もっともっと自由を… (新潮文庫)

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本 ・本 (365ページ) / ISBN・EAN: 9784101015439

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  • 東京の女子大生たちはリベラル思想を杖として
    フリーセックスを楽しんでいる
    ときには事故的に妊娠してしまったり
    犯罪に巻き込まれたりするが
    それらは大した問題ではなかった
    適切な処置をして
    後は知らんぷりを決め込んでいればどうにでもなることだった
    しかし、自由と言って通用しない社会の壁にぶち当たったり
    他人の自由にアイデンティティを揺さぶられたりすると
    彼女らの精神は意外に脆かった
    そこで彼女らは連帯し
    古い権威に戦いを挑んでいくのだが
    そういった成行きの裏には
    冷戦時代における情報戦という一面が
    隠れていたのかもしれなかった
    79年の小説である
    青野聰が「愚者の夜」で芥川賞を取った年でもあった
    同時期、戸塚ヨットスクールのスパルタ式が注目を集めている
    自由であることに疲れた人々が
    家父長制への回帰を願っていたのかもしれない
    翌年には村上龍が「コインロッカーベイビーズ」の中で
    無責任な母に捨てられた子供たちを書き
    終末の予感を幻視した
    石川達三の「もっともっと自由を……」が
    それに連なる問題作であることは間違いないだろう
    一見してクソダサいタイトルも
    そう考えると恐怖を帯びてくるのだった

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