異人たちとの夏 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 543
レビュー : 97
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101018164

作品紹介・あらすじ

妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した…。静かすぎる都会の一夏、異界の人々との交渉を、ファンタスティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名手山田太一の新しい小説世界。第一回山本周五郎賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 想像力をかき立てるのに、多くの言葉はいらないと知らされた。

    限りなく虚飾をそぎ落とした物語だ。
    こてこてと飾り立てた文章が多い中、山田太一の書く文章はこの上なくシンプルだ。
    この簡素な文体がこの物語の味わいを決定づけている。
    この作家の本職がシナリオライターであることと無関係ではないだろう。

    妻子と別れ、一人で仕事部屋として使っていたマンションに住む40代のシナリオライターが主人公だ。
    環八沿いのマンションは、夜になると閑散として人気がない。この静かな舞台がとても心地よい。

    彼が幼少期を過ごした浅草をたまたま訪れたとき、やはり幼少期になくなった彼の両親と出会うことから、その夏の物語が始まる。
    幽玄な物語はやがて思いも知らない方向へ舵を切っていく。

    暑い夏の夜中に読みたい一冊だ。

  • 大学生の頃読んだが、この年で読み直すと、若く元気な頃の両親と再会というシチュエーションに涙する。話を全部忘れていたので、ラストの急展開に背筋が凍った。タイトルの「たち」にそんな意味が隠されていたとは。夏の終わりに良い体験をした。

  • 2009.08.25

    切なさがあって、心温まるものがあって、そして、背筋がうすら寒くなる。

  • 映画「異人たちとの夏」を見て購入、やっぱり映画の出来が良いとね、、

  • オチはなんとなく読めていたけど、けっこう怖い感じになるんだなと。
    ほのぼのホラーから戦慄ホラーへ。
    主人公を蝕んでいたのは両親ではなくて、ケイってこと?
    文字通り精力を吸われて…
    なら、両親は消えなくてもよかったのだろうか?

    あと、やたらビールが美味しそうで飲みたくなる。

  • 幼き頃に死に別れた両親が現れて、幻覚とは分かっていながらも両親と過ごす暖かい想い出の時間に、じわじわと感動してたら……いきなりホラー気味に。ケイの怨念が怖かった。。孤独で淋しい心だったから踏み込まれたのかな。間宮と最後に又、仕事出来たのは良かったけど……なにも、彼の奥さんと……ねぇ(((^_^;)ファンタジーなのか?ホラー気味なのか?愛なのか?……でした。

  • 妻子と別れたばかりの脚本家の男が、48歳の誕生日に行くあてもなく銀座線浅草駅を下車する。男が中学時代まで両親と過ごした街だ。男は12歳のときに父(享年39歳)、母(享年35歳)と交通事故で死別していた。当時国際劇場のあった場所がホテルに建て替えられた現代の浅草の街で、男は若き日の両親そっくりの男女と出会う。両親を亡くしたために甘えることに不器用であることを自覚する男を、その男女は優しく迎え入れてくれる。

    「受け身になりたかった。父と母が、ああしろ、こうしろといってくれて、そのいいなりになる快感」

    本書は1987年の作品。同じくすでにこの世にいない両親との出会いを描いた小説「地下鉄(メトロ)に乗って」(浅田次郎著=過去ログ)は1994年の作品。どちらの小説も亡父母への思慕と喪失感が、切実かつノスタルジックかつミステリアスに描かれている。

  • 人は、1人では生きていけない・・・
    自分一人で何かしているようであっても、後ろには多くの人がいて、その人たちの支えがあって生きている。

    山田太一氏の作品はいくつか読ませてもらっているが、この作品は非常に好きな作品の1つです。


    主人公の男性は、離婚を機にマンションの1室で1人生活を始める。
    家族を失っただけでもこたえるのに、仕事を一緒にしてきた男性が、自分の奥さんに惚れていたこともあり
    彼とも疎遠となってします。

    小説の題名の異人たちとは、なくなった人たちと言い換えられると思います。

    そんな中、彼の前に、なくなったはずの両親が現れます。
    彼らと過ごすうちに、家族の大切さや、親のありがたみなどが、随所に垣間見られます。


    現実の世界での葛藤、異人たちとの出会いで訪れる心の変化。

    失ったことから1歩1歩前に進む、静かだけど人の心が通う作品だと思います。

  • 著者の『日本の面影』に感動したため。

    読了。
    面白かった。シックスセンスにも似た、構造と優しさをもっている。
    とにかく巧い。

  • 鑑賞は大林宣彦監督版が先。

    山田太一という名前はビッグネームだという認識はあり、代表作の中に「ふぞろいの林檎たち」なんかをみかけると「あぁ…」とはなるものの、それをかじりついて観た世代でもないため、同時期の脚本家で(もっと後の時期になってからではあるが)かじりついて観た倉本聰と比べるといまいち印象が薄かった。

    とはいえ山本周五郎賞の初回受賞作品というのは大したもの。映画を観ているが故にネタバレした形で読んだわけだがそれでも十分に楽しめた。登場人物のネーミングにまたもやドキッとさせられたりも(苦笑) たまたま読了後にもう一度映画を再鑑賞することができたのだが、やはり映画版は主人公の内省部分が省かれるが故にテンポがよすぎる風にも感じた次第。ビジュアルで伏線を張るのはお見事ではあったが。

    田辺聖子氏によるあとがきが秀逸。それにより読了後の爽快感がすうっと引き上げられた感あり。

    プッチーニ、しばらく聴き込むかぁ。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。大学卒業後、松竹入社、助監督を務める。独立後、数々のTVドラマ脚本を執筆。作品に「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」他。88年、小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『絶望書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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