- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101027418
作品紹介・あらすじ
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のこと――。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。
感想・レビュー・書評
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megmilk999さん書評を拝読し、気になって読んでみました。読後、繰り返して思い出すのは、私も勇気がもらえたからだと思います。書評を拝読し、気になって読んでみました。読後、繰り返して思い出すのは、私も勇気がもらえたからだと思います。2022/02/18
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読み終わったら少し優しい気持ちになれる本。
一つの街または夫婦などという狭いコミュニティでの生き辛さが書かれる。
その中で頼れる人と出会い、懸命に泳ぐように生きる人々。自分も少しずつでも前を向いて生きようと励まされるようなお話たちだった。 -
読み終えて、読後感は凄く良かったです。
解説にもありますが、物語の5作全ての冒頭
の一文で物語に引き込まれていきます。
それぞれの物語の人達が愛おしくてたまらなく
なっていき自分の心も凄く優しい気持ちに
なっていきました。
読んでいくと、優しい色の中で
本当に静かに悲しくて、儚くてという物語が
心に響いてきました。
沢山良かった言葉はあったけど、
よくやった。頑張った
いつまで背中を押せるかは分からない。
だけど少しでも長く、寄り添えますように。
頑張れ
のところが私の中の祈りと重なり大好きです
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こんなに素敵な文章を書く人だったなんて、知らなかった!町田その子さん!
晴子の母はおばあちゃんに追い出され、父はそんな晴子に関心なく、愛人と結婚するのにハンディになるとさえ思っていた。孤児同然の晴子を守ってくれたのはおばあちゃん。おばあちゃんは、昔晴子の母を鎌を持って追いかけ、「お前なんか出て行け」と追い出した人。殺人未遂だったと町では噂になり、いつも校門の前で、晴子を待ち、晴子をいじめる子供には怒鳴りつけていた恐ろしいおばあちゃんだった。だけど本当は恐ろしい人ではなかった。
「おばあちゃんは、私は晴子のチョコレートグラミーになってあげるからね」って言ったの。
チョコレートグラミーはマウスブルーダーという魚のこと。親が口の中で稚魚を育てて外的から守る魚だ。でも、いつかは親の口から出て自分一人で泳いでいかなければならない。
いじめられっ子の晴子をクラスでたった一人守ってくれたのはシングルマザーに育てられている啓太。
啓太と晴子が夜の展望公園から見た町は山に囲まれすり鉢状で、金魚鉢みたい。そして二人は夜空を泳ぐ魚になったみたいだった。寄り添い合って生きられればよかっただろうけど、晴子のおばあちゃんは認知症になり施設に預けられ、晴子は遠いところにいるおばあちゃんの妹に預けられる。
「この水槽の向こうにはもっとたくさんの水槽があるんだね。水槽どころか、池も川も、海だってある、いちいち怖がってたら生きていけない。あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいけない」
遠い国から捕獲されて水槽の中で生きている熱帯魚は、生きているだけで息苦しいのかもしれない。けれど、水がなければ生きていけない。
カメルーンの青い魚ことアフリカン・ランプアイ、チョコレートグラミーことマウスブルーダー、ブルーリボンことハナヒゲウツボ、スイミー。この小説は5章からなるというか、5編の短編からなっていて、それぞれの中に前の短編に出ていた登場人物が再登場する。初めの4編全てに共通するのは海の生き物のイメージ。そして最後は「海」。
山に囲まれた金魚鉢のような街で、行き辛いけれど、もがきながら生きている登場人物たち。たった一人の大切な人を待ちながら、たった一人の大切な人との約束を守りながら、たった一人の大切な人の生きた証を探しながら。
