少女葬 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2019年4月26日発売)
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本 ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784101012810

作品紹介・あらすじ

ドミトリータイプ、キッチン、バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なし。そんなシェアハウスに飛び込んだのは、毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希。そこで彼女は、自分と同い年で、同じく家庭内不和の被害者である少女・眞実に出会う。住人も住環境も劣悪な中、なんとか生計を立てようと足掻く二人だが、些細なきっかけから別離していき、やがて――。物語は少女の一方がもうすでにこの世にはいないことを、しかもそれが壮絶なリンチの果ての死であることを明示しながら取り返しの付かない「その日」へ向かって進んでいく。いったい二人の運命を分けたものはなんだったのか。その選択は、死ななければならないほどの愚行だったのか。ラスト一行まで胸に迫る、家出少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 貧困のループは何たるやがしっかり書かれています。
    ニュースで報道される貧困問題は自分のすぐ側にあること、そしてほんの少しのタイミングで呆気なく貧したり救われたりするのだと思いました。

    同じ家出少女の綾希と眞実の進む道が別れてしまった事とその先に起きたことの対比があまりにも辛すぎる。
    あの時の眞実の未来を決定してしまった一言も。

    あのヴィラに住んでいた人たちはどうなったのだろうか。
    それぞれの思う『神さま』とは何だったのかと考えました。

  • 訳ありな人達が流れ着くグリーンヴィラ
    汚い、プライバシーゼロ、自衛しなければ食事やトイレットペーパー、使いかけの生理用品まで奪われてしまう劣悪な環境。
    そんなシェアハウスで出会った家出少女2人。

    出会う人間が違うとここまで人生変わってしまうのか。

    終盤の〈その日〉の2人の状況が細かく交互に展開する場面には圧倒された。
    恐ろしい。


    胸が痛い


    朝の通勤電車で読み終えたので、気持ちがしんどくなって真っ直ぐ職場に行けず、10分だけ喫茶店に寄った。
    贅沢だな私。

  • 道を踏みはずすのは一瞬だ。でもそれを立て直して軌道修正するには、何十倍もの時間がかかる。(P.24)
    「弱さは罪じゃないっていうけれど、そんなの嘘よ。馬鹿は罪、弱いのも罪」(P.179)
    お金がなくても、飢えても、なにかひとつ支えになるものがあれば人は生きていける。(P.182)
    「ーあれがしたい、これがほしいって、普段から考えて主張する癖をつけとかないと、肝心なときに動けないんだ。いざってときになにもできないと、その記憶をあとになっても引きずる。そして、どんどん動けない人間になっていく」(P.260)
    塗りつぶしたような濃紺の夜空に、折れそうな月が薄っぺらく貼り付いていた。(P.71)

  • 今自分の中でキている作家さん、櫛木理宇。
    注目作、少女葬をいよいよ読んだ。
    ずぅーーーーん、という読後感。
    物語は、ある少女が河川敷で六時間超のリンチの末惨殺されたという事件から始まる。
    劣悪な環境の違法シェアハウス「グリーンヴィラ」に、転がり込む家出少女の綾希。
    ある日グリーンヴィラに、同世代の少女の眞美がやってくる。
    慎重派の綾希と楽観的な眞美、二人は互いの境遇を打ち明け合い仲を深めていくが…
    “お父さん””お母さん”と、シェアハウス内を取り仕切る人物を中心とした、擬似家族形態が出来上がっていて気持ち悪かった。
    後に綾希は喫茶店の店主である希枝に出会い、眞美は闇社会と繋がりのある海里と出会う。
    それぞれの出会いが、2人の人生それぞれの明暗を分けていく様が細やかに描かれていて、読むのが辛かった。
    道を踏み外す前に希枝という人物に出会い、息子の陸という少年と少しずつ距離を縮め、紹介された弁当屋で新たにアルバイトを始めてグリーンヴィラを出ることが出来た希枝。
    一方、裏の世界でも輝きを放つ海里という存在に憧れ、仲間に入れてもらえた喜びで、クラブで遊び、酒を飲みまくり、挙げ句の果てには乱暴なこともされたり、酷い扱いを受ける眞美。
    2人とも純真無垢な17歳の少女であり、2人が意図したわけではなく出会った人物がたまたま違っただけで、ここまで人生が変わってしまうのかと、愕然としました。
    残り数十ページでは、この2人の描写が短いスパンで入れ替わるため、2人の幸の差がえげつなくて本当に読むのがきつかった…
    家出なんてするからだ、と切り捨てるのは簡単かもしれませんが、生まれた環境や出会った人間次第で、その人性格云々ではなく運命が大きく変わってしまう恐ろしさを感じました。

