蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4731
レビュー : 436
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025032

作品紹介・あらすじ

地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる「蜘蛛の糸」。大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた「杜子春」。魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な「アグニの神」。少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 「お釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終を、じっと見ていらっしゃいましたが、やがてカンダタが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうなお顔をなさりながら、又ぶらぶら御歩きになり始めました」(「蜘蛛の糸」13p)

    文章として1番洗練されていたのは、やはり「蜘蛛の糸」であると思う。鈴木三重吉に頼まれて初めて書いた芥川の童話集である。研究によって、元ネタが判明し、更にはトルストイの童話にもほぼ似た話があることが判明した。芥川の凄いのは、その2つとも最後に小難しい教訓をつらつら述べているのに、芥川はラストをお釈迦様の顔でさらりと流したことである。

    私が20世紀最大の知識人と評価している加藤周一の「青春ノート」を覗き込むと、青年加藤は芥川に影響を受け、かつそれを如何に超えるか苦心していた。よって、単なる短編小説家と思っていた私の芥川龍之介評価は変わりつつある。確かに芥川の知識は、当時の日本の知識人の水準を遥かに超えていたと思う。この小さな童話集だけに絞っても、インド、中国、日本古代の知られざる典籍が元になっていて、更に短編小説の手法はヨーロッパ文学が基になっている 。それでも彼は自殺せざるを得なかった。大きな課題が、加藤周一の前に立ちはだかっていたとしても不思議はないと思うのである。

    「アグニの神」は、在り来たりなジュブナイル・ストーリーなのだが、驚くことにその発端は「いったい日米戦争はいつあるか」という占い師への問いかけだった。日米開戦の16年前の記述である。

    約40数年振りの再読。320円で、お釣り調整のために買ったのだが、下手な現代小説よりも考えるところがあった。

  • 『蜘蛛の糸』『杜子春』はちっちゃい頃に読んだ記憶があって、今だに内容はしっかりと覚えています。これらの物語で地獄の恐ろしさを知りましたね。おとぎ話、昔話もそうだけれど、幼心にしっかりと刻み込まれる物語ってそんなに数多く存在しないんじゃないでしょうか。子どもの頃は芥川龍之介という文豪が書いた作品、なんてことは考えもしなかったと思うのだけれど、やっぱり印象に残る物語にはそれだけの力が存在するのでしょうね。大正時代、昭和時代、そして平成のこの世と時代は違えど、子どもたちが同じ物を読み心踊らせる体験が出来る、過去現在未来を繋ぐことが出来るというのは書物ならではの醍醐味だと思いました。

  • H29.10.2 読了。
    ・初芥川作品。蜘蛛の糸、犬と笛、杜子春はお気に入り。羅生門も改めてじっくりと読んでみたい。
    ・現代作品にあまり見られない道徳観がちりばめられた短編小説でした。

  • これが320円!?お値打ちすぎない!?ってのが一番の感想。

    猿蟹合戦ののち、蟹は裁判で死刑宣告を受け、臼ほか共犯者は無期徒刑に処された。蟹の行い対する世論は果たして———。と、こんな面白そうなスタートを切り、予想通りの、そしてある意味予想外の展開を辿る4ページの短編。お伽噺の「その後」を世知辛い現実を以って描く。その着眼点も書きようも凡人の自分には到底思いつかない。浅い感想だけども、とても面白かったの一言に尽きる。

