浮雲 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.41
  • (12)
  • (23)
  • (56)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 458
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101014036

作品紹介・あらすじ

江戸文学のなごりから離れてようやく新文学創造の機運が高まりはじめた明治二十年に発表されたこの四迷の処女作は、新鮮な言文一致の文章によって当時の人々を驚嘆させた。秀才ではあるが世故にうとい青年官吏内海文三の内面の苦悩を精密に描写して、わが国の知識階級をはじめて人間として造形した『浮雲』は、当時の文壇をはるかに越え、日本近代小説の先駆とされる作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 関川夏生原作、谷口ジロー作画の「坊ちゃんの時代」の二葉亭四迷、長谷川辰之助の眠るような死の場面。あの船上のシーンを読んで以来、四迷を読もうと思っていた。谷口ジローさんのカバーの本書を店頭で見つける。

    達者だなあ、という印象は巻頭から最後まで。言文一致の初めと云われるが、むしろ戯作調だと思う。意外なくらいスラスラ読める。調子の良さにホント感嘆する。多少、不明な言い回しもあり、巻末の注のお世話になるが。
    でも、読んだなと思っても、意外にページが進んでいない。文章の濃さと昔の言葉遣いに手間取ったのかな。

    失職した若手官吏、内海文三が主人公。作家の分身と解説にあるが、作家は冷たく突き放しているように思う。大体、お勢ちゃんにチャンとプロポーズしていないよね。それで裏切ったのなんだの言うのは筋違いじゃないかな。まあ、彼女も昇ごとき助平にふらふらするのは底が浅いとは思うけど。

    未完といわれるが、これで充分完結していると思う。
    しかし、これほどの作家が文学に執着しなかったんだなと思うとなんだかねえ。
    前に読んだ吉本隆明はロシア文学の影響で文学を否定していた。だから、現在も人気がないと解説していた。そうなんだろうね。複雑な人だったんだな。

    「其面影」「平凡」もいつか読もなければ。

  • 「くたばつてしめへ」こと二葉亭四迷は今年が生誕150年であります。たぶん。
    彼の出世作『浮雲』は、明治も20年を経過した時分に登場し、当時の読書子を感嘆させたといはれてゐます。
    周知のやうに、言文一致で書かれた最初の小説といふことで、一大センセエションを巻き起こした作品。今では当り前すぎることですが、何でも最初にやつた人は苦心するものです。

    江戸文学の戯作調を残しながら、日本現代文学の嚆矢となつた『浮雲』。文体のみならず、近代人の苦悩を描いて余すところがありませぬ。後半になるに従ひ戯作調は影を潜め、それまでの国産文学に馴染の薄かつた心理小説としての面が強くなります。無論現在から見るとそのぎこちなさは否めませんがね。

    主人公の内海文三くんは役所から暇を出された若者。免職ですな。どうやら組織の中で働くには向いてない男のやうです。一方友人の本田昇くんは、意に沿はぬことがあつても上司のご機嫌を窺ふことが出来る、そつのない人間であります。
    内海くんは止宿先の娘さん「お勢」に気がありますが、はつきり言へません。彼女のフルネームはどうやら「園田勢子」といふらしい。

    内海くんは自らの狷介さもあつて、お勢との仲がまづくなります。それどころか彼女は本田くんに心を寄せてゐるやうに見える。内海くんは懊悩するのであります。傍で見てゐると、まことに面倒臭い男と申せませう。
    ラストに於いては、明るい兆しを感じさせて幕となりますが、この後事態は好転するかの保証はないのであります。(未完といふ説もあり。)さういふ面に関しても、従来の小説(物語)とは一線を画してゐますよ。要するに、何から何まで斬新な作品であつた。

    文庫版では「現代かなづかい」に改められてゐることも手伝ひ、案外現代人にも読みやすいと思ひます。少なくとも「読書好き」を自任する貴方なら、すらすら読める筈であります。
    さあ、本屋へ行き(ネット書店でも好いけど)本書を入手しませう。
    では、さらば。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-181.html

  • 非常に軽い感じにさらさら読める.当時としては非常に新しいスタイルだったのであろう.
    主人公の文三さんにはいろいろ同情するところあり.古い人たちとの衝突は,いつの時代も同じなのか.

