夜空に泳ぐチョコレートグラミー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101027418

作品紹介・あらすじ

思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のこと――。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • R3.11.20 読了。

     「どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。」…背表紙より。

     読み始めてすぐ、物語の世界に引き込まれた。魅了されていた。ここに出てくる人たちは生きている境遇も置かれた環境も決して良くはない。しかしどの短編も主人公が新たな1歩を踏み出す。その1歩に感動したし、勇気ももらえた。
     この短編集で特に好きな作品は「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」「海になる」ですね。「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」は中学生の男の子と女の子の山の展望台で見上げた広大な星々の瞬き、大きなおにぎりの味と二人の勇気のある決断と新たな1歩に感動した。「海になる」は衝撃的な冒頭からは、考えられない幸せなエンディングでした。
    二つの作品の共通点は、自分のありのままを話せる、さらけ出せる相手がいたことであり、そのことがうらやましいとも思った。
    とにかく、この2作品は私がうまく表現できないほど、素晴らしい作品でした。
     町田その子さんの別の作品も読んでみたい。

    ・「教わるもんじゃなくて、体で覚えてくもんだよ、そんなの。ひとから叩かれたら痛い。だけど同じことができる手のひらを、自分も持っている。こういう気付きの繰り返しだろ。」
    ・「だんだんと、自分が水槽の中でたゆたう魚になった錯覚に陥る。…(中略)この水槽の向こうにはもっとたくさんの水槽があるんだよね。水槽どころか、池も川も、海だってある。いちいち怖がっていたら、生きていけない。あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいけない。」 

    • megmilk999さん
      書評を拝読し、気になって読んでみました。読後、繰り返して思い出すのは、私も勇気がもらえたからだと思います。
      書評を拝読し、気になって読んでみました。読後、繰り返して思い出すのは、私も勇気がもらえたからだと思います。
      2022/02/18
  • 「波間に浮かぶイエロー」が衝撃的だった。重史の愛情の深さには感動する。
    どれだけ周りから嫌われても一人だけは自分のことを好きでいてくれる人がいる。
    これは確かに自分の拠り所になりそうな、力を与えてくれるパワーワードだ。

    どの短編もとても良かった。短編集で全ての編がとても良かったって言うのは記憶にないなあ。

  •  こんなに素敵な文章を書く人だったなんて、知らなかった!町田その子さん!
     晴子の母はおばあちゃんに追い出され、父はそんな晴子に関心なく、愛人と結婚するのにハンディになるとさえ思っていた。孤児同然の晴子を守ってくれたのはおばあちゃん。おばあちゃんは、昔晴子の母を鎌を持って追いかけ、「お前なんか出て行け」と追い出した人。殺人未遂だったと町では噂になり、いつも校門の前で、晴子を待ち、晴子をいじめる子供には怒鳴りつけていた恐ろしいおばあちゃんだった。だけど本当は恐ろしい人ではなかった。
    「おばあちゃんは、私は晴子のチョコレートグラミーになってあげるからね」って言ったの。
    チョコレートグラミーはマウスブルーダーという魚のこと。親が口の中で稚魚を育てて外的から守る魚だ。でも、いつかは親の口から出て自分一人で泳いでいかなければならない。
    いじめられっ子の晴子をクラスでたった一人守ってくれたのはシングルマザーに育てられている啓太。
     啓太と晴子が夜の展望公園から見た町は山に囲まれすり鉢状で、金魚鉢みたい。そして二人は夜空を泳ぐ魚になったみたいだった。寄り添い合って生きられればよかっただろうけど、晴子のおばあちゃんは認知症になり施設に預けられ、晴子は遠いところにいるおばあちゃんの妹に預けられる。
    「この水槽の向こうにはもっとたくさんの水槽があるんだね。水槽どころか、池も川も、海だってある、いちいち怖がってたら生きていけない。あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいけない」
    遠い国から捕獲されて水槽の中で生きている熱帯魚は、生きているだけで息苦しいのかもしれない。けれど、水がなければ生きていけない。

