蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.74
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本棚登録 : 4454
レビュー : 419
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025032

作品紹介・あらすじ

地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる「蜘蛛の糸」。大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた「杜子春」。魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な「アグニの神」。少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 「お釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終を、じっと見ていらっしゃいましたが、やがてカンダタが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうなお顔をなさりながら、又ぶらぶら御歩きになり始めました」(「蜘蛛の糸」13p)

    文章として1番洗練されていたのは、やはり「蜘蛛の糸」であると思う。鈴木三重吉に頼まれて初めて書いた芥川の童話集である。研究によって、元ネタが判明し、更にはトルストイの童話にもほぼ似た話があることが判明した。芥川の凄いのは、その2つとも最後に小難しい教訓をつらつら述べているのに、芥川はラストをお釈迦様の顔でさらりと流したことである。

    私が20世紀最大の知識人と評価している加藤周一の「青春ノート」を覗き込むと、青年加藤は芥川に影響を受け、かつそれを如何に超えるか苦心していた。よって、単なる短編小説家と思っていた私の芥川龍之介評価は変わりつつある。確かに芥川の知識は、当時の日本の知識人の水準を遥かに超えていたと思う。この小さな童話集だけに絞っても、インド、中国、日本古代の知られざる典籍が元になっていて、更に短編小説の手法はヨーロッパ文学が基になっている 。それでも彼は自殺せざるを得なかった。大きな課題が、加藤周一の前に立ちはだかっていたとしても不思議はないと思うのである。

    「アグニの神」は、在り来たりなジュブナイル・ストーリーなのだが、驚くことにその発端は「いったい日米戦争はいつあるか」という占い師への問いかけだった。日米開戦の16年前の記述である。

    約40数年振りの再読。320円で、お釣り調整のために買ったのだが、下手な現代小説よりも考えるところがあった。

  • 『蜘蛛の糸』『杜子春』はちっちゃい頃に読んだ記憶があって、今だに内容はしっかりと覚えています。これらの物語で地獄の恐ろしさを知りましたね。おとぎ話、昔話もそうだけれど、幼心にしっかりと刻み込まれる物語ってそんなに数多く存在しないんじゃないでしょうか。子どもの頃は芥川龍之介という文豪が書いた作品、なんてことは考えもしなかったと思うのだけれど、やっぱり印象に残る物語にはそれだけの力が存在するのでしょうね。大正時代、昭和時代、そして平成のこの世と時代は違えど、子どもたちが同じ物を読み心踊らせる体験が出来る、過去現在未来を繋ぐことが出来るというのは書物ならではの醍醐味だと思いました。

  • これが320円!?お値打ちすぎない!?ってのが一番の感想。

    猿蟹合戦ののち、蟹は裁判で死刑宣告を受け、臼ほか共犯者は無期徒刑に処された。蟹の行い対する世論は果たして———。と、こんな面白そうなスタートを切り、予想通りの、そしてある意味予想外の展開を辿る4ページの短編。お伽噺の「その後」を世知辛い現実を以って描く。その着眼点も書きようも凡人の自分には到底思いつかない。浅い感想だけども、とても面白かったの一言に尽きる。

    その他もほぼ5ページ前後の短編で構成されており大変読みやすく、どの話も一文目から面白くなる予感にワクワクする。
    蜘蛛の糸:この話を手元に置いておきたくてこの本を買った。だらだらと冗長でもないのに、見たこともない極楽と地獄を目の前にありありと想像できる描写の的確さ。
    犬と笛:わかりやすく教科書に載っていそうなお話。勧善懲悪、読みやすい。
    蜜柑:子供のころに読んでいたら違う感想を持ったはず。大人になってしまったから、前半の田舎娘を疎ましく思う気持ちを多少理解できてしまったことが辛い…爽やかに終わったが語り手の身勝手さが残る。無論語り手とは、読み手である私でもある。
    魔術:蜘蛛の糸と似たテーマ。言うは易し。人生は欲との闘い。
    杜子春:教科書以来。時間がかかっても学びが大切。家庭によるが親からの愛情は本当に無償で泣ける。前半の群がっては引いていく友人達と同等の人間にならない自信が、自分にあるか?
    アグニの神:ストーリーは面白かったものの、本書ではパンチが弱かった印象。他が面白すぎたからかも。
    トロッコ:子供のころの感想は???だったが、大人になったのでさすがにノスタルジーを感じずにはいられなかった。誰でもいつかの自分と重なる話。
    仙人:こちらもあまり強い印象には残らなかった。ひたむきに学べば実ることもある?にしても、少しお人好しすぎるわ。
    白:皮肉の詰め合わせ。嬢ちゃん坊ちゃんどないやねん。
    白は立派だったけど、白に戻りたかったから戦ったのではなくて死にたかったから、というのが予想外だった。

