- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101021126
感想・レビュー・書評
-
R3.6.30 読了。
雨戸、土間、銭湯、蠅取紙などなど。昭和のノスタルジックな雰囲気のある高円寺の商店街の乾物屋が舞台の連作短編小説。「富士山の汗」「真冬の金魚」が特に良かった。温かくてほっこりする読後感がたまらない。
巻末に「高円寺純情商店会 加盟店名簿(抜粋)」あり。こんな雰囲気の商店街を街ブラしたいなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
JR高円寺北口を出た所のアーケード街に架かっている純情商店街の横断幕がこの小説から来ていたとは知らなかった。両親と祖母と暮らす、乾物屋の正一少年の屈折した思いや日常の細やかな描写がとてもリアル。家業や父親への思いが真っ直ぐで素直な視点にドキッとさせられる。
それにしても、あの頃の子供達は家のお手伝いが当然だったんだなと感慨深かった。 -
教科書で「六月の蠅取紙」に出会った遠い昔のあの日から、いつか読もうと思い続けてやっと今回手に取った。
素朴な乾物屋の日常も見ていて和むが、匂いや湿気までも感じられる丁寧な描写に触れて、ほっこり幸せな気分になる。 -
昭和30年代後半の高円寺駅前にある商店街を舞台にした日常もの。
中学生の主人公の周囲に起こる些細な事件を、人情をからめ軽妙なタッチで描いている。
執筆時期はバブル期のため、時代感による読みにくさはなく、すらすらと読めた。逆にもう少し昭和感を感じたかったくらいだ。かつおぶしを削るシーンや、嫌な客が店先で粘る情景の細かさの描写の細かさががすばらしく参考になる。
肩ひじ張らずに読めるので、リラックスしたいときにおすすめ。
この小説のヒットにより、「高円寺銀座商店街」は「高円寺純情商店街」という名前に変わったらしい。 -
まさしく昭和の人情味を味わうための小説といったところ。
家業の乾物屋を手伝う小学生の正一の視点で物語は描写される。父親の機嫌、母親の調子、隣に住む魚屋の娘ケイ子。子供特有の些細なバランスの歪みで自分のその時の立ち回りが変わりゆく素直で無力な姿が愛らしく読めた。
高円寺にもこんな時代があったんだな。知らない時代でも懐かしく感じる作品だった。
-
読んでいて心があたたかくなる。昭和の人情味あふれる商店街、行ったことないのに実家のような安心感。今もこういう雰囲気が残ってたらいいなぁ
-
読み易い文章、とっつきやすい登場人物の皆さん。ほのぼのします。こういう商店街は昔、あちこちにあったんでしょうね。ウチの近所にもありました。懐かしいなぁ。
-
主人公の「正ちゃん」は著者の中学生時代なのだろうか。
多感な中学生といかにも昭和的な家族の様子は目の前に展開されるドラマのよう
第一編「天狗熱」で乾物屋さんの息子の正ちゃんが粉かつおを作る場面の描写は秀逸。
〜右手の指を広げてサッサッサッサッとこすっていく〜
第二編「六月の蝿取り紙」は
そのタイトルがなんとも詩的だなあ。
今はほぼ見かけることのない蝿取り紙が、それを使ったことのある読者の視線を著者のそれと同機させてくれた。 -
みんな善人でホッとする話。こういう受賞作品もあって良い。
著者プロフィール
ねじめ正一の作品





