五つ星をつけてよ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 134
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101013510

作品紹介・あらすじ

いつからか、レビューがなければ何も選べなくなってしまった――。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、やっぱり見る目がなかったのだろうか。十歳のときに買った浴衣、二十九歳で決めた結婚。母の意見に従わなかった決断は、どちらも失敗だった。今こそ母に依田をジャッジしてほしい。けれど母の記憶と認識は、日増しに衰えている。思い悩む恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り……(表題作「五つ星をつけてよ」)。ネットのレビュー、LINE、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を描き出す6編!

感想・レビュー・書評

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  • 奥田亜希子さん初読み。ネットのレビュー、ブログ、SNS…私達の生活に今や不可欠なそれらを、こんな風に小説に絡ませてくるとは。なかなか痛いところを突いてくるなと思いながら、ほろ苦さの中のほのかな甘さを、いつまでも感じていたいと思わせる読後感だった。
    登場する様々なタイプの男女たち。決して100%共感できるわけではないのに突き放して見ることもできない。ドハマリした本は大体一気読みしてしまう私だが、本書の場合は一つの短編を読み終わる毎に、余韻を味わうように軽く読み返していた。女子中高生の青臭さ、熟年女性の融通のきかなさ、サラリーマンの煮えきらなさ…中途半端なメンタルが、いいねや星の数、既読の有無、悪意あるコメントに翻弄され、感情の距離感がつかめなくなる。ああ~わかる、足元ぐらつくこの感覚…と思っていると、意外な方向に捻った展開。この斜め上の角度のつけ方が何とも絶妙なのだ。
    彩瀬まるさんの解説も素晴らしい。「強靱な日常性を書ける人」まさにその通りと強く感じた。この作品に出会えてよかったな。幸せの輪郭なんて簡単になぞることはできないけど、曖昧だったその輪郭を何となくなぞることができた気がするのだ。

  • SNS中毒みたいなストーリーなのかなと思ってたけどどれも違った。
    でもキャンディ・イン・ポケットは好きなお話だった。女子学生あるあるとゆうか、人気者やかっこいい先輩の側にいる事が一種のステータスのような。
    あとは結局何が言いたかったのかあまり理解出来なかった。特にウォーター・アンダー・ザ・ブリッジは漣くんが何故あんなに執着したのか分からないままだった。もっと人物像を書いてほしかったな。

  • どれもかなり・・・鮮烈な印象をそれぞれに受けた。面白い、というのとは少し違うような。
    「他人が物や他者に下した評価」を簡単に知ることができる昨今、そこにクチコミのような信頼度やリアリティはなく、どれくらい参考にするかは自分で決めなくてはならない。けど、その自分の物差しもハッキリ定まりきらないのがつらいところ。他人の評価に右往左往する人を、わらうことはできないなと思う。
    表題作は"星を気にする人"そのままの話だが、女子高生の友情についての『キャンディ・イン・ポケット』や、元アイドルのブログを書く側と見る側から描いた『君に落ちる彗星』でも、自分の中の評価軸について考えさせられる。
    「三年間、そばにいてくれた相手を、どうして信じられなかったのだろう。」

  • 初めて読んだ作家さんだけど、良かった。
    ちょっと長くなるけど、お気に入りの話が沢山あるので、是非残したい。

    冒頭「キャンディ・イン・ポケット」は、この短編集のモチーフになっているインターネットにまつわるアレコレこそ出てこないが、女の子同士の微妙な関係性に、グッと引き込まれた。

    高嶺の花の女友達。
    一緒に通学する、ただそれだけの関係が、卒業を機に終わってしまうことを沙耶は分かっていた。
    憧れや恋心にも似た気持ちを秘め、卒業式を抜け出した沙耶は、椎子にあることを仕掛ける。

    粘り気のある文章から、不穏な方に向かってしまうんじゃないかと、正直ハラハラした。
    私は、関係を自分から続けていける根気のない人間だと思う。
    だからこの時期の、たった一人に見捨てられることの怖さ、恋人が出来た友達への違和感、そして節目を迎えることの寂しさは、少し分かる気がする。
    沙耶に光が当たって、良かった。

    続いて「ジャムの果て」。
    今度は、間違いなく不穏に突き進む。
    夫に先立たれ、ジャム作りとブログ更新に励む母。
    度々ジャムが送られて来る娘、息子夫婦は辟易して、離れて行ってしまう。
    「家族」という形に囚われすぎて、見えていなかったそれぞれの心を、成人し、一人になった今になって突き付けられ、追い込まれてゆく。
    結末の狂気が、上手い。

