日蔭の村 (新潮文庫)

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本 ・本 (237ページ) / ISBN・EAN: 9784101015026

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  • 一言で言うと虚しさに包まれた作品である。
    東京市民(当時は東京市)の水需要対策として、小河内ダム建設が浮上する。これは、その周辺の村落が湖底に沈むということを意味し、否応なく立退を強いられることになる。この事態に対し、当時の村長は大乗的立場にたち、ダム受け入れを決める。祖先伝来の墓はどうなるのか、個々の事情を蔑ろにする形で物事は進む。村民たちは、湖底に沈む土地での就農意欲もなくなるが、翌年かと思われていた時期がズルズルと5年を徒過する。
    村民の生活は貧苦を極めていくなかで、高利貸しや土地転売目的の業者が暗躍する。純朴な生活に安住していた村の生活はズタズタに引き裂かれ、心身も荒廃していく。役所仕事の無責任さに腹立たしさを感じつつも、力の無いものたちの限界が露呈されていく。何が幸せなのか、公的な判断とは何だろうか、やるせなさが充満して物語が閉じていく。

  • 小河内ダムの計画決定から工事の開始までの町内での人々の心の動きを描いた作品.決定時の大乗的精神から,進展がないことへあきらめ,積み重なった生活苦からの東京への上告,変わらない現実.そこにあった現実として突きつけられた.

  • 先日行った奥多摩湖畔にある山のふるさと村。その奥多摩湖の水底には、小河内村が沈んでる。その小河内村に住んでいた人たちの暮らしと、東京の水がめを造る東京市の人たちとの小河内ダムを造るまでの物語。東京に住んでいる人は、水道の水がどこから来て、その水道のためにどんなことがあったのか知らない。それをしっかり作品として50年以上前に残してくれた著者に敬意を表したいし、先祖代々の土地を差し出してくれた人たちに、国民を振り回す官僚っていう構図は何も変わってませんよってことを伝えられたらいいな、とか思いました。

  • 小河内ダムによって消滅した村の歴史物語

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