海のイメージは空のイメージに通じる。そして、海のイメージは母親の胎内の「羊水」のイメージにも通じる。
生まれてからネグレクトに苦しむ子でも、誰でも初めは羊水の中で守られていた。だけど、月が満ちれば、みんな羊水から出て、広い海へ出ていかねばならない。喘ぎながら泳いでいかねばならない。
この小説を読んでいると、どうにもならない愛しさと悲しさを思い出し、鼻の奥がツンとなった。そして、誰かに包み包まれた感覚を思い出してお腹の中があったかくなった。
優しく、官能的で、美しく、悲しく、強い小説だった。
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「波間に浮かぶイエロー」が衝撃的だった。重史の愛情の深さには感動する。
どれだけ周りから嫌われても一人だけは自分のことを好きでいてくれる人がいる。
これは確かに自分の拠り所になりそうな、力を与えてくれるパワーワードだ。
どの短編もとても良かった。短編集で全ての編がとても良かったって言うのは記憶にないなあ。 -
R-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」を含む5編の短編連作集。
これがデビュー作なのか と驚きです。
完成度が高すぎ。
解説でも書かれていたけれど、最初の一行で引き込まれてしまう。
どれもこれもテーマは「生き方」。
切ないけれど、生きていくしかない。
読後感もすごく良くって、人に勧めたい一冊です。
町田そのこさんの他の本もよまなきゃ。。-
いるかさん、私もこの本読みたいと思ってます!
「わたしの知る花」がすごく良かったから、もっと町田さんの作品を読みたいあなぁ、と思う^_^いるかさん、私もこの本読みたいと思ってます!
「わたしの知る花」がすごく良かったから、もっと町田さんの作品を読みたいあなぁ、と思う^_^2024/10/02 -
aoi-soraさん
おはようございます。
この本もすごく良かったですよ~
っていうか、デビュー作なんて、本当にすごいと思いました...aoi-soraさん
おはようございます。
この本もすごく良かったですよ~
っていうか、デビュー作なんて、本当にすごいと思いました。
ぜひぜひ読んで、感想を聞かせてください。。2024/10/02
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初めての町田そのこさん。ものすごくよかったです。新聞で見たのですが、町田さんは自分の好きな作品を全文写して独学で学んでいたとありました。
それでいてこれだけの完成度の高い作品に驚きです。
本作は圧倒的な優しさで包まれる連作短編集です。
人生という大きな海を泳いでいく登場人物たち。それぞれが繋がり支えあって生きています。離別、ネグレクト、近親者の死、性的マイノリティ、放浪癖、DVなど生きづらさも様々です。彼ら彼女らのやり取りの温かさが生きることの肯定や癒しを読むものに与えてくれます。魚になって温かな水のなかを泳いでいるような心地よい空間のとりこになってしまいます。
短編の全てに共感してしまったのですが、私の場合は放浪癖です。「ここではない何処か」を求めてさ迷う宇崎と唯子。自分のことを誰ひとり知らない街を彷徨します。私も知らない街を歩くと解放感で爽快な気持ちになったことを思い出しました。こうした一人旅も悪くはない。
ただ、宇崎や唯子ほどになると、癖(へき)としか言いようがなくなる。きっと自分をリセットし続けているのではないでしょうか。
一人ひとりの登場人物が、優しい。それはたくさんの悲しみを知っているからこそ見せる本当の優しさだと思います。だから、作中のやり取りに心が温まります。読後感がとてもよいです。
すいびょうさん、素敵な本の紹介ありがとうございました。
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こんばんはっ。
私もこの本、大好きです。
一行目で笑いました、あっという間に引き込まれました。
少年少女が現実を受け止めて、前を向いて進んで...こんばんはっ。
私もこの本、大好きです。