    「五つ星をつけてよ」では、母を介護する娘からの視点が苦しい。
    母の言うことや口コミを頼らなければ、信じて決断できずにきた彼女。
    母を見てもらっている介護士に、実は虐待の噂があって……というあらすじ。
    物がなくなった、怪我をした。
    どちらの話が、本当か、嘘か、藪の中。

    自分自身や、自分を作り上げてきた場所や人に、評価が下されることって、よく考えるとむごい。
    モノにまつわる感情や人も、もはやモノと化して、評価されているんだよなぁ。
    でも、今現在そんなシステムに浸っている自分がいて、再び傷付いてしまう。

    「君に落ちる彗星」は、最後に相応しく、構成にゾワっとさせられます。

    どの話も、短いけれど、ずしりと来る。
    まだ、文庫化された作品は少ないけれど、他の作品にも手を出そうと決めた。
    解説は彩瀬まるさん。ああ、なるほど!
    彼女の作品が好きな方には、オススメしたい。

  • 「キャンディ・イン・ポケット」通学の30分間だけの友達。見た目も付き合う人も世界が違い、なんとなく一緒に登校してるだけなんだろなと思われていると感じている沙耶。控えめで内気な感情や憧れ。後半に向かい少しずつ感情が溢れ出していく鮮やかさ。後悔と喜びの間で揺れながらも前に進む沙耶が素敵。
    「ジャムの果て」ジャムの描写がいい。気分のいい時には光り色鮮やかに、子供達への不満を感じた後には鈍くどろりと重たいようなものに。良かれと思ってたことが押し付けだと言われ今までの自分はなんだったのかという失望。ジャムとうまく絡み合って面白い仕上がり。
    6編全てに人への想いや距離感や他人の肯定、自分自身への肯定と、こうだったはずという思いをなかなか消せない日常が描かれていて面白かった。

  • 私はこれから目を逸したくて桜蔭を受験したし、今は舞台の上の推しを追っているのかもしれない。どこまでも日常。痛いほどの日常。フィクションなんだけど、そこにドラマは無くて、ただただ日常。これを書ききれる、言語化しきれる作者さんはすごいなぁ…

  • 04

    めっっちゃすき。
    誰もが持ってて、でも隠している暗いところを
    ちくちくと攻撃してくる。

    全部好きだけど、読み終わって二週間経ってもタイトルも内容も覚えているのは キャンディインマイポケット、ジャムの果て、五つ星をつけてよ。

    高校生の時、自分よりレベルの高い友達と一緒にいると誇らしさと劣等感があるよね。でも対等じゃないって思ってるから、一歩引いたりしたよね。

    ジャムの果てはもうつらい。つらいからこそ心にすごく残る。最後裸足でどこに行ったんだろうか。

    五つ星をつけてよ はもーーわかるわかる!
    これだけ情報も物も溢れる世界で、自分の評価に自信がなくなって失敗したくないからレビュー参考にして
    そしたら自分の意見に自信がなくなっちゃった。
    最後、自分自身の評価を下せてよかった。

    20200116

  • SNSやブログが生活の一部となった現代人の短編。実際あるかもね〜と思いながら読んだ。

  • PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる…。ネットのレビュー、ブログ、SNSなど、評価して評価されながら生きる人々の心を鮮やかに描き出す6編。
    物を買うにも、お店の雰囲気も、小説や映画の善し悪しも、今じゃ全てが星次第。そこに自分の考えはないのかと言いつつも、こうやって星を付けてる自分がいる。何とも言えない世の中だが、匿名性が高い分、その評価には本音や真実が含まれていることも確かである。星を数えるのも見つけるのも自分自身である。本作の登場人物のように、自己を失わないことが大切だ。

  • なんだろ?
    臭いものの蓋を開けてしまったような
    違和感?居心地の悪さ?ザワザワ感?

    でも、どの話も 分かる。

    黒板に爪たてて キーッて音した感じ。

    だけど 全部読んだ。

    最後まで読めないパターンかな と思ってたのに
    読んでしまった。
    そう、読んでしまった…のだ。

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著者プロフィール

奥田亜希子

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部卒業。2013年、「左目に映る星」ですばる文学賞を受賞しデビュー。『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』など著書多数。

「2020年 『愛の色いろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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