1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 427
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101021218

作品紹介・あらすじ

「俺いま、すごくやましい気持」。ふとした瞬間にフラッシュバックしたのは、あの頃の恋。できたての喉仏が美しい桐原との時間は、わたしにとって生きる実感そのものだった。逃げだせない家庭、理不尽な学校、非力な子どもの自分。誰にも言えない絶望を乗り越えられたのは、あの日々があったから。桐原、今、あなたはどうしてる? ──忘れられない恋が閃光のように突き抜ける、究極の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹かれて読んだ。
    短編だが、少しずつ登場人物達が繋がっている。

    日常のふとした中に、こんなふうに昔の事を思い出す瞬間があると思う。
    だからと言って今が不幸な訳じゃなく、それなりに充実していても、一瞬の隙をついて、スーッと入り込んでくる記憶。香り。声。指先。
    久しぶりに、大好きだったあの人を思い浮かべてしまった。
    そして次の瞬間には、師走の喧騒の中に慌ただしくしているいつもの自分に引き戻された。
    もう少しだけ、まどろみたかったな・・・・・。

    桐原のその後の短編もぜひ書いて欲しい。

  • ヒロイン由井と同級生の桐山
    この大恋愛が ほんまもう
    「ひりつく」んですわ
    中学生らしいというか
    若いというか
    すべてを焦がすような
    幼いけど激しい恋
    そして 有島武郎の
    「小さき者へ」が
    効果的に使われて
    「行け。勇んで。小さき者よ」
    なんか 胸があつくなったよ

  • 本当は後悔のない日々を過ごしたい。
    だけどいつだって過ぎ去らないとわからないし後悔はつきまとうし消えることもない。
    だからこそ、いつ思い出しても閃光のように突き抜ける瞬間がある。
    簡単に時をこえるその記憶は、その言葉は、時として優しい救いになり、時として呪いとして絶望にもなる。
    失う絶望を知っている人は、泉さんのように最高と最低の瞬間を繰り返している気がするし、
    得られない絶望にいる人は、加奈子のようにどん底の最低が無い代わりに突き抜けた最高も得られない気がする。
    だけど、その後悔があるからこそ続く未来があると信じたい。
    偶然の出会いも、偶然の再会も、全ては過去から繋がっている。
    高山先輩と雄一が好きだった。

  • それぞれの登場人物の視点で描かれている。
    西国疾走少女、千波万波が印象に残った。

    昔、友人の親が羽振りの良くなった違和感を覚えた。
    見下したものいいが特に気になっていた。
    そしてあるとき、会社の金を横領したことがばれ、夜逃げした。確かに貧乏は辛いが、我慢しなければいけないところなのに。道徳教育とか言っていたが、メッキだった。

    私の親戚を巻き込んで、風呂やトイレをDIYした。家のリフォームもどきをやったが、雨漏りは絶えなかった。
    まるで、リアル北の国からだった。
    金持ちは貧乏人をいじめたがる。何故か勉強しないから、今は貧乏になっている。そんなことを思い出した。

    この本に登場する主人公の彼氏がこの世に存在すれば、いいのにねと思った。
    私もそんな彼女に出会えずに年を重ねってしまった。
    暗灰色の時代だった。

    性的描写が多い女性作家の本であった。女性好みの文学らしい。(賞受賞作品)

  • 人生におけるいろんな感情が詰め込まれた一冊。
    物語の軸になる由井とその周りの人々の人生。
    例えば誰かの不幸をネタに優位に立とうとする者がいたとしてその者の人生が幸せだとは限らない。
    例えば幼さ故に大人たちの理不尽に振り回されたとしても非力に苦しんだとしても絶望的な人生が続くとも限らない。
    誰にも苦しみも楽しみも哀しみも喜びもやってくる。
    落とし穴はあるし救いもある。
    人様の人生をどんなに哀れに思ったとしても責任は持てない。どんなにダメな奴であったって否定はできない。どんなに幸福そうに見えたとしても本当のところは分からない。
    後悔のない人生など誰にもない。
    オムニバスの1人ひとりが皆、物語の主人公になれる。それはきっと現実世界も同じこと。
    由井だけでなく、みんなに穏やかな日々が訪れますように。
    今年の25冊目
    2020.8.28

