- 新潮社 (2024年10月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (592ページ) / ISBN・EAN: 9784101012629
作品紹介・あらすじ
2013年2月、ある男がひっそりと息を引き取った。所持品は『会社四季報』と現金100万円。江副浩正――。株式時価総額8兆円企業リクルートの創業者だ。インターネット時代を予見しクラウド・サービスに着手する一方、違法でなければ合法と未公開株をバラ撒き、戦後最大の疑獄リクルート事件を引き起こした。今や社史からも存在を消された男の生涯を辿り、日本経済再生の道を見出す傑作評伝。
感想・レビュー・書評
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「もしもの世界線で、リクルートがAWSのようにデータセンター事業の覇者になっていたら――」
現実のリクルートも早くからデータセンター統合やクラウド化に取り組み、ITインフラ強化を進めていたけれど、あと一歩で“世界標準”を逃した現実にワクワクと悔しさが入り混じる。
もしもリクルートがAWSの立場だったら、日本発の巨大クラウド企業が世界を席巻していたかもしれない…そんな想像が止まらない一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
リクルート事件のことが書いてるだけだと思ってたら、リクルートの社史のようで、カリスマ性がないのがコンプレックスっていうのが信じられないぐらいの勢いで成長していく。
贈り物にしてもインパクトが天才。
稲盛和夫さんらが登場してきたところが興味深かったのと、江副氏のことを見抜いたのが流石だなと。
あと、リクルート社員とNTTのやり取り、警察とのやり取りの噛み合わないところが面白かったです。
不動産の損切り場面が、スゴイ、カッコいい!
事件に発展してしまったのは、やはり嫉妬と世論を巻き込んでしまったのが大きい気がする。
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リクルートの人や企業としての強さがどのようにして出来上がったのかを垣間見えて面白い。採用の大事さと任せることの大事さを強く感じた。
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リクルート事件のイメージがあったが、日本のベンチャー企業の先駆けであったのだと知った
組織論の観点からも非常に面白かった。自分より優秀な人に任せていく指導者スタイル -
大学時代に企業し、そのまま企業を8兆円規模に育て上げた江副浩正。
リクルート事件をきっかけに社史からもその名が消された男の人生を描く評伝。
冒頭は瀧本哲史氏が江副氏を評したインタビューから始まるが、すべて読み終わった後に読み直しても非常に面白い。
天才的かつカリスマ経営者であった江副が、その危うさゆえにダークサイドに墜ちていく様が、本書では描かれるが、彼がそうなってしまったことの理由として、日本にはその当時グレイヘアと呼ばれる成熟した投資家であり伴走者がいなかったからであるというものが瀧本氏の評価である。
本書を読むと、エスタブリッシュメントへの挑戦を続けてきた彼が、いつしかエスタブリッシュメントのサークルに入り浸り、そのエスタブリッシュメントそのものになっていく様子が描かれている。
情報の非対称性を糾弾し、民主的な社会を作り上げたその当人が、その情報の非対称性を巨万の富に換える仕組みを構築する。元々自らが作り出した仕組みと自我の境界線のない起業家という立ち位置ゆえに、ついにはその仕組みに乗っ取られ、抑制が効かなくなる。まさに、スパイダーマンで登場するヴェノムのように、最後は崩れ落ちてゆく。
一方で、江副氏の挑戦は、今もやはりアクチュアリティを持つ部分が多い。終身雇用、年功序列、企業内組合、コネ入社、社員が会社のために忠誠を誓い、丁稚奉公のように働き続けることが当たり前という時代は、徐々に終わりつつあるが、今もやはり残存している。
リクルートは、コネ入社によってすべてが決まってしまう当時の就活に異議と唱え、就活生と企業を繋ぐ情報雑誌から始まった。同時に、当時は寿退社含みの腰掛とみなされていた女性を自社内で積極的に採用するとともに、高卒社員やなんらかの理由で大学を中退してしまった人も、実力があればどんどん登用していく。そうした実力主義の企業文化が、一部のトップ大学の学生層にも魅力的に映り、開放的で強い会社へ育っていく。
