赤猫異聞 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2014年12月24日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784101019277

作品紹介・あらすじ

時は、明治元年暮。火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち――博打打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」の言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には……。幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。

感想・レビュー・書評

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  • 浅田先生の語りは絶品です。最後の語りまでは闇語りを彷彿とさせる内容でした。残念なのは最終章の無理矢理感です。

  • 聞き語りのストーリーは、珍妃の井戸など、浅田次郎さんで採られている展開。それぞれの人から見た様子や思いがわかり、それを他者が述べたものとつなぎ合わせながら、全体を理解したり感じたりするのは面白い。赤猫とは、江戸の火事のこと。明治になってもそのまま伝馬町にあった牢屋から火事で召し放しとなった3人の男女が召し放しとなった後の行動や気持ちの変化を述べていく。

  • 浅田節全開。
    長編が多い浅田さんですが、ほどほどの厚みの一冊できれいにまとまっていて完成度が高いなと思いました。

    明治元年、火の手の迫る牢屋敷から解き放ちとなった罪人たち。
    中でも重罪人とされている三人は、全員戻れば無罪放免、一人でも戻らなければ戻った者も死罪、一人も戻らなければ役人が代わりに腹を切る。

    関係者への取材という形は浅田作品ではお馴染みの手法で、スッと物語に入れます。
    ちょっと地味だけど、ラストはエンタメとしての驚きも用意されている。
    二時間の映画にちょうど良さそう。

    「法は民の父母なり」

  •  おお、これはアタリでした……! ストーリー云々の前に、牢屋敷のシステムや解き放ちのことなど、大層詳しく解説されていて、まずそこに感心するやら感動するやら。
     登場人物各々の視点で語られる解き放ちの顛末が、ゆったりとしていながら深みがあって良かったです。
     序盤ではさほど重要視されていない丸山小兵衛が、語りが進むにつれて存在感を増していくので、最後の語り手が彼なのだろうと見当をつけていましたが……ううむ、こう来たか。
     誰もの生き様も、それぞれに見事です。

  • あまり読んだことのないジャンルだったけど、語り口に引き込まれて一気に読んでしまいました。久しぶりに良い本に出会えて嬉しいです。

  • 時は、明治元年暮。火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち――博打打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」の言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には……。幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。

  • 浅田次郎の長篇時代小説『赤猫異聞』を読みました。
    浅田次郎の作品は『五郎治殿御始末』以来なので、5年振りくらいですね。

    -----story-------------
    共に戻れば無罪、一人でも逃げれば戻った者が死罪に――激動の時代を描く傑作時代長編。

    時は、明治元年暮。
    火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たち──博奕打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。
    牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」との言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には……。
    幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。
    解説/縄田一男
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    2012年(平成24年)に刊行された作品です。

    鎮火後、3人共に戻れば無罪、1人でも逃げれば全員死罪……「江戸最後の大火」は天佑か、それとも――。

    火事と解き放ちは江戸の華! 江戸から明治へ、混乱の世を襲った大火事……火の手が迫る小伝馬町牢屋敷から、曰くつきの3人の囚人が解放された、、、

    千載一遇の自由を得て、命がけの意趣返しに向かった先で目にしたものは……数奇な運命に翻弄されつつも、時代の濁流に抗う人間たち。

    激変の時をいかに生きるかを問う、傑作長編時代小説!

    深川の賭場を仕切っていた博奕うちである信州無宿の繁松、旗本の幕臣で官軍を夜な夜な斬り続けた侍・岩瀬七之丞、30を過ぎた大年増で江戸三大美女と称され夜鷹の大元締である白魚のお仙……「3人のうち1人でも戻らなければ全員が死罪、3人とも戻れば全員が無罪、3人とも戻らなければ牢屋同心・丸山小兵衛が腹を切る」と告げられた厳命、、、

    何の縁もないはずの3人が一蓮托生の運命を課せられる……小伝馬町牢屋敷から解き放たれた3人の重罪人は、鎮火報が鳴った日の暮れ六ツまでに戻ってくるのか、それとも戻らないのか、その2日間に、それぞれの身に何があったのかを描く物語。

    終盤になって、この物語の主人公は、3人の重罪人たちではなく、別な人物だったんだ と気付かされる展開……丸山小兵衛の存在感の強さが印象に残りました、、、

    岩瀬七之丞が、のちに繰り返す「生きていてよかった」という言葉も、ずっしり重い……胸が熱くなるひと言でしたね。

  • 面白く無い訳が無いという舞台設定と侠気溢れる男女の物語からグイグイ引き込まれてしまいます。
    時は明治元年の年の瀬。
    江戸の町を襲った大火事の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人三人。
    博打打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。
    牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」の言葉を胸に、一時、自由の身となった三人は戻って来るのか?
    幕末から明治へ、激動の時代を生きた人々の不思議な物語です。
    死罪を含む重い刑を申し渡された罪人3人だが、「赤猫」(火事による一旦放免)という逃走機会を得ながら、紆余曲折ありはするものの逃げずに指定の刻限までに戻るという義侠心や義理人情が心を熱くする。
    一方で彼らの罪の源となった恨みを一身に背負い弱きを助け強きを挫く牢役人。
    ネタバレになるので多くは語れないが、胸をすく浅田節が炸裂し読了後にスッキリします。
    あと、当時の罪人、牢屋の仕組み、役人、武士の役割や実体、明治政府発足後のバタバタなど、非常にわかりやすく紹介され教養が高まりました。

  • 博奕と人生の違いは、神に恃むかてめえの力でどうにかするかってことさ

    次郎兄ィにしか書けないストーリーとセリフの数々、本当に心に沁みる。
    ありがとうございます✨

  • 明治元年、御一新直後の東京で大火が出た/ 小伝馬町の牢屋敷は囚人を解き放ち、消火後の帰参を待つ/ そこにおいそれと放てない事情を抱えた三人/ 親分に売られ身代わりに収監された深川一帯の大博徒、大政奉還後も官軍を斬って回った辻斬りの旗本次男、奉行所の悪事を知り尽くした夜鷹の元締め/ 珍妃の井戸よろしく浅田次郎らしいインタビュー形式/ 徐々に明らかになっていく火事のあと幾晩かの出来事/ めちゃくちゃ面白いし、東京に住むものとして東東京の当時の状況が非常に興味深い/ 合羽橋が新堀川の暗渠だなんて知らなかったし、浅草寺の東側が火除け地で飲食店は勝手に出されてあたりが繁華になったなんてのも知らなかった/ まったくもって個人的にだが、夜鷹の姉さんの証言を最後に持ってきた方が良いのではないか/ 最初にあるから以後語られる事件の犯人が分かってしまう/ 

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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