  • 2016年のR-18文学賞を受賞した作品だそうです。これは短編の賞で、受賞した後それを連続短編にして、一冊の本になったデビュー作という位置づけです。

    貧しい子供たちが主に主人公です。
    それを取り巻く周りの大人、学校のヒエラルキー、そしていろんな形の恋愛が描かれています。

    とにかく読後が温かい。
    登場人物の誰もが、あの時こうすればという一抹の後悔は抱えている。人との出会いと関わりのなかの一瞬の出来事が、忘れられない思い出となってずっと長いこと人を励またり支え続けることがたくさん描かれている。

    たとえば、
    反抗期に、中学生の時母親が作ったお弁当にケチをつけ、酷いことを言って玄関に弁当を置いて家を出た。母親はそれでもいってらっしゃいと言って送り出してくれたのに返事もせず、この2時間後にスズメバチに刺されて死んでしまった。浅はかで自分勝手なその酷い言葉を何遍も何遍も思い出して苦しんだ。それを中年になっても悔いた気持ちだけはずっと残って。その悔いと一緒に思い出すのは、いろんな人の温かい言葉。
    『自分の娘はいまそういう時期ってわかっとったっちゃない?』『年相応の可愛い反抗って理解してくれとったはず』そんなふうに慰める人たちもいる。『否定的に考えると脳が守りの体制に入って、そのせいで力が発揮できんようになるけん、もったいない』と難しいことをいう人もいる。難しい話をした人が付け加えたひとこと、『それが安伊子さんのすべてやなかろうもん』に救われた記憶。
    悔いたことと救われたことは記憶の中でセットなのがこの小説の魅力だと感じた。

    空気感がとても好き。短編によくある、一つの章が終わった時に、もう少し先を描いて!という終わり方がないのが嬉しい。

    短編は、主人公が変わって繋がっていくのだけれど、大人になった桐原君主人公の章が欲しかったな〜。

  • 2020.06.28

    幼い頃の記憶はやたらギラギラしていて、大人になってからあれは夢だったんじゃないかって思うことがある。
    ジュブナイルと大人の現実に打ちのめされた話を地続きにするとめまいがしてしまう。そんな心地

    桐原という少年と、由井と、多分初恋
    初めて2人でいた、体を交えた、それからきっとずっと桐原の色っぽい視線や喉が、由井に張り付いている。
    他にも話はあって、由井の夫とか、友人とか、ただベースがこの話でとても瑞々しかった。
    ラスト、桐原の手紙はあった。本当は、桐原の視点の物語も欲しかったな。
    色っぽいけど根本にあるのは青春の泥臭さ
    切ない気持ちになった。

  • ラストに衝撃を持ってこられる作品に、私はめっぽう心を揺さぶられて記憶に残ってしまうのであるが、この本もそうだった。

    『西国疾走少女』えらく回想が続くな、と思っていたら、回想部分でいちばん盛り上がったところで途切れて、現在に戻される。その十年以上の時の経過で失ったものと、中学時代に得たかけがいのないものが、ラスト1ページに浮かび上がる。

    そしてそれは『千波万波』につながる。子供の視点から描かれた、人の温かみに触れられる作品なのだが、ラスト1ページで、また『西国疾走少女』のラストと同じ気持ちにさせられる。
    桐原はいったい、どんな人生を歩んだのだろう。

    この本は、R18文学賞受賞作の書籍化ということもあり、受賞作の登場人物とつながりのある人物が出てくる連作短篇集なのだけど、同じ人物なのに見る人や時期によってまるで別人に思えるんだな、と感じさせられたのが『ドライブスルー』と『穴底の部屋』の高山。中学時代にモテて、大学時代に女で遊んで、社会人になってからは冴えない人。こんな人いるよなーと思った(笑)『穴底の部屋』はぼろぼろと泣かされましたね。

    『潮時』に関しては、いまいち盛り上がりに欠けていたけど、この作品の一文が、この短編集のテーマを要約していると思った。それは、「私は二十年後も、今と同じように諦めているのだろうか。うしなう絶望は怖いからと、自分では何も変えようとせず、日々に流されて。もしかすると、それがまたこの先の後悔に繫がるかもしれないのに。」

    『千波万波』で、夫に出会って流れを変えようと決めた、と由井は言った。変えて、幸せになって、それから桐原からの手紙を見て、後悔はしなかったんだろうか。一ミリの後悔もない、はずがないよね。

    せつなかったです。
    この作家さんのファンになりました。

  • とにかくタイトルの一言が全章溢れててやばかった

  • 高山〜

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