- 本 ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101023816
作品紹介・あらすじ
私はいずれ、夫に殺されるかもしれない。義父の弔問に訪れた前妻の佑香。夫は彼女とよりを戻したのではないだろうか。苦悩が募る中、通勤バッグにある物を発見してしまう(表題作)。日常を一本の電話が切り裂いた。大学生の息子哲生から元交際相手傷害事件について話を聞いている。刑事がそう告げたのだ(「戻り梅雨」)。平凡な家庭に潜む秘密を鮮やかに浮かび上がらせる、五篇の傑作ミステリ。
感想・レビュー・書評
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こんにちは。忙しいということは必要とされていること!と思って頑張っています。毎日上から、下から蹴飛ばされてもへこたれませんよ!この話しも凄か...こんにちは。忙しいということは必要とされていること!と思って頑張っています。毎日上から、下から蹴飛ばされてもへこたれませんよ!この話しも凄かった。妻はとてもいい人だ!自分の見る目が合ったのか?運が良かったのか?いずれにしても感謝!妻にね。2021/08/24
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矢樹純『妻は忘れない』新潮文庫。
5編収録のミステリー短編集。『夫の骨』が面白かったので、本作も読むことにした。
5編共に女性の強かさや内に秘める恐ろしさ、表と裏の二面性を描いている。表題作の『妻は忘れない』と『戻り梅雨』の2編が面白かった。
『妻は忘れない』。表題作。短編の中に起承転結とミステリーとがバランスよく配置され、小気味良く読める。バツイチの夫と結婚して数年後、夜の夫婦生活が途絶え、悩む妻・千絋が主人公。義父の通夜に弔問に訪れた夫の前妻の佑香。それを境に頻繁に外出するようになった夫の通勤バックに見付けたスタンガン。夫は自分を殺し、前妻とよりを戻そうとしているのか……
『無垢なる手』。全体に漂うベタついた雰囲気の保育園のママ友の話。女性同士なら簡単に意気投合するかと思えば、背負っている家庭の事情や子供たちへの教育のこともあり、見えないところでバチバチと火花を散らすようだ。『妻は忘れない』と同じパターンの結末なのが残念。
『裂けた繭』。サイコミステリーっぽい短編。10年間も自室に引き籠る誠司には、もう一人《みゆな》という女性の人格があった。実際に過去に起きたよく似た事件をベースに凄惨な結末が待ち受ける。
『百舌鳥の家』。母親が手術のため入院したことから、久し振りに帰省した沙也は姉から母親が死んだら相続を放棄してほしいと告げられる。父親の死の真相と忘れていた過去が……
『戻り梅雨』。本作の中では一番ミステリー性の高い短編。二転三転の展開が面白い。7歳年上のシングルマザーの佐山美玲との交際を諦めたはずの哲生が、美玲が自宅で頭部を殴打され、倒れているところに居合わせる。警察に参考人として拘束された哲生は美玲を襲った犯人なのか。
本体価格590円
★★★★ -
クセになりそうな一冊。
この作家さんはクセになりそうな中毒性を孕んでいると強く確信した五篇、どれも満足。
次は?と早く読みたい心をめちゃくちゃ刺激された。
描かれているのはごく普通の日常を営む人達。
だからこそすぐ隣に身を置く感覚で眺められ、また生活感溢れる描写がすんなり心に溶け込んでくる、このリアル感が半端ない。
随所でのセリフ、間合い、それらによって伝わってくる主人公の揺れる、掻き乱される心情。
その心情に読み手もシンクロさせられる時間もたまらない。
「無垢なる手」「戻り梅雨」の対照的な読後感が好き。次作も楽しみ。 -
初読みの作家さん。
2作目の『無垢なる手』の役員決めのシーンや、主人公が「彼女は決して悪い人ではない。彼女の言動に悪気はないのだ」と一生懸命その人の良い面を心の中で挙げてみるものの、どうしても自分の生活や精神的な領域がじわじわと侵食されていくことへの拭い切れない嫌悪感や違和感。
これらの描写が実に見事。
主人公は『これらの行為について、いくら私が不快に感じ、それを人に訴えたとしても「悪気はないんだから」あるいは「気にするあなたの心が狭いのよ」と反論され、同情してはもらえまい。』(113ページ)と考え、そしてきっと彼女はそういうことを実際に口にすると、それは悪口や陰口になってしまうから絶対に言わないのだろう。
この主人公に言ってあげたい。
その気持ち、私は心底わかるよ!と。
という具合に、心理描写が上手い作家さんだなと思ったところで、次の3作目の『裂けた繭』では私の苦手な描写が出てきておぞましくて気持ち悪過ぎるので、そのシーンは飛ばし読み。
でもその凄惨なシーンを飛ばしても、この話全体の異常な状況が想像できてしまう、つまり表現力が上手いということなのだろう。
以前「読みたい」に『夫の骨』を一時期登録していたことがあるのだが、その作家さんであるらしい。
『夫の骨』も読んでみたいけれど、本書の『裂けた繭』系の話が含まれていなければいいな。 -
家族をテーマとしたどんでん返しミステリー、ノンシリーズの5作品の短編集。
よくありがちな家族設定からはじまり、彼らが抱える悩みや疑念が除々に大きくなり、あれよあれよという間に小気味良いオチが待っている。『私の骨』で、してやられた感があったが今回もたっぷりやられて楽しめた。 -
短篇集
女性の視点で日常から起きてもおかしくない事件が次々と。主人公は一編づつ変わる。
どんでん返しもあり、思っていた展開と違った展開になる編もあった。よくできているが、欲を言えばひねりがもう 少し欲しい。
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5話からなる短編集。
「妻は忘れない」
最初から離婚話に進んで行くのかと、詠み出した。
夫の不可思議な行動から義父の隠し子問題……
でも、最後は、夫婦仲の良さを表す言葉で、一安心だった終わり方であった。
次の「無垢なる手」
幼稚園や保育園のPTAの役員決めには、今の時代 共稼ぎが当たり前だから、大変だろうと思いながら読む進む。
役員通し、仲が良くなり、子供達も一緒に遊ぶようになって来るのは良いのだけど……
余り深入りしたくない人もいるだろう。
主人公は、この人としか付き合いをしていないのだろうか?
小さい時の子供達の仲良しで、将来の結婚話をまともに取らなくても良いと思うけど……
「裂けた繭」
読んでいて、少し怖い感じ!
精神的に崩れて行った青年。
自分だけの殻に入り込み、空想の人物を作り上げる。
現実世界と空想世界が、理解出来なくなった人間の怖さに、おぞましさを感じてしまった。
「百舌鳥の家」
姉妹の二人。
親の介護で、相続問題。
最後は、姉が、祖父母達の養女に戸籍上なっていた事も、衝撃的。
家族の在り方を考えてしまった。
昔の人は、良かれと思って、戸籍制度に合わせたのだろうけど、良かったのだろうか?
「戻り梅雨」
シングルマザーで2人の子を育て、大学生の息子に恋人が出来た!
喜ぶべきなのだけど、年上で子供もいる女性!
その息子に、殺人未遂の疑いがかかる。
被疑者となった家族の辛さ!
しかし、最後は、家族が寄り添う事になり一安心したけど、その後の風潮はどうなるのだろうか?
ホラー的話もあり、一つずつ、読みごたえのあった本であった。
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