     カメルーンの青い魚ことアフリカン・ランプアイ、チョコレートグラミーことマウスブルーダー、ブルーリボンことハナヒゲウツボ、スイミー。この小説は5章からなるというか、5編の短編からなっていて、それぞれの中に前の短編に出ていた登場人物が再登場する。初めの4編全てに共通するのは海の生き物のイメージ。そして最後は「海」。
     山に囲まれた金魚鉢のような街で、行き辛いけれど、もがきながら生きている登場人物たち。たった一人の大切な人を待ちながら、たった一人の大切な人との約束を守りながら、たった一人の大切な人の生きた証を探しながら。
     海のイメージは空のイメージに通じる。そして、海のイメージは母親の胎内の「羊水」のイメージにも通じる。
     生まれてからネグレクトに苦しむ子でも、誰でも初めは羊水の中で守られていた。だけど、月が満ちれば、みんな羊水から出て、広い海へ出ていかねばならない。喘ぎながら泳いでいかねばならない。
     この小説を読んでいると、どうにもならない愛しさと悲しさを思い出し、鼻の奥がツンとなった。そして、誰かに包み包まれた感覚を思い出してお腹の中があったかくなった。
     優しく、官能的で、美しく、悲しく、強い小説だった。

  • 初めての町田そのこさん。ものすごくよかったです。新聞で見たのですが、町田さんは自分の好きな作品を全文写して独学で学んでいたとありました。
    それでいてこれだけの完成度の高い作品に驚きです。

    本作は圧倒的な優しさで包まれる連作短編集です。
    人生という大きな海を泳いでいく登場人物たち。それぞれが繋がり支えあって生きています。離別、ネグレクト、近親者の死、性的マイノリティ、放浪癖、DVなど生きづらさも様々です。彼ら彼女らのやり取りの温かさが生きることの肯定や癒しを読むものに与えてくれます。魚になって温かな水のなかを泳いでいるような心地よい空間のとりこになってしまいます。

    短編の全てに共感してしまったのですが、私の場合は放浪癖です。「ここではない何処か」を求めてさ迷う宇崎と唯子。自分のことを誰ひとり知らない街を彷徨します。私も知らない街を歩くと解放感で爽快な気持ちになったことを思い出しました。こうした一人旅も悪くはない。
    ただ、宇崎や唯子ほどになると、癖(へき)としか言いようがなくなる。きっと自分をリセットし続けているのではないでしょうか。

    一人ひとりの登場人物が、優しい。それはたくさんの悲しみを知っているからこそ見せる本当の優しさだと思います。だから、作中のやり取りに心が温まります。読後感がとてもよいです。
    すいびょうさん、素敵な本の紹介ありがとうございました。


    • あゆみりんさん
      こんばんはっ。
      私もこの本、大好きです。
      一行目で笑いました、あっという間に引き込まれました。
      少年少女が現実を受け止めて、前を向いて進んで...
      こんばんはっ。
      私もこの本、大好きです。
      一行目で笑いました、あっという間に引き込まれました。
      少年少女が現実を受け止めて、前を向いて進んでいく時、グッときました。
      2023/02/11
    • ちゃたさん
      あゆみりんさん、こんばんは。

      コメントありがとうございます(^o^)一行目すごいですよね。正に名文。どの短編も弱さや悩みを抱えながらも進む...
      あゆみりんさん、こんばんは。

      コメントありがとうございます(^o^)一行目すごいですよね。正に名文。どの短編も弱さや悩みを抱えながらも進む登場人物に終始、共感、感動でした。
      2023/02/12
  • 絶句した。
    凄い!
    読みやすくて、それこそ水槽の中のメダカのようにスイスイ泳いでいける感じなんだけど、読み進むたびに物語の奥行きが広がって、切なさが深まっていく。

