♂♀ (新潮文庫 は 30-3)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101013237

感想・レビュー・書評

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  • 「囁き終えて、私は自分がまるでワードプロセッサになったような気分に陥った。というのも、あのとき、焼き肉屋で妄想した言葉がほぼそのままの売りに浮かんだからだ。じつは、私の脳髄は、ただ単に言葉を切り貼りするちゃちでお粗末なワードプロセッサに過ぎないのではないか。

    私にオリジナリティなどと呼べるものはなく、ただ過去の言葉を再生産するだけの壊れた機械に過ぎないのではないか。

    私に限らず人の言葉というものは、常に過去を再生産するだけなのではないか。

    未来を描くのにも過去の言葉を用いらなければならないことが、言語の宿命であり、絶望的な弱点ではないか。

    ないか、ないか、と疑問を滲ませた言葉を繰り返すことだけが陳腐な未来を引き寄せる唯一の手段に過ぎないのではないか。」





    「音楽の本質は、旋律とハーモニーにあるのではなく、まずリズムであるというのだ。そして、性的行為の本質は律動にある。律動とはリズムであり、周期的にくりかえされる運動のことである。

    じつは、言語の本質も、まず律動にあるのだ。純粋な言語と呼ばれるものが存在するならば、まずは、それは律動によってのみ表現される。意味や情感、内容などは二の次、三の次である。

    小説でいえば、リズムが希薄な文章は、駄目な文章である。屑である。それなのに、いつのまにやら小説の言語は意味の伝達と抽象の奴隷と化してしまった。

    意味は論理にすぎないから馬鹿にも通じやすい。まして抽象を語るともなれば、知性らしきものしか取り柄のない有象無象の小利巧に訴える力が大である。

    その結果、小説家が批評家のような文章を書く時代となってしまった。言語を意味伝達に用いることが王道であるという最悪の勘違いをしたまま、言語に内在している本質的な律動を忘却し、捨て去ってしまったのだ。」





    生々しい性的描写が激しかったwww

    でも、萬月の書く文章は美しい。

    表面しか読まないひとは嫌悪感を抱くだろうな。

    もしくは、単に喜ぶかw





    萬月先生の言葉に対する思いは

    私の思いを代弁してくれているよう

    ことば、とりわけ書きことばは、

    単なる意味伝達のためだけのもではない。

    美しいリズム

    それが、私の脳を刺激する












    ずっしり読み応えがあるわけではない

    比較的さらっと読めたけど

    良本だと思う。

    エロいけどwww

  • 今まで読んだ中で一番、ポルノっぽかったです。
    改めて、花村さんの素晴らしさが分かりました。
    「生と性」がテーマっぽくて、花村さんを知らない人に貸したい。

著者プロフィール

1955年東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『ブルース』『笑う山崎』『二進法の犬』「武蔵」シリーズ、『浄夜』『ワルツ』『裂』『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『対になる人』など。

「2021年 『夜半獣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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