  • ちょっとしばらく立ち直れなさそう…
    綾希と眞実、似た境遇の彼女たちの命運を分けたものは、危機管理の力なのかな。自分に迫る悪意や危険に気づく力。そして、信じていい人を見極める力。
    …でも結局、どこで誰に出会えるか、出会ってしまうか、幼い少女たちには運の部分も多かったのかな…。
    頭の悪さに甘えた眞実のキャラは全然好きになれなかったけど、生まれる場所が違えば、明るい彼女はとても愛されただろうし。性別もわからなくなるくらいの暴力などと無縁に生きていけたかもしれない。可哀想に。
    終盤、恋人との温かい時間を過ごす綾希と、凄まじい暴力を受け死に向かう眞実の描写が交互に描かれ、めちゃくちゃしんどかったな。これはけして絵空事ではなく、現実に少年少女に起こっていることなんだろうなと感じた。想像力の欠如が招く暴力性、集団心理、命の軽さ。末恐ろしいわ…
    残酷で、面白かったとはとても言えないけど、切なくてかなり好きな小説でした。

  • ガッツリ櫛木さんワールドの猟奇カテゴリー!!

    しかし、櫛木ワールドと言えば、聡明で芯がぶれない女のコ!
    どうしても応援したくなる子が登場
    ٩(๑´0`๑)۶♪
    だからこそ加速して物語に入り込める!!

    コレを期待しちゃうのが櫛木理宇さん♥
    まさに期待通りの作品でした!

    壮絶な世界だし、たしかにアル世界だろうし…
    自分の芯と判断と行動が運命を分ける。。。んだよなぁ

  • 『FEED』改題

    運命の分かれ道であるその瞬間に、出会うものによってその後の人生が大きく変わる。
    人なり、言葉なり、出来事なり。
    人生とはタイミングだ。
    何を引き寄せるか。
    その時に自分がどの選択をするか。
    常に見極めなければならない。
    その為に知識は多い方がいいだろうし、色んな意見を聞く事も大事だ。

    弱者を守り生かしてくれるのは国ではなく、搾取する者達。
    甘い言葉で近寄り餌を巻き、骨の髄まで搾り取る。
    安易に流され堕ちてしまうのは簡単だが、そこから抜け出すのは至難の業。
    貧困の傍には様々な暴力があり、それが犯罪へと繋がっていく。
    胸糞悪いが、こんな現実は実際にあるという事を知らなければならない。

  • 一人の少女が壮絶なリンチの果てに殺害された。その死体画像を見つめるのは、彼女と共に生活したことのあるかつての家出少女だった。劣悪なシェアハウスでの生活、芽生えたはずの友情、そして別離。なぜ、心優しいあの少女はここまで酷く死ななければならなかったのか?些細なきっかけで醜悪な貧困ビジネスへ巻き込まれ、運命を歪められた少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。『FEED』改題。

  • 貧困、シェアハウス、痛ましいリンチ。こんなのに未成年の子供たちが関わる話を、櫛木節で見事に震え上がらせてくる。精神的に幼い少女たちの友情や事件につながる喧嘩も生々しくて読んでて辛い。がしかし!

    どうも自分は転落系というか、読んでて鬱になる小説が好きらしい。この本を読んでて確信した。もしかしたら自分も転落してしまうかもしれない身近なストーリー。でもって幸せな立ち位置から見下ろすかのように読書する。そうやってハラハラしながらも安心しているのだ。

  • 誰もこんな目に遭わないでほしい。誰も食い物にされないでほしい。本を読んでほしい。自分で考える力を、外の世界を見る力を持ってほしい。でもその力って、私はどうやって獲得した?親から与えられたんじゃないか?
    本を買ってもらった。図書館を教えてもらった。言葉と思考を与えてもらった。じゃあ親に何も与えてもらえなかった子は、どうしたらいいんだろう。道を踏み外したのではなく、初めから道の上にいなかった子は、どうすればいいんだろう。
    結局、ラッキーな自分の運命に安堵して、アンラッキーには触れないように、臭いものには蓋をしてこれからも生きていくんだと思う。そして願わくは、自分の大切な人にもそう生きてほしい。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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