ヰタ・セクスアリス (新潮文庫)

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感想 : 173
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101020037

感想・レビュー・書評

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  • 漢字とかドイツの哲学者の名前だったり、髪の毛の結い方の名前とか、ギリシャ神話、着物の名前など、かなりのキャパオーバーな感じでしたが、文自体はさすがに有名な人だけあって読み易かったです。

    時代背景も明治40年ごろの話らしく、自分には予備知識ほぼゼロの未知の時代だったので、そのへんも楽しめました。

    まぁ、ストーリーは、金井って主人公が幼少時代から大人になるまでに体験したエロを、あの時はあんなエロいことがあったんだよって回想してくってだけの話なんだけど、不思議とまったく内容はエロくないという面白い小説でした。

  • まず感想を先に言えば、自分は作者の性に対する姿勢に共感した。けれど、だから自分にはこの小説が特別面白くはなかった。むしろ現代人の性意識からいけば、これくらい固い人間はかえって面白いのかもしれないが。出だしは面白かった。淡々としていて、摩擦がない。けれども、哲学的な小さな視点も発展しないし、また、筋という筋もないので物語的な面白さも薄い。全体としては、余り面白くなかった感が否めない。自然主義的私小説の流行り初めだから、鴎外も書きたかったのかな。これだけ読んでも分からないから、先行研究に当たろう。
    ところで、高橋義孝は巻末の解説でこの作品がフモール(ユーモア)に富んでいると言うが、これは正確でないと思う。ヰタ・セクスアリスの諧謔性はむしろ、ロマン的イロニーだと思う。つまり、作者は現実の苦痛に耐える自己を蔑視することで、そうすることのできる自己を一つ上に上げて誇っている。その証拠に、103pには《しかし自分の悟性が情熱を枯らしたようなのは、表面だけの事である。永遠の氷に掩われている地極の底にも、火山を突き上げる猛火は燃えている。》と書いて、性欲が理性の支配下にありながら、それを上回り得る力を秘めていることを告白している。ユーモアとは、フロイトに依れば、自我の苦痛に対して超自我がそんなことは何でもないと激励するものだ(「ユーモア」『フロイト著作集』第三巻、人文書院)。鴎外の態度はユーモアの側ではなく、衒学的なイロニーの側にある。高橋義孝がこれをユーモアと感じたのは、恐らく氏の精神性がヰタ・セクスアリスに親近的なものだったからだろう。そのため、イロニー的不快感を覚えなかった。イロニーはその内側ではユーモアになり、外側の読者によって初めて発見されるという宿命を持っているとも言えるだろう。確かに主人公は周囲に対してユーモアの視点から眺めている。けれど、回想する自分自身については、やはりユーモアに徹し切れず、イロニーの側に転倒してしまった。ここに鴎外の人間性というか、他の作家との差違とでも言いたくなるものを見ることが出来ると思う。

  • 10月6日読了。題名はラテン語で「性欲的生活」の意味、哲学者の金井(鴎外自身がモデル?)が自らの性欲の芽生えを振り返る自伝的小説。発行当時は大いに物議をかもし発禁処分にもなったというが、今だって決して幸せなすばらしい時代とは思わないが、この程度の自己認識も文章で発表できないこの時代(1909年)よりはずっとマシだな。他人からどう見られているか・によって自分の振る舞いを決定付けるような思春期のもどかしいような自己愛は現代にも通ずるものがあるが、男色の硬派・女色の軟派が互いに競い合い、膂力のない男子学生が硬派の襲撃を恐れるという当時の学生の風土は現代ではありえないな。(いや、今もそうなのか!?)

  • まずこれが100年前に書かれたものとは全然思えません。
    小さな頃にエロ本をチラッと見たり、女の子の股を見ようとしたりする経験は100年前も今も変わらないんですね。また、最近の若者の性の乱れとかなんとか言われたりしますが、100年前の若者たちも軟派なものもいれば硬派(同性愛者が多かったようである)もいたようです。
    この小説を載せた雑誌が当時発禁になったそうですが、わたしは18禁だと思います。自分の性欲との付き合い方は、若いうちにもがき苦しみながら自分で探さなければならないものでしょうから。

  • 童貞なめんなよ。

  • 先輩にレイプされそうになるところだけ読めばいい。

  • 津和野などを舞台とした作品です。

  • 哲学者金井湛なる人物の性の歴史。六歳の時に見た絵草紙に始まり、悩み多き青年期を経ていく過程を冷静な科学者の目で淡々と記す。

  • もっとアレな話かと思ってたけどなんかけっこう面白かった。

  • まだ途中だけど性の目覚めに対しての考察が生真面目で固くて新鮮。ドイツ語や英語をちょいちょい本文に挟んでくるのでいちいち巻末の脚注読まなきゃ意味がわからなくて少々面倒。男子寮で先輩に狙われる描写とか軽くやおいでアゲ。しかも色白紅顔華奢の美少年タイプより骨太ガッチリ醜顔(本人曰)タイプの主人公(おそらく鴎外がモデル)のほうが好まれるとかリアルでアゲです。

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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