    連作短編集。
    5編の短編全てが素晴らしくて愛おしい。

    2021年本屋大賞の「52ヘルツのクジラたち」よりも、僕ははるかに感動した。
    全ての人に読んでほしい本。

  • みんな息苦しさを抱えて、ひたむきにそれぞれの水槽の中の日常を生きているんだろうなあ、と思わせる5編の連作短編集。
    社会的弱者とされる登場人物達が、衰退気味の地方都市を舞台にストーリーが繋がっていく。
    5作とも、愛を探して自由を模索する人達を描いている。彼らは弱者であっても弱い者ではなく、水槽の中で泳ぎ続ける事で未来を描く。そこに、強さと魅力があると思う。そして、各作品に仕掛けが施されており、さらに心地よく感情を揺さぶります。
    どれも良作でしたが、「溺れるスイミー」に惹かれました。自身の欲求に揺れる女性が、その欲求のまま行動せず、踏み留まる。彼女の選択が正しくあってほしい。群れることのできない彼女の為に。

  • いつも立ち寄る本屋さんで見かけたPOPと、町田さん直筆の色紙に促されて購入した「宙ごはん」で1ラウンド(初めて読んだ町田さんの作品)KO、次に読んだ「52ヘルツのクジラたち」で(勿論、良い意味で)立ち戻れないダメージを受けました。
    そこで、町田さんの作品を全て読むと決め、先ずはデビュー作からと思い、本書を購入しました。
    (今では、全作品を購入して読了。町田さんの作品に益々惚れ込んでしまいました。新作の発表が待ち遠しいですね)
    一方、「宙ごはん」、「52ヘルツのクジラたち」と比べるのは酷かなという懸念も正直ありましたが、読み進めるうちにその心配はあっと言う間に払拭され、収録されている5作品全て(というより、一つの長編を読んだ感じが強い)に魅了されました。(町田さん、疑ってごめんなさい)
    先の2作品とは違った満足感と恍惚感に浸る事が出来、改めて町田さんの才能と作品にかける情熱に、畏敬の念を抱きました。
    その中でも「カメルーンの青い魚」と「波間に浮かぶイエロー」は、ミステリー好きである私のお気に入りの作品で、特に「波間に浮かぶイエロー」のある一文は、以前読んで見事に騙された「アクロイド殺害事件」と「ホッグ連続殺人」のある一文(真相が判明した後に読み返すと、両作者の仕掛けに感服)を思い出させました。
    また、別の作品ですが「うつくしが丘の不幸の家」を読むと、明らかにミステリーを意識されて書かれていることもあり、その方面のポテンシャルにも恵まれていらっしゃるのは間違いないと感じました。
    以上を踏まえて、次の2作品を彷彿とさせてくれる(出来れば凌駕する)町田そのこ節のミステリーを発表して欲しいですね。
    「天使が消えていく」夏樹静子さん
    「天使の傷痕」西村京太郎さん
    この2作品は、ミステリーとして優れているのは勿論ですが、それ以上に私の記憶にあるのは「母親の我が子への愛情」が描かれていることです。
    2作品共に読んだのは20年以上も前ですが、最終ページの母親の言葉は鮮明に覚えています。
    今でも折に触れて何度もそのページを読み返すことがありますが、その都度目頭が熱くなり、また、初読当時の自分に戻ることが出来ます。
    『わたしの天使ちゃん!』天使が消えていく
    『あの子のために』天使の傷痕
    町田さん、出版社の皆さん、宜しくお願いします。

  • 町田そのこさんの初読みは『コンビニ兄弟』で、他の作品も読みたくなって選んだ本作品がデビュー作でした。
    出だしの一文にこだわっているなと思ったら、町田そのこさん自身が「絶対に大事だ」と語っていました。

    "国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。"
    "吾輩は猫である。名前はまだ無い。"