「自ら機会を創り出し、自らを変えよ」この言葉は、リクルートの社訓であるが、社会人になった今でこそ、とても重要なキーコンセプトであることを感じる。茫漠とした社会人生活の中で、自らにマイルストーンを課し、その機会に向けて自らを高め、理想を現実にしていく。私か総合格闘技が好きだが、一部の天才的なファイターを除いては、トラッシュトークなどのダーティスキルを活用しながら、話題を呼び、試合の機会を演出することで成り上がっていくファイターも多い。そうしたファイターは、いざ試合が決まれば、その試合に向けて徹底的に準備をすることで、自分自身をアップデートする。最後には、その勝負に勝つことで、幻想を現実へ変えていく。そうした事実がさらなる幻想を作り、数年前には誰も想像できなかったタイトルマッチのチャンスを掴んでいくファイターをたくさん見てきたし、そうしたファイターに観客は自身を投影し、応援する。脱線したが、リクルート、そして江副氏が生み出したこの言葉の魔力はあらゆる世界で通用するだろう。
ビジネスの先進性と言う意味では、情報雑誌を無料で配り、その広告費として掲載企業から課金するモデル、現在のプラットフォーマーのビジネスモデルを先取りしたのもリクルートである。情報を整理し、適切な人へ届けることが価値となる。そんなビジネスモデルを生み出したことで、収益化の方法にイノベーションをもたらした。
なお、こうしたモデルはダイヤモンド社等の従来の企業群から模倣され、幾度となく危機を迎えるが、その度に広告媒体としてのシェア1位を守り続けるために企業が強くなっていく。その際、ダイヤモンド社へ広告を出した企業へ積極的に営業をかけ、その座を守り切るのだが、強大な敵の出現を、あたかもマーケットの隠された機会を見つける装置とみなしてしまうその発想の展開には、やはり江副の強さがある。
私も日本においてまだ広まっていない概念を広めていくことを生業としているが、競合企業もある意味、マーケットを広げてくれる仲間である。新たな価値にお金を払う、そうした文化を醸成することが第一優先である成長産業では、そうした見方もできる。
本書の後半は、情報雑誌を不動産に広げ、現在のSUUMOの前身のなるサービスについて描かれるが、リクルートは不動産雑誌に集まる不動産情報を使い、不動産売買に使用するという究極のインサイダービジネスで収益を上げ始める。さらには、不動産開発の元締めである政治家の世界への侵蝕していく。そして、こうした政治家へ配布した未公開株が、彼自身の経営者としての人生に終止符を打つのである。
彼の偉業は、ビジネスのセオリーと言う意味では教科書を書き換えるすさまじいものであったが、それが近年言われるビジネス倫理という意味では、やはり一定のいかがわしさがある。そんな姿は、天空を自由に飛び回る快感におぼれ、太陽に近づきすぎたがゆえに転落したイカロスそのものではないだろうか。しかし、空を飛ぶ快感を全身で表現するイカロスは、人々に夢も与えただろう。江副がエスタブリッシュメントへ挑戦し、自由に飛び回る姿に感銘を受けた1人として、そう思ってしまうのは人間の性だろう。 -
素晴らしい評伝
出る杭を叩く 新聞報道
あとがき とっても良い -
N田さんおすすめ
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事業は人。採用に惜しげも無く金を使い一番優秀な人を連れてくる。
君はどうしたい?と聞き自分事として取り組ませる。
アジェンダはトップダウン。プロセスはボトムアップ。 -
バブル崩壊で日本は凋落した、ダメだというイメージがあったけど、今のGAFAのような構想を持っていた人がいたことに少し安心?したと同時に、日本の出る杭を打つ文化が今の現状を引き起こしたことを痛感した。
自分が何をやりたいのかという当事者意識とそれをやり抜く行動力、それと同時にモラル感を持つことが大事なんだなと思った。一方で、起業家精神とモラルという相反するものの両立が難しいんだろうなとも思い、どちらに行き過ぎるのも良くないけど、客観性が大事な要素の一つなんだと思った。
未来を見通せる力がすごかった。当事者意識を持って楽しんでやれる仕事をできてるか、常に自分を振り返りたい
著者プロフィール
大西康之の作品
