少女葬 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.83
  • (50)
  • (84)
  • (64)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 1001
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101012810

作品紹介・あらすじ

ドミトリータイプ、キッチン、バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なし。そんなシェアハウスに飛び込んだのは、毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希。そこで彼女は、自分と同い年で、同じく家庭内不和の被害者である少女・眞実に出会う。住人も住環境も劣悪な中、なんとか生計を立てようと足掻く二人だが、些細なきっかけから別離していき、やがて――。物語は少女の一方がもうすでにこの世にはいないことを、しかもそれが壮絶なリンチの果ての死であることを明示しながら取り返しの付かない「その日」へ向かって進んでいく。いったい二人の運命を分けたものはなんだったのか。その選択は、死ななければならないほどの愚行だったのか。ラスト一行まで胸に迫る、家出少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 道を踏みはずすのは一瞬だ。でもそれを立て直して軌道修正するには、何十倍もの時間がかかる。(P.24)
    「弱さは罪じゃないっていうけれど、そんなの嘘よ。馬鹿は罪、弱いのも罪」(P.179)
    お金がなくても、飢えても、なにかひとつ支えになるものがあれば人は生きていける。(P.182)
    「ーあれがしたい、これがほしいって、普段から考えて主張する癖をつけとかないと、肝心なときに動けないんだ。いざってときになにもできないと、その記憶をあとになっても引きずる。そして、どんどん動けない人間になっていく」(P.260)
    塗りつぶしたような濃紺の夜空に、折れそうな月が薄っぺらく貼り付いていた。(P.71)

  • 『FEED』改題

    運命の分かれ道であるその瞬間に、出会うものによってその後の人生が大きく変わる。
    人なり、言葉なり、出来事なり。
    人生とはタイミングだ。
    何を引き寄せるか。
    その時に自分がどの選択をするか。
    常に見極めなければならない。
    その為に知識は多い方がいいだろうし、色んな意見を聞く事も大事だ。

    弱者を守り生かしてくれるのは国ではなく、搾取する者達。
    甘い言葉で近寄り餌を巻き、骨の髄まで搾り取る。
    安易に流され堕ちてしまうのは簡単だが、そこから抜け出すのは至難の業。
    貧困の傍には様々な暴力があり、それが犯罪へと繋がっていく。
    胸糞悪いが、こんな現実は実際にあるという事を知らなければならない。

  • 一人の少女が壮絶なリンチの果てに殺害された。その死体画像を見つめるのは、彼女と共に生活したことのあるかつての家出少女だった。劣悪なシェアハウスでの生活、芽生えたはずの友情、そして別離。なぜ、心優しいあの少女はここまで酷く死ななければならなかったのか?些細なきっかけで醜悪な貧困ビジネスへ巻き込まれ、運命を歪められた少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。『FEED』改題。

  • 「ここにいていいよ」と言ってくれた人に安心してついていくのは当たり前だし、ましてやこの本に登場する少女ふたりは元の環境から逃げ出してて他に行くところは無い。そんな時に、どれが正しい居場所や道なのかは分からない。若いというのもあるけど、そもそも選択肢も無い…一歩踏み出すか留まるかの2つだけ。
    同じ立場になった時にわたしは正しい方向へ進む道を選べるか自信ない。綾希も言われていたけど、運が良かっただけな気がします。出会う人が違った事で、綾希が眞美になっててもおかしくない。
    眞美は人を信用しすぎたけどそれは彼女の短所でもあり長所でもあり。おかしいなって気付いてたけどその時にはもう戻れない所まで行ってしまってただけで。。弱い立場しか選べない人を食い物にする方が悪くて、堕ちる方にはそんなに罪無いよな…と思う。前原さんが言ってたように「生活保護の不正受給」とか楽なほうに堕ちる人くらい?「逃げろ」と言われた時に逃げられる人は運が良いです。
    「ここまで酷いことにはならないだろう」というのが簡単にひっくり返る昨今…と思っているので、グリーンヴィラの住人や取り巻く人たちを「自己責任」で片付けてるとそのうち己に返ってくる気がします。正常性バイアスは恐ろしいですし、「自分は絶対に弱者にはならない」みたいな感覚で居られる人が不思議…って今日まさに別件で感じたことを思い出したりしました。
    綾希の誕生日と、眞美の最期の日が交互に描写される終盤は圧巻でした。壮絶。

