蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025032

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代の教科書で読んだきりの芥川
    実家の父の書棚にいくつかあったのを拝借


    ■蜘蛛の糸
    お釈迦様のいる極楽の美しさ、穏やかさと地獄の暗さ、絶望のコントラストがいいですね
    子供の頃はそんなことより、人を蹴落として自分だけが助かろうとするとバチが当たるんだと教訓めいた読み方しか出来なかった
    大人になると、さてこれは自分ならどうするよ?
    となる
    うんうん考えてみたが、とりあえず誰にも追いつかれないようにダッシュで糸を登ってみる…という何とも器の小さい結論に
    大した人間じゃないことがバレます

    ■犬と笛
    植物、動物すべての生命体を魅了し、神から褒美まで貰える笛を奏でる主人公
    どんな音色かぜひとも聞いてみたいものだ
    まさに芸は身を助ける
    最後に二人の姫のどちらと結婚したのか気になるなぁ
    だってこれって一波乱ありそうじゃないですか(笑)

    ■蜜柑
    短いながらも見事に映像化される作品
    主人公の疲れ切った倦怠感とうんざりする平凡な日常
    そこに現れた嫌悪感を抱かせる少女
    ザラっとした男の心が爽やかな旋風が吹き飛ばされ、美しい情景に変わる鮮やかな筆術

    ■魔術
    凄い魔術を扱うインド人の不思議な館で人の欲深さが試される
    この不思議な雰囲気のある館が気になり、妄想が止まらない
    妄想→古くて埃っぽくて暗い よくわからない調度品が無秩序に配置されている
    微かにエスニックなお香の香りが漂う
    出されたティーカップは古くて茶渋がこびりついている
    ティーソーサーは少し欠けている………なんて感じ
    そしてジンが登場
    どうやら芥川は「アラビアンナイト」の翻訳を試みた事があるようだ

    ■杜子春
    舞台は唐の都洛陽
    主人公杜子春はお金のある贅沢な暮らしと無一文の暮らしを仙人に操られ、人間に愛想を尽かす
    そして仙人の弟子になるのだが…
    この修行により人間らしい正直な暮らしに目覚める…
    この修行がなかなかのものでちょっと杜子春を見直した
    ようやく彼は大切なものに気づいたのだ
    大切なことは目立たなくて案外近くにあるってやつですな

    ■アグニの神
    上海が舞台
    強欲な魔法使いのインド人老婆
    その婆さんの元に香港の日本領事館の娘が拉致られている
    救世主はピストルを所持している遠藤という日本人
    いつも婆さんが魔法を使うときに呼び出すのがアグニの神
    最後はこの神の怒りに触れお陀仏になるのだが…
    これはよくわからなかったなぁ
    内容はともかく、「杜子春」の華やかだが柔らかい雰囲気の都、洛陽とこの華やかだが下世話な感じの上海の雰囲気がそれぞれしっかり浮かび上がる

    ■トロッコ
    もうこれは誰しもが味わったことのある酸っぱ苦い思い出だ
    それを思い出す大人の疲れた、特に明るい未来があるかわからない先の見えないような日常が重なる…
    という描写

    個人的にはこの「あるある体験」の生々しい少年の感情が鮮明で悪くない

    ■仙人
    うわー
    これまた強欲な人間の登場
    えげつないわ この医者夫人のおばさん
    でも正義は勝つのです
    ああ、良かった!

    ■猿蟹合戦
    なんとまぁ「猿蟹合戦」のその後の話
    猿と仕留めた蟹たちは警察に捕まり、監獄に投ぜられ、主犯格の蟹は死刑に
    社会の風刺を取り入れて面白く話を展開させて膨らませているパロディ作品なのだろう
    面白さが全く理解できなかったが…

    ■白
    罪を冒した犬が命をかけて(本心は生きる事を諦めて)罪滅ぼしをしていく
    これが最後に報われる
    こういう話は子供の情操教育にとても良さそう
    複雑さやヒネリはないが、素直に読めて心が洗われる
    個人的に好きである


