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本 ・本 (832ページ) / ISBN・EAN: 9784101020914
作品紹介・あらすじ
70年代から80年代初めにかけて、『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』など数々の名作を生み出した天才演出家つかこうへい。だが、その真の姿が伝えられたことはなかった ──。つかの黄金期に行動を共にした著者が、風間杜夫ら俳優、および関係者を徹底取材。怒濤の台詞が響き渡る“口立て”稽古、当時の若者の心をわしづかみにした伝説の舞台、つかの実像を鮮やかに描き出す唯一無二の評伝!
感想・レビュー・書評
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いやぁ〜読み応えあった。800頁超の大部。
虚実入り混じる伝説に彩られた演劇人つかこうへい。その『正体』を暴くとすれば、つかこうへいと同時代を過ごした者たちが〈長谷川康夫〉置いてないと口を揃えて言われる著書が4年の歳月を費やし『つかこうへいが最もつかこうへいらしく、確かにつかこうへいだった時代のつかこうへい』を語り切った渾身の一冊。
著者は自身が19歳の浪人生時代につかこうへいと偶然出会う。友人に喫茶店でつかこうへいを紹介され少し話した後、パチンコの戦利品のタバコを強引に奪われてしまうという衝撃的な出会いに見舞われる。
晴れて早稲田に入学。つかこうへいは24歳。当時本人は慶応ながら早大の「暫(しばらく)」という劇団で演出を行なっており、もちろん、まだまだ世間的には全くの無名。著者はその舞台を何の因果か観てしまい、『なんだ、これは⁈』と腰抜かすほどの衝撃を受ける。『どうやって、こんなものが出来上がっていくのか、その現場に関わってみたい!』って強い思いに突き動かされ、以降深く関わっていくようになる。
僕がつかこうへいを知ったのは70年代後半。当時、角川文庫から『小説熱海殺人事件』『初級革命講座飛龍伝』『いつも心に太陽を』など、大ヒットした戯曲の多くがノベライゼーションされており、それに加えて痛快かつ毒気満載のエッセイもあり隈なく読んでいた。ちなみに角川の担当者が後年幻冬舎を立ち上げる見城徹。
何と言ってもエッセイの売りは『毒気』。折しも、80年代初頭にわかに起こった空前の漫才ブームを牽引したツービートの『毒ガス漫才』と共通していた。例えば、ブスの悪口を延々言いながら客席を指差し『笑えるか、そこのお前だ!お前しかいないだろう!』なんていうネタは、既につか芝居にあった。
熱海殺人事件の台詞に『ブスをブスだって言って、何が悪いんだよ。ブスをブスだとちゃんと言いきる、潔さがなかったから、大東亜戦争が始まったんだぞ!』なんかは最たるもので、大竹まことのシティボーイズやコント赤信号のコントはつかこうへいの完コピと言っても過言でないほど、その影響たるや演劇界を飛び越え、お笑いの界にエピゴーネンが多出した。
そうそう、つかこうへい芝居の最大の特徴は『口立て』。つかこうへいがひらめいた台詞を稽古場で猛烈なスピードで役者に伝える。役者は必死に覚え演じる。著者はその台詞を書き留め、つかこうへいに提示。その原稿に大量の赤字を入れ、本番までブラッシュアップを繰り返す。
つかこうへいは語る。『オレは地の文(原稿用紙に戯曲を書く)を書けないからなぁ』。実際は書けるのだが、沸き上がるイメージに文章を書く作業が追いついていかないもどかしさから、口立ての手法を採用。若き日の平田満・三浦洋一・加藤健一・風間杜夫・石丸健二郎らが、まさしくしょんべんをちびりそうになるぐらいドヤされ罵倒される、その緊迫の稽古場風景も活写されている。
また著者は劇団つかこうへいの役者としてだけでなくつかこうへいのゴーストライターとしても暗躍。本書で知り驚いたのは、虚実混載の抱腹絶倒エッセイの『つかへい腹黒日記』の大半は著者がほとんど書いていたとか…。
とは言え、著者はつかこうへいの才能を惚れ込みながらも無条件な崇拝者ではなかった。出会いから終始変わらぬ『めっちゃ面倒くさいが愛すべきつかさん』の印象を抱きつつ、一貫して絶妙の距離感を保ち、つかこうへいを眺めていた。
そう、その眼差しが牽引し本書を書かせたと見る。20代半ばのあんちゃんがあれよあれよと時代の寵児へと駆け上っていく高揚感と生々しい臨場感。時代の空気をすくい取りながら、つかこうへいの正体を浮き彫りにするのは徹底取材だけでは決してなし得ない。
追悼の辞の中に、『つかこうへいの名には「いつか公平」という思いが込められている』とあった。著者はそんなバカなと一蹴。
つかこうへいに深く関わった人に遺る記憶を記録化した本書であり、つかこうへいを愛した人たちの思いが繚乱に咲き誇った快作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に読み応えの有る作品だった。
最後まで読み飽きる事無く楽しめた
遥か昔に何となく触れたつかこうへいに改めて夢中になった読書時間だった。
感謝‼️ -
つかこうへいの評伝。
文庫800ページ超の長編。分厚い。
つかこうへい劇団の役者であり、つかの執筆助手も務めた長谷川康夫が数多くの関係者へのインタビューを元にまとめた大部。1968年から1982年の劇団解散までの日々を描く
最も身近に長年いた人だけに、
各舞台のセリフから展開、細かいエピソードまで
強烈な自信と上昇志向、役者への容赦のないダメだしなど
強烈な個性をもつつかこうへいがまるで目の前にいるかのような迫力。
これはこの人じゃないと書けないね。
早稲田の暫からVAN99ホール、紀伊國屋劇場。
つかこうへい劇団の面々も平田満、三浦洋一、根岸とし江、加藤健一、風間杜夫とここを飛び出してその後大活躍した方たち。つかと長谷川の関係がまるで「蒲田行進曲」の銀ちゃんとヤスのようで、罵倒し、徹底的にいじめつつも役者の「いいところ」をじっと待ち続ける鬼の演出家、というつかの個性は唯一無二だ。
自分はこの後の小説中心の後追いのファンだったんだけど、
つかこうへいの強烈な「声」が蘇ってきました。 -
ものすごく 素直に ストレートに
著者の思いが 伝わってくる。
素晴らしい ノンフィクション
つかこうへい を 題材にした
著者の 青春記
長谷川康夫の作品