    どの話も面白くて文体も新鮮で、これが320円なんてありがたい時代だなあと思う。教科書以来の芥川だったけど、これは子供時代に一度読んで大人になってまた読んで、という読み方をした方がいい。誰が読んでも面白い。


  • H29.10.2 読了。
    ・初芥川作品。蜘蛛の糸、犬と笛、杜子春はお気に入り。羅生門も改めてじっくりと読んでみたい。
    ・現代作品にあまり見られない道徳観がちりばめられた短編小説でした。

  • 芥川作品を読むのは何年ぶりだろう。たぶんブクログには1冊も登録していない。いわゆる文学作品を、私はあまり読んでいない。
    読もうと思ったきっかけは、勧められたから。図書室の福袋。これを読んだ人、次はこれ、という感じで。
    なるほど、芥川龍之介はこういう文章を書くのか。面白さあり、メッセージ性あり。正直さ、誠実さが大事で、そういう人は報われる。そうでない人は、地獄に落ちる。シンプル。いろんな文体があって、不安定さや、迷いともとれる。短編は気楽に読めていい。なぜこの本を勧められたのかはよくわからないけど、勧められなかったら読まなかったのは確か。こういう機会も、いろいろと考えるチャンス。

  • 芥川龍之介が少年・少女向けに執筆した作品が収められていた。私のお気に入りは、「犬と笛」、「白」。「魔術」も結構好き。芥川龍之介は犬が苦手だったと聞いたけど、作品の中に犬が出てくるものがあるのが気になる。

  • 1.蜘蛛の糸
    冒頭の文章は好き過ぎて覚えてしまいました。
    この作品は自分とっての芥川文学の原点です。
    この作品は少年文学という括りでは語れない名作だと思います。

    2.犬と笛
    少年向け小説。姫君を助ける男の冒険活劇。

    3.蜜柑

    4.魔術
    魔術師志望の男が魔術師になる資質を問われる話。
    魔術師の使う魔術の描写が美しく引き込まれる。
    蝙蝠の様に飛ぶ本。暖炉の炎。金貨。
    夢オチ式の単純な話ですが、描写が優美でとても好きな作品。

    5.杜子春

    6.アグニの神
    中国で行方不明になった少女を探す日本人。
    誘拐した少女を利用して交信術でアグニの神を呼び出す印度の魔法使い婆。
    解釈は人それぞれですが、少女を救うアグニの神が存在するのかしないのか、「運命の力の不思議なことがやっとわかった・・・」謎を残す終わり方が好きです。

    今夜の計略が失敗したことが、
    ――しかしその為に婆さんも死ねば、妙子も無事に取り返せたことが、
    ――運命の力の不思議なことが、やつと遠藤にもわかつたのは、この瞬間だつたのです。
    「私が殺したのぢやありません。あの婆さんを殺したのは今夜ここへ来たアグニの神です。」

    7.トロッコ
    懐かしい子供の頃の情景が思い浮かぶ作品。
    子供が一人きりで見る町の宵闇のイメージがとても好き。
    心細く冷たい空気までが良く伝わってくる。
    懐かしい絵本童話の様に冷たい。

    8.仙人
    貧乏なマジシャンが乞食に同情して自らの不幸話を披露する。その乞食は仙人であったというオチ。
    要するに暇を持て余した神々の遊び。そんな話。

    9.猿蟹合戦
    猿蟹合戦の「その後」を語った話。とても短い話だがかなり面白い短編。
    次男蟹のその後についての逸話が特に面白い。
    「勿論小説家のことだから、女に惚れるほかは何もしない。ただ父蟹の一生を例に、善は悪の異名であるなどといい加減な皮肉を並べている。」
    最後の〆まで完璧。
    「猿と戦ったが再最後、蟹は必ず天下のために殺されることだけは事実である。語を天下の読者に寄す。君たちもたいてい蟹なんですよ。」
    この題材と数ページのボリュームでこんなにも面白い話を創作出来る芥川文学の素晴らしさ。