  • 四迷は、評論「小説総論」を著して、現実をそのまま写し取るのではなく、現実の奥に潜む本質を説いた後、言文一致の文体で書かれた「浮雲」を発表。内容も文体も新しい近代小説の先駆的作品となる。「浮雲」は未完のままに終わるが、第三篇の末尾には「終」と明記されている。それでも未完とされるのは続編の構想と思われる作品メモが発見されたからであり、二葉亭の意思として未完であったかどうかはわからない。本田がお勢を弄んで捨て、文三は失望と身辺の不幸が重なって身を持ち崩し、精神的に追い詰められていく予定だったという。

  • 信念を貫く余りに不器用な生き方をする文三と、八方美人で世渡り上手な昇の生き方が対照的に描かれている。未完の大作と賞賛されるだけあって続きが気になる結末となっており、写実小説の特徴でもある主人公の心の葛藤がありありと表現されていて面白い。

  • 浮雲はしがき

    第一編
    第一回 アアラ怪しの人の挙動(ふるまい)
    第二回 風変わりな恋の初嶺入 上
    第三回 風変わりな恋の初嶺入 下
    第四回 言うに言われぬ胸の中
    第五回 胸算違いから見一無法は難題
    第六回 どちら着ずのちくらが沖

    第二編
    第七回 団子坂の観菊 上
    第八回 団子坂の観菊 下
    第九回 すわらぬ肚
    第十回 負るが勝
    第十一回 取付く島
    第十二回 いすかの嘴(はし)

    第三編
    第十三回
    第十四回
    (略)
    第十八回
    第十九回

    注解 吉田精一
    解説 青野季吉

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    講談っぽい感じなので、読みやすくて面白い。テンポがある。

    他の小説では見かけない文字があり、なんと読むのかわからなかった。
    小さい「引」→「――」くらいの意味?

    莞爾(にこ)。莞爾々々(にこにこ)。
    いつからある読みなんだろう。泉鏡花がよく使ってる?
    莞爾(かんじ)は「将門記(940年頃)」に出典あり。もとは論語「陽貨編」。

    英文、外来語、著名な外国人名が多数出てくる。当時は一般的だったのだろうか?

  • 課長に取り入り順調に役所の仕事をこなす新時代的な昇と、それを潔しとしないで免職となった旧時代的な文三。この二人をめぐりお勢とお政の他愛のない人間模様が描かれる。江戸末期から明治にかけての言葉遣いなども垣間見られ、近代小説の萌芽がこのあたりにあるのだと実感。

  • 二葉亭四迷 「 浮雲 」 表紙 谷口ジロー

    プライドが高くて、恋も仕事も 不器用な主人公 文三を 世渡り上手の本田と対照的に描いた人間小説。途中までは恋愛小説っぽかったが、著者は 恋の行方ではなく、文三という人間を 描きたかったのだと思う。読みにくいが 綺麗な日本語

    「浮世の塩を踏まぬ(世間の苦労を知らない)」という言葉が印象に残った

  • 二葉亭四迷の作品を初めて読んだが、はしがきの中での言葉遊びのしかたがとても好きで浮雲を選んだ。
    作中でも本田のセリフは言葉遊びの要素が多く、本田の性格によくあっていたように思える。
    文三の扱いにとても悲しくもなったが、彼自身も悪いところがあったのであまり同情はできないと思う。
    思っていた以上にさくさくと読むことが出来た。

  •  ナメクジみたいな主人公だと思った。いつまでもジメジメ、ウジウジ考え続けるばかり。しかもお勢ちゃんに気持ちが伝わってなかったというオチまでついて、なんかもうほんとに救えないヤツになっている。
     それでも、読んでて不思議と不快感はない。それはたぶん、文三の弱い部分に自分の影を重ねてしまうからだと思う。無駄に高いプライドに振り回され、苦しめられる。それは誰もが多かれ少なかれ抱えている本質的な短所だと思うし、それを描き出すのがきっとこの小説の主題だ。
     他の男には負けたくないし世話になりたくないから、自分が損しても意地張っちゃう。好きな女の子に嫌われて傷ついてしまうのが怖くてしょうがないから、素直に好意を伝えられないし、体面かなぐり捨てて正面から向き合うこともできない。オレもかなりのヘタレだから、この気持ち結構わかるんだよなあ~。わかる! わかるけどそれじゃダメだぞ文三! と言ってヤツの背中を叩いてやりたい。昇みたいにハッキリ伝えないとダメだぞと。
     やっぱ男の嫉妬って醜いし、男のプライドってクソの役にもたたないんだなと改めて実感した。それと、気になる女の子にはちゃんと好きだと言わなくちゃってのも教訓として胸に刻んだ。

     あと、文三は暇なら家事手伝えよって思った。
     でも考えてみれば、当時の人はあんまり違和感なかったのかもしれない。というのも、男は外で稼ぎ、女は家を守るっていう性別による役割分担(古い!)が今よりよっぽどかっちりしてたから。それだけに、きっと失職は今より大ピンチのはずだ。存在意義を揺さぶられるような事態のはずだ。だからさ、お勢ちゃんと妄想でおしゃべりするのもいいけど、早く仕事探せよ!

全56件中 1 - 10件を表示

浮雲 (新潮文庫)のその他の作品

浮雲 Kindle版 浮雲 二葉亭四迷
浮雲 (岩波文庫) 文庫 浮雲 (岩波文庫) 二葉亭四迷

二葉亭四迷の作品

浮雲 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする