おはん (新潮文庫)

  • 新潮社 (1965年2月2日発売)
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  • 本 ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101027029

感想・レビュー・書評

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  • 2013/02/10読了

    岩国の女性作家 宇野千代による小説。
    著者の遍歴が反映されている小説とも言えるだろうか。

    読者が、男性か女性かで評価は大きく変わるかもしれない。
    私の視点から見れば、まさに「女性」を体現するものであろう。
    二人の女性の狭間で揺れ動く男の気持ちにはやはり共感しにくい。ただ、求めようとすること、女性らしさや生活とかよりも、自分(男)の尊厳を追求しようとすることは、まあ理解できる。
    宇野千代のこうした、性別を介せず物語に昇華できるのは凄いことだろうな。
    おはん、おかよ、翻弄された二者。
    手記ではなく、語るという形式により、この男の人間くささ、もといヘタレ男具合が、ここぞとばかりに滲み出ている。

  • 物悲しくも最後まで読ませる作者の筆力に舌を巻く。

  • 朝日新聞文学紀行の山口県である。それほど山口特有のものが出てきた印象はない。おはんという別れた女房とその息子の悟、及びあたらしく一緒になったおかよとその妹のお仙とのやり取りである。最後に悟が死亡する。女性が書いたとは思われない小説である。

  • これは、加納屋を語り手に設定したことによって成功した作品だと思う。

    物語として読むなら、正直なところ、どの登場人物にも共感できない。
    でもこれが、エロスとアガペーについて書かれた寓話なのだとしたら?

    おはんは、一心に加納屋の幸せを願い、加納屋の幸せこそが自分の幸せであると考えている。
    一方、おかよは、加納屋の肉体を求め、とにかく自分のもとにとどまってくれることを望む。
    そして加納屋は、そんな二人の間で、どっちつかずの態度を取り続ける。
    でも、おかよとの生活をこのまま続けたい気持ちも、おはんと悟と親子3人で暮らしたい気持ちも、その瞬間においては本物なのだ。
    本物だからこそ後悔し、悩み苦しむ。
    もちろんそれは自業自得なのだけれども、そこに人間の本質というか、弱さが現れている気がする。

  • 次郎くんのミスリードで、コジコジの母親になってしまった宇野千代。

    宇野千代の名前はそれで知ったのだけど、ずっと本を読んだことがなかった。

    文体が口語で方言見たいのが入っていて読みにくかった。

    要するに、愛人と元妻の間で揺れ動くクズ男の話ってゆうことはわかった。正直いって登場人物全員すきじゃなかった。

    強いてゆうなら、「私はこのヒモ男がほしい!」と我を通し続ける「おかよ」(愛人)の潔さは嫌いじゃないけど、経済的にも自立してる女性が、なんでこのヒモ男に固執する必要があるんだろうと思ってしまう。

    一方で終始優柔不断で、押しに弱く、自分の意思などと持たない「おはん」には、「しっかりせんかい」とイライラしつつも、なぜか肩入れしてしまうような魅力がある気がした。「おはん」とゆうタイトルでこれだけ長い間支持されてる理由でもあると思う。

    本当に愛している女は「おかよ」であるけど、「おはん」は心のどこかで後ろ髪をひかせる存在なのかも。

    正直、おはんもおかよも、どう考えても主人公の男といるメリットないし、コスパもタイパも悪いから、早く別れたほうがよさそう。

  • 故郷の祖母を思い出す方言や言い回しが嬉しかった。

    読後感悪い。主人公の男の魅力ってどこにあったのかな・・・

  • 2020年4月
    (わたしの話だが、)
    年下の友人のコイバナに「わかるよー、うんうん」なんて、まったくわかっていないくせに適当な相槌を打っている。
    この人はこうだから好き、とかそういうモノではないんだろうな。恋って。
    「ムラッときたから」とかそういう衝動的なものが根本にあるんだろうな。
    そしてわたしはその根本がちとよくわかっていないから、まあいつものように薄っぺらな相槌を打っている。

  • 解説:奥野健男(1926-1997、東京、文芸評論家)

  • 元妻と現妻のあいだをいったりきたりする身勝手な男の話
    身勝手のみならず、彼は人から悪く思われたくないばっかりに
    口約束と、けじめの先延ばしを連発して
    みんな不幸にしてしまうのだった
    しかしこの小説では
    人は弱いものなんだから、とそれらの不始末を
    なんとなく仕方のないことのようにして流してしまっている
    ある面では
    バブル期以降のトレンディードラマを先取りしてもいるだろう
    それを許せるかどうかは読者しだいだが
    終戦直後の昭和21年いらい
    坂口安吾の「堕落論」が絶賛されるその裏で
    こういう、「子供よりも親が大事」の太宰治もかくやたる
    罪深きものが書き継がれていた事実は
    なかなか興味深い
    ただし、同様のモチーフを扱ったものでは
    女房の合理主義と、封建的なしきたりのあいだで板挟みになる男を
    道化のように書き得た点で
    やはり谷崎やオダサクのほうが優れているように思う
    捨てられた妻と子供に
    戦争で死んでいった者たちが重ねられているのだと仮定しても
    この作品の場合、どう見ても終盤はご都合主義だしなあ

  • 二人の女の間を男が情動で往き来する話。とにかくだらしない男の心理がありありと描かれている。
    何故こんなにもと思うも、著者が恋多き方だったと知り納得。
    二人の女からは一切恨みがましい表出がなかったのは不思議。私が汲み取れていないだけなのだろうか?

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著者プロフィール

宇野千代
明治三十年(一八九七)、山口県に生まれ岩国高等女学校卒業後、単身上京。自活のため、記者、筆耕、店員など職を転々とし、芥川龍之介はじめ多くの作家に出会い、文学の道へ。昭和三十二年(一九五七)『おはん』により女流文学者賞、野間文芸賞。四十七年、芸術院賞受賞。平成二年(一九九〇)文化功労者に選ばれた。八年(一九九六)死去。ほかの主な著書に、『色ざんげ』『生きて行く私』『宇野千代全集』(全十二巻)など。

「2023年 『九十歳、イキのいい毎日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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