青春の蹉跌 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.81
  • (37)
  • (67)
  • (60)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 466
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101015224

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • うーん何というか、こういう自分の内面と向き合わざるを得ない本を読むと、いつも複雑な読後感を味わうことになる。きっと江藤に感情移入しながら読んでいるからだと思う。彼のエゴや傲慢さや浅はかさや、一方で生真面目さや肝の小ささや。
    フィクションとして読んでいたものが、いつの間にか〝自分ならどうだろう、自分も同種の人間かもしれない〟などと考えている自分に気がつき、来し方に思いを馳せていたりする。それがこの本の優れたところなんだろうな、とも思う。

  • 江藤賢一郎の行動はエゴイズムそのものだが登美子の行動もまたエゴイズムであった。康子の行動も然り。エゴイズムが概念的思想から実存的暴力に変換されたとき、江藤の敗北は喫したのかもしれない。最後の数ページまでは江藤の身勝手さや自惚れ、過信に憤慨と好奇をしつつも、結末(特に最後の段落)は『羅生門』的な人間の闇と業を感じさせる。

    江藤をひとりの青年として捉えた場合、若気の立身出世を夢みる気持ちや優位的な逢瀬、知略の綻びに対する焦りは男性諸君には多少通ずるものがあるかもしれない。(女性には失礼を承知ながら)それを題材に行動と事件に変え、結局は男性の稚拙さや浅はかさを描いているのが何とも面白い。『青春の蹉跌』というタイトルから純文学かと思ったら一流のミステリーであった。★5に近い★4。

  • 蹉跌とは、つまずきやしくじりを意味する言葉である。つまり、青春時代に味わう挫折、といったところか。

    主人公・江藤賢一郎は法律を学ぶ学生で、成績抜群。司法試験に合格し、末は教授か弁護士かという有望な青年である。ただ、彼が法律を学ぶのは、世のため人のためといった崇高な使命によるものではない。彼自身の家庭は貧しく、学資も資産家の伯父から出して貰っているが、将来の出世栄達により、いわば逆・玉の輿に乗り、自分の人生の一発逆転を狙っているだけなのである。そのため、彼の性格は極めて打算的でエゴイスト。自分以外の他人は皆、敵であり、機会を見てはうまく利用してやればいいなどと考えている、とんでもないヤローなのである。

    司法試験に合格し、資産家の伯父の娘との結婚話も持ち上がってきて、いよいよ道が拓けようとしていた江藤に、しかし、大きな落とし穴が待っていた。それは、自分の愛欲を満たすためだけの女性の友人・登美子の妊娠であった。登美子の家は、会社を経営する父親が破産し、貧窮の底にある。登美子は江藤に対し、結婚をしてくれ、子供を産ませてくれとせがむ。江藤は進退きわまり、登美子を殺害するに及んでしまう。

    そこから先は、察しが付くかと思われる。法の番人になろうとしていた江藤が、逆に法に裁かれる立場へと転落していく、まさに青春の蹉跌。江藤は確かに頭がいいのだが、それは専攻の法律の世界においてというだけで、世の中のこと社会のことにおいては、あまりに無知でありすぎた。とにかく勝ち馬に乗りさえすればいいという、狭い視野でしか物事を捉えられない青年の悲劇がそこにあったのである。

    儂もすっかり勉強オタクになっているが、江藤のような男にはなるまいと反面教師のつもりで読んだ次第。

    ちなみに著者の石川達三氏は『蒼氓』で、第1回の芥川賞を受賞した人物である。いい小説をたくさん残した方なので、是非、1冊は読んでおきたいものである。

  • 学生どうしの痴情のもつれ話ほど醜いものはないと考える私だが、この学生どうしの痴情のもつれを見事に表現しきった作品が本作である。
    しかも片方は司法試験にパスするほどのスーパーエリート。

    そんなスーパーエリートの思考が、一人の女により突き崩されていくおぞましさが見事に描かれている。
    元・法学徒の私には、「あーこういう思考の法学部生いるわー」と思えるセリフも多々ありました。

    結末はあまりにおぞましいので書かないが、おぞましい結末がやがてくるとわかっていてもページをめくる手が止まらないはず!

  • 2012/10/14

  • 江藤が警察に連れて行かれる所がすごくリアルだった。
    胎児が江藤の子供でないことは予想できた。

  •  金持ちのいとこと結婚するため邪魔になった恋人と別れようとするが彼女が妊娠してしまい……、というありがちなプロットながら司法試験に合格するエリート法科学生である主人公のあまりに冷めたリアリストの視点が面白く、読みごたえはありました。また、叙述トリックものというわけではないですが、『イニシエーション・ラブ』を彷彿させるような「女こわっ」ってなるラストのどんでん返し(?)もヒヤッとしました。

  • P253
    人間の隠された心理を汚く描いた小説、理由なく面白く読めた。

  • 幸せとはなにか、本当の愛とはなにか?
    後半から徐々にスリルあふれる展開。
    そして衝撃のラストが待つ。

  • 社会、結婚、資本主義、罪、死、幸せ、これらは一体何なのか考えさせられた。完璧なんてないんだから、できることなら蹉跌につまづいても「つまづいちゃったよー」ってヘラヘラしていたいなー、と。

全59件中 1 - 10件を表示

石川達三の作品

青春の蹉跌 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×