上野アンダーグラウンド (新潮文庫)

  • 新潮社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101019833

作品紹介・あらすじ

上野は本日もカオスなり。各地から路線が集まり、人々が散っていく街、上野。そこは動物園や美術館、アメ横など人気のスポットがあるだけではなく、現代の魔境として多くの秘密が眠っていた。西郷隆盛像の謎、上野”九龍城”への潜入、真夜中公園に集まる男たち、不忍池に佇む女、アメ横の闇。上野という街の混沌【カオス】と秘密に迫るディープ・ルポ。8年ぶりの上野再訪を描く文庫版あとがきを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 本橋信宏『上野アンダーグラウンド』新潮文庫。

    様々な路線が集まる上野。かつては北からの玄関口と言われた上野にスポットを当てたディープ・ルポルタージュ。上野の歴史、風俗店や男色の実態、江戸川乱歩や三島由紀夫などの文豪と上野の関わり、アメ横、外国人、上野を舞台にした事件などまさにディープなルポルタージュになっている。

    大東京と言うだけでディープなイメージがあるが、上野近辺はさらにディープでカオスなイメージがある。上野公園や上野駅周辺で初めて浮浪者の姿を見た時には驚いた。自分が長年住む東北地方には浮浪者は居ない。たまに変わり者の浮浪者を見掛けるが、東北で寒い冬を過ごすには無理があるようだ。

    自分が最初に上野に行ったのは今から43年前のこと。当時は東北新幹線など無く、列車で8時間以上掛けて移動した。冬の2月、第1志望の国立大学の滑り止めで、1週間の間に4校の私大を受験するために上京したのだ。この時は上野を通過しただけだった。

    その後、東北新幹線が大宮まで暫定開業した後の大学時代に東京で予備校生活を送っていた友人の所に行ったことがある。この時も上野は通過点に過ぎなかった。

    上野を本格的に知るようになったのは社会人になって出張するようになってからだ。アメ横の中田商店でミリタリーグッズを購入したり、丸井の何階だかに入っていたパステルに土産にと、なめらかプリンを買いに行ったり、今は無き聚楽台で新幹線の出発時間まで酒を飲んだりと上野は楽しめる場所だった。

    それでも、上野をはじめとする大東京は未だに恐い。

    本体価格900円
    ★★★★

  • 上野ってこんな街なのか
    まず東京にすら数回しか行ったことのない私にとっては未知の領域だな
    行くことがあるかはわからないが、スリには気をつけようか

  •  茨城が実家だった自分にとって、東京に行くといったら上野駅。今でこそ常磐線も上野東京ラインにより東京駅まで直通運転されるようになったが、それまでは上野駅と言えば正に東京の玄関口、東京のどこに行くにせよ、出発地は上野駅だった。最近の上野駅はだいぶきれいになったが、昭和の末の頃は、本書でも言及されている戦災孤児たちの仮の宿となっていた地下道はまだ薄暗く(74頁)、大勢のホームレスが壁に凭れて座っていた記憶が残っている。また、就職して間もなく、1年という短い期間ではあったが上野に勤めていたこともある。そんな所縁もある上野を取り上げているということで、本書を手に取った。

     上野駅中央改札の真上に「馬や犬、牛、傘をさした人物、海女、漁師、スキーヤーといった人物が描かれた巨大な壁画」があることが紹介される(29頁)。猪熊弦一郎の「自由」という作品だそうだ。これまで何十回となく出入りしたところなのに、これまで全く気付かなかった。ことほどさように、関心を持って見ないと何も見ていないのと同じなのだ。