  • 誰もこんな目に遭わないでほしい。誰も食い物にされないでほしい。本を読んでほしい。自分で考える力を、外の世界を見る力を持ってほしい。でもその力って、私はどうやって獲得した?親から与えられたんじゃないか?
    本を買ってもらった。図書館を教えてもらった。言葉と思考を与えてもらった。じゃあ親に何も与えてもらえなかった子は、どうしたらいいんだろう。道を踏み外したのではなく、初めから道の上にいなかった子は、どうすればいいんだろう。
    結局、ラッキーな自分の運命に安堵して、アンラッキーには触れないように、臭いものには蓋をしてこれからも生きていくんだと思う。そして願わくは、自分の大切な人にもそう生きてほしい。

  • 櫛木理宇さんは2冊目。以前「世界が赫に染まる日に」を読んだことがあったが同著とは気付かなかった。

    この本は友人からの勧めで読んだわけだが、なかなか私のことを分かってらっしゃる。

    まず面白かった。貧困層が集まる怪しげなシェアハウス、しかもドミトリーに住む家出少女の綾希。そこで出会った同世代の眞実。2人には友情が芽生えるのだが、人との出会いや性格の違いもありそのゴールはどんどん離れていく。1つ違えばこんなにも…とその対比が面白い。そしてこの物語のピーク、リンチの描写が素晴らしく残酷で巧い。救いは眞実の指のリング。

  • とあるシェアハウスの劣悪な環境のなかで寝食を共にした2人の少女。別れからしばらくして、うち1人は壮絶なリンチの果てに殺されてしまうが、もう一方の少女は幸せとも形容できる生活を手に入れる。もといた場所は同じだったはずなのに、何が2人の道を分けてしまったのか。
    冒頭で2人の名前は書かれておらず、どちらがどちらかの少女なのかはわからなくなっている。あとがき(解説?)にこれは2人はいつ立場が入れかわってもおかしくなかったということを暗に表現しているとあり、そういうことかぁとどこか納得できた。作中に『弱さは罪、馬鹿は罪』という言葉があるが、原因は全て彼女にあってしまうのだろうか。
    ラストシーンでは物語が2人の目線で交互に描かれ、その間の落差、溝みたいなものが浮き彫りになっていく。もう辛い。しかし、次の展開が気になって目が離せず、最後まで一気読みしてしまった。文章は読みやすいが決して軽いわけではなく、読みごたえがある。とても面白い一冊だと思う。

  • 残酷・不運・辛さ……色んな負の連鎖が起きるような話。
    シェアハウスという美しく思える舞台に様々なデメリットが敷き詰められ、警察は何をしているんだと問いたくなる(個人的櫛木作品あるある)
    眞美の性格が正直理解しきれない部分も多かったが、純粋すぎる娘なんだろうと察せられる。
    どんなことになっても彼女の中に譲れない大切なものがあるとも読み取れた。
    あと、最後に家族に「やばいことに巻き込まれたかも」と話した女の子……勇気あるなぁ……

  • 読書メーターより。2019.5.9読了。

    読みながら思ったことは『私もいつ眞実になっていたかわからない』ということ。
    高校生のころは世間知らずで人間が怖いなんて思ってもいなかった。いや、思ってはいたのだけれど、まさか自分の周りにいるなんて考えたこともなかった。
    けれど、今思い返すと危ないことはたくさんあったように思う。相手方の出方次第では道を踏み外していたかもしれない。
    付き合う人や周りの環境はとっても大切。どういう人と関わっていくかで、自分の人生が大きく変わる。自分の毒になる人はキチンと見分けて、大切にしたい人を選ばないといけない。

  • 凄まじいリアル。おそらく、このような話はたくさん転がっているのだろう。
    私なら、どちらにいく?
    どうする?
    無知であることの罪を誰が裁くことができるのだろうか。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

櫛木理宇の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×