    道徳や哲学が散りばめられており、とにかく全ての作品に余韻があり、読書後暫く考えさせられる
    映像描写の素晴らしさと奥行き感が見事である
    ただ、好みではないなぁ
    うーん
    ワタクシの情緒が欠落しているのでしょう
    まぁ正直になることは大切なはず…

  • 芥川作品は高校時代に現代文で「羅生門」を読んだ以外に手に取ったことがなかったので今回こちらを読むことにしました。

    羅生門以外読んだことがないと自分では思っていたのですが、「蜘蛛の糸」や「蜜柑」は有名過ぎるためか私でも「あ〜このお話ね!」となりました。

    「杜子春」がお気に入りです。これも漢文でやったようなやってないような。終わり方がいいですね。やはり文豪と呼ばれる方達の作品は一度は読んでおくべきだな、と感じました。

  • 無駄のない美しい文体とはこういうものかと勉強になった。
    テーマもわかりやすく、読後にすとんと手のひらに残された感覚。魔術、アグニの神は想像してどきどきした。大正、昭和の少年少女も同様に楽しんだのかなと思うと感慨深い。

  • ★3.5 「猿蟹合戦」
    「蜘蛛の糸」や「トロッコ」「杜子春」などをまともに読んだことがなかったので。

  • 内容、量に関しては読みやすかったが、文体は慣れてなくて難しかった、また読み返したいと思う作品だった。良いを好い、肝心を肝臓と書いてあり、不思議に感じたが、この時の人たちからすると自分たちのほうが変で、なにが正しいというのはアバウトなものだなということを感じた。「蜘蛛の糸」や「猿蟹合戦」など幼い頃から触れいた作品も、今読んでみると心情や行動など細やかに書かれていて当時と違う楽しみができ、楽しめる幅が広いことに驚いた。

    個人的には、「杜子春」が一番よかった。金遣いのあらい青年に、仙人が彼の過ちをみをもって知らせ、真面目に働くこと、家族を大切にすることを教える。誰でも言える普通のことかもしれないが、美しいなと感じた。また「白」もすごく感動した。自分の犬でないとバットで叩くところには傷つき、再会を果たしたときにはとても嬉しかった。

    河童も読んでみたい

  • 数ある作品の中でも表題作他、年少者向けの話を収めたとのこと。確かに、長さと言い読み口といい、イソップ物語も彷彿とさせる話が多い。
    そのまま素直に読むこともできるが、解説を読みながら元の話との違い(著者の考え方の違い)を知ると更に深い。特に「杜子春」は、主人公である杜子春が仙人になろうと試練に挑む話だが、結局乗り越えられなかった。乗り越えられなかったことに続くオチがいい意味で予想外だったが、これについても解説で原作との違いなんかに触れていて成程なぁと思った。

  • 蜜柑。
    心温まり涙した。

  • 『杜子春』って「カネの切れ目が縁の切れ目」って話だったよね、って嘯いていたら、本当はどんな話だったのかまるで覚えてなかった。「何言ってるんですか。こういう話ですよ」と職場の人間に諭されて、改めて読んでみた。なるほどね。人間らしく生きていきたいよね。でも現代では、消費することが生活の中心になっていて、人間らしく生きることと、消費経済が切り離せないだろうね。
    ところで『蜘蛛の糸』も何十年ぶりかで読んだけど「お釈迦様って案外器量が小さくないかい」。こんなこと言ってると、また本質を忘れちゃうかな。

  • 昔、NHKの人形劇で杜子春をやっていた。
    金持ちになる度に言い寄ってくる取り巻きが嫌で嫌でしょうがなかった気がします。

    年少者向けに集められた短編なだけに『蜘蛛の糸』や『白』『魔術』などは子供のうちに読んで何かを感じ取ってほしいなぁと思った。

    全篇とおして短めで読みやすいのでアッという間に読めます!

  • 講義で芥川龍之介の作品を読んで、「蜜柑」が気に入ったため、「蜜柑」が収録されているこちらを購入しました。どの作品も読みやすくて面白い。「蜜柑」「杜子春」がお気に入り。

著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

芥川龍之介の作品

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