一行目で笑いました、あっという間に引き込まれました。
少年少女が現実を受け止めて、前を向いて進んでいく時、グッときました。2023/02/11 -
あゆみりんさん、こんばんは。
コメントありがとうございます(^o^)一行目すごいですよね。正に名文。どの短編も弱さや悩みを抱えながらも進む...あゆみりんさん、こんばんは。
コメントありがとうございます(^o^)一行目すごいですよね。正に名文。どの短編も弱さや悩みを抱えながらも進む登場人物に終始、共感、感動でした。2023/02/12
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いつも立ち寄る本屋さんで見かけたPOPと、町田さん直筆の色紙に促されて購入した「宙ごはん」で1ラウンド(初めて読んだ町田さんの作品)KO、次に読んだ「52ヘルツのクジラたち」で(勿論、良い意味で)立ち戻れないダメージを受けました。
そこで、町田さんの作品を全て読むと決め、先ずはデビュー作からと思い、本書を購入しました。
(今では、全作品を購入して読了。町田さんの作品に益々惚れ込んでしまいました。新作の発表が待ち遠しいですね)
一方、「宙ごはん」、「52ヘルツのクジラたち」と比べるのは酷かなという懸念も正直ありましたが、読み進めるうちにその心配はあっと言う間に払拭され、収録されている5作品全て(というより、一つの長編を読んだ感じが強い)に魅了されました。(町田さん、疑ってごめんなさい)
先の2作品とは違った満足感と恍惚感に浸る事が出来、改めて町田さんの才能と作品にかける情熱に、畏敬の念を抱きました。
その中でも「カメルーンの青い魚」と「波間に浮かぶイエロー」は、ミステリー好きである私のお気に入りの作品で、特に「波間に浮かぶイエロー」のある一文は、以前読んで見事に騙された「アクロイド殺害事件」と「ホッグ連続殺人」のある一文(真相が判明した後に読み返すと、両作者の仕掛けに感服)を思い出させました。
また、別の作品ですが「うつくしが丘の不幸の家」を読むと、明らかにミステリーを意識されて書かれていることもあり、その方面のポテンシャルにも恵まれていらっしゃるのは間違いないと感じました。
以上を踏まえて、次の2作品を彷彿とさせてくれる(出来れば凌駕する)町田そのこ節のミステリーを発表して欲しいですね。
「天使が消えていく」夏樹静子さん
「天使の傷痕」西村京太郎さん
この2作品は、ミステリーとして優れているのは勿論ですが、それ以上に私の記憶にあるのは「母親の我が子への愛情」が描かれていることです。
2作品共に読んだのは20年以上も前ですが、最終ページの母親の言葉は鮮明に覚えています。
今でも折に触れて何度もそのページを読み返すことがありますが、その都度目頭が熱くなり、また、初読当時の自分に戻ることが出来ます。
『わたしの天使ちゃん!』天使が消えていく
『あの子のために』天使の傷痕
町田さん、出版社の皆さん、宜しくお願いします。
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みんな息苦しさを抱えて、ひたむきにそれぞれの水槽の中の日常を生きているんだろうなあ、と思わせる5編の連作短編集。
社会的弱者とされる登場人物達が、衰退気味の地方都市を舞台にストーリーが繋がっていく。
5作とも、愛を探して自由を模索する人達を描いている。彼らは弱者であっても弱い者ではなく、水槽の中で泳ぎ続ける事で未来を描く。そこに、強さと魅力があると思う。そして、各作品に仕掛けが施されており、さらに心地よく感情を揺さぶります。
どれも良作でしたが、「溺れるスイミー」に惹かれました。自身の欲求に揺れる女性が、その欲求のまま行動せず、踏み留まる。彼女の選択が正しくあってほしい。群れることのできない彼女の為に。 -
絶句した。
凄い!
読みやすくて、それこそ水槽の中のメダカのようにスイスイ泳いでいける感じなんだけど、読み進むたびに物語の奥行きが広がって、切なさが深まっていく。
連作短編集。
5編の短編全てが素晴らしくて愛おしい。
2021年本屋大賞の「52ヘルツのクジラたち」よりも、僕ははるかに感動した。
全ての人に読んでほしい本。
著者プロフィール
町田そのこの作品