    10.白
    少年向け小説。白という名の黒い犬の話。

  • 幼い頃父に何度も「蜘蛛の糸」と「杜子春」の話を聞かされた記憶がある。もちろんその頃は、芥川龍之介の名だと知らずに、ただ面白い話だなーと幼いながらに父の話に聴き入った。それが芥川龍之介の作品であることを知るのは数年後の事である。そしてまた改めてこの作品を読んでみた。そんな話が詰まっている本書は、10編の短編から成っている。

    「蜘蛛の糸」...罪人カンダタが、蜘蛛の糸を使って地獄から抜け出そうと話。
    「犬と笛」...髪長彦が、笛と3匹の犬をお共にお姫様を救おうとする話。
    「蜜柑」...現実に嫌気がさした憂鬱気味の主人公の【私】が、電車でたまたま乗り合わせた娘の行動に感銘を受ける話。
    「魔術」...魔術師マティラム・ミスラに魅入った主人公の【私】が、ミスラから魔術を教わろうとする話。
    「杜子春」...杜子春が仙人と出会い、仙人になるために修行する話。
    「アグニの神」...妙子の父の書生である遠藤が、魔法使いに囚われている妙子を救おうとする話。
    「トロッコ」...トロッコに魅入られた良平少年が、トロッコで遊び、家に帰る話。
    「仙人」...仙人に憧れる権助が、古狐といわれる医者の妻の元で、仙人になるための修行する話。
    「猿蟹合戦」...猿の仇を討った蟹が死刑になる。猿蟹合戦のその後を描いた、猿蟹合戦のパロディー。
    「白」...犬が主人公の話。犬殺しに殺されそうになっている【黒】を見殺しにしてから、体毛が黒くなった【白】が、白の体にもどるため奮闘する話。

    個人的に好きなのは「蜘蛛の糸」「杜子春」「蜜柑」「トロッコ」だ。
    「蜘蛛の糸」は、有名ながら何度読んでも面白い。ラストで自分だけが助かろうとして失敗する姿は、人間の汚い所を見せてくれる。ラストのそんなカンダタを見る御釈迦様の表情もいい。
    「杜子春」は、金よりも大切なもの、親の愛を教えてくれた。地獄で鬼たちに鞭打たれ瀕死にながらも、息子杜子春のことを気にかけるその姿は泣ける。
    「蜜柑」は、匂いと色の表現が非常にうまい作品。文章なのに嗅覚と視覚を刺激してくる。ラストは心があったかくなってほっこりした。
    「トロッコ」...ノスタルジックな作品。これを読んでるうちに自然と自分が、少年時代の自分にタイムスリップし、主人公良平と重ねていた。少年時代の憧れ、恐怖が詰まっている。

    とにかく芥川の作品は分かりやすい。ストレートにメッセージが心に響く。幼い頃の私でも、その話の面白さ(読み聞かせであったが)が分かるほどだ。しかも分かりやすいからといって、決して子供向けであることではない。どの作品にも、人間のエゴイズムや善悪が詰まっていて、読んでいると自分もこんな汚い所あるなー、とつい考えてしまう。
    本書はどの作品も短く、それでいて濃厚で、しかも10編も味わえるのだからお得だ。短編の名手芥川の技を存分に堪能し、自分なりの好きな作品を探してみてほしい。

  • 解説に「『猿蟹合戦』は古来から伝わる伝説的童話のパロディーであり、気の利いた社会の風刺になっているが、しょせんは気軽な戯作である」とありますが、その風刺と理不尽さに一番心が動きました。

    「君たちも大抵蟹なんですよ。」という文末がなんだか悔しい。

  • 芥川作品は高校時代に現代文で「羅生門」を読んだ以外に手に取ったことがなかったので今回こちらを読むことにしました。

    羅生門以外読んだことがないと自分では思っていたのですが、「蜘蛛の糸」や「蜜柑」は有名過ぎるためか私でも「あ〜このお話ね!」となりました。

    「杜子春」がお気に入りです。これも漢文でやったようなやってないような。終わり方がいいですね。やはり文豪と呼ばれる方達の作品は一度は読んでおくべきだな、と感じました。