    のどちらかが、書き出しの認知度第一位でしょうが、どの作家さんも書き出しをどうするかで推敲を繰り返していると思います。
    本作品では出だしの一行のインパクトが強く「どういうこと?」と思わせられ、先へ先へと読み進まされてしまいました。

    「カメルーンの青い魚」
    大きなみたらし団子にかぶりついたら、差し歯がとれた。しかも、二本。
    → これがデビュー作の書き出しかと思っていると、すぐに差し歯になった理由が語られ物語に引きずり込まれる。

    「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」
    夏休みに入るちょっと前、近松晴子が孵化した。
    → 「孵化した?」魚に「近松晴子」と名前を付けたの?と思ったが、晴子は人間で、それまで抑えていた感情を爆発させる行動を「孵化」と言っていたことがわかる。

    評価の高い本作品ですが、共感できない登場人物も多く終始重苦しい雰囲気です。

    ドロドロした大人の世界が描かれている中で、不憫な生活環境で生きている子供たちの凛々しい立ち振る舞いに救いを見出していました。

    5作品の全てに、これまで自分が接したことがないような人ばかり出てきて、そんな人たちが何処かで繋がっている。

    自分勝手な男どもが何人も登場して嫌になる。
    特に中学の教員で生活指導の主任でもある夫の酷い暴力や言動は、パワハラやセクハラを越えて犯罪の域に達している。
    小説とはいえ、殺されそうになっても逃げださずにいつまでも夫のそばにいる女の姿も理解できない。

    「どんな場所でも強く生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す」の「強さ」が「我慢強さ」に感じられて素直に共感できなかった。

    『コンビニ兄弟』は続編が出たら読みたいのですが、町田そのこさんの他作品は自分とは合わないような気がしてきました。
    ブクログのフォロワーさん達のほとんどが絶賛しているので、私の感覚がズレていることに間違いありません。
    残念ながらちょっと馴染めなかったというのが正直な感想です。

  • 生きづらさを抱えた人たちに光を当て、読んでいる私たちにも生きる希望を与えてくれる、そんな素敵な作品だった。
    「カメルーンの青い魚」は、この作者のデビュー作。最後の仕掛けが、私たちには見えなかった、サキコの満ち足りた幸せを味わわせて、余韻に浸らせてくれる。
    そして、表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」から「波間に浮かぶイエロー」「溺れるスイミー」「海になる」まで、読む人の期待を裏切らない素晴らしい構成で、すっかり感動の渦に巻き込まれてしまった。
    決して恵まれた境遇とはいえない人たちを、こんなにもさらりと書いてしまえるなんて驚きです。
    人は誰でも孤独だけれど、もがきながらもいつだって自由に泳いでいたい。
    この物語を読んだら、どこまでも果てしなく強く生きていけるような気がします。

    • m.cafeさん
      教えてくださってありがとうございます♪
      教えてくださってありがとうございます♪
      2021/06/18
    • m.cafeさん
      ゆうママさん。
      週間ランキング、たぶんこれです^ ^
      ありがとうございます‼︎
      ゆうママさん。
      週間ランキング、たぶんこれです^ ^
      ありがとうございます‼︎
      2021/06/18
    • アールグレイさん
      m.cafeさん
      iPhoneなんですか?
      とにかく、見ることができて良かった!
      m.cafeさん
      iPhoneなんですか?
      とにかく、見ることができて良かった!
      2021/06/18
  • すっごい良かったー!
    『52ヘルツのクジラたち』の小魚短編バージョンという感じ。生きづらい人たちを魚になぞらえているところが、とてもお洒落で似ていると感じた。
    構成もまた素晴らしくて、一つ一つのストーリーが少しずつ繋がっている。
    切なくて辛い場面も多いのに読んでいてあたたかい気持ちになる話ばかり。
    読み終わってすぐもう一度読んだ。誰かに認めてもらうこと、誰かに好きだと言ってもらうこと。それが生きる力になるんだよね。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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