朱く照る丘 ソナンと空人 4 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101023342

作品紹介・あらすじ

輪笏の領主としての未来を断たれ、ソナンは祖国トコシュヌコで都市警備隊の一員として勤勉に働く。五年の月日を経て士官へと昇進し、父シュヌア将軍が暮らす生家へと戻ることに。弓貴での日々は、一夜の夢だったのか──。だが、この国に常駐する弓貴の使者の名前を知り、ソナンは激しく動揺する。ひとりの青年とふたつの国の運命が絡み合う、激動のクライマックス。奇蹟の英雄物語、堂々完結!

感想・レビュー・書評

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  • 本作はシュヌア領視察の話、弓貴の代王の話、そして最終章の3つに分けられるのかな、と思います。

    シュヌア領視察では、ソナンが輪笏で行っていたように領地を視察し、その問題点・課題を見つけ出すところからスタート。領内の問題をきっかけとして、トコシュヌコ全体の問題も見えてきて、この解決アクションがストーリーの軸になるかと思いきや、ちょこっと釘を刺して終了。改善は不完全なままで、なんだかハンパな印象を受けたのですが、これが最終章への布石になってるんですね。読み終わった今は納得な内容。

    続いて弓貴の代王の話。まさかここでナナとの再会があるとは予想してなかったので超驚きました。弓貴では夫婦だったことがバレないよう、トコシュヌコで夫婦になるための大作戦がスタート。王族とのコネのある豪商ナーゲンの登場という超幸運もあり、めでたしめでたしとなりますが、それまでの過程は二人の関係がバレないか終始ヒヤヒヤしてました。また、改めて二人がお互いどう思っているかを再確認できたことも嬉しいポイントでした。

    そして最終章。序盤に分かったトコシュヌコが抱える問題に対し、クーデターが計画されるという驚きの展開。クーデター後、そのままナナと父親を連れて弓貴に脱出するという流れは「主要人物みんな幸せになってほしい」という想いを実現するには(難易度は高いですが)最適の形だったのではと思います。執事のヨナルアやトコシュヌコのその後は気になるし、出来すぎな展開にちょっと都合のよさを感じつつも、個人的には納得してます。

    最後は六樽とちょっとこじれてしまいますが、最終的には赦された……んですよね? 処刑されちゃうのか……とガッカリしかけてたので、最後のページの「六樽様に赦されて、輪笏の督としてふたたび活躍した」という一文を読んで(「えっ」と思ったので、この部分だけ2度・3度と読み返しました)ほっとした気分で本作を読み終えました。

    シリーズを振り返ってみると、ソナンの第一印象は最悪でしたが、2巻以降はソナンが真面目に民や周囲の人たちの幸せを願い(できるだけ正攻法で)あらゆる手段を講じようとする姿と覚悟に惹かれました。その点は「瞳の中の大河」「黄金の王 白銀の王」にも共通している気がしていて、同じような読書体験・感覚を味わえたように思います。もし沢村凛の新たなファンタジー作品が出たら、序盤どんなに落胆しても最後まで希望を捨てずに読み切れる自信がつきました(笑)

  • ハッピーエンド……なのかな?
    帯に「最期」って書いてあるから主人公死ぬのかよ……!いつ死ぬんや……!って思いながら読んだ。六樽様許してくれなかったんか……うわぁ……ここで死ぬの?せっかく弓貴に帰ってきたのに??って思ってたら!!ちゃんと!!赦してもらったのね!!!心臓に悪い!!!!
    トコシュヌコのことを全部ほっぽり出して自分は自分の好きな土地に帰って暮らしましたとさ!ってことでしょ。なんか、こう釈然としない感じはある。でも主人公は悩むし何とかしたいって思うし、罪悪感は感じてるしちゃんと弓貴で督としての日々を送れたのだからよしとすることにする。したい。しよう。
    急展開すぎるよ!代王が七の姫で策略を巡らせてお父さん脅して結婚できたと思ったら革命に巻き込まれるとか、ジェットコースターに乗ってる気分だよ……予想出来なかったよ……
    お父さんとソナンとの関係が、何と言うかこう、4巻通して複雑。親だから子どもを思うし愛してるし(一応)、息子としても父親を見捨てて殺して逃げることは出来なかった。ヨナルアさん大丈夫だったかなぁ?ソナンに振り回されっぱなしじゃん。
    最後まで手に汗握る物語だった。グイグイ引き込まれて一気読みしてしまった。こんなに本にのめり込んだのは久しぶり。良い本を読んだ……この作者さんの他の本も読んでみようかしら。

    解説の人の解説が上手い。まとめてくださってありがとうございます。

  • このシリーズ、一気に読み終えてしまった。
    特にこの4巻目は一気に物語が進んで、最後は…。
    空人とナナ、そして父親がどう過ごしたのかをもう少し描いてほしかったが、これもこの物語の仕様なのかな。

    色々と考えさせられることもあったが、1番はなんといっても主人公ソナン(空人)の成長ぶりがよかった。

  • 最後は一気に読んでしまった。よい異世界ファンタジーであった。
    若いときにはやってしまう、と言われるような愚かなことをしてしまった青年が、「異世界」に落ちてしまい、そこの世界で生きていくうちに誠実であることや、愛することを知り、仕えるべき主のもので働いていたのに、さらに波乱が彼を襲う。
    あれあれ?と思うところもあったけど、それを上回る面白さだった。姫がやっぱよかったかなー。

  • 輪笏の領主としての未来を断たれ、ソナンは祖国トコシュヌコで都市警備隊の一員として勤勉に働く。五年の月日を経て士官へと昇進し、父シュヌア将軍が暮らす生家へと戻ることに。弓貴での日々は、一夜の夢だったのか――。だが、この国に常駐する弓貴の使者の名前を知り、ソナンは激しく動揺する。ひとりの青年とふたつの国の運命が絡み合う、激動のクライマックス。

  • 久しぶりに長編ファンタジー読み終えた感じ。
    自分的には瑪瑙太と石人がすきだったなぁ。
    最後の方は駆け足感が凄かったけど。弓貴に戻ってからが読みたかったなぁ。けど、空人の成長っぷりが感じられて良かった。

  • 結局、最後まで自分のやりたい事をやりたいように貫いた主人公。
    挫折や後悔、苦悩もあっただろうけれど、子供じみたイメージが強いです。
    物語の終わりまで、愛されるお騒がせ健在です(笑)
    出来るなら弓貴に戻ってからのお話しを、もう少し読んでみたかったかなぁ……。

  • 何でこのラストになったのか、途中どんな伏線があったのか、あれ?と思ううちに読了してしまった。全てのシリーズで読み応えはありました。SFだけど、人間身のあふれるシリーズでした。

  • 怒濤の流れでハラハラしながら読み進めた。最後、まんまと早とちりしてバッドエンドかと思ってしまった。ただ、空人が弓貴で政に励む様子をもっともっと読みたかった。そこが唯一残念。しかし、4冊という読みやすい量での完結というのはまたすっきりしていてよい。大変おもしろかった。ページをめくる手が止められなかったシリーズ。

  • 個人的には不完全燃焼の感じが否めないのですが、作者さんの中で折り合いついたものが私に届いてないからなのかなと思いました。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常のひだを的確に切り取るミステリーなど、様々な世界を展開している。その他の著作に『瞳の中の大河』『黄金の王 白銀の王』『あやまち』『タソガレ』『ディーセント・ワーク・ガーディアン』『猫が足りない』「ソナンと空人」シリーズなど多数。

「2023年 『旅する通り雨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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