山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 197
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101020051

作品紹介・あらすじ

人買いのために引離された母と姉弟の受難を通して、犠牲の意味を問う『山椒大夫』、弟殺しの罪で島流しにされてゆく男とそれを護送する同心との会話から安楽死の問題をみつめた『高瀬舟』。滞欧生活で学んだことを振返りつつ、思想的な立場を静かに語って鴎外の世界観、人生観をうかがうのに不可欠な『妄想』、ほかに『興津弥五右衛門の遺書』『最後の一句』など全十二編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 『高瀬舟』
    「人は身に病があると、この病気がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食って行かれたらと思う。万一の時に備える蓄えがないと、少しでも蓄えがあったらと思う。蓄えがあっても、又その蓄えがもっと多かったらと思う。 …人はどこまで往って踏み止ることが出来るものやら分からない。」
    人間の欲と安楽死の問題を考えさせられる物語。

  • 表題の二篇がやはり秀逸ですが、それ以外の作品も味がありますね。最後の一句や、〜の敵討ちなど、結末が気になり一気に読めます。随筆のようなものもありバラエティ豊か。素朴な人柄が偲ばれます。これまで読みつがれてきた理由が分かりますね。
    百物語、とんだオチだなぁ。

  • 鴎外の作品の中で過去に読んだものはかなり少ない。「高瀬舟」は有名な短編なので昔どこかで通読した。
    あとは何か短編をいくつか。それと「ヰタ・セクスアリス」くらい。有名作の「舞姫」は未だ手に取らないままだ。どちらかというと彼の娘である茉莉の作品の方がまだ手に取っている数は多いかもしれない。
    さて、この本は通勤に短編小説を読みたいなと思っていたところ、積読から見つけたもの。非常に読みやすかった。「ヰタ~」でも感じたが、冷静な筆致の中に時折覗く茶目っ気が楽しい。
    気に入ったのは「高瀬舟」「最後の一句」「妄想」。

  • 森鴎外の歴史小説に描かれるテーマを心に感じるよう読み進めた。
    明治後半、欧米文化を盛んに取り入れる日本にあって武士の時代をテーマに何を世の中に問おうとたのか。
    それは彼が実際にドイツ留学に行き、欧米文化を肌で感じ、それを盲目的に取り入れることで日本の文化、精神までもが忘れ去られることへの危機感ではなかったのか。

    「自己犠牲」の美が、そのひとつのテーマになっていると思う。

  • 十数年ぶりに再読。
    当時はあまりピンとこなかった「足るを知る」ということが、ようやく自分の中で大切にしたい考え方になったことを実感した。

  • 中高生の頃、漱石はほぼ全てを途中挫折していたが、短編中心の鴎外はよく読んでいた。数十年ぶりに読み返しても、格調の高い文体、冷静で客観的な表現は切れ味見事で、日本語の素晴らしさを十二分に味わうことができた。ただ、小説としてはどうなのだろう?創作というよりも分析のような物語が多く、冷徹な視線で一段高いところから下々の実態を描写する、そんな感じを受け怖かった。

  • 『興津弥五右衛門の遺書』は、読むのに難儀した。
    山椒大夫、高瀬舟とも高校時代の文学史で、森鴎外作ということは知っていたが、実際に読んだのは初めて。
    やっぱり教科書に載っている、試験に出る文学作品は一読すべきである。深い。深いが故に何度も読み返す必要があろう。
    作中でてくる重要な登場人物が意外に若い。山椒大夫も最後の一句も子供である。早熟な鴎外だからなのか。

    また1年後に再読する予定。

  • 足るを知る. 相対比較の中には,個体レベルの充足となりえないことを伝える短編小説.

  • 森鷗外の短編集。どの作品も現代に通じるテーマを描いていて、100年前に書かれたとは思えませんでした。興津弥五右衛門の遺書などは文語体で難しかったですが、注釈を頼りに読み通すことはできました。
    一番面白かったのは最初の「杯」。神秘的な文章に心を奪われました。鷗外の無限の知識が溢れ出ているような文体が印象的でした。

  • 『杯』
     泉で水を飲む7人の少女。そこへ、見た目も持っている杯も相異なる少女がやってくる。短い話だけど、杯を小馬鹿にする少女たち、そしてそれをピシャリと跳ね除ける(美しい!)様子が目に浮かぶ。今の世にも通ずる女子あるある。

    『普請中』
     文明開化の時代=日本全体が普請中。日本の官吏とその元恋人の食事風景。外でもキスをしようとする西洋人女と「ここは日本だ」と拒絶する男。男女の関係も普請中なのだろうか。

    『カズイスチカ』
     題の意味は、ラテン語で「患者についての臨床記録」。医学士である花房が、父の診療所の手伝いをする。父は古い医学しか知らないはずなのに、どうも企て及ばない。それは経験の差ではなく、目の前の患者がどんな病気であろうと全幅の精神を以て診ていることに由来するのだと気づく。
     一枚板。生理的腫瘍。この若い医師のカズイスチカをみると、これからが楽しみになる。

    『妄想』
     海外留学し、哲学を学んでいた鴎外の思想を知ることのできる作品。死生観。昔の人は寿命が短い分、死は身近なものであったのだろう。

    『百物語』
     大勢の人が集まり、100つの物語を語り合う。語り手は、このような会を主催する飾磨屋に興味を持つ。その男を目で追ううちに、自分という傍観者を鏡のように映し出す。

    『興津弥五右衛門の遺書』
     黒すぎる書面に心が折れ、飛ばしました。

    『護持院原の敵討』
     侍が親を殺害せられた場合には、敵討をしなくてはならない。ましてや遺言ならばなおさら。
     江戸時代には、願書を出して敵討をするらしい。しかし、通信・交通手段のない中、相手を探すのは不可能に近いことのように思える。長い年月をかけてジリジリ迫っていく「恨み」というエネルギーの大きさたるや。

    『山椒大夫』
     母と女中と共に父を探す旅をしていた兄弟は、人買にさらわれ、山椒大夫の奴隷となってしまう。命からがら逃げた弟(厨子王)。入水した姉(安寿)。バラバラになった家族の行く末は。
     悲惨な話である。最後に母との再会が果たされるも、襤褸をまとい、髪を乱した盲となっている。やるせなさが残る。

    『二人の友』
    「ドイツ語を学びたい」と小倉まで訪ねてきたFとの友情譚。最初は訝しげにFを見る。しかし、彼のドイツ語の実力や生真面目さに触れ、長く続く友情に発展する。
     最初のイメージが覆ること、思ってもみなかった関係が長く続くことってあるある。

    『最後の一句』
     斬罪を受けた父を救うことに決めた娘。健気すぎて泣ける。

    『高瀬舟』
     弟殺しの罪で島流しにされる喜助。他の罪人がこの世の終わりのような様子なのに対し、彼は遊山船にでも乗った顔をしている。聞けば、長年倹約の生活をしてきた末、弟は兄への負担を苦にし、自殺を図った。しかし、一度に死ぬることができず、幇助した結果罪に問われたという。今まで得難かった食が授けられると語る喜助は、足るを知っている。
     貧困、安楽死。この物語は現代の問題にも大いに通ずる。娑婆での生活が苦しく、犯罪を犯し、刑務所に入る老人もいると聞く。安楽死(尊厳死)の議論も真っ只中である。

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