    その他もほぼ5ページ前後の短編で構成されており大変読みやすく、どの話も一文目から面白くなる予感にワクワクする。
    蜘蛛の糸:この話を手元に置いておきたくてこの本を買った。だらだらと冗長でもないのに、見たこともない極楽と地獄を目の前にありありと想像できる描写の的確さ。
    犬と笛:わかりやすく教科書に載っていそうなお話。勧善懲悪、読みやすい。
    蜜柑:子供のころに読んでいたら違う感想を持ったはず。大人になってしまったから、前半の田舎娘を疎ましく思う気持ちを多少理解できてしまったことが辛い…爽やかに終わったが語り手の身勝手さが残る。無論語り手とは、読み手である私でもある。
    魔術:蜘蛛の糸と似たテーマ。言うは易し。人生は欲との闘い。
    杜子春:教科書以来。時間がかかっても学びが大切。家庭によるが親からの愛情は本当に無償で泣ける。前半の群がっては引いていく友人達と同等の人間にならない自信が、自分にあるか?
    アグニの神:ストーリーは面白かったものの、本書ではパンチが弱かった印象。他が面白すぎたからかも。
    トロッコ:子供のころの感想は???だったが、大人になったのでさすがにノスタルジーを感じずにはいられなかった。誰でもいつかの自分と重なる話。
    仙人:こちらもあまり強い印象には残らなかった。ひたむきに学べば実ることもある?にしても、少しお人好しすぎるわ。
    白:皮肉の詰め合わせ。嬢ちゃん坊ちゃんどないやねん。
    白は立派だったけど、白に戻りたかったから戦ったのではなくて死にたかったから、というのが予想外だった。

    どの話も面白くて文体も新鮮で、これが320円なんてありがたい時代だなあと思う。教科書以来の芥川だったけど、これは子供時代に一度読んで大人になってまた読んで、という読み方をした方がいい。誰が読んでも面白い。


  •  日本文学の金字塔、王道、一番有名な文学賞に名前が付けられている方なのに、恥ずかしながら小中学校の教科書に載っていた「トロッコ」「羅生門」「蜘蛛の糸」を読んだくらいで、もうすっかり分かった気でそれ以降まともに読んでいなかったことに愕然とした。
     「トロッコ」の主人公の少年の心細さは、当時小学生だった自分が等身大で入り込めるくらいの心理描写だったが、今読むと結末の大人になった主人公と同じようにその当時の自分の心理を回想出来る。実際にはトロッコのあった風景は自分の人生の中にはなかったのに。
     やはり、さすがに「芥川賞」の芥川龍之介さんである。明治の方というと難しい感じがするが(この本の作品は年少者向けのものを集めているせいもあるが)、どの部分の表現も美しく、優しく、易しく、品があり、それでいてキリッとして締まりもあり、非常に短い作品ばかりであるが心に残る。
     良い映画を観ているような錯覚にも陥る。「蜜柑」という作品のクライマックスのシーンはそのまま額縁に入れて飾っておきたい。「杜子春」の冒頭、「或る春の夕暮…唐の都洛陽の西の門の下にぼんやり空を仰いでいる一人の若者がありました。…油のような夕日の光の中に…土耳古(トルコ)女の金の耳輪や…絶えず流れていく様子はまるで画のような美しさです。」この下りを読んだだけで、もう私は遥か唐の時代の洛陽に立っている。カメラを使っていないが、言葉の表現、文字の表現で舞台、衣装、光などを作り、映画を撮影している。異国情緒もあり、国名など難しい漢字が使われていたりするが、教養をひけらかすようなものではなく、東京の外国人居留区に近い所で育ち、新聞社員になってからは中国に派遣されたこともある人生の中で見てこられた光景だと思うので、味がある。
     でも晩年の頃の暗い思想に裏打ちされた作品も読まなければ芥川龍之介は語れないのだろうと思う。

  • 書評を書くのが恥ずかしいくらい洗練された美を感じさせる文章だ。無駄なく漏れなく的確で適切な密度。文章もさることながら中国古典をモチーフにしたストーリーも素晴らしい。『蜘蛛の糸』『トロッコ』は言わずもがな『杜子春』が特に気に入った。『猿蟹合戦』のような芥川らしいシニカルなお話も面白かったが、教養めいた読後感の良い作品に芥川の才能を感じる。

