君を見上げて (新潮文庫 や-28-10)

  • 新潮社 (1993年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (326ページ) / ISBN・EAN: 9784101018201

感想・レビュー・書評

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  • 文部科学省「君に贈る一冊」キャンペーンで紹介されていたので手に取ってみた。古い本だったが、今まで読んだことのない設定、視点で面白かった。この本を紹介したのがバレーの益子直美さん。益子さんは、最近では「監督が怒ってはいけない大会」の主催などで注目を集めているが、この本を紹介したこともまた興味深い。

  • 背の高い女として勇気をもらった。

  • 出会いも再会も、背格好もセンセーショナルな二人の男女。お互いが自分の身長を引け目に感じてはなから恋愛対象外だと言い合い、だからこそ肩ひじ張らずに素直になって普段なら口に出せない言葉も投げかけられる。でもまたすぐに周りの目を気にして、知らない間にこびりついた固定観念にとらわれ見えない線を飛び越えられずに意固地になってしまう。
    可能性のない同士と決めつけることで諦観を孕んだ一種の安心感を抱きながらも、どんどんのめり込んで惹かれあう。今まで知ることのなかった慟哭のような感情の吐露を、その豊かさを、閉じられた金庫を開くことによって覗いてしまった章二。テリトリーを離れた地での体験が契機となり、抑えてきた他人への関心や逃げてきた関わりへの望みが膨らんでいく。
    試す前から、努力する前から不可能なんてことはないのに勝手に自分で納得して、相手に迷惑をかけず自分が傷つかないように最初からあきらめることの虚しさ。労力は最小に抑えられているのに、なんだか途方もない徒労感を味わう。可能性が絶たれるのってそこで小さな世界が終わってしまうような悲しさがある。
    読んでいて私も大いなる母に抱かれたいよ~となった。誰でも母性のようなものに包まれたい瞬間はある。継続的な甘えは危険だけど。そしてリバーサイドの主人とのやりとりが本当によかった。従来の価値観が変わっていくこと、二人の将来を肯定してくれる保証人。
    生きていく上で身長とか体重とか、容姿とか肯定的な意味合いで本当にどうでもいい気がする。とはいっても私も身長が低くて実生活で物理的に困ることが多いし、もう少しタッパがあれば、すらっとして自分好みの美しい顔つきに少しでも近づければと節々で考えてしまうし、上野瞭の解説の通り自身の存在という大切なアイデンティティであって、見目や健康は生活する中で切り離すことも手放しで肯定することもできない極めて重要なものである。他人と対峙するときも、一目見て瞬間で自身の物差しで不躾にもジャッジをする。目に見える情報がある一定の基準で比較しやすいからと勝手にそれで人を判断してしまう。いくら数値化されたり垢抜けといった類の平均的な美醜の基準があったりしたとしても、それは単なる記号の一つでしかなく全くといっていいほどの一方的な偏見である。質量的な話でいえば小柄な人と大柄な人が天秤に乗ったら、自然と一方が軽く一方が重いため釣り合わなくなるのは当然のことだから、釣り合わないという自明の理に卑屈になることはない。みんなどこかしら違っていて不均等で、均等に釣り合うことはむしろない。互いに相手を思いやったり、受け入れたり迷惑をかけあったりすることで馴染んでいき互いに感じる差を均したり、そういった凸凹や障害などを違う視点としてあるがままでいられるよう打破したり。対等であったりなかったり、そのときどきで様々な位置にある状態の二人を内外からアップデートしていく。
    "「どっちへ行こう?」「あっちの空の方が、少し明るくない?」"、こんなふうに見えない明日を明るく思える方向へ少しずつ確かめながら目の前を進んでいきたい。

  •  女子バレーを見てると、日本の女性は180cmぐらい、中国は2m超の選手も。男性も女性も背が高くなりました。山田太一「君を見上げて」、1993.10発行。人は自分にないものを求める。163㎝、32歳、金庫屋の高野章二と182㎝、30歳、会計事務所勤務の小坂瑛子のラブストーリーです。章二は瑛子のウェストあたりに手を回した。そのつもりだった。しかし手は尻に触れていた。柔らかい尻だった。(^-^)

  • 再読。あー、改めて読むとなんて上手いんだろう。会話、気持ちの変化、事件。テンポもいい。こんな文が書けるようになりたい。

  • これもよかった

  • ゆるーい感じの恋愛小説。章二の小物っぷりが、むしろ気持ちよい。

  • 163センチの男性と182センチの女性の恋愛小説。94年のレシートが挟まっていて、消費税が3%で、1990年発行。

  • 身長差をものすごーく気にしながらも、お互いに惹かれあう2人が微笑ましかった。高身長(外見)でハミ出している瑛子と、職業柄・人間的な面でハミ出している高野が、恋愛を通して自分を見つめ直す点も魅力、と解説にも書いてあって、凄く納得した。

    .

  • 身長163センチの男性と、182センチの女性の恋の話し。

    ”気があう”って、そうそうこんな感じだよねって、微笑んでしまいました。
    見た目も、性別も飛び越えて気が合う感じ。

  • 20091115読売新聞。西川美和。「繊細なおでんのような味わいの恋愛小説。」

  • 人間の本音が書かれている部分が好き

  • なぜだか知らないけど時々無性に読みたくなる一冊。

  • 語り口の軽快さ、ストーリーのおもしろさの奥に、深いメッセージが込められてて、いい読書だった。人間関係に距離を置くことに孤独を感じ始める人物を、開かない金庫を開ける金庫屋という設定にすること。世の中の既成概念と自分のあり方の葛藤に男女の身長差をもってくること。おもしろい。でもこんなに率直にお互いのコンプレックスを表現し、かつ乗り越えようとできるもんだろか。3 Nov 2006

  • 共に30代・身長182cmの女と163cmの男のラブストーリー。
    20歳の頃に母から薦められて読んだものを再読。大まかな感想は同じだけれど、細かい部分は違っていることに驚いた話。
    抑制のきいた二人に歯がゆくなりながら、それが崩れる瞬間の甘さが心地よい。読むと恋愛したくなる気がする。

    過去NHKでドラマ化もされています(DVDで発売済。主人公をV6・森田剛、ヒロインを未希が演じています)。多少、原作とは内容が違いますが、そっちもお薦めです。これのモリゴ、かっこいいんだ。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。大学卒業後、松竹入社、助監督を務める。独立後、数々のTVドラマ脚本を執筆。作品に「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」他。88年、小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『絶望書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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