  • 数ある作品の中でも表題作他、年少者向けの話を収めたとのこと。確かに、長さと言い読み口といい、イソップ物語も彷彿とさせる話が多い。
    そのまま素直に読むこともできるが、解説を読みながら元の話との違い(著者の考え方の違い)を知ると更に深い。特に「杜子春」は、主人公である杜子春が仙人になろうと試練に挑む話だが、結局乗り越えられなかった。乗り越えられなかったことに続くオチがいい意味で予想外だったが、これについても解説で原作との違いなんかに触れていて成程なぁと思った。

  • 【いちぶん】
    彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?---塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している。

  • 『杜子春』って「カネの切れ目が縁の切れ目」って話だったよね、って嘯いていたら、本当はどんな話だったのかまるで覚えてなかった。「何言ってるんですか。こういう話ですよ」と職場の人間に諭されて、改めて読んでみた。なるほどね。人間らしく生きていきたいよね。でも現代では、消費することが生活の中心になっていて、人間らしく生きることと、消費経済が切り離せないだろうね。
    ところで『蜘蛛の糸』も何十年ぶりかで読んだけど「お釈迦様って案外器量が小さくないかい」。こんなこと言ってると、また本質を忘れちゃうかな。

  • 本書の中にある「トロッコ」を再読したくて手に取った。トロッコは、精読の経験が初めて出来た中学1年の国語授業の題材だ。何コマかかけて読み込んだ授業だった。主人公の少年が弟たちと立ち入り禁止の作業現場でトロッコを動かした時の心理、後日作業員に声をかけてトロッコに乗せてもらった時の心理、動かしているうち思いがけず遠くまで運ばれてしまった時の心理、日没近くに不安の中で走って帰った時の心理…。なかでも、行きと帰りで風景が違うことと、その不安の重なりが印象的だった。小説とはこんなにも丁寧に人を描いているのかと驚き、忘れられない授業になった。そしていま再読すると、そこに描かれている心理が、長い人生にもうまくはまることに気づく。大人になっても初めてやることは怖いのだ。この本に収録されている作品は元々は子供向けに書かれた小説ばかりではあるが、大人が読んでも感じることが多い。だから長年読まれ続けるのだろう。

  • 大人向けの童話という印象。読みやすく考えさせられる短編集です。そして秀逸なオチが用意されています。トロッコのみ子供のころに興味と冒険、そして恐怖を描いて異色ですね。どの短編も味わい深いと感じました。

  •  年少者の為に書かれた作品を集めただけあって全体的に読みやすく、『蜘蛛の糸』等一部の作品を除き基本的にハッピーエンドに類する結末のものが多いので肩肘を張らずに気楽に読める。
     一篇一篇が短くすぐ読み終えることが出来る上、これまで多くの人に愛読されてきた芥川作品に対して今更こういう感想を抱くのも滑稽かも知れないけれど、久々に「この話を読んでいる間はオチのネタバレを踏みたくないな」と思えるような、先の展開が非常に気になる話が多かった。
     そんな中での変わり種が『猿蟹合戦』。有名な童話の「その後」を描くことを通し、現代にも通じる社会風刺が展開される中、最後の短い一文が強烈な印象として残った。

  • 「蜘蛛の糸」、短編の中に、かくも見事に「人間の性(さが)」が描かれていますね!

    • くりおねのもとさん
      「蜘蛛の糸」を読んで心がもやもやとしていましたが、hito-koto さんの感想を読んですっきりしました。
      ありがとうございます。
      「蜘蛛の糸」を読んで心がもやもやとしていましたが、hito-koto さんの感想を読んですっきりしました。
      ありがとうございます。
      2019/08/16
  • 蜘蛛の糸と羅城門くらいしか読んだことがなかったので、これを機に芥川龍之介を読んでみる。
    イメージより明るいストーリーが並んでいたが、少年向けの作品を集めたもののようである。
    少年向けのものとはいえ、本の最後の解説ほどにはテーマを読み解けていない。

  • 杜子春をオーディオブックで聞く。子供の頃にテレビの人形劇で見て以来かもしれない。

    びっくりするほど面白かった。
    骨太で迫力あるストーリーと、

  • 泣きたくなると杜子春を読みます。必ず泣けます。

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著者プロフィール

小説家(1892-1927)。東京帝国大学文科大学英文学科卒業。創作に励むかたわら、大阪毎日新聞社入社。「鼻」「蜘蛛の糸」など数多くの短編小説の傑作を残した。1927年、服毒自殺。

「2019年 『羅生門・鼻・蜘蛛の糸 芥川龍之介短編集 Rashomon, The Nose, The Spider Thread and Other Stories』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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