  • 芥川作品を読むのは何年ぶりだろう。たぶんブクログには1冊も登録していない。いわゆる文学作品を、私はあまり読んでいない。
    読もうと思ったきっかけは、勧められたから。図書室の福袋。これを読んだ人、次はこれ、という感じで。
    なるほど、芥川龍之介はこういう文章を書くのか。面白さあり、メッセージ性あり。正直さ、誠実さが大事で、そういう人は報われる。そうでない人は、地獄に落ちる。シンプル。いろんな文体があって、不安定さや、迷いともとれる。短編は気楽に読めていい。なぜこの本を勧められたのかはよくわからないけど、勧められなかったら読まなかったのは確か。こういう機会も、いろいろと考えるチャンス。

  • 全て言葉で言いようのない素晴らしい作品だった。

    蜜柑は最後はっとさせられる文章でこの本が初めて読んだ芥川先生の作品だが、先生が出した小説全部読みたいと思った。

  • 芥川龍之介が少年・少女向けに執筆した作品が収められていた。私のお気に入りは、「犬と笛」、「白」。「魔術」も結構好き。芥川龍之介は犬が苦手だったと聞いたけど、作品の中に犬が出てくるものがあるのが気になる。

  • 1.蜘蛛の糸
    冒頭の文章は好き過ぎて覚えてしまいました。
    この作品は自分とっての芥川文学の原点です。
    この作品は少年文学という括りでは語れない名作だと思います。

    2.犬と笛
    少年向け小説。姫君を助ける男の冒険活劇。

    3.蜜柑

    4.魔術
    魔術師志望の男が魔術師になる資質を問われる話。
    魔術師の使う魔術の描写が美しく引き込まれる。
    蝙蝠の様に飛ぶ本。暖炉の炎。金貨。
    夢オチ式の単純な話ですが、描写が優美でとても好きな作品。

    5.杜子春

    6.アグニの神
    中国で行方不明になった少女を探す日本人。
    誘拐した少女を利用して交信術でアグニの神を呼び出す印度の魔法使い婆。
    解釈は人それぞれですが、少女を救うアグニの神が存在するのかしないのか、「運命の力の不思議なことがやっとわかった・・・」謎を残す終わり方が好きです。

    今夜の計略が失敗したことが、
    ――しかしその為に婆さんも死ねば、妙子も無事に取り返せたことが、
    ――運命の力の不思議なことが、やつと遠藤にもわかつたのは、この瞬間だつたのです。
    「私が殺したのぢやありません。あの婆さんを殺したのは今夜ここへ来たアグニの神です。」

    7.トロッコ
    懐かしい子供の頃の情景が思い浮かぶ作品。
    子供が一人きりで見る町の宵闇のイメージがとても好き。
    心細く冷たい空気までが良く伝わってくる。
    懐かしい絵本童話の様に冷たい。

    8.仙人
    貧乏なマジシャンが乞食に同情して自らの不幸話を披露する。その乞食は仙人であったというオチ。
    要するに暇を持て余した神々の遊び。そんな話。

    9.猿蟹合戦
    猿蟹合戦の「その後」を語った話。とても短い話だがかなり面白い短編。
    次男蟹のその後についての逸話が特に面白い。
    「勿論小説家のことだから、女に惚れるほかは何もしない。ただ父蟹の一生を例に、善は悪の異名であるなどといい加減な皮肉を並べている。」
    最後の〆まで完璧。
    「猿と戦ったが再最後、蟹は必ず天下のために殺されることだけは事実である。語を天下の読者に寄す。君たちもたいてい蟹なんですよ。」
    この題材と数ページのボリュームでこんなにも面白い話を創作出来る芥川文学の素晴らしさ。

    10.白
    少年向け小説。白という名の黒い犬の話。

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著者プロフィール

小説家(1892-1927)。東京帝国大学文科大学英文学科卒業。創作に励むかたわら、大阪毎日新聞社入社。「鼻」「蜘蛛の糸」など数多くの短編小説の傑作を残した。1927年、服毒自殺。

「2020年 『羅生門・鼻・蜘蛛の糸 芥川龍之介短編集 Rashomon, The Nose, The Spider Thread and Other Stories』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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