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本 ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784101012810
作品紹介・あらすじ
ドミトリータイプ、キッチン、バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なし。そんなシェアハウスに飛び込んだのは、毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希。そこで彼女は、自分と同い年で、同じく家庭内不和の被害者である少女・眞実に出会う。住人も住環境も劣悪な中、なんとか生計を立てようと足掻く二人だが、些細なきっかけから別離していき、やがて――。物語は少女の一方がもうすでにこの世にはいないことを、しかもそれが壮絶なリンチの果ての死であることを明示しながら取り返しの付かない「その日」へ向かって進んでいく。いったい二人の運命を分けたものはなんだったのか。その選択は、死ななければならないほどの愚行だったのか。ラスト一行まで胸に迫る、家出少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。
感想・レビュー・書評
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貧困のループは何たるやがしっかり書かれています。
ニュースで報道される貧困問題は自分のすぐ側にあること、そしてほんの少しのタイミングで呆気なく貧したり救われたりするのだと思いました。
同じ家出少女の綾希と眞実の進む道が別れてしまった事とその先に起きたことの対比があまりにも辛すぎる。
あの時の眞実の未来を決定してしまった一言も。
あのヴィラに住んでいた人たちはどうなったのだろうか。
それぞれの思う『神さま』とは何だったのかと考えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
道を踏みはずすのは一瞬だ。でもそれを立て直して軌道修正するには、何十倍もの時間がかかる。(P.24)
「弱さは罪じゃないっていうけれど、そんなの嘘よ。馬鹿は罪、弱いのも罪」(P.179)
お金がなくても、飢えても、なにかひとつ支えになるものがあれば人は生きていける。(P.182)
「ーあれがしたい、これがほしいって、普段から考えて主張する癖をつけとかないと、肝心なときに動けないんだ。いざってときになにもできないと、その記憶をあとになっても引きずる。そして、どんどん動けない人間になっていく」(P.260)
塗りつぶしたような濃紺の夜空に、折れそうな月が薄っぺらく貼り付いていた。(P.71) -
『FEED』改題
運命の分かれ道であるその瞬間に、出会うものによってその後の人生が大きく変わる。
人なり、言葉なり、出来事なり。
人生とはタイミングだ。
何を引き寄せるか。
その時に自分がどの選択をするか。
常に見極めなければならない。
その為に知識は多い方がいいだろうし、色んな意見を聞く事も大事だ。
弱者を守り生かしてくれるのは国ではなく、搾取する者達。
甘い言葉で近寄り餌を巻き、骨の髄まで搾り取る。
安易に流され堕ちてしまうのは簡単だが、そこから抜け出すのは至難の業。
貧困の傍には様々な暴力があり、それが犯罪へと繋がっていく。
胸糞悪いが、こんな現実は実際にあるという事を知らなければならない。 -
一人の少女が壮絶なリンチの果てに殺害された。その死体画像を見つめるのは、彼女と共に生活したことのあるかつての家出少女だった。劣悪なシェアハウスでの生活、芽生えたはずの友情、そして別離。なぜ、心優しいあの少女はここまで酷く死ななければならなかったのか?些細なきっかけで醜悪な貧困ビジネスへ巻き込まれ、運命を歪められた少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。『FEED』改題。
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貧困、シェアハウス、痛ましいリンチ。こんなのに未成年の子供たちが関わる話を、櫛木節で見事に震え上がらせてくる。精神的に幼い少女たちの友情や事件につながる喧嘩も生々しくて読んでて辛い。がしかし!
どうも自分は転落系というか、読んでて鬱になる小説が好きらしい。この本を読んでて確信した。もしかしたら自分も転落してしまうかもしれない身近なストーリー。でもって幸せな立ち位置から見下ろすかのように読書する。そうやってハラハラしながらも安心しているのだ。 -
誰もこんな目に遭わないでほしい。誰も食い物にされないでほしい。本を読んでほしい。自分で考える力を、外の世界を見る力を持ってほしい。でもその力って、私はどうやって獲得した?親から与えられたんじゃないか?
本を買ってもらった。図書館を教えてもらった。言葉と思考を与えてもらった。じゃあ親に何も与えてもらえなかった子は、どうしたらいいんだろう。道を踏み外したのではなく、初めから道の上にいなかった子は、どうすればいいんだろう。
結局、ラッキーな自分の運命に安堵して、アンラッキーには触れないように、臭いものには蓋をしてこれからも生きていくんだと思う。そして願わくは、自分の大切な人にもそう生きてほしい。
著者プロフィール
櫛木理宇の作品





