蒼氓 (新潮文庫 い 2-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101015057

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞なのだけれども、太宰の「晩年」をのみ、読んで、この作品には近寄ることなく、過ごしてきましたが、第1回の受賞作、面白く、けっして川端の反対だけで「晩年」が落選したわけではないと思いました。(受賞作か否かということが作品の価値を決めるわけではないですけど。)
    読後、日本版の「風と共に去りぬ」かな?と真っ先に思いました。姑と嫁、和風のスカーレットに思えたのです。
    におい、温度、空気、でしょうか、直接表現されているわけではありませんが、そういうものが感じられる巧みな表現であったと思います。

  • 戦前のブラジルへの移民の物語。
    歴史小説、ノンフィクション小説とも言えそうな作品である。筆者自身が移民として渡航した経験があるとのことなので、リアル感がある。

  • 外国に移住するほうがましなくらい貧しい時代があったことに改めて気づく。そんな時代の、字も書けず、自分の村から出たこともなかったような移民たちの群像劇なのだけれど、ちょっと素朴に描かれすぎなのではないかという気も。「貧しくて無知だけど・乱暴者だけど働き者」って、当時の意識高い人の夢なんじゃないのかと。まあでも、乗船前・船上・下船後の様子がきちっと書かれているので、一冊読んだ満足感はあった。

    ひたすら運命に従うばかりのお夏が、結局一番まともそうな人とくっついたのはよかった。しかし彼女も、同情すべき女だったのかブラックホールだったのかは謎である。

  • 以前読んだ同テーマの長編「輝ける碧き空の下で」 とは別の視点の、第1部の移民船に乗るまでの8日間の描写、第2部の船の中の45日間の描写は新鮮で非常によかった。しかし、第3部の到着後から入植までの数日の描写は長編と比べると物足りなさを感じた。でも、終わり方はほっこりした。

    特定の主人公がおらず社会集団を描いたこのような作品、面白いなと思ったので、生きている兵隊と日蔭の村を購入した。

  • 登場人物が多すぎて把握できない
    誰を記憶に残すべきだろうか?
    後々登場することがあのだろうか。
    もしかしたら再読が必要かも。

    読了して、なんだか心がほっとした。
    志はや野心は砕かれたけど、今から始まる新生活に安心感が持てた終わり方だった。

    物語は3つのパートで進んでいく。
    ブラジル移民者が神戸で集合準備をする8日間。
    出港してブラジルにつくまでの45日間。
    ブラジルで配属地につき働きだすまでの通日。

    移民者は百姓の中でも貧しい人たちのようだ。田畑を売り、背水の陣で移住に臨む。出港できた人、できなかった人。航海の中での心境の変化。別れとここで生きるという覚悟を決める。人々の様子が丁寧に描かれていた。

    この激動の中で、いろいろな心情や思惑があるが、押しつけがましくない後味。珍しいなと思った。もっとセンセーションに描くことで見せ場や波を作ることもできたのに、穏やかな波のように物語が進んでいく。この方のほかの本も読みたいと思った。

    第一回芥川賞受賞作品

    第一部 蒼氓(芥川賞受賞 S10 1985発表)
    第二部 南海航路(S14 1939発表)
    第三部 声無き民(S14 1939発表)

    蒼氓 そうぼう 民、人民の意味

  • 第1回の芥川賞作。三宮は雨だった、から始まる昭和5年のストーリー。飢饉と失業で海外移民を斡旋する国内政治。拓務省はブラジル、満州台湾への移住をすすめる。姉のナツ(夏)は弟の孫市が抱く新天地への夢のため、虚偽の婚姻を結び弟と渡る準備を整える。結婚は移住のためのカタチだけのつもりであったが…。
    食べることのままならない国内、食べるための移住、人々はやがて日本を忘れていく…。
    今度、神戸の海外移民センターに行ってみたいと思った。

  • 日本人がブラジルへ移民する時代のことを描いた物語。激動の時代に生きた人たちが苦労してブラジルへ渡った様子が垣間見られた。
    ブラジル移民があったのには、難しい日本の時代背景があることが読み取れる。

  • 1930年、ブラジルに移住していく貧しき人たちの群像を描いている。とても写実的な描写で読みやすく、ノンフィクション的な作品だった。ブラジル旅行のお供として、行きと帰りの飛行機で読んだ。戦前移民のお年寄りに話を聞いた後だけに味わい深かった。

  • ブラジルへ移民した人たちが最後に見た日本が、現在も残る旧移民収容所から港にかけての街の描写。

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