとうございました。
「小説ともつかず、感想ともつかず、いわば短編小説と随筆との中間に広がる曖昧な領域」(解説より)を日本近代文学における「小品」と呼ぶのだそうです。本書は「文鳥」「夢十夜」「永日小品」「思い出す事など」「ケーベル先生」「変な音」「手紙」の7編を集めた小品集。小説の形式にはとらわれない自由な雰囲気の作品が並びます。
読書会で課題となった「夢十夜」も、漱石が自由に書き上げたという雰囲気の作品であり、それ故に漱石の発想が飛び交い、解釈の分かれる作品。したがい、読書会の課題本にするには格好の作品です。
読書会では参加者の皆さんがそれぞれの解釈を披露され、楽しい会となりました。
例えば、
1)「夢十夜」は「第一夜」が男女のプラトニックな関係を美しく表現した小説であるのに対して、最後の「第十夜」は暗喩的にも性を表現した作品であること。これは漱石が意図したのか?
2)「第二夜」の最後、「はっと思った」というのは侍の悟りであり、「時計が二つ目をチーンと打った」ときに目が覚めて夢が終わった?
3)漱石は色付きの夢を見ていたのか?赤を基調としたパートカラーの夢を見ていたのではないか?
楽しい100分間でした。
収録された他の作品も読み応えがあります。「文鳥」は命の哀れさ、「変な声」は生と死の狭間、「手紙」は苦笑いしたくなるような結末が印象的でした。「永日小品」は「夢十夜」と川端康成の「掌の小説」の間にあるような小品。これについても読書会の課題本になりえます。
何度でも読み返したくなるような小品集。高校生のときに、読んだ記憶がありますが、やはり人生の半ばを越えて読んだ方が印象が濃いと思います。 -
『夢十夜』
喉元に刺さって取れない魚の小骨。
紙で切ってしまった指先の痛み。
思い出せそうで思い出せない誰かの名前。
そんな些細だけれど強烈な違和感や不快感を、夢として丁寧に発酵させたものが、このお話だと思う。
わりと不気味で理不尽で、そこそこ寂しくて湿っている10の物語。
だって夢だもの。
著者プロフィール
夏目漱石の作品