     上野と言えば、国立科学博物館、東京国立博物館、国立西洋美術館、上野動物園といった上野の山にある多くの文化施設を普通の人は連想するだろうが、本書で取り上げられるのは、アンダーグラウンドとしての上野。徒歩圏内の狭いエリアに聖と俗が背中合わせにある上野、そんな上野に著者一行の探訪巡りが続く。
      著者ならではの ”九龍城ビル”にある中国エステや出会い喫茶への潜入取材ルポのほか、同好の士を求めて摺鉢山に集まる男色の男たち、不忍池に集まる個性豊かな人々、日本最大の宝飾問屋街、闇市から始まったアメ横、コリアンタウンを象徴するパチンコ村とキムチ横丁などなど、ディープな世界が次々と取り上げられる。加えて、今まであまり聞いたことのない有名、無名問わずのエピソードが盛り沢山に披露される。

     都心にありながら、地方都市のような野暮ったさの残る場所、上野。そんな上野をまた歩きなくなった。
     本書元版が出たのが2016年、8年後の文庫化に伴うあとがきでは、主な登場人物のその後も紹介される。正に人生いろいろの感。

  • 上野とはどのような街なのか、時間をかけた取材は読みごたえがあった。そして何よりこの清濁併せ呑む上野という街を、この3人と歩いているような気持ちになった。
    アメ横、九龍城ビル、男色、美術館、宝石店、不忍池、動物園、パチンコ、キムチ横丁。
    様々な要素が綯い交ぜとなり不思議な魅力となった上野には、今日も多くの人が集まる。なぜ足が向かうのか?それは本書を読んだだけでは分からない。勝浦編集長が「街自体が何かを持っているような気がする」と言うようにそれを体感して初めて街の魅力に気づくのだろう。
    行こう、上野へ。

  • アウトレイジではなく、本当にアングラという感じか。

    東北からの出口であった上野は、渋谷や新宿などと違って、なんつか、カオスというか、田舎っぽさというか、雑というか逞しいというか。

    下半身にまつわる話も多くてちょっと引いたところはあるが、皆逞しく、いつの間にか引き込まれて読んでいた。

    この街を知らない人が読んでも何のことやらだろうとは思う。

  • <目次>
    プロローグ
    第1章   高低差が生んだ混沌
    第2章   上野”九龍城ビル”に潜入する
    第3章   男色の街上野
    第4章   秘密を宿す女たち
    第5章   宝石とスラム街
    第6章   アメ横の光と影
    第7章   不忍池の蓮の葉に溜まる者たち
    第8章   パチンコ村とキムチ横丁
    第9章   事件とドラマは上野で起きる
    エピローグ

    <内容>
    種本は2016年駒草出版から。その後2024年新潮文庫から再版。文庫あとがきでその間の登場人物たちの動向がわかる。こうしたルポは好きである。上野は裏表(裏が圧倒的に強いが…)がある街。私もある夕方、上野公園の公園口付近で老年に近いゲイのカップルに遭遇したことがある。でも基本は博物館に行くためが多い。そこは文化の街"上野”なのだ。本橋氏のこれ以外の東京アンダーグラウンドシリーズも読みたい。

  • もう初版からだいぶ経ったので変わっていることは多いが(コロナ禍、インバウンド、パチンコ不況など)、上野の独特な様子は伝わってくる。後書きで補足もされている。恩賜公園やアメ横だけでなく、キムチ横丁やジュエリー街の歴史を紐解いてくれるのでありがたい。ポートレートが掲載されていることもあり、不忍池の写真家のエピソードは興味深く読んだ。

  • 上野という街を深堀里した本。自分自身が比較的上野近くに住んでたこともあり、非常に興味深かった。上野は大都会東京の古い部分、庶民的な部分を表す街だと思っており、もっとその影の部分を突っ込んて欲しかった。筆者の著書ににありがちな、話を拡げ過ぎて散漫になっている点が残念。

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著者プロフィール

1956年、所沢市生まれ。著述家。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。著書に『東京最後の異界 鶯谷』、『上野アンダーグラウンド』『迷宮の花園 渋谷円山町』『全裸監督』など多数。

「2018年 『色街旅